「――起きないね、ニコたち」
「やっぱり、強くやりすぎたかなぁ」
戦闘から数十分経過後、流石と言うべきか既に六課の面々とアンビー、ビリーは目覚め、すぐさまアルターエゴに攻撃を仕掛けようとしていたが、そこはリンが何とか説得してとりあえず矛を収めることになった。
しかし、うっかり強くやりすぎたのかニコと猫又が中々起きない。
「仕方ないわ、このままカリュドーンの子に迎えに来てもらいましょう」
「――そうだね、アンビーたちはそのままニコたちとナナシについてあげた方がいいかもしれない。また、いつ襲撃があるかわからないし」
「そうさせてもらうぜ――今、連絡したらアネゴが来てくれるみてぇだ」
さて、問題はこれだけではない。アルターエゴがやらかしたこと以外にも事件は起こっていた。
というのも、ナナシがホロウに落下した数分後――トラックは何とかギリギリで立て直したものの、再び襲撃を受け結局パールマンを奪われてしまったのだ。
その場は何とか六課と共同前線を強いて何とか突破したものの、俺たちのところに駆けつけてみればぼっこぼこにされたというわけだ。
「星見さん。とりあえずだけど話の脈絡的にリンの逮捕は保留ってことでいいんだよね?」
「ああ、ただお前が何者なのかを話せば――だがな」
目の前にいるアルターエゴは、急に現れナナシを殺そうとしてきた無法者。その上、六課の3人をほぼ不意打ちとはいえ撃退し、完全に所見殺しとはいえ星見雅すら倒して見せた。
(流石に俺のことを何も話さずにってのは無理か、俺もリンが捕まえるのは嫌だし。でも、どこから話すべきかなぁ――)
「――まず、俺のことを話す前にアポロのことについて説明しようと思う」
「アポロとは、誰だ?」
星見さんが首を傾げる。リンは、何か思い当たる部分があるのか『うんうん』とうなずいている。
「リンはもう知ってるよね?ナナシがクローン人間だってこと――そして、アポロはそのオリジナル。そして、俺もそのクローンの一体――アポロ十二号、なんだ」
「なぜ、クローンが生まれることになった?」
「それは、ナナシが言ってたね。確か、そのアポロって人を蘇らせるためなんだよね」
「ああ――結論から言おうと思う。その計画は成功している」
一堂、目を見開いた。男が言ったのはつまり、神の領域――命の創造、死者蘇生ということである。
「実際に、アポロ一号からアポロ十号のクローンたちにはアポロの魂が入れられ蘇ることになった。ただ――」
「ただ――どうした?」
「一号から十号までのクローンは全て君たちが言うところの旧都陥落時に既に全滅しているんだ」
「それで十一体目に作られたのがナナシというわけだな」
だが、話にはおかしな部分がある。これをリンは見逃さなかった。
「待って、ナナシにはアポロの記憶がないのはどうしてなの?」
もちろん、リンは既にナナシから自身の体はアポロの魂の入れ物のために存在していることは聞いている。
だとしても、今の話を聞いてなぜ入れ物からわざわざ長い時間をかけて準備する必要があったのか疑問が残ったのだ。
「アポロの魂に肉体が耐えられないのも一つの理由だ。けど、もう一つある――」
それは、サクラがナナシに対してほかのクローンが死んだ理由が作った時に臓器がぐちゃぐちゃになったと適当に嘘をでっちあげるくらいには悲惨な理由。
「アポロはもう――蘇れないからだ」
目を逸らしながら、アルターエゴは告げた。
「え」
「――アポロの魂は一号から十号まで何回も死によって破壊されつくした。普通の人なら一回でも不可能なことを十回繰り返した結果――もう無理なんだ」
「―――」
周りからは言葉も出なかった。つまりは、ナナシの死には全く意味がない。ただの犬死であるというわけなのだ。
「な、何で――」
リンの言葉が詰まる。きっと怒りが湧きすぎてどうにかなりそうだったのだろう。握られた拳は振りどころがわからず震えるのみだ。
「――聖剣の意志は未だにアポロを生き返らせることができると誤認しているんだ」
「誤認?」
最初から不思議に思っていた。たとえ、アポロがイカレていたとしても十一回という死に耐えることができるのか。
「ともかく、俺がここに現れたのは第三者によってナナシが自然死することなく殺されることによって魂の漂白を防ぐためなんだ」
「漂白だと、それとナナシの死に何の関係がある?」
「詳しい説明は難しいからしないけどざっくり言うと、そのまま死ねば聖剣側がすごい簡単に魂を真っ新にできちゃうんだ。でも、俺が殺せば――漂白はとりあえず防げる。そうすれば、万に一つの確率でもナナシを蘇らせることができるかもしれないからだ」
周囲はすぐに察した、つまり先ほどまでの行動はアポロと同じようにナナシを蘇らせようとしているのだと。
話をしている内に、バイクの音が重い空気流れる現状を震わせた。
「よお!ビリの字、それに色々勢ぞろいしているみたいだな」
現れたのはカリュドーンの子の面々、ビリーが手配してくれたのだ。嫌な予感を感知したアルターエゴは星見雅にそそくさと近づき耳打ちをする。
「クローン人間ってことはあまりバラしたくない。双子ということで誤魔化させてもらうから」
「承知」
到着して、すぐに気絶した。ニコや猫又を積み込み、アンビーとビリーも続いて乗り込む。
「な、ナナシどうした!?――って、ナナシが二人!?」
壁に横たわるナナシと、突っ立ってるアルターエゴを交互に見ながら予想通りの反応をする。
(うん、これが普通なんだよ。なんで、他の奴らはすぐにわかるんだ?)
「双子だ、ちなみにナナシの方が兄」
「なるほど、双子か!!――すまねぇな、弟の腕はオレ様のせいだ。だが、安心してくれ!責任はばっちりとるからよ!」
「せ、責任!?」
先ほどの星見さんとの一件があったせいで“責任”というワードに警戒してしまうものの、多分大丈夫だと突っ込むのを辞めた。その時、シーザーが懐をまさぐり何か箱状のものを取り出す。
「これって――火打石?」
「おう、本当ならサン・フリントを渡してぇとこだっただが生憎もってなくてな。代わりに、こいつをお守り代わりに持っといてくれ」
「――わかった、ありがとう」
シーザーから火打石を受け取りしまう。一体何の役に立つのかなんてわからないが、ともかくないよりマシだろう。
ナナシの方はアキラとリンの要望でビデオ屋に連れて療養させることになった。
加えて、柳さんに関しては目覚めはしたもののアルターエゴによって武器を真っ二つに切られていたのでスペアを取りに一度戻ることになった。
そして、リンたちがナナシを車に運んでいる光景を見ながらある日の出来事を思い出していた。
アルターエゴの意識が目を覚ましたのは、ナナシが生まれたその瞬間だが、正確に繋がったのはあのバレエツインズでのあの日。
サクラから衝撃的な事実を伝えられたあの後、聖剣の内部を地道に調べ続けたが、あったのは――
『―――』
俺のように物を話せるような状態ではなく。既に、原形を留めていない状態でゴマ粒のようになってしまったアポロの魂だった。
『これが、アポロ?』
魂に触れた瞬間、流れ込んできたのは彼が辿った十一回の死。
一回目、拡大し続ける異空間を止めるために『ゴッドキャッチG5』を使用、四肢消滅、頭部全損にて死亡。
二回目、旧都陥落時、緊急時のため不十分な状態でエリシオンの手によって復活。しかし、孤児院へ何者からか強襲され戦闘になる。その後、数十分粘るもクローンの限界が訪れ、自爆特攻を敢行、死亡。
三回目、エリシオンの手によってジ・アースは回収されたため二回目と同じタイミングで何とか復活。既に、まともに聖剣を使える状態ではないと考え自爆特攻を敢行、死亡。
四回目から十回目、とりあえず自爆特攻したため省略。
十一回目、既に魂はほとんど擦り切れていたためまともに思考、動くことすら不可能になる。しかし、何か体が勝手に動いたためへ―リオス研究所にて自爆特攻後、死亡。
そして、当時のへ―リオス研究所上級研究主任によって灰髪の兄と青髪の妹の荷物に聖剣ジ・アースを潜り込ませ、旧都を脱出した。
これが、アポロの顛末。
(やっぱり、こいつ頭のネジが何個か飛んでるだろ)
もちろん、このゴマ粒のようになったアポロの魂をもとにサクラを説得した。しかし――
『――つまりだ、サクラ。アポロを蘇らせることなんて、出来ない!諦めて、ナナシを生存する方法を模索するほ――『黙って!!』』
『お、お兄ちゃんがもう生き返られない?――嘘、嘘、嘘!!そんなわけないじゃない!私のお兄ちゃんよ!死ぬわけ――いや、死んだけどでも――そうよ、聖剣!聖剣の力で――』
『無理だ、そんなことわかってるだろ。もしできたとしてもそれは、アポロじゃない赤の他人だ』
泣きはらした目をしたサクラに向かって、アルターエゴは淡々と告げる。なぜなら、このままいけば、ナナシはただの犬死になるからだ――もしかしたら、万が一でもジ・アースを牛耳っているサクラの力を借りればナナシは死なない可能性がある。
『うるさい――』
『え?』
唐突な一言。明らかに怒気、殺気などなどが入り混じった混沌とした雰囲気を纏いながらこちらに視線を向けていた。
『あんたに何がわかるのよ!スペアの分際で――大体、お兄ちゃんが二重人格になるくらい精神が崩壊したのに助けなかったあんたが!!』
『ッ、それは』
『黙って!!――黙りなさい。私が諦めるわけにはいかないのよ!お兄ちゃんを不幸にしたのは私。苦しめ続けたのも、私。縛り続けたのも、私!!なのに、何も――』
『だったら、もう休ませるべきじゃないのか?もう、アポロは――』
その瞬間、アルターエゴとサクラの回線は一時切れた。もちろん、その後無理やり復活させたが、その間サクラはひたすらにナナシにきつく当たっていたのだ。
そして、これにてアルターエゴの身の上話はある程度話した。ということで、手を差し出す。
「星見さん、これでともかく共闘ってことでいい?」
「ああ、十分だ。頼むぞ、アルターエゴ」
星見さんはその手を取り、共闘は成立することとなった。
ちなみにさらっとですが、猫の落とし物のプロローグでリンが『最初から仲間だったのかなってくらい落ち着くんだよね』という伏線回収でもありました。
思い返せば、結構経ちましたね。そして、ついにナナシは寝たきりか――
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け