アフロディを拠点に運んできて泥だらけの体は気にせず寝かせる。
「何であんなところで転がってたんだ?」
ビリーのスペアで現在は俺の左腕の義手を外しながら思考する。
(――まあ、やっぱり可能性が高いのは他の聖剣使いに負けたからかなぁ)
過去バレエツインズで襲われた時を思い出す。あの時、俺達は訳も分からずこの通り魔と戦うことになった。
あの時は、ヴィクトリア家政の助力と思ったより戦闘技術が拙かったり隙が多かったりしたアフロディを何とか追い詰め、最終的には俺が『マジン・ザ・ハンド』でアフロディの『ゴッドノウズ』を攻略することで勝利を収めた。
「――ともかく目覚めるのを待つか」
俺はあえて、アキラとリンには内緒にした。もちろん、ここでうっかりアフロディと言えばすぐ俺の会話を盗聴器越しに聞いている二人にはバレてしまうだろう。
(さっさと殺せばいいんだけどなぁ)
なぜかナナシはそうはしなかった――なぜなら、眠るアフロディはずっと苦しそうにもがいていたからだ。
「――何か理由があったのかもしれない、って考えちゃう俺は甘いんだろうなぁ」
決意を固めるようにそっと、リナさんからもらった盗聴器と発信基を阻害する妨害電波を出せる装置の電源を付けた。
数十分後、アフロディは過去の記憶を回想しながらゆっくりと目覚めた。
「う――う、ん?」
目覚めるとすぐに知らない天井が目に入る、朧げな意識のまま上体を起こし右往左往、部屋を観察する。
「あ、起きたのか」
その声と同時に、ゆらゆらしていたアフロディの首が俺の姿に固定される。
驚いているのか、シーツを掴む力が段々と強くなっていき、口元がわなわなと落ち着きが無くなった後、まるで耳元で爆発でも起こったような音が響いた。
「な、ナナシぃぃぃ!?――くっ、こうなったら――あれ?」
口が大きく開いたまますぐ脳内は冷静になったアフロディ、しかし何かを掴もうと伸ばした手は空を切る。
「これ?」
すぐにアフロディはナナシの右手に握られた物に目が釘付けになる。
「僕の聖剣じゃないか!!」
「そりゃそうだろ、誰がテロリストに武器持たせて匿うんだよ」
ちなみに、この聖剣は奴が倒れていたすぐ横に落ちていたものだ。
「う、だったらどうして僕を殺さなかったんだい?君の手に聖剣があれば、僕を殺して所有権を奪えたというのに!」
ナナシは内心『そうなんだ』と思いながらも、平静を装いながら話し出す。
「――少し話がしたかったんだ」
嘘でもなんでもない、間違いなくこれは俺の本心だ、しかしアフロディにはそれが伝わっていないらしく視線を細めこちらの顔をじっと見つめてきている。
「話?僕は君を殺そうとしたんだぞ!?」
「そうだけど――あの時は話す暇なんてなかったし、それに今の俺はあの時とは違う無知な俺じゃない、だから改めて今なら“対等”に話せる気がするんだ」
はっと顔を見上げてみればアフロディの顔が真っ赤になり、拳が震えている。
「――対等?僕と、君が対等?――ふざけるなぁ!!」
どこかの貴族のような口調は薄れ、ベッドをバシッと殴る音が響く。
「君と僕は違う!――多くの犠牲の上に立っている僕と、何も失っていない君じゃ――君とじゃ――?」
一度は激高し、立ち上がってナナシの胸倉を掴み上げるもすぐ彼の左腕にアフロディの視線が動き、止まる。
「な、ナナシ――左腕は?」
「この前に他の聖剣使いと戦った時に仲間を庇った名誉の負傷だよ――仲間からはめちゃくちゃ怒られたけどね」
グランとの戦いで吹き飛ばされて肘の先がない左腕を掲げて、ついでに付けていた義手も見せる。
「――そうか、悪かったね失言だった」
胸元から手を離し再びベッドに腰を下ろす。
「それだけじゃない、その戦いで俺は食道と胃と心臓と肝臓の7割を失ったよ――聖剣の代償でね――聞く?」
この時の俺は珍しくムキになっていたんだと、何も失ってないなんて言われて――加えて初めから何も失っていないと決めつけるアフロディへの苛立ちもあった。
だから、普通は急にこんなことを言われたら相手がどんな反応をするのか考えられていなかった。
「ッ、え?――そんな――心音してない」
二人きりの静かな部屋と言う状況、そしてアフロディがそっと俺の胸に耳を当てる。
もちろん、聖剣から目を離してはいないあくまで呆然としたアフロディに心音を聞かせるためだ。
「どうして、そこまでのことを――?」
「どうして?そんなの一つだけだ、自分の命を懸けても守りたい仲間がいるからだ――アフロディにもいるんじゃないのか?」
「守りたい、仲間――命を懸けても」
ナナシの言葉を聞いてフラッシュバックしたのは旧都陥落の日に起きた凄惨な事件。
(そういえば、どうして皆はあの時戦いに行ったんだろう?)
もちろん、聖剣による思考の誘導もあったんだろうけれど――皆、迷いがなさ過ぎた。
頭をぐるぐるとあの日の出来事が回り続ける。
(何で、僕だけ生き残ったんだろう)
そのたびに、答えが積み上げられていく気がする。
『ごめん、ヤマトあたしの番みたい――みんなをお願いね、愛してるよ』
美奈お姉ちゃんは、その運命を受け入れて戦った。
『大丈夫、お兄ちゃん!俺は不滅だから!』
卓也は気丈にふるまいながら戦った。
『いい子だ――行ってくるよ。二人とも愛してるよ』
ヤマトお兄ちゃんは決心が鈍らないように僕には目を合わさず行った。
『アフロディちゃんだけ、だけどね『ツナミウォール』』
葵ちゃんは僕を逃がすために戦った。
院長先生も僕たちを守るために――
そう、みんな大切な家族を!仲間を!守るために戦った――命のリレーを繋いで
(けど――僕はもう大切な仲間なんていない、出来ることなんて聖剣を集めて――いや、それももうダメか――聖剣はナナシの手にあるわけだから)
表情に影が差し込み、上がっていた上体もベッドに預ける。
「――殺してくれ」
「何でそうなるんだよ、俺はただアフロディと話したいだけなんだ――別にアフロディを殺したいわけじゃない」
目を閉じ、額に手を当てる。
「――何が聞きたいんだい?聖剣について聞きたいのかい?」
どうやら耳を傾ける気になったらしく、横たわってそっぽを向いていた顔をこちらに向けてきている。
「それも、聞きたいけど――俺はアフロディについて知りたい。どうして、聖剣に今の人間には消えてもらって、新たな人類を作るなんて願うんだ?」
「――その前に君は知っているかい?人類が犯した過ちを――」
「それって、人工聖剣とか、MNBウイルスとか、SSミサイルのこと?」
人類が犯した過ちと言われたら、迷わず答えられた。人道を親の腹の中にでも置いてきたのかと思ってしまうほど倫理に喧嘩を売った計画だ。
その副産物で俺が生まれたと言っても到底許されていいはずがない。
「知ってるのか――本当に前の無知な君ではないみたいだね」
再び、上半身を上げる――どうやら、会話に応じる気はあるらしい。
「ああ、ここに来るまでたくさん知った、失った物もあった――たくさん仲間を心配させちゃった、色んなものひっくるめて今、俺は君と対等に話したいと思ってる」
気持ちを精一杯言葉に乗せて伝える、それに加えてにアフロディにはナナシの瞳の鋭い光から、そこに宿る尋常ではないほどの覚悟感じ取っていた。
「だから、教えてくれ!!」
「――言う必要があるかい?もう既に君は知っているはずだよ」
息をのむ、それはつまり人間の愚かさを正すために今の人類に消えてもらおうと言っているのだ。
「そんな理由だけで、人はあんなにタフになれないよ」
バレエツインズでの戦闘の記憶、塩と胡椒をぶっかけられながら、ライカンさんの蹴りが直撃しながら、リナさんの電撃も食らいながら、俺の『真・熱血パンチ』をぶち込まれながらも、アフロディが倒れることはなかった。
「――昔、大切な仲間が僕にはたくさんいたんだ――けれど、今はもう――僕は――私だけ、生き残ってしまった」
「アフロディ――」
「だから、やらなくちゃいけないんだ――私が――私を助けて死んだ仲間の分も――救うんだよ」
手を顔にかぶせながら、美しい顔に爪を立てながらうわ言のようにぶつぶつとつぶやきだすアフロディ。
この時に俺は気が付いた、アフロディも曲りなりに俺と同じ誰かを救うことを望んでいることを――ただ、アフロディとの違いは“今”か“次”の人間を救うかただそれだけなんだ。
「ありがとう、アフロディ。教えてくれて、今日はもう寝よう――明日一緒に行きたいところがあるんだ」
顔に爪を立てた手を離させそっと抱き寄せる。
「――この距離なら君を殺せるかもしれないんだよ?」
「そんな油断はしないのもわかってるんだろ?」
アフロディの涙を見ないように天井のシミを数えながら抱き寄せる力を強める。
「バカ――」
数秒後、手の中から寝息が聞こえ再び彼女は眠りについた。
「――やっぱり戦士は向いていないよ――うん?」
抱くのをやめベッドに彼女を寝かせて、俺は少し離れた場所で寝ずに聖剣の番をしておこうと思ったのだが俺の右手首は彼女の手に握られ離れそうもない。
「もう、離れないで――」
「ハァ、俺も同じかな」
泣きはらした彼女の目元を見て、ナナシはため息をつきながらもそのままにして近くに座り夜明けを待つことにした。
『殺しなさい、今がチャンスよ――殺せば『聖剣ゼウス』はあなたの物になるのよ』
頭の中で声が響く、これはグランとの戦いでも会った正体不明の白髪の女性からの声だ。
(――殺すつもりはないよ――あなたは、アポロの時からいるんだろう?アポロは他の聖剣使いをどうしたんだ?)
『アポロは、甘かったわ――自分を殺そうとした奴も仲間にして、結局聖剣使いを誰も殺さなかった――いや、殺せなかったのよ』
思わず口角が上がる、きっとアポロも同じ理由で殺さなかったんだろうと確信できたからだ。
(なら、俺も同じだ――俺は甘いんだ、だから殺せない)
『――後悔するわよ』
(俺は、貴方とも話したいんだけどね)
しかし、それ以上返答は返ってこず――俺はある人に電話し依頼をした。
翌日――
朝早く、パイパーにお願いしてアフロディを連れ新エリー都に送ってもらっていた。
「ありがとう、パイパー朝早くに来てもらって」
「いいってことよ~報酬はこいつな。だけどよ、どうしてプロキシに頼まなかったんだ~?」
パイパーがコップで酒を飲む仕草をしながら、疑問を投げかけて来る。
「――二人に知られるわけにはいかなくてね」
「だから、この妙な機械を付けてるってわけか――ナナシは見る目があるぜぇ、こいつならナビ無しでも新エリー都には安全に行けるからな、けどよあんまり二人を心配させんなよ~」
「重々承知してるよ、後アキラとリンへの誤魔化しもお願い」
「あいよ~」
当然、アフロディを連れているので電波妨害装置はつけたまま、当然ナビは効かないので腕利きのドライバーかつ、口が堅く、なおかつ訳アリと察してくれるパイパーがうってつけだったのだ。そして一方のアフロディは――
「―――」
このように沈黙を貫いたままドアに肘をかけ景色を眺めている、どうやら会話に応じる気はないらしい。
(ま、来てくれただけラッキーか)
アフロディが目覚めた時も大変だった、終始俺の手首を握っていたせいで汗まみれな上に俺を一目見て『うわぁぁぁ!?て、敵か!?』と気が動転していた。まあ、敵なのは間違いではないのだが。
「――アフロディ、いい加減手を離してくれないか?」
「―――」
もう一つ、問題があった気が動転しすぎたのかヤケクソになったのかずっと俺の右手首を握ったまま離さないのだ。
そのせいで、義手を取り付けるのにもかなり苦労した。
そうこうしているうちに、俺達は新エリー都に到着した。
「早速、腹ごしらえに行こう!」
「――ああ」
強制的に結ばれている右手を引けば勝手にアフロディがついてくるので、そのまま引っ張り俺達はチョップ大将のラーメン屋に向かった。
「よぉ!ナナシじゃねぇか、今日は――また女を連れて来たのかよ!?しかも、えれぇ別嬪さんじゃねぇか、ほらほら嬢ちゃんも好きなところに座りな」
「――座るけどさ、ものすごい誤解が生まれてる気がするんだ――また来たときに訂正に来るよ」
新エリー都を歩いている途中で気が付いたのだが、このアフロディめちゃくちゃ人の目を引く――一応、汚れた服は着替えさせたのでそう言う目を引くではないのだが、ものすごくビジュアルがいいのだ。
「訂正に来た時、また新しい誤解が生まれねぇといいな――いつか修羅場が起こると見たぜ」
「なぜ修羅場?――それよりも大将、腹減ったぁ!」
軽くテーブルを叩きながら訴えかけるとチョップ大将は呆れたような顔つきで竹アームで小突かれる。
「わかった、わかった――ほら、そっちのお嬢さんもこいつの奢りなんだろ?たけぇもん頼んじまえよ、何なら少しおまけしてやるよ」
「え、ちょっ――お、奢りはそうなんだけど――あんまり高いものはその――キツイなぁって」
「大将一番高いラーメンを一つ、そこのナナシには一番安いメニューを」
「うぉい!――まぁいいけど」
勝手に決められ、チョップ大将も『あいよ!』と言い作り始めてしまった。別に金がないわけではないのだが、元来貧乏性なナナシは少し胃が痛くなったのだった。
「実力行使ができないんだ、経済的に敵にダメージを与えるのも悪くないと思わないかい?」
「この程度で傾くんだったらそもそも連れてきてないよ」
そんな軽口を言い合いながら、チョップ大将のラーメンを待っていた。
「ほら、黒鉢豚骨ラーメンのスペシャルバージョン一丁!」
「感謝するよ」
アフロディの目の前に置かれた音は通常の黒鉢豚骨ラーメンに加えてトッピングがフル装備された、その装いはまさにスペシャル――対して俺はと言うと
「ほい、ナナシはお子様ラーメンだったな!」
「い、いや無いはずだろそんなメニュー!?って言うか俺お子様ラーメンなの!?」
騒然と頭を抱えながら、慌てているとチョップ大将は俺の前にも黒鉢豚骨ラーメンのスペシャルバージョンを置いた。
「そんなわけないだろ、ほらたらふく食え!」
「大将!!俺は信じてたよ!」
ガブガブとアフロディが隣で食べているのも忘れラーメンを食べ始めようとしたのだが――
「アフロディ、手を離してくれない?」
「―――」
アフロディは無言で食べ進める、こちらからすれば右手首がつかまれているので利き手の右で到底ラーメンをすすれそうもない。
(――うーん、ちょっとした反抗かな?まぁ、いいや)
幸いにも左手のマジン・ザ・ハンドの特訓の際に練習はしていたので、少しおぼつかないが食べ始める。
ちなみに、義手になってから左手のマジン・ザ・ハンドは使えなくなった、ムゲン・ザ・ハンドは行けたのでおそらく直接左手から出す技、ゴッドハンドW、真・熱血パンチなども出せなくなってしまった、アルターエゴからは未熟だからと言われたが結局使用不可なのには変わりない。
(不便になったなぁ――)
改めて、左手を主戦力として使ってみると己が弱体化したことを思い知るのだった。
「ごちそうさま、美味しかったです」
俺と同じくらいのペースで食べ終え、チョップ大将に感謝を伝えるアフロディ
「そうかい!別嬪さんな嬢ちゃんに免じて、今回のお代はタダにしてやるよ」
「え!?ほ、本当!流石、大将!懐が深い!!よっ!世界一!!」
「何言ってんだ、ナナシは払うんだぞ?」
「デスヨネー」
なんとなく察していたが、追加のごますりで何とかできないかなと思ったが失敗しガックシと肩を落とす、そして支払いを終え店を後にした。
ビデオ屋から離れながら次の目的地まで歩ていると、アフロディが口を開く。
「――君は仲がいいんだね、あの店主と」
「うん!?――そうだよ、結構常連の方なんだから、それにいい人だろ!」
大体沈黙し続けていたアフロディが自分から口を開いたことに驚きながらも返答する。彼女に何か心境の変化があったのかはわからないが少し仲を深められた気がした。
その時、俺の気配察知に何か引っかかる。
「っ――」
上空を見上げるとリナさんのボンプ『ドリシラ』と『アナステラ』が上空にいた。
(もしかして、電波を阻害し続けたからアキラとリンが依頼したのか?いや、パイパーに誤魔化しを頼んでるしその線は薄いか――だとしたらどうして)
※ナナシはリナが常態的に盗撮していることを知りません。
ともかく、リナさんはアフロディの顔を知っている彼女からアキラとリンに話が行くのも時間の問題だろう。
(いや、一体いつから見られてた?)
辺りを見渡し状況を確認する、そうすると少し離れた先にアキラとリンがうろうろしていた。
「――マズイな。とりあえず、アフロディここの影に隠れて」
「あ、あぁ――」
周囲に隠れられる場所がなかったのでとりあえず二人からは死角の柱の陰に隠れてもらう、しかし――
「えっと、離してくれない?」
「―――」
相変わらずの無言のアフロディ、しかしながら流石に右手首を掴まれたまま二人と話すのは高難易度と言っても過言じゃない。しかし、いくら振りほどこうとしても手を離さない。
「ごめん――」
「あぁっ」
左手で無理やり振りほどき、二人が来るのに備える。ギリギリだったようで、すぐさま二人が俺達の位置を把握したのかこちらに走ってきた。
「ナナシ単刀直入に言うよ、アフロディと一緒にいるんだろう?」
挨拶もなしに開口一番、アキラが聞いてきたのはやはり予想通りアフロディについてだった。
「うん」
嘘をつく理由もないので、短く言い放つ。
「そしたら、今アフロディはどこにいるの?」
「今は遠くで待ってもらってる」
どうやら、二人に気配は悟られていないようで特に俺の言葉に不信感は抱いていないようだ。
「ナナシ、正気かい?アフロディは君を殺そうとしたんだ、さっさと追い払うか難しいなら僕が今から応援を呼ぶけど」
「アキラとリンが俺のことを心配してくれるのはわかってる――だけど、案外話してみたら悪い奴じゃない気がするんだ」
そう言うと、リンが俺の肩に手を置きゆすり始める。
「ダメ!そう思うのは、ナナシが優しいからだよ――私もお兄ちゃんと同感だよ、何なら今から応援を呼びたいくらい」
二人に詰め寄られ、思わず吐いたつばを飲み込むも毅然とした態度でなおかつ瞳には鋭い光と共に覚悟を宿らせ戦いの準備を終える。
「俺とアフロディはそんなに変わらないよ――アキラやリン、いやそれだけじゃない邪兎屋、白祇重工、ヴィクトリア家政、カリュドーンの子、みんながそうしてくれたように俺はアフロディを信じたい」
「ダメ、絶対ダメ!ナナシを信じたのは最初に私を助けてくれたからだもん!全然、状況が違うからナナシ左腕に大けが負ったんだよ、忘れたの!?」
と、互いに一歩も譲らず見事に話し合いが平行線となり数十分が経過していた。話し合いの長期化に基づいてアキラとリンは息が切れていたが諦めることはなかった。
「ど、どうしてそこまで諦めないんだ」
「ナナシが大切だからに決まってるじゃないか!――正直、僕にナナシを凌駕できる力があるなら引っ張ってでも家に戻すくらいの覚悟はあるよ」
「私も同じだから、出来れば仕事以外は外出してほしくないくらいなんだからね!」
「――ッ」
恥ずかしげもなく行った言葉に、聞いた俺が顔を真っ赤にしてしまったがその上アキラとリンの瞳に宿る光が確かに二人の覚悟を表していた。
結局この話し合いの落としどころは、まず妨害電波を出す装置を二人に回収され、改めて盗聴器を付け、もし何かあったらすぐに応援を呼ぶということになった。
(その必要はあるのかな)
しかし、視界にちらちらおそらく見せつけているのだろうがリナさんが写り込んで居たり、気づけばおそらくカリンが物陰に隠れている。
むしろ、既に応援は読んでいたんじゃないかと疑うレベルだ、それにしても仕事でもないのに来てもらって申し訳ない限りだ。
まぁ、最終的にアフロディと一緒にいることは許可されたので影に手を伸ばし今度は俺から彼女の手を握り走り出した。
「―――ありがとう」
少し話は巻き戻り視点が変わる。
僕――アフロディは建物の柱の影にうずくまっていた。
(どうして、僕はあんなに手を離すのを拒んだんだろう)
自分でも不思議とわからなかったが、目覚めてからもずっとナナシと手を繋いでいた。
これは、アフロディは旧都陥落の時の夢を見た直後だったこともあり無意識にあの日全て切れてしまった人とのつながりを求めたのだ。
(なぜ、僕は離した途端にこんな不安になっているんだ)
震えているのは先ほどまでナナシの右手首を掴んでいた左手、必死に震えを止めようと右手で掴むも止まりそうもない。なおかつ、きつかったのはここは否が応でもナナシたちの会話が聞こえるのだ。
『ナナシ、正気かい?アフロディは君を殺そうとしたんだ、さっさと追い払うか難しいなら僕が今から応援を呼ぶけど』
『ダメ!そう思うのは、ナナシが優しいからだよ――私もお兄ちゃんと同感だよ、何なら今から応援を呼びたいくらい』
当然、そりゃそうだ僕は結局急にナナシたちを襲った聖剣使いであることに変わりはない、ナナシだってきっと気の迷いくらいで僕と一緒に居てくれるだけだろう――
そう思っていたのに
『俺とアフロディはそんなに変わらないよ――アキラやリン、いやそれだけじゃない邪兎屋、白祇重工、ヴィクトリア家政、カリュドーンの子、みんながそうしてくれたように俺はアフロディを信じたい』
ナナシは、はっきりと仲間である二人に反抗したのだ。なおかつ、それは僕には信じるに値する根拠もなく、信頼はマイナスレベルだというのに打算的に彼は“信じる”と言った。
(―――ッ)
きっと無意識に胸を押さえていた、なぜならさっきまで手で物理的にナナシと繋がっていたのだが“心”と“心”でつながっている気がしたからだ。
だからこそ、ナナシにアフロディは感謝を伝えた。
「ハァ、ごめんアフロディ――どうやら、回れる時間はそんなにないみたい、流石にこんなに監視がついてたら君も嫌だろう?」
「いや、いいよ――ナナシと行ったのはラーメン屋だけだったけど、最高に楽しかった」
先ほどまではずっと繋がれていた右手首にはもうアフロディの手はなく、郊外の荒野が見える位置で俺達は語り合っていた。
「ならよかった――それでさ、どう?今の人間滅ぼしたくなくなった?」
「いや、そこまでではないかな――結局君に聖剣は奪われたままだから意味はないんだけど」
「流石に無理か、でも邪な気持ちは一切なしでアフロディに楽しんでほしかったのは本当だよ」
もしかしたら、これで一発世界の滅び回避行くかと思ったが失敗し頭を手で抑えいかにもがっかりしているようなポーズをわざとらしくとる。
「――どうして、ナナシは僕にこんなに良くしてくれるんだい?」
「良くしてるつもりはないけど――そうだね、最初にも言っただろ“君のことを知りたい”って――それに、心配もあったかな」
今日だけでたくさん知れたアフロディの姿、なおかつずっと見ていたら他ならない自身のオリジナルと彼女が重なった、仲間を失い自暴自棄になった己とだ。
ただ、違うのはアポロは最後まで人間を信じて戦って散った。
「心配か――やっぱり僕は、一人は怖いみたいだ。そう言われて少しほっとしているよ」
「誰だって一人は怖いよ、いくら頭のいかれた奴でも――狂ってしまうほどにね、ほらっ」
ナナシは脳内に落ちぶれたアポロをちらつかせながら、懐から聖剣『ゼウス』を取り出し投げ渡す。
「ハァ!?こ、これ僕の聖剣じゃないか――敵側として言うのも何だが、渡すのは気が狂ってるとしか言いようがない」
「だから、交渉だ――同盟しよう、俺達はっきり弱い!!めちゃくちゃ弱い!!だから、手を組んで他の聖剣使いを倒さない?」
アフロディに向かって今日一日中掴まれていた右手を差し出す。
「―――わかった、こちらも昨日痛い目に遭ったばかりだからねその交渉乗らせてもらうよ。だけど、普通交渉するなら聖剣を返す前にするべきだと思わないかい?」
「アフロディを“信じたんだよ”」
「ッ!?」
なぜか、急にアフロディの顔が真っ赤に染まり視線を逸らす、しかし繋がれていた手はそのままだった。
「これで、仲間だな」
「――ああ」
この時の、アフロディは今日一番の笑顔だった。
「そういえばさ、気になってたんだけどアフロディはどうやって聖剣についての情報を得たの?」
ナナシの場合は中に先代のアルターエゴがいるという状態だったので生き証人から直で知ることができた、しかしそれがないアフロディはどうやって知ったのかずっと疑問だったのだ。
「僕のいた孤児院の院長がその時代の『聖剣ゼウス』の継承者だったんだけど、院長先生が遺した日記から知ることができたんだ」
「へぇ――なるほどなぁ、ちなみにお名前は?」
賢いなと思いながら後でアルターエゴに聞こうとアフロディに院長先生の名前を聞く――だが、その瞬間俺は驚愕することになる。
「院長の名前?確か――“エリシオン”だったかな、でもほとんどそう呼んでる人はいなかったな」
「えり、しおん?」
「ああ、もう消えていなくなってしまったけど――そういえば最後に誰かの名前を読んでたな――確か“アポロ”って」
この時、確かに点と点がつながる感覚があった。
(どういうことだ!?エリシオンは、アポロの仲間の一人で影山との戦いでとっくに死んでるはずじゃ――でも、慰霊碑には名前がある)
それが刺し示す答えは影山との戦いで線上にSSミサイルが投下されアポロが仲間を皆殺しにされた日、エリシオンは生きていたことになる。
まあ、それがどうしたという話ではある――だが、ふとよぎったのはもしも他の仲間も生きていたとすれば世界に復讐を始めてもおかしくはないのではと思ったのだ。
その会話を最後に俺とアフロディは解散となった。
『どうして、アフロディに聖剣を返したの?』
帰路についた時、再びあの女性の声が響く。
(言っただろ、アポロと同じ理由だよ)
『どうして、アポロが聖剣を返してたことを知ってるの!?』
脳内で女性の叫び声が響く、どうやら適当に行ったことは当たったらしい。
(――ずっと不思議に思ってたんだ、どうしてアポロは武器を持たないんだろうって)
今までのヴィジョンを振り返ると仲間を失った最終決戦以外、アポロは決して武器を持たず仮面神教へのカチコミも素手で行っていた。
(それでさ、考えていくうちにわかったんだ――素手なら、いつでもさ手を伸ばせるだろ?――今みたいに手を差し伸べることだってできる)
『だから、アポロと同じ理由ってわけね――本当に似たもの同士ね』
一見冷静に答えているように見えるが、女性の言葉に込められた確かな怒気をナナシは感じていた。
『そんな似た者同士を放っておけない私もバカね―――ナナシ、貴方に教えてあげるわ』
(教える?もしかして、貴方の正体を?)
『それも、もちろん教えてあげるけど――重要なのはそっちじゃないわ』
(じゃあ、何を教えてくれるんだ?)
妙にもったいぶり、間を取った後声の主はこう言い放った。
『あなたが使える中でも最強クラスの必殺技『ジ・アース』よ』
ということで、ナナシとアフロディのお話でした、繋いだ手は離さないというわけですね。
そして、ついに!ついに!『ジ・アース』を習得できるわけですね、ちょっと話を見返したりもしたんですけどナナシが無双できたのって雑魚戦だけじゃねと思った今日この頃、これでやっと無双が始まるでぇ!!
まあ、そんなわけないんだけど
ちなみに案の定食べている時も特有の気持ち悪さが湧き出てきたみたいできつかったみたいですね。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け