ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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動け、主人公!!


第69話・迫る魔の手

 

 

数時間後、ヤヌス区六分街、ビデオ屋『Random play』店内――

 

「ナナシ――くっ、どうしてこんなことに――」

うんともすんとも言わない点滴を付けられたナナシの体を前に呆然と呟くアキラ。しかし、相手は答えることはなく安らかな表情のまま眠りについている。

 

 

「ごめん、お兄ちゃん。私たちを庇ったからナナシは――」

「それは違う、リンのせいじゃない。ナナシの判断は間違ってなかった――悪いのは、襲ってきたやつらだけさ。それよりも、リンの方もしばらく体を休めるんだ。ホロウには入らなかったとはいえ、郊外からの長距離移動は、君の体にとって酷なはずだ」

『賛成。ホロウ内をガイドする上で、マスターの健康は必須です。十分な休息をとるか、強烈な刺激によりアドレナリンを分泌させることを推奨します』

だが、二人の助言にリンは首を横に振る。

 

「安心して、“私”は何ともないから。それよりも、襲ってきた正体不明の奴らを見つけて絶対に報いを受けさせるんだから――」

「ああ、同感だ。ついでに、パールマンを取り戻す」

互いに、握る拳に力を溜めながらパールマン捜索の準備をしている時だった。

 

 

『マスター、交差分析の結果、バレエツインズのホロウエリア内にターゲット『パールマン』と思わしき生体信号を検出』

「バレエツインズか――!確かに、飛行船ハイジャックの時――アフロディ、ナナシッ!」

「お兄ちゃん、今は何でもナナシに繋げるのはやめよう?」

バレエツインズでの一戦、あの時も結局ほとんど逃げられてしまったがあいつらの目的はヴィジョンの裁判。つまり、パールマン関連の事件だった。

 

 

だが、これにはとある違和感が残る。

「でも、どうしてわざわざパールマンを生かしてるんだろ?ちょっと怖い話になるけどさ――黒幕の目的が、ヴィジョンのスキャンダルを闇に葬ることなら――パールマンがいない方がよっぽど都合がいいよね?」

死人に口なしというわけで、虎の尾を踏むどころか掴んでしまっているパールマンを生かしておくのは意味が分からない。

 

『警告!――%&#ビデオ屋に接近する反応――アリ――#¥@¥%――』

そんな、疑問を口に出したその瞬間、フェアリーに異常が現れ始めた。

 

「フェアリー、今更下手な芝居を打たなくていい。アドレナリンを分泌するという話なら、もうリンには不要だ」

『けけけ―警―告――#¥%・・・@!!』

その瞬間、バチバチッ――!工房のTVモニターがにわかに火花を散らし、室内の照明も不規則な明滅を始めた。

 

「これは――!システムがまた攻撃されているのか!?新エリー都に、フェアリーのガードを敗れる奴なんていたのか――!」

リンが急いで、ネットワークの異常を確認する。

 

「なんか変だよ!システムのネットワークじゃなくて、うちへの送電網と――H.D.Dシステム自体が標的になってるみたい」

「ッ、電気が止められたわけじゃないならいいけど――」

次の瞬間、防犯カメラの映像をチェックしていた。アキラが、表情を歪めた。

 

「リン!店の外に複数人いる!このいで立ちは――!」

CLOSEと書かれていた店の外の看板越しに声がかかる。

『ごめんください!市政選挙の期間中、六分街のパトロールを担当する治安巡査の者です!すみませんが、ドアを開けていただけませんか?』

 

圧倒的に悪いタイミング、どう考えても仕組まれたものとしか思えない。しかし、もしこの場で何かあればナナシが危ないかもしれない。

だが、幸いにもナナシは1階の工房内で簡易的なベッドを作って匿っている。

「リン、僕が対応しよう。フェアリーとナナシの方は任せるから、なるべく静かにしていてくれ!」

意を決して工房のドアを静かに閉めた。ほどなくして、治安官に挨拶する声、箱を開けてガサゴソする音が聞こえたかと思うと、頭上でも足音がした。そして――

 

 

「二階は異常なし」

武装した治安官の一人が階段を降りながら報告する。

「――おっと、気を付けて――!調べるのは構いませんが、お店の大事なコレクションなんですから。丁寧に扱ってください!」

「すみません、こちらの部屋は?」

治安官が指さしたのはまさに工房の扉。

 

「ただの物置です。私物や古いビデオ、しばらく使わない機材なんかを置いていて――」

「念のため開けてみても?」

「こんなところまで見せる必要が?見てもらった通り、娯楽目的でビデオを貸し出しているだけの店なんです!」

必死に工房に入らせまいと抵抗するアキラ。しかし、相手にとってはどう考えても怪しいと不信感を募らせてしまう悪手だった。

 

「そうは言っても、選挙期間中のありふれた決まりでして。すみませんがご理解ください」

不信を募らせた目でアキラの一挙手一投足も見逃さないつもりはないようでじりじりと詰め寄ってくる。

 

 

「開けないのなら」

「っ」

その瞬間、治安官はアキラの視線が少し動いたのを見逃さなかった。

 

「こちらで開けますよ」

他の治安官に合図を送り、アキラの横を通りドアノブに手をかける。背中に携えた警棒にもう片方の手をかけ、今にも突入せんばかりの構えに入る。

 

 

一方、工房内では扉が少し開くと同時に向こうの光が少しこちらに入る。

普段なら、こんな時だったらナナシがいたら何とかできるかもしれないが当の本人は目覚めぬまま――その時だった。

 

 

「待たれよ」

短く、どことなく聞いたことのあるフレーズと同時にビデオ屋の扉は開かれ二人の治安官が増援にやってくる。

 

 

「新たな指令です。街頭パトロールに人手が要ります」

無論、それは今にも工房内に入ろうとしていた治安官たちの増援ではない。俺たちへの増援だった。

「六分街の臨検は特捜班の方で引き継ぎます。皆さん、ご苦労様でした」

現れた朱鳶さんと青衣さんと治安官たちは敬礼を交わしその場を去っていく。そして、その隙にイアスがこっそり開けられたドアを閉めた。

 

 

 

「はぁ――」

無事に危機を脱せたと気力を使い切ったリンは椅子に勢いよく座り。震える手のまま水を一口含んだ後、二人に会うために工房を後にした。

 

「すでに申請は承認された。一帯の保安検査は我らの管轄となったゆえ、ひとまず安心するがよい」

「ありがとうございます、先輩。さて、店長さんの番ですよ。状況を説明してください」

「ええと、その前に――どうして朱鳶さんと青衣がうちに来たのか、聞いてもいいかい?」

そうなのだ、いくら二人も治安官と言えど登場タイミングがあまりにも良すぎる。だが、リンもアキラ、ましてやナナシが二人に救難信号を送ることなどできない。

 

 

「店長殿はご存じであろうが――貴店のPCアシスタント、フェアリー殿と我らは昵懇の仲。その彼女が何やら送ってきたのだ。曰く、01101000 01100101 01101100 01110000」

「二進数か?なんと言っているんだ?」

「旧文明の標準的なバイナリーコードで――翻訳すると『HELP』となります」

「すわナナシ達が一大事と察した朱鳶は、我を引っ込み、おっとり刀で駆けつけたのだ」

つまりは、間一髪。フェアリーが二人に救難信号を届けて、急いで助けに来てくれたというわけだ――そこそこ距離があるし相当飛ばして来てくれたと考えるべきだ。

 

「青衣先輩、ありがと!うちのフェアリーと、これからも仲良くしてあげてね!」

「お礼を言うなら、状況を説明してからにしてください。私は事実関係に基づき、厳正かつ公正に対処します――店長さんで会っても例外ではありません」

自分たちに初めて向けられた冷たい朱鳶の声に思わずたじろぐリン。だが、その中でも状況の説明を始めようとしたその時だった。

 

『――説明しよう』

工房のスピーカーから、突如として聞き覚えのある凛とした声が響いた。

 

「えっ?待って、この声は――?」

目を見開き、ありえないという表情をする朱鳶。

 

「久しいな、朱鳶。私だ」

その後、リモート接続した星見雅は、ヴィジョン・コーポレーション事件の内幕と郊外で発生した出来事についてかいつまんで説明した。

もちろん、ナナシについての出来事も話そうとしたが近くにいたアルターエゴが必死に抑え込むことによってその件が朱鳶たちに伝わることはなかった。

 

「成程――ヴィジョンの件を裏から動かす手、真なる脅威は雲隠れ――パールマンを巡る郊外の奮闘虚しく、その上、ナナシまで――」

「それは、私―むっ――」

「して、店長どの?ぬしは表向き、日々法を遵守する市民を装いつつ――その実は腕っこきのベテランプロキシである、と?」

「ほ、本当にごめんなさい――でも、誓って言うけど罪のない人を傷つけるようなことはしてないの!法を守ってない人たちの中では、一番守ってる方というか――」

弁明をするリン、眠るナナシを交互に見ながら朱鳶さんは沈黙を貫いていた。

そして、ただ冷静に財布を取り出し1000ディニー数えて青衣に手渡した。

 

「朱鳶さん、それは――?」

「うむ――実のところ、我はうっすら店長殿の正体を悟っておった。故にこちらへ向かう途中、朱鳶にそのことを打ち明けたのであるが――」

「――私には信じられませんでした。店長さんが、ナナシくんが私たちを騙しているなんて――だから賭けをしたんです」

 

 

「残念ながら――私の負け、だったみたいですが」

先ほどまでの鉄仮面を崩しながら、がっかりとした表情でそう言い放った。

 

「ごめんね朱鳶さん!わ、私たち、本当はそんなつもりじゃなくて――!」

「本題に戻りましょう。今は市政選挙の期間中で、あなたたちは新エリー都ヤヌス区の時期総監となるブリンガー長官に対して、重大犯罪の告発を行うと主張しています」

だが、問題がある。それは証人も、証拠も、何一つとしてこの場にはない。こんな状況で朱鳶さんに信じてくれというのは無理がある。

 

 

しかし、今回の場合はとある例外が存在する。

「H.A.N.D.に所属する対ホロウ六課の責任者、かつ当代における虚狩りの一人である星見雅課長が、貴方たちに責任を持つと言っています。――私は愚かで騙されやすい女かもしれませんが、雅の経験と能力を信じています」

「つ、つまり――?」

「今日いっぱい上には報告しません。あなたたちには、証拠を集めるのに十分な時間があります。その間に、私も自分のルートで調査を進めるつもりです」

「ありがとう、朱鳶さん。まだ、私たちを信じてくれて」

 

 

「――お礼を言うのは早すぎます。調査の結果、あなたたちの言葉がまたしても嘘だった場合――言いましたね。私は例外なく対処しますよ――」

朱鳶さんは青衣にこの場を任せ、ビデオ屋から出ようとしたその時、振り返りリンに一つ質問をした。

 

 

「以前、ナナシくんが私たちの捜査を協力してもらった時がありました。それは、店長さんの支持ですか?」

「――うん、けど!二人を守るためにナナシが戦ったのは嘘じゃないから!!私が言っても信じられないかもしれないけど」

サクリファイスの残骸を巡った強盗団との戦いの際、ナナシもともに動き協力していた。もしかしたら、アレもパエトーンの狙いだったのかもしれないと考えたのだ。

 

 

『朱鳶。確かに、以前ナナシは騙したかもしれない。だが、これは知ってほしいナナシがこれほどの大けがを負ったのは私を守るためだ。――ナナシを信じてはくれないか?』

「雅――わかってるわよ。最初にあった時から、彼は店長さんを守るために身を挺していたんだもの」

今度こそ朱鳶さんはその場を去っていった。

 

 




そういえば、ナナシは出会ったときにリンを庇ってましたね。さて、しばらくナナシが動かないことが確定ですがどうなってしまうのか!?

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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