あれから3日後。
ついに俺は絶対絶命のピンチに陥っていた。
「腹が減った」
もう、動けない。かつて握られていた大根の幻影を思い出しながら、前のめりに倒れる。
(ここはどこだろう)
2日間くらいはそこら辺の草を食って過ごしていたが、すぐ不審者と通報され逃げる生活。
適当に泥棒でもしようかと思っても最近保安局の監視が多すぎる。
そんな要因もあって本当にひもじくなっていた。
(もう・・・こうなったら殺人でもなんでも侵すか・・・いや、ダメだ)
確かに死にそうでひもじいし何なら泥棒はしていたが誰かから金品を巻き上げようとは思えなかった。そこまでは流石に・・・と言う理性が働いたのだ。
(だけど・・・このまま、死ぬのか)
死にたくはもちろんない。あぁ、でも考える以前にもう意識が・・・。
そのまま意識は闇に落ちた。
「お兄ちゃん。誰か店の前で倒れているよ?」
青色の髪の少女。名前はリン
「本当だ・・・まるで行き倒れだ。助けよう」
そして、灰色の髪の青年。名前をアキラと言う。
二人の兄妹が、彼を持ち上げ店の中に入れる。それが、全ての始まりとなったのだ。
暗い、闇の中。
『急げ!もうすぐ、来るぞ』
せわしなく、人があたりを横断している、だが俺は動かずただそこに立っていた。
『――さん!早く逃げましょう!』
『――。もしかしたら、食い止められるかもしれない。俺はここに残る』
口が動いていないはずなのに、立っている俺からそう声が漏れた。
(誰だ?)
顔は靄がかかっている。誰かワカラナイ。
『だけど・・・。あんなの止められるわけないじゃないですか!!』
男が指をさす。
『それでもだ。誰かがやらなきゃいけない、立ち上がらなければいけない』
砂嵐の後、場面が飛ぶ。
『どうして・・・そこまで』
そのつぶやきが最後耳に残った。
「いったい何がッ!!」
急に浮遊感が俺を襲う、落下しているのだ。
『#!”#$%&’&%$#$%&・・・さもなくば今度こそ世界が終わるぞ』
「誰なんだ、あんた。俺は誰なんだ!!」
手を伸ばす、だけどその靄に手が届くことはなかった。
(瞼が・・・・重い。そうだ、俺は倒れたんだ・・・。ここは・・・)
意識を取り戻し、体を持ち上げる。相変わらず、腹は減ったままだったが、ある程度休めたおかげか少し動けるくらいは回復していた。
「あっ、起きたんだ!お兄ちゃん、起きたよ!」
タイミングよく、扉を開けて入ってきたのは青色の髪の少女だった。
それに続いて灰色の髪の青年も入ってくる。
「大丈夫かい、さっき店の前で倒れていたんだ」
「そ、そうなのか・・・じゃあ、ここは店の中か。申し訳ない、迷惑をかけて。すぐに出ていく」
そう言い残し、出ていこうと思ってベットから出た時。
「あっ、まだ駄目!」
それが言い終わる前に俺の体は前に転げ落ちた。
「どうやら、かなりの間何も食べていないみたいだね。これでも、食べるといい」
灰髪の青年からおかゆを渡される。
「いいのか?」
「ああ、また今みたいに倒れられてたら困るからね」
なんだか目の前の二人が神に見えてきた俺は渡されたおかゆを味わって胃袋に入れた。
二人は、その姿をじっと見ていて、ちょっと恥ずかしかったが食べ物にありつけてラッキーと思いながら完食した。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様。おいしかったかい?」
「あぁ、最近食ったもの中で一番おいしかった」
灰色の少年は俺の大げさな反応に乾いた笑いがでていたが。冗談抜きでこれまで食ってきたのは大根くらいだ。大きいし、取りやすかったから大体狙いは大根だった。
まぁ、めちゃくちゃ辛いのもあったりしてつらい生活をしていた・・・。泥棒だけど。
「それにしても、どうしてあそこで倒れてたんだ、新エリー都の大根泥棒さん?」
「ッ!?」
なぜそのことを・・・。と言うか、そんなあだ名が通っているほどやらかしていたのか。
だが、どっちみち俺が泥棒だと知っているということはこいつらの目的は、もしかして保安局に突き出す・・・。
「安心して、別に治安局に突き出そうなんて思ってないから」
「それよりも、僕達はお礼を言いたかったんだ」
「え?」
素っ頓狂な声が漏れる。
意味が分からない、大根泥棒にどんなお礼をするというのだ。
「覚えてないかな、私のこと・・・ほら3日前」
3日前・・・。そして、青髪の少女の顔をじっと見る。
「・・・あっ!!あの時、俺の前を通り過ぎてった!」
「そう、ごめんなさい。あなたにごろつきを押し付けちゃって」
「リン、下手したら彼は死んでいたかもしれないんだぞ」
案外、世界は狭いんだなぁと思いながら、なんとなく今の状況を整理しよう。
あの時、俺の前を通って見事ごろつきを押し付けてきたのがこの少女。
そして、何のめぐりあわせか俺は少女の店の前で倒れていた。
そこを、2人に拾われたということだ。
「とりあえず、俺を治安局に突き出すつもりはないんだよね?」
「ああ、あくまで妹の恩人に恩を返そうというだけだからね」
人の善意は大人しく受け取るべきだ。おかゆの件はそれで終わり。しかし・・・
「そっか、それはありがたい。でも、おかゆももらって大体回復したし、俺はもう行くよ。いつまでも大根泥棒がここに居たら君たちが困るだろう」
「いや、別にいいけど・・・そうだね、なんで大根泥棒なんてしていたんだい?」
ぐっ、確かにまじまじと再認識するとなんだか情けなくなってきた。俺は、洗いざらい二人にわけを話した。
「記憶喪失・・・。」
「あぁ、俺が誰なのか。身分を証明する物も無ければ、ここがどこかすらもわからない。それで気づいたら一番大きい野菜の大根を盗む・・・大根泥棒になっていたんだ・・・。」
自分で言っててこんな悲しくなる経歴があっただろうか。と言うか、兄の方は心底かわいそうなものを見る目で俺を見つめ。妹の方に関しては大笑いしていた。
「あまり、笑うもんじゃないよ。リン、彼は確かに大根しか盗んでいないが、治安局を5回も撒いている超エリート泥棒だからね。ははっ」
と言いつつ、ちょっと笑っている兄の方。
「だってさ、そんなすごいなら・・・なんで大根、ふふふふっ」
こっちはもはや笑いを隠す気すらない。
「そうだ、君は強いんだろう。だったら僕達一緒に働かないか?」
「え?雇ってくれるのか!」
確かに、今俺が大根泥棒として名をとどろかせてしまっていることが分かった今、無事な再就職なんてほぼ不可能。
「あぁ、いいか。リン?」
「うーん。まぁ、大丈夫だと思うよ。と言うか、ナイフを素手で折れる人は普通じゃないって」
どうやら、ごろつきとの喧嘩を見られていたようだ。
「決まりだね。僕たちは一応表向き、ビデオ屋をやっているんだ」
「・・・表向き?」
その含みがある言葉に嫌な予感がした。
「表向きはね。でも・・・ちょっとこっち来て」
妹の方に手招きされるままに誘導されてある部屋に入る。
そこにはおびただしい数の画面が表示されていた。
「自己紹介するね。私はリン」
「兄のアキラだ」
「「そして、私/僕・達はパエトーンだ」」
その、自己紹介に俺が返せた返答は。
「パエトーン?」
それだけだった。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け