ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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なぜ、主人公なのにこうなってしまうのだろうか


閑話・ナナシとルーシー

 

満月のみが地上を照らすようなまぶしい夜に男は一人岩の上に腰を掛けていた。

 

「――ふぅ」

口にくわえた火のついた煙草を唇から離し大きく白い煙を出す。それと同時に全身に何とも言えない快感が広がり体の力が抜けていく。

 

やがて一本吸い終えたかと思えばもう一本箱から取り出し『真・熱血パンチ』を発動させ火をつける。

 

 

ここは郊外、どこかの岩の上。ブレイズウッドからも少し離れ人目を気にしながら煙草を貪っていた。

ちなみに、煙草を吸っていることを決して口には出さない、なぜなら出せばすぐバレるとわかっているからだ。

 

吸い始めたのは、ツール・ド・インフェルノの後――みんなの前では何ともないようにふるまってはいたもののふと、少し心が揺らいでしまったのでお酒を飲もうとしたが、今肝臓の7割を失っている上に、そもそも酒を飲んでも全く酔わないのだ。

 

 

(前はホロウでこっそり吸ってたんだけどなぁ)

だが、やめてしまい今では郊外でこっそり吸う日々だ。

と言うのも、ホロウからつい煙草を咥えながら出てしまった時なぜか出口にカリンが待ち構えて居たり、“ある人物に”目撃され煙草の件がバレてしまったのだ。

 

閑話休題

 

 

 

「ピースですわね、ナナシ」

突然の出来事、全く気配を感知できず――いや、普段から張っている気が緩むほどリラックスしたのだ。それゆえに、彼女の接近に気づかず吸っていた煙草の銘柄まで当てられてしまった。

 

「――こんばんは、ルーシー。その、あんまり口に出されると」

そう、彼女こそ“ある人物”の正体だからナナシの方も慌てず対応する。

「安心しなさんな、貴方の身の上はわかっておりますわ――」

彼女の懐から現れたのはこの間、パエトーンの二人に没収されたばかりの妨害電波発生装置だった。

 

「おー助かるよルーシー。その装置この間もらったけどすぐ二人に没収されちゃってね」

「そりゃそうですわ、パエトーンの二人は貴方のことになると目の色が変わるんですのよ――それに、これはプロキシから返してもらったものですわ」

この間、アフロディと歩いていた際に使っていた装置は元はルーシーから譲り受けたものだった。それが周り回ってルーシーのもとに戻ってきていたというわけだ。

 

 

「それで何の用――?あっ」

「煙草はそのままで結構ですわ、こちらから勝手に押しかけてあなたの娯楽を邪魔する気はありませんもの」

「いや、消すよ。周りにも影響があるからね――うん」

そう、煙草は副流煙をあたりに撒き散らしてしまうそれはルーシーにとって悪影響だしそれは俺の望むことではない。例え、この手が震えていたとしても俺の真煙――いや、信念が許さない。

すぐに煙草を――け、消し、け、消しニコニコの張り付けたような表情でルーシーに向き合う。

 

「感謝しますわ、周りのために自己を抑制できるのもあなたの美点ですわよ」

「――うん」

左手から離れないピースの箱を懐に思いっきり押し込み煙草への誘惑を断った。

 

 

「この間のこと覚えていらっしゃいます?」

「――この間?――ストーカーの件かな」

数日前、店員のライさんからパンケーキのテイクアウト専用メニューが出ると聞いていたので買って帰ってくるタイミングに遠目でビデオ屋に入っていくルーシーを見つけていた。

 

 

だが、見つけたのはそれだけではなかった。

『ルーシーお嬢様――あそこはビデオ屋ですね、参りますか』

『すみません、ルーシーとどういう関係何ですか?』

俺が話しかけたのは長身にスーツを身にまとった男、そいつが電柱からビデオ屋を観察しながらぶつぶつ話していたので何事かと思って話しかけたのだ。

 

 

とりあえず怪しかったので袖を引っ張り路地裏まで運ぶ。

『ッ――あぁ、もしかしてルーシーお嬢様のお仲間でございますでしょうか?』

『そんなところですけど、電柱の影に隠れて何をするつもりだったんですか?』

言葉の端に少し殺気を込め、相手の出方を伺う。

 

『い、いやはや失礼確かにこの状況では私が不審者でございますね。私はこのようなものでございます』

怪しい男から渡されたのは名刺――そのほかにもなぜ男がこんなことをしているのか詳しく問いただす。

 

つまり、この男はルーシーを――いや、ルシアーナ・オクシスィース・テオドロ・デ・モンテフィーノを家に戻すために彼女の父から命を受けたらしい。

 

『ですが、どうやらルーシーお嬢様はかなりお変わりなられたようで――ですが、モンテフィーノ氏が予想した通りでございました』

『は?どういうことですか』

多分この時の俺は何と言うか相手へのイラつきを珍しく隠しきれずにいた。

 

『ルーシーお嬢様は本当に御父上とよく似ておられる。実は、自分から風潮は致しませんが彼女の御父上荒っぽい青春時代を過ごされていたのです』

『それが、ルーシーと何か関係があるんですか?』

スーツの男が言うには、ルーシーの父親は一度家を出て、その十年後自分の責務を全うするべく戻った。それが結果的に強靭な意志と枠組みにとらわれない強み、そして生涯の伴侶を得た――なんて武勇伝を長々と聞かされた。

 

『だから、それはルーシーの父親の話だろ、ルーシーに何の関係があるんだ?』

『わかりませんか?――恋人であれ友人であれ真に深い関係というものは、困難から育まれるものです。いずれ、ルーシーお嬢様も理解するでしょう――数えきれないお仕事に直面し、そうして仕事に追われる真夜中には温かい抱擁を必要とするはずです。』

何と言うか、よく俺はここで拳が出なかったなと褒めてあげたい気分だ。だが、語り終えた男の顔は引きつり俺からゆっくり離れていっている。きっと、今ものすごい酷い表情をしていると思う。

 

 

『それは、ルーシーの父親の話だろ!あんたら描くような未来になると決めつけるな――彼女の人生は彼女のためにあるんだ、決してルーシーの父親のコピーじゃない!』

自身が、アポロのコピーだからこそ目の前の男への苛立ちが抑えきれなくなっていた。

俺みたいに、アポロの人生に準じることを選んだわけじゃないルーシーの人生を親が勝手に決めているようでとにかくイラついていたのだ。

 

『ひっ――』

『待ちなさい、ナナシ。そいつはあなたが殴る価値もありませんわ――ヘルバ、アルボル、ラテレム!!』

路地裏の入口に立っていたのはルーシーだった。そして、彼女の号令と共に三匹のイノシシたちが宙を飛び男の顔を踏んづけていく。

 

 

そのまま、男はそそくさと去って行った。

 

 

 

「もしかして、聞いてたのか?」

「えぇ、と言うかあの男を撒くためにわざとビデオ屋に入りましたの」

あの時の回想をしているとよくよく考えてみたらルーシーが出て来るタイミングがかなり良すぎる。もし、数秒遅れていれば俺の拳はあの男の頬に突き刺さっていただろう。

 

「結構臭いセリフを言ったような――」

「ふふっ、えぇ『それは、ルーシーの父親の話だろ!あんたら描くような未来になると決めつけるな――彼女の人生は彼女のためにあるんだ、決してルーシーの父親のコピーじゃない!』でしたわ」

一言一句、棒読みながら俺のあの時のセリフを暗唱して見せた。

 

「――ま、嘘じゃないし――うん、恥ずかしくないよ――うん」

「その割には、手の向かう先が煙草の箱になっていますわよ――十分体には気を付けるべきですわ」

「うっ」

痛いところを突かれそっと、懐に向かっていた右手を下ろす。

 

 

「ナナシの言う通りですわ。私はルーシー、何を愛して、何を憎むべきかは――よーくわかってましてよ。憎むべきものに、決して膝を折ったりしませんせんわ」

「あぁ、よーく知ってるよ」

ルーシーは決して相手が覇者ポンペイだろうと臆さず戦うし、恐れもしない――それを、なんだかんだ身近で見て来たのだ。

 

 

「私は、自分が愛するものとずっと一緒に居たいんですの――郊外の星空、バイク、永遠の勝利、仲間たち――もちろん、それにはナナシも含まれていますのよ」

「だから、来てくれのか?」

「そ、そんなところですわ――ッ」

彼女には珍しく言葉がつまったので、首を動かし顔を見ると真っ赤に染まり何か言葉を絞り出そうとしている様だった。

 

「――それに、そのに、二度は言いませんわよ――」

 

 

そう言い残し、数秒口が震えた後彼女は一言言葉を紡いだ。

 

 

「き、今日は月が綺麗ですわね!!」

「うん?――そうだな、都市よりは圧倒的に郊外の方が満月は綺麗に見える」

ルーシーの言う通り、今宵は綺麗な満月だ。それも、郊外なので都市部のように光に邪魔されることなく満天の星空もセットと来た。

それにしても、彼女が意を決して出した言葉にしては割と何と言うか拍子抜けで思わず疑問で最初返してしまっていた。

 

「な、な、な――し、知らないんですの――そういえば、ナナシは記憶喪失でしたわ――」

「え?どういうこと、月が綺麗だと何かあるの?」

「気にしないでくださいまし!!」

真っ赤に赤面したルーシーは足早に岩場を去り、脱兎のごとくバイクに乗り込みブレイズウッドへ帰っていった。

 

 

「一体全体どうなってるの?」

まあ、気にしないでと言われたので気にしないでおこうと再び煙草を取り出し一服するナナシだった。

 

 

 

ちなみにその後――

 

「来ましたわよ、ナナシ」

「あ、ルーシー。最近よく来るね――それで、今日は何借りていくの?」

あの日以来こうやって暇な日は店番をしているのだが、最近ルーシーと会うことが多くなっていた。

そして、大体恋愛系のドラマや映画を借りていくのだが、実はカリュドーンの子のテレビが亡き者になってしまったらしく別に俺も暇で店番しているだけなのでルーシーに誘われて一緒に映画を見ることが多くなっていた。

 

 

「き、気のせいですわ!――そ、それよりも今日も一緒に見ませんこと?」

「いいよ、ルーシー!今はちょうどお客さんもいないしね」

 

 

だが、不可解なところがある。それは、ルーシーは割と高頻度でビデオ屋に来てくれるのだが大体俺がいるのだ。

(気のせいだよね)

 

 

一人郊外に帰り、何やらメモ帳のカレンダー部分に何かをかきこむ

「――来月のナナシのシフトはこれですわね」

当然、閑話使用のポンコツナナシは全く気が付くことはない。

 




やはり、ナナシにそんな知識は存在しなかった!!
皆さん知ってましたか?月が綺麗ですねの返しは死んでもいいわ、なんて言われたりするんですよ。

ナナシがヤニカスになっとる!?ナンデダロウネシランケド

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
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  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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