ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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いやぁ、神引きする夢を見たので筆が乗っちゃいました。久しぶりの連日投稿


第67話・それでも生きたい

 

戦闘開始数秒後――

 

相変わらずのとんでもない剣速、ナナシは対応できなかったが偽ナナシは手首の角度や視線、刀が鞘を滑る音の秒数などから先読みし対応して見せていた。

 

 

 

「しのいでばかりでは私には勝てんぞ!」

「ッ――あんまりやりたくなかったけど、やるしかない」

だが、その均衡は既に破られつつあった。時々、星見雅が剣を振るうリズムを変えることによって妙に偽ナナシが押され始めたのだ。

 

 

「悪いけど、ナナシはさっさと介錯させてもらうよ」

「私がいる限りは、ありえないな」

その雅の返しに対して、すごい嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

「その原因を作ったのはあんただけどな!!」

そう、元はといえばナナシが生死の境を彷徨っているのは彼女の刀の暴走で刺されたのが原因である。それを彼女が気にしてないとは思えない、そこを逆手にとって動揺したところに決定打を打ち込もうというわけだ。

 

「『偽熱血パンチ!!』」

燃える拳が星見雅に突き刺さらんとしたその時――

 

「ふんっ!」

いともたやすく、彼女によって弾かれた。それは、彼女の刃が全く鈍っていないことによるものである。

「はぁ!?――なんとも思ってないってこと?」

それはそれで、どうなんだと偽ナナシが問いただすと、黒いオーラはさらに溢れ星見雅の目からハイライトが消える。

 

 

「大丈夫だ、ナナシのことは星見家いや、死が私たちを分かつまで私が責任を取る」

「――その具体的には?」

もんのすごい嫌な予感がしたので思わず戦闘を中止し聞いてみる偽ナナシ。

 

 

「無論、言葉通りの意味だが――そうだな、まずは子ど――「もういい!!」」

「――どうやら、勝たなくちゃ行けない理由が増えたみたいだ」

別に、ナナシを放っておいても勝手に死ぬのだが、その間に星見雅に何をされるかたまったもんじゃない。

 

 

この先に続いていくすべての名もなきアポロのクローンたち、そして道をつないだナナシをこれ以上苦しませないために――

 

 

「お前を倒すよ――『偽ゴッドハンドW』」

両手の巨大なオーラが具現化し、星見雅に向かって射出される。先ほどのような荒野であれば横に避けるだけで十分だがあまり広くない、なおかつナナシという護衛対象がいる状態で星見雅の取れる行動は多くない。

 

「こんなもの!!」

「けど、時間稼ぎには十分だ!『偽マジン・ザ・ハンド』」

彼女がとった手段は中央突破。十文字にゴッドハンドを切り裂き、偽ナナシに迫ったが次に迫るはマジンの拳――ナナシの際は振りが間に合わず星見雅の勝利に終わったが今度は間に合い激突した。

 

 

それどころか、マジンの拳は振りぬかれ彼女の踏み込んだ足を地面から離し壁まで吹き飛ばす。

(――ナナシの時はこれで押し切れたのだがな)

壁にまで吹き飛ばされた後、彼女は壁を蹴り加速――直線的な動きに偽ナナシは先ほど同じゴッドハンドを展開し足止めを試みた。

 

 

ならばと、こちらに飛んできたゴッドハンドを足場に使い跳躍。

 

「――嘘だろ」

見えたのは驚く偽ナナシの表情。そのまま上空から刀を振り下ろす。半身で躱されたが次の追撃を二歩、三歩と連続して振るう。

 

「『偽ジ・アース!』」

「せい!」

ナナシとは違いノータイムで繰り出されるジ・アースに対し、彼女がとった行動はあえて刀から手を離し空いたやつの懐に向かっての正拳突きであった。

 

「うごっ」

「終わりだ!!」

刀をすぐ回収し、体制の崩れた偽ナナシに向かって最後の一太刀を放つ。

だが、金属の扉に激突したような感覚を持つ手で感じると同時に手が止まる。

 

「『偽スーパーゴッドハンド』」

偽ナナシはまるで野球のグローブのようにゴッドハンドを超圧縮展開することによって刀を受け止めたのだ。

すぐさま掴まれることを躊躇した星見雅は刀を離し再び体制を整える。だが、その額には冷汗が滲んでいた。

 

 

無理もない、彼女はホロウ内で刀の暴走を抑えた後、気絶し起きたらすぐさま戦闘となった。いくら、強かろうが無敵ではない。

たとえ、妖刀に頼らずとも最強の彼女であろうともそれは例外じゃない。

 

 

そして、苦戦している理由はもう一つあった。もし、目の前にいるナナシの形をした誰かがナナシと同じくらいの戦闘能力であれば星見雅の勝利は揺るがない。

 

お察しの通り、全く同じくらいではない。それどころか、全ての能力が数倍、下手したら数十倍は向上しているのだ。

『偽』とついているというのに全ての必殺技もオリジナル以上に極められており隙が中々見つからない。

 

(使いたくはなかったが――仕方がない)

星見雅は鞘に刀を押し込みながら、精神を統一させる。

 

『私に力を貸せ!!』

信じられないくらい挑戦的に彼女は妖刀に問いかけ始めた。というより、ヤンキーのカツアゲといった方がわかりやすいだろうか。

 

『―――』

だが、妖刀は答えない。

 

『聞け、提案がある。ホロウ災害が猛威を振るう中にあって、お前たちが苦渋の決断を下したことはわかっている。過去の犠牲は、それ以上の犠牲を食い止めるためのもの――だがもはや星見の使命は、そんな血塗られた贈り物を継承するだけでは足りぬ』

『何――?』

妖刀は答えたが、その声は弱弱しい、本当にナナシによって力を封じ込められているのだ。

 

『貴様らの正体は先の事件において理解した。ナナシの方にも同じようなものがいるのだろう。そして、貴様らも理解したはずだどれほど犠牲を重ねようとも“本物”には遠く及ばないことを――』

『―――』

事実、先ほど妖刀は聖剣『ジ・アース』によってなすすべなく封じ込められてしまった。別に彼らの目的は本物の聖剣に勝つことではないのだがそれでも数多の犠牲の上で敗北したのは中々に堪えたはずだ。

 

 

仕方がないと言えば、仕方がない。なぜなら、オリジナルの聖剣の歴史は長く遡れば五万年。一本で少なくとも数億人の人間が犠牲になり、四本を合計すれば兆の域に到達する特級呪物、込められた力は想像絶するものになっていた。

 

『いいか、私と手を組め』

『手を組む?』

妖刀は老人の声で返答した。

 

『ああ。幼き頃から、常々思っていた――私は、今の星見家が求めるような後継者ではない。お爺様ほどの器量もなければ、おば様ほど道理にも明るくない。父上の学識も、母上の聡明さも持ち合わせていない――だが、私には剣術がある――この一点だけにおいて、私は正真正銘の天才だ。もしお前たちが私の命を聞き入れてくれるなら、この手で星見家の運命を書き換えて見せる!』

 

 

『私の刃となれ、悪だけを断つために。かつてお前たちに犠牲を強いた悪ともども、私が打ち取ってくれよう。お前たちに払われる犠牲は、我が母上で終わりだ――これよりは、私の手でお前たちを真の天下無双にしてやる!』

星見雅はそう、妖刀に宣言して見せた。対して、彼らの反応は――

 

『無垢』

冷静な声が一言

 

『理想――』

温厚な声が一言

 

『――貪欲』

果敢な声が一言

 

『そして、傲慢――我らが見てきた中で、かようなまでに身の程を知らぬのは二人目じゃ――だが、面白い――』

『お前たちの答えは――うっ!?』

最後に老人の声が響いたかと思えば、星見雅へ頭痛が襲う。

言い終える前に、ようやく穏やかになったと思われた狐火が突如として、これまでにない激しさで燃え盛る。

 

「うああああ!!ぐはっ!?お前たち――!?」

『証明するがよい――もし本当におぬしが誓いを果たせるのなら、力を与えること、考えてやらぬでもない――まず、目の前にいる災厄に立ち向かって見せよ。若き、星見よ――』

 

 

一方で、その姿を見ていた偽ナナシはなんと終わるまで立っていた。

むしろ、辺り一帯を攻撃する狐火から気絶した六課と邪兎屋の面々を守っていたのだ。

 

「大丈夫、星見さん?」

それどころか結局星見雅のことが心配になり、ギリギリで膝をつかないように踏ん張っていた彼女に手を差し出し立ち上がるのを手伝ってしまっていた。

 

 

「隠しきれていないようだな、人の良さが」

「――悪者は柄じゃないんだ」

偽ナナシはよく知っている。死ぬ前、死ぬに死ねない苦しみを――死が人にとってどれだけの救いになるのかも――。

 

 

「第二ラウンドってこと?――悪いけど、手加減はしないよ」

先ほどまで冷汗を滲ませていた彼女の表情は晴れ、目はさらにまっすぐ据えられている。

 

「必要はない。――私も容赦はするつもりはない!!」

(ギアが上がった!さらに一段階早くなった)

 

「『偽ジ・アース!!』」

狐火のようなものを纏いながら、火花を散らし刀と手刀がぶつかり合う。だが、先ほどのように刀が吹き飛ばされるわけではなく、拮抗していた。

 

「その必殺技はナナシの方が強かったぞ!!」

「こっちは偽り何でね!!」

むしろ、徐々にジ・アースを押し返していたほどだ。先ほどまで、変わらなかった偽ナナシの表情は崩れ、苦悶の表情が浮かび上がっていた。

 

 

このままでは、偽ナナシは刀の圧に押しつぶされるだろう。

 

だが、ここは経験が生きた。

ジ・アースが“使いこなせれば”なんでも切れるのは発動時に手に収束している、青い光の螺旋によるものである。

これが、まるで超音波カッターのように振動することによって膨大な摩擦力を発生することによってぶった切るのだ。

 

 

身近なことで例えると、包丁でねぎを切るときただ上から押しつぶすように切る押し切りよりも引いて切る引き切りの方が簡単に切れると同じ原理。

 

 

つまり、すごい振動しているわけだが現在はオーラが反復横跳びをし続けているように振動している。だが、もしこの振動に指向性を付ければ?

 

 

「なっ――!」

視線が交差する、星見雅の上体が前に引っ張られ逆に振動の矛先を変えた偽ナナシは競り合いから脱出し彼女の背後についていた。

 

 

「『偽怒りの鉄槌!!』」

心臓のエネルギーが左腕に注がれ、マジンが現れる。そのまま、彼女の背に向けてまるで握った拳をハンマーのように振り切った。

 

 

 

完全に無防備な状態、回避も威力の減衰もない。ピクリとも、星見雅はその場から動くことはできなかった。

 

 

「はぁ、はぁ――俺の勝ちだ」

完全に初見殺しで隙をつき、何とか勝利を手繰り寄せたという感じだが、勝ちは勝ち――流石にもう起き上がってこないだろうと止めを刺すためナナシに近寄る。

 

 

 

「―――ごめん、ナナシ。俺がアポロだったら、きっとほかにも方法があったのかもしれない。あいつは俺じゃないし、俺はあいつじゃない――あくまで俺は別人格に過ぎない。悪いな、意識のコピーなんて嘘言って」

手向けの言葉を残し、偽ナナシは手刀を振るう。だが、それは彼の眼前で止まった。

 

『死にたくない』

 

確かに、ナナシがそう言ったように聞こえた。しかし、間違いなく目の前のナナシに意識はない――話せるような状態ではないはずだ。

 

「ナナシ、今しかないんだ。君は放っておいても勝手に死ぬ。けど、結果が違うんだ――もし、このまま死ねば君の魂は漂白され取り込まれる。でも、今俺に殺されれば――万に一つ天文学的な確率ではあるが蘇るチャンスが生まれるかもしれない」

『―――』

当然だが、返事が返ってくるはずもない。無言のまま、ナナシは目に自身の分身を映したまま虚空を見つめるのみだった。

 

 

「何やってんだ俺、聖剣の力もギリギリの状態でもう目覚める見込みもないってのに――もういいか、一思いに終わらせよう」

頭を抱え、自己を疑問視する。もしかしたら、ほんの少しでもナナシが目覚めてくれるなんて希望的観測をしていたのかもしれない。

 

『そ、れ――でも、みんな、と一緒、に生きたい』

「ッ――ナナシ、ナナシ!!」

確かに、今唇が動いていた。目線も微妙に動いていた――間違いなく、いや夢うつつの状態かもしれないが抗ってる。生きたいと願っている。

 

 

(―――)

偽ナナシはムゲン・ザ・ハンドで遠くにまで運んでいたリンをこちらまで移動させる。

 

「――あの、リンさん?聞きたいことがあるんだけど?」

「リンでいいよ。聞きたいこと?いいけど――み、雅さん!!」

こちらに到着したリンは倒れている星見さんに気づき近づく。

 

「大丈夫、命に別状はないよ。まだ、ナナシも殺してない」

「――本当!!やっぱり、根は同じなんだね!――それで、何が聞きたいのかな?」

(根が同じ?――俺をあんな甘ちゃん、覚悟ガンギマリ人間と一緒にしてほしくないんだけど)

思うことはあれど、思考を整理し偽ナナシは口を開いた。

 

「ナナシは、生きたいって言ってたか?」

「え?」

「だから、そのあいつは自分で救われたいって言ってた?」

偽ナナシが聞いたのは人が当たり前に持っていて、ナナシが本来持ちうるはずのないもの。なぜなら、本能的に自身の命を使い捨てる傾向にある奴のクローンだからということ、そして自身がクローンだと知らされてからその行動は顕著になった。

 

 

こないだなんて、火口に自分から飛び込んでいくとは――ダメもとで聖剣の力で保護したから何とか助かったものの普通に死ぬ。

 

「言ってたよ――泣きながら、もっと、みんなと一緒にいたいって。痛くて、怖くて、辛かった――死にたくないって、生きていたいって」

ボロボロと涙を流しながら、郊外の決戦後初めて泣き言を漏らした彼の姿を思い起こしながら。

 

 

「そっか――よかった」

僅かな言葉を漏らし、ナナシに近づき彼の手を掴む。その瞬間、淡い青い光がナナシの体を包む――一目見てリンが感じたのは暖かさと決して害すものではないということだけ。

 

 

数秒後――光が収まると偽ナナシは立ち上がる。

「その、ナナシは大丈夫なの?」

「――大丈夫ではない。けど、少なくとも今すぐ死ぬってことはないよ――聖剣がまともに力を行使できないくらい力を使い果たしてたからそこを補助してあげて――ま、とにかく大丈夫ってこと。後は、点滴なりしてればナナシ次第ではあるけど目覚める可能性はあるよ」

それでも、無いものはないので心臓やほかの臓器を再生できたわけじゃない。それに、寿命は結局変わらない――でも、それがナナシの望みなら答えるべきだ。

 

「本当!!――よかったぁ、よかったよ!!」

急いで、ナナシに駆け寄るリン。確かに、顔色がよくなったことも確認したのか強く彼を抱き寄せていた。

 

 

 

「あ、そうだ――ありがとう。ナナシを助けてくれて」

「――偶々だ。最初は殺そうとしてたわけだし」

「でも、ナナシのことを思ってたわけでしょ?――やっぱり、同じ姿なら中身も似てるんだね!」

一気に元気になり、ハイテンションになったリンは偽ナナシを突きながらいじりだす。正直、彼女は一連の流れから偽ナナシに思うことはあれど悪い感情はない――それは、所々で彼の優しさが垣間見えていたからだろう。

 

「やっぱり、悪役は慣れないんだね――なな、あ、貴方はなんて呼べばいいのかな?」

「あ――そうだった、うーん。そうだな――」

偽ナナシは少し思案した後、こう答えた。

 

 

「『アルターエゴ』」

 

 




戦闘描写難しすぎる!!しかも、前回もゴリゴリに戦闘してたせいで二連続って――!!
というか、これでやっと弱いと思われてそうな聖剣『ジ・アース』の汚名挽回になった気がする。
正直あんまり得意じゃないんで、あの何か変なところが合ったらぜひぜひ感想でくださいな!!

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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