ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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ついにこの章も終わりですね~


エピローグ

 

都市の境界を走るにつれ、周囲はどんどん静寂に包まれていく。道路の分岐が少なくなり、やがて現れた標識にはただ一つの目的地が示されていた――

 

【旧都廃墟方面、大地溝帯・辺縁】

 

「ついた、上まで行こうか」

「ほら、イアス――スカーフ忘れないで」

リンが、イアスにスカーフを巻き少しの傾斜を少し登っていく。

 

「ここは一体?」

何もない荒野――そこには相も変わらずホロウがぽつぽつと点在していた。身に覚えはないが、覚えている場所――

俺の疑問に答えたのはフェアリーだった。

 

『検索完了。ここは、大地溝帯中部の新エリー都側です。大地溝帯とは、新エリー都の前身となるエリー都で発生した巨大ホロウ暴走災害、通称『旧都陥落』事件の産物です。当時の指導者たちは零号ホロウの暴走を制御すべく、エリー都南西から北東にかけて計14基もの式興の塔を爆破――』

その結果、爆破による衝撃が地質活動の連鎖を引き起こし大地溝帯を形成するに至った場所がここなのだが――。

 

「零号ホロウ――そういえば、この間零号ホロウの調査員の試験受けてたね」

実際に俺は零号ホロウには行っていないが、画面越しから見た、奴らは明らかにただものではなく、目と目が合ったら即逃げたい――と思うほどだった。

アキラとも互いに顔を見合わせて『あの人達が僕らの逮捕に来ないことを願うよ』なんて軽口を言い合っていた。

 

 

「――それで、大地溝帯には侵蝕できるものはないから拡張に必要なエーテルエネルギーを得られなくて零号ホロウの暴走は止まったの」

「そっか――そうやったのか」

アポロの時はあたり一帯をツァーリボンバで吹き飛ばし『ゴッドキャッチ』で受け止め何とかホロウの拡張を止めるというスーパー荒業で何とかしていたが、もしそれができなければ――こうなってしまう。

もしかしたら、アポロがあのホロウの拡張を止めなければもっと早く新エリー都はできていたかもしれないな――。

 

 

(そういえば、なんでホロウは未だにあるんだ?)

ふとした疑問だった。なぜかって、聖剣の力を使いホロウを拡大し続けた影山は既に死亡、聖剣の残りの力はアポロを殺すことに使われ既に力は残されていない。

考えられるのは影山の死後、ホロウは暴走し、あたり一帯の資源を食い尽くした――。

 

 

つまり、聖剣の願いは死後も残り続ける――なら、歴代の聖剣使い達は一体何を願ったんだ?

(普通に考えて世界が滅んだのは一回や二回じゃすまない気がするんだけど――)

 

「リンとアキラもここ辺に住んでいたの?」

「ちょっと向こうだけどね、本来ならこの先はスロノス区にほど近いエリー都市街地の北側に通じる道だ。車で10分も走らないところに、大きな像が立っていた――」

「ホワイトスター学会のね、それの手前で左に曲がると、昔のミネルヴァ区7番通り――左側にアンティークショップがたくさん並んでて、おにいちゃんがちっちゃい頃、よく偽物つかまされてたっけ」

二人の会話から――この先には平和な日常があったと想像できる。

それを壊したのは、他でもない――ホロウだ。影山の願いは今にも残り続け、人々を蝕んでいる。

(俺は、聖剣に『ホロウを消滅させてほしい』とでも願うべきなのかな――いや、ホロウが無くなったらエーテル資源に頼っている新エリー都は今度こそ終わりか――)

 

 

「平和――だったんだな」

「うん、7番通りの突き当りから2つ――いや、3つのセキュリティーゲートをくぐれば、綺麗な建物にたどり着く」

「そこに、私達の先生がいた。いつもプレートの右側に立って、イアスと一緒に私達を待ってた――」

 

 

「『へ―リオス研究所』――あの場所こそ、本当に僕たちが帰るべきところなんだ」

アキラが指さした先、相変わらずの荒野しか見えないが――確かに零号ホロウを指さしていた。

 

「それは、今もあそこにある――大地溝帯を越えた、零号ホロウの奥深く――旧都の瓦礫の下に――」

「また来たよ、先生――ご無沙汰しててごめんね、色々あって――」

リンの表情からどうやら先生と言う人物は既に――

 

「大切な人を――失ったんだな」

「うん、私達を育てて、色んなことを教えてくれた。HDDシステムも、イアスも、全部先生が遺してくれたもの。そして旧都陥落の日に、私達を救ってくれたのも――」

大切な人を俺は失ったことはない――だけれど、人格データの構成の一部にアポロが組み込まれている俺には痛いほど共感することができた。

 

 

「――名前はなんて言うんだ?」

「――カローレ。『カローレ・アルナ』」

フェアリーが遭難者データベースに該当する人物を捜索する。しかし、出てこず代わりに旧都陥落事件に関連する情報内で1件ヒットした。

 

 

『――零号ホロウを暴走させ、旧都陥落を引き起こした元凶、へ―リオス研究所上級研究主任カローレ・アルナおよびその他関係者は大罪人として歴史に名を起こすだろう』

フェアリーが読み上げると、明らかに二人の言う人物像に合わなそうな記事が出てきた。

 

「――え?間違い?」

「何も間違ってなんかないよ。当局が公式に、旧都陥落を引き起こした張本人って発表したカローレ・アルナ上級研究主任は――」

 

 

 

「僕たちの先生だったんだ」

「――そうだったんだ。なるほど、この前に零号ホロウに入ってそのへ―リオス研究所の調査をしたいわけか」

二人は信じているのだ、己の先生が決して大罪人なんかじゃないって、必ず旧都陥落の真相を暴き、汚名を雪いで見せるというわけだ。

 

 

「なんだ、急にめちゃくちゃ早い気配がこっちに近づいて来てるんだけど!?」

俺達が向かってきた道へ振りむくとさっきまではそこそこ離れていた気配がすぐ横にまで来ていた。

 

 

「む――?」

段差を跳びあがってきたと同時に視線が合う。

 

「あ、ああああ!?んぐ――」

驚きのあまり、絶叫してしまったがアキラが俺の口を手で塞ぎ何とか事なきを得る。

 

「あなたは、対ホロウ6課の、星見雅課長!?」

「ああ。あの案内に秀でたボンプの持ち主に、ただものではない気配を要する男か――お前たちに敗北を喫するとは思わなかった」

 

「え、えぇ?お、覚えてるんですか!?って『敗北』ってどういうことですか?」

確か、あったというかちらりと視線に入った程度で俺はすぐどこかに消えた覚えがあるのだが――まさかその一瞬で覚えられているとは。

 

「誰よりも早く、大地溝帯慰霊の地を訪れる修行だ。そして――彼女の、そばにいてやりたくもあった」

雅はフェンスのそばにある慰霊碑へと真っすぐ向かい、そこへ刻まれた一つの名前にそっと触れた。

 

「雅さんも、誰かを思い出しにここへ――?」

「ああ。母上を、な」

こうやって、たくさんの人の繋がりを踏みにじっていくホロウ――残念ながら母親にはいい思い出が全く、全く!!!!と言っていいほどないので死んで悔やむ思いは全く共感できないのだが――それでも、彼女の表情から大切な人だったことは想像できる。

 

「それは――お悔やみを言わせてください。1日でも早く、心安らげる日が来ることを願います」

「礼を言おう。だが、私はまだ安らぎを得るつもりはない――旧都陥落を引き起こした咎人とそれにまつわるすべての者に枷をはめる間では――」

 

 

「私は逃がすつもりはない。誰一人として、な。」

そう言い残し星見雅はその場を去っていった。

 

 

「安心して、リン、アキラ――俺が二人を守るよ、とりあえず10秒くらいは稼いで見せるから」

「弱気だね、ナナシ――けれど、そうならないように僕も努力していくよ。それじゃあ、帰ろうか」

車に帰ろうと零号ホロウに背中を見せたその時、ふと慰霊碑に目が行く。

なんとなくだが、慰霊碑と言うのは見たいと感じるものがある――そんな感じの好奇心だったんだろう。

 

 

「え?」

そこには確かにこう書かれていた『エリシオン』と――

(まさか、同性同名の誰かに決まってるか――)

 

辺りは無音で、アキラとリンの足音がくっきり聞こえる。

「さようなら、郊外――」

 

爪先を翻し、俺たちは車に乗り込み――今度こそ郊外を後にした。

 

 

 

 

その日の夕飯――目の前には豪勢なステーキが並んでいる。

「あ、アキラも疲れるだろうに――こんなおいしいものを作ってくれるなんて!!」

「せっかく新エリー都に久しぶりに帰ってきたんだ、食事が味気なかったらさみしいだろう」

 

3人とも手を合わせ『いただきます』と言い食べ始める。

しかし、普段とは違い俺は恐る恐るステーキを口の中に入れる。

 

「おいしい!!――うっ」

美味しいのは真実だ――しかし、別の問題がナナシを苦しめていた。

その調子で二切れ、三切れと食べていく――すると、やがてナナシの顔色が悪くなりはじめる。

 

「どうしたんだい、ナナシ?もしかして、固形物は早すぎたかな」

「い、いや――そう言うわけじゃないよ。――ちょっとトイレ行ってくる」

二人に断りを取り、席を外す。

 

 

「う、おえぇぇぇ」

トイレにつくと先ほどまで食べていた料理を吐き出そうとするも全く出てこない。

 

『あーあ、吐き出せないんだから無駄だよ。ナナシ、耐えないと栄養にならないよ?』

わかっている、覚悟もしていた。けれど、想像以上の嫌悪感に体が拒否しているのだ。

「大丈夫だ、いつか慣れる――さ」

 

 

なぜこんなことになったのか――それは『フルアーマー・ザ・ハンド』の代償と関係している。

最初、命を削るということに対して大根おろしみたいに命が減るのかと思い気や全く異なる方法で命が削られた。

 

 

それは、体の中身だった。

 

 

フルアーマー・ザ・ハンドを120秒間継続させるために使ったのは、心臓、胃、食道、肝臓は再生できる限度の7割なのだが。

それに加えて左腕もエネルギーに分解している。と言うのも、アルターエゴからの話では心臓、胃、腎臓等々の役割は聖剣が代用可能であることをアポロで証明済みらしい。

それ以外にも脳も聖剣に移すことが可能で、その場合何百本の『ムゲン・ザ・ハンド』を扱えるようになったりするらしい。

 

 

だが、単純に代行しているだけなので例えば食道は口と胃を繋ぐ通路なわけで、その上胃もないため食べたもの飲んだものが生暖かい体にダイレクトに入っていくというなかなかの地獄状態なのだ。

もちろん、どこに入っても聖剣が勝手に消化してくれるのだが、普段から食道を伝わせて食べ物を食べている者からすれば“最悪”以外の表現が見つからない。

 

 

「――はあ、ここまできついとは」

もちろん、メリットもある。これまでよりもエネルギー吸収効率は上がるし、心臓の役割を聖剣が代行しているおかげか皮膚呼吸が可能になり――なんか、疲れにくくなった気がする。

 

『まあ、ナナシはもとから聖剣無しじゃ生きられないんだから――実質デメリット無しよね』

そんなわけはない――アルターエゴからキッチリ話を聞いたが、代償を払わなければもしかしたら聖剣と決別して生きられるチャンスもあったと教えてくれた。

それを振り払って、今俺は生きている。

 

 

「食べなきゃ回復できないな」

トイレの扉を開けて再び食卓へ戻った。

 

 

数日後、一方その頃――

 

「――よし、体は全回復したかな」

グランは郊外の小屋で体を休めていた、確かめるように肩を回し調子を確認する。

やられた傷は治り、もう一度ナナシに戦いを申し込むこともできるだろう。

 

その時、電話が鳴る。

「はい、ルシウス?」

『ああ、グラン。そっちはどうだ――そろそろ都市に来れるか?』

一応、ボスと認めてはいるが個人的には好きではない相手に内心イラつきながらも平常心を保つ。

(ナナシがボスだったらついて行くんだけどね)

残念ながらナナシとは思想が相いれないことは既にわかっている。まことに残念だが、次再会すれば殺し合いは避けられないだろう。

 

『そうだ、グラン――例の“人工聖剣”の調子はどうだ?』

『順調さ、今回の聖剣使いとの戦いでもおおむねその性能を発揮してくれたよ』

グランは己が使っていた人工聖剣に目線を向ける。ベッドの上には“白い短剣”と“赤い短剣”がともに横たわっていた。

 

 

『大切に使えよ――ある、ホロウから出土した限りなくオリジナルに近い旧時代の『人工聖剣』通称:ハイ・フェイクそのうちの一振りなんだから』

ハイ・フェイク――旧時代よりその前の人類が作り出した聖剣に限りなく近い模倣品――色々違うところもあるのだが、それでも圧倒的な力を発揮する。

 

そう、グランは聖剣使いではない――だからこそ、同じく聖剣使いではないのにも関わらず聖剣を使うナナシのことを当初複雑な気持ちを持っていたのだが――。

 

 

『それで、具体的な要件は何なんだい?』

『刀の聖剣『オーガ』のハイ・フェイクの所有者がわかった』

ルシウスの話を聞くにどうやら、次はその『オーガ』のハイ・フェイクを取って来いということらしいが――所有者は都市に居てその上かなりの手練れなようで同じく『ジェネシス』のハイ・フェイクを扱う俺を招集するというわけだ。

 

『わかったよ、すぐ新エリー都に戻るから――なっ』

それを最後に電話を切る、否切らざるを得ない状況になる。

 

 

とてつもない光が辺りを包むと同時に小屋の屋根部分が爆裂したのだ。

 

「いたね『ジェネシス』の使い手!」

「――違うんだけど」

そこに立っていたのは、中性的な見た目をした者。まるで、神が利き手で書いたようなその姿に、一瞬見惚れてしまう。

(資料にあった聖剣『ゼウス』の使い手か――)

 

 

「問答無用だよ『ゴッドノウズ改!!』」

神の光がグランを襲う、しかし彼に焦りはなくむしろ微笑を浮かべていた。

 

「そっちから現れてくれるなんて――神はさっさと落としてあげるよ!」

その日、グランが隠れ家にしていた小屋一帯の地図が書き換わったという。周辺には多数のクレーターが生まれ、人々は混乱したがルーシーが火の神がたたえているとかなんとか言って何とか鎮静化させたそうだった。

 

 

 

郊外にて雨が降りしきる中、一人傘もささず路地裏に倒れ込む。

 

「くっ――どうして、神である僕が――」

数時間前、ジェネシスの使い手との戦闘でアフロディは敗北し、命からがら逃げていたのだ。

 

ナナシが、ジェネシスとの使い手との戦闘を開始し実質的に勝利を収めていた、今こそ攻め入るチャンスかに思えたが隠れ家を転々としていたグランを見つけるのに時間をかけすぎてしまったことが原因でグランの回復を許してしまっていた。

 

「どうして、どいつもこいつもこんなに強いんだ――」

それ以上に敗北した原因は単純な力量差ではなかった。聖剣のスペックだけならアフロディはナナシにもグランにも勝利しているだろう。

 

 

しかしながら、ナナシにはヴィクトリア家政の力を借りながらも戦術と土壇場の覚醒で敗北し、グランには初撃のゴッドノウズを避けられた後、弱点であるスピードと手数で攻められおめおめと敗走することになったのだ。

 

「寒い――」

郊外は朝は熱いが、夜は寒い。砂漠のような気候の為、全身を鋭く指すような寒さが全身を襲っていた。

 

 

「――僕は」

数時間ここにいるせいか体が震えてきた。

(くそっ、どうすればいいんだ――)

 

当然、頼れる相手なんていない。聖剣に選ばれてからずっと根無し草で彷徨ってきた――途中で傭兵の仕事を受けたりしながら他の聖剣使いの情報を集めて――いつか、世界を変えて見せるって意気込んでいた。

 

 

ついに、一歩も動く力を失い、家の壁を背もたれにして――。

(このまま、目をつぶれば――楽になれるかな)

 

 

「――あ、アフロディ!?何やってるんだ!?」

聞き覚えのある声が響く、目線を向けた先にいたのは片腕にギプスを巻いたナナシだった。

けれど、それ以上はもう体が限界でそのまま――アフロディの意識は闇に消えた。

 

 

 

「ちょっ――はあ、連れて帰るか」

義手の調整のためにブレイズウッドに訪れたつもりがまさか倒れたアフロディに会ってしまうなんて、つい頭を押さえるも――どうやら真実らしい。

俺はアフロディをおんぶし、傘は首で軽く抑えながらブレイズウッドの拠点に向かうのだった。

 




な、何だって~!?グランが人工聖剣を使ってた!?
はい、まあこの章やたら人工聖剣をこすってたんでもしやと思った人もいると思います。
何より『ジェネシス』なのにザ・ジェネシスの必殺技使ってないですからね。

そして、ついに発覚したナナシの代償。
実は、臓器が聖剣に成り代わられるのはSeason1のエピローグのレントゲンからの伏線だったのでついに回収されましたね。

さて、これでSeason5は終わりです。
どうか!この章の感想をぜひぜひ聞かせてください!!

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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