ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第64話・聖剣_抜錨__

 

 

パン――!パン――!銃弾の雨を搔い潜りながら両者の刀と拳が激突する。

 

(やっぱり、剣速が早すぎる――たまに銃弾が飛んでくるおかげで何とか対応できているけど相手が本気になったらすぐ負けるぞ)

本来なら、すぐさまナナシの敗北が決定しそうなものなのだが、謎の第三者が制圧射撃のリズムでどんどん撃ってくれるのでそれが功を制し何とか戦いになっている。

ちなみに、ナナシはムゲン・ザ・ハンドG2で飛んでくる銃弾をはじいているため何とかしているのだ。

 

 

「『正義の鉄拳G4!!』」

「早い――だが、使わせてもらうぞ!」

振りが早くなったおかげで、何とか実践レベルで使えるようになった正義の鉄拳。しかし、星見雅には刀でちょいと軌道をずらされ弾除けに使われる。

 

(まずい、踏み込んでくる――やってやらぁ!)

先ほどまで弾丸を弾くのに使っていた刀を納刀したのを確認し、その瞬間弾除けに使っていたムゲン・ザ・ハンドG2の8本の腕を星見雅に向けて発射する。

 

「そのスピードでは、私の影すら捕まえられぬぞ!」

「でしょうね!!」

だが、向かう寸前に軌道を変え殴ったのは地面だった。当然、そんなことをすれば地面には多くのクレーターが出来上がっていた。

 

 

星見雅、確かにすべての身体能力が規格外――さっきの正義の鉄拳のしのぎ方から見て判断力、応用力も常軌を逸している。

だが、そんな化け物でも刀からビームが飛んでくるわけじゃないし、刀が伸びるわけじゃない。

 

つまり、それらを発揮する土壌を壊してやればある程度戦えるようになるというわけだ。

 

「これでも、行けるのか!!」

「無論だ」

即答で帰ってきた返答と同時に、ドンとまるで俺が正義の鉄拳を発動するときのような踏み込みが聞こえて来たと思えば、悪路を一歩で踏み込み眼前まで刀が迫ってきていた。

 

 

「来ると思ってたよ!『マジン・ザ・ハンド改!』」

「はぁッ――!」

一度、零号ホロウで巨大なエーテリアスを倒すときバケモンみたいな跳躍で跳んでいたのを見ていたため、マジン・ザ・ハンド改を事前に展開し刀の抜刀に合わせて振るう。

 

「一手遅れたか、切ったつもりだったのだがな」

「うごっ――うっそだろ、事前に出しても間に合わないとか」

拳は刀とせめぎあったかに思えた。しかし、事前に出したマジンの拳が間に合わないほどの剣速で拳が加速する前にぶつかり簡単に破壊される。

 

(あの剣が特別なのかって思ったけど、それだけじゃない――単純に星見雅がめっちゃくちゃ強い!?)

残念ながら、現状ナナシが使える姑息な手段で星見雅を倒せるものはない。

『フルアーマー・ザ・ハンド』という使いたくない奥の手があるのが、これを使えばいよいよ死ぬ気がする。

 

 

(やるしかない――ジ・アースを!!)

 

 

 

数日前――

 

暗闇の意識空間、その場にいるのは白髪の乙女と、覚悟を決め、漢の顔つきになったナナシだけだった。

 

『それじゃあ、ジ・アースを教えるわよ』

『あぁ、どんな辛い鍛錬でも耐えて見せる』

これまでの必殺技は、最初から自然と使えた真・熱血パンチやゴッドハンドなどは除いて、かなりの鍛錬をする必要があった。

ましてや今から覚えるのは聖剣ジ・アースが使える中でも最強クラスの必殺技だ一体どんな試練が待ってるのか想像もつかない。

 

『要らないわよ?あなたが『ジ・アース』って言ったら発動するわ』

『えっ!?い、いやいやそんなわけないでしょ!?』

『そんなわけあるのよ。大体、聖剣使いの必殺技は次に継承されるとき丸々継承されるのよ――個人差はあるけど。アフロディを思い出しなさい、彼女の場合だって『ゴッドノウズ』なんかは勝手に使えるようになってたはずよ』

『う、嘘だろ!?あの必殺技を止めるためにたくさん頑張ったんだよ!?』

記憶に強く焼き付いてるアフロディの所見の絶望感。正直、ずるいなぁなんて思ってはいたけれど、相手もその分だけ特訓したんだろうなぁと思って誤魔化してたけど――。

 

 

『最初から使えるのが普通なのよ。まず、アポロとナナシ――他にも影山なんかもイレギュラーね』

『――じゃ、じゃあその必殺技は継承したら勝手に使えるってこと?でも、俺は正式に『ジ・アース』を継承したわけじゃないんだろ?』

『えぇ、貴方はあくまで間借り――正式な継承者は私のままよ。だから、私が発動させるの』

理解はしたが納得したくないのか、ナナシの恨む目が変わらない。

そう、ナナシは『そんなに簡単に使えるなら最初から使えるようにしてくれよ』と思っていたのだ。

そんな、ナナシの姿を見てサクラは大きなため息をついた。

 

『いい?“使える”と“使いこなせる”は天と地ほどの差があるのよ!――最初から教えてたらあんたみたいなペーペーじゃ使いこなせずどこかで死んでたわよ』

『うっ、否定できない。――そ、それじゃあ教えてください』

『ええ、けれど先に言っておくわ。あなたも、お兄ちゃんもこの必殺技を完全に使えないわ――理由はわかるわよね?』

ナナシは深く、頷く。単純な理由だが聖剣は俺の体の中に埋まっているのだ、そもそもそれが原因でアポロの必殺技は肉体から発現するものになっている。なら、ジ・アースも同じなはずだ。

 

 

『それじゃ、始めましょう――そうね、でも単純に『ジ・アース』って叫ぶだけだと貴方の場合うまくイメージが固まらないと思うわ』

『イメージ?なんでさ、発動するのはそっちじゃないのか?』

『そうね、けど――バイクで例えるとエンジンを付けるのが私で、運転するのがあなたなのよ。だから、あくまでイメージを固めて動かすのはあなたOK?』

『わかった、でもどうすれば?』

 

 

 

『簡単よ、漫画でも大体必殺技には口上があるもんでしょ?』

『口上って――うーん?』

『聖剣をこれから使うイメージができれば何でもいいわよ』

 

 

 

聖剣をこれから使うイメージ――深く、深く考える。

『――決めた』

 

 

 

時間は現在に戻る――

 

 

「容赦はしない!――なっ」

眼前に迫るわ、瞬撃の一閃だが、それを前にしてナナシは目を閉じていた。だが、星見雅はその手を止めない、なぜならナナシが纏う気力が朽ちるどころか増大していたのだ。

 

「聖剣_抜錨__!!」

開眼。それと同時に力強く叫んだその瞬間彼の手に、青い光が螺旋を描きながら収束していく。

それは彼の胸の内にある焔のように消えはせず、冷たい輝きを放ちながら、静かに渦を巻いていた。

 

 

眼前に迫る凶器、だが思い出していたのは先ほどの会話の続きだった。

『そう、そうするのね―――肝に銘じときなさい。その必殺技は聖剣ジ・アースにとって最も象徴的な必殺技だということを、そして神でも、宇宙人でも、ましてや鬼とじゃなく“人と共に生きる”ことを選んだ聖剣の力だということをね!』

『人と共に生きる――』

『それを理解したら、あとは全力でその名前を叫ぶだけよ!』

 

 

本来ならば、圧倒的破壊力を持つ対界兵器。しかし、アポロの手に渡り力は姿を変えた。より人らしく、より人と共に、理不尽というものと戦うための力は姿を変えた。

 

 

 

 

「『ジ・アース!!』」

そう“最強の手刀”として、本来ならば存在しない刃を手に宿す。それゆえ、“使いこなせれば”切れぬものなし――

数コンマ先――星見雅の一太刀と聖剣が衝突する。地響きか、それとも雷鳴かともかくとんでもない衝突音が戦場に響いた。その圧だけで、弾丸が思わず二人を避けるほどだった。

 

 

そして、その結末は――

 

「なっ――」

「うそでしょ!?」

どちらも、呆気に取られていた。一応の勝敗ではナナシが打ち勝った。加えて、星見雅の刀は聖剣との激突後、数コンマ先には手から薙ぎ払われ地面に深く突き刺さった。

 

 

対してナナシは、サクラからこの必殺技は何でも切れると聞いていたし、実際使ってみるとタナトスなどのエーテリアスはもちろん、うっかり天満エクスプレスのトラックも豆腐のように両断していたのだ。だというのに、刀は飛んで行っただけで普通に無事なのだ。

(あれ、絶対普通の刀じゃない!?)

 

 

別に刀剣コレクターではないのだが、それだけは強く感じることができた。

だが、今よく考えてみれば好機、刀を失った星見雅なら勝てるんじゃないかとナナシに一筋の光が差し込む。

 

「今!『マジン・ザ・ハンド改!』」

だが、愚かかなそれに慢心し大ぶりな攻撃を選んだナナシ。その拳の行先は空気しかなく気づけば目の前に拳を握った星見雅がいた。

 

「隙アリだな」

「がはっ!」

ギリギリ頭部のガードが間に合ったからか拳の矛先は急所には入らなかったもののとんでもないパンチがナナシの腹に突き刺さる。

 

 

(徒手空拳も強いのかよこりゃあ、一対一とかやってられねぇ――!!)

撤退の準備をしようと、地面に仕掛けておいた煙爆弾のスイッチを押す。

ここから、トラックまで相当距離は稼げたはず――だから、そこまで俺が追いつけば実質勝利なのだ。

 

「ほら、お見上げおいておくね!!」

この間、監禁されていたお詫びにグレースから再びもらった手榴弾をぶん投げ、炸裂を確認した後全力でトラックを追った。

 

(パイパーが乗ってるトラックの最高速度は推定、制限込みで時速110㎞くらいか――だけど、制限なんてぶっ壊してそうだしなぁ大体140㎞くらい出てそうな気がする。こないだ、チューニングしてたって言ってたし)

ナナシの最高速度が時速180kmくらい、もし速度の理論値を出し続けていれば追いつくのは困難だろう。

まぁ、正直追いつかずみんなが先に逃げられた方がいいに決まってるんだけどね。

 

 

 

だが、そうは問屋が卸さないのか、残念ながら数分後大量の第三者のトラックやバイクに追い詰められているパイパーたちが見えてきた。

 

(この距離じゃ、助けられない。もっと近づかないと――って)

思わず目を丸くする。先ほどまで、囲まれていたと思ったパイパーたちの車は少し速度を緩めたと思えば二転三転して気が付けば敵の第三者同士で事故を起こしていた。

 

「すっげぇや――」

鮮やかなドライビングテクニックに見惚れていると、パイパーと目が合い、ウインクで『どうだい?』と伝えてきているようだった。

 

「最高!!」

「あ、ナナシ!ナナシ!!」

トラックから体を乗り出し手を振るリン。それを、危険だと判断したアンビーに止められていたけどどうやら全員無事で切り抜けられたらしい。

 

「パイパーちょっとスピード緩めて!」

「任せときな~」

「あの小僧、まさかトラックに走って追いつくとは――」

パールマンの言葉は虚空に消えたが、リンのお願いで少しスピードを緩めたトラックだが、敵は全ていなくなったわけじゃない。

 

 

殺気――肌で感じた瞬間、首を回せばそこにはロケットランチャーを構えた男が一人。

 

「スピード緩めるなぁ!!」

「おっ――」

パイパーはすぐ意図を察し、発進する。しかし、無情にも二発のロケランは放たれた。

(間に合わない――ゴッドハンド?無理だ、この距離じゃ遠すぎる――)

 

 

すぐさま、作戦を変える。パイパーの運転技術ならトラックへの直撃はないという前提で動く――それは、ロケットの着弾地点からトラックが吹き飛ばされる角度を推定してそこに飛び込み何とか落下だけは防ごうという算段だ。

 

 

一発目、流石はパイパーと言ったところか追尾機能なんてなんのそのと言わんばかりのドラテクで躱す。

 

二発目、トラックの後方車輪に直撃。タイヤが一つ飛んで行ったと同時に車体も宙を舞う。

 

(安全性は落ちるけど大体トラックは3~4輪あれば走れる。そこはパイパーのドライブ技術で何とかしてもらうしかないか――それに、リンをホロウに入れるわけにはいかない!!)

 

 

「『ゴッドハンド!!』」

宙に舞った車体をホロウに入れないために間に入る。その目論見は成功した――しかし、無情にもナナシはトラックから受け取った勢いを殺すことはできなかった。

 

 

つまり?

 

「ナナシーッ!!」

最後に聞こえたのは、目が合ったリンの叫び声――そして、狐の耳だけだった。そのまま、ナナシの体はホロウに落ちていった。

 




これは、もう次回の話でナナシが鞘になってる未来が見えますね。
というか、ついに聖剣の名前にもなってる『ジ・アース』が出ました!!特にめでたくはないけどね?

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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