少し後、バレエツインズのホロウエリア内にて――
「――そっちは、大丈夫だった?朱鳶さんが来てたみたいだけど」
その場には星見雅、悠真、蒼角、そしてアルターエゴの四人が集まっていた。痛いことに柳さんの武器は破壊されてしまったため現在はいない。
「朱鳶さんなら、私たちの情報の裏を取るために治安局へ向かったよ。ビデオ屋は青衣が守ってくれることになったから、一人でね」
「けれど――僕たちは、朱鳶さんにとって直属の上司であり恩人でもある人を告発すると言った。あんな反応になるのも、無理ないことだ」
「うーん?僕はプロキシのことも、その朱鳶さんって人のことも良く知らないけど――『あんな反応』のワケが、上司の告発じゃないってことくらいはわかるよ」
そう、こぼすアキラに悠真は突っ込みを入れた。それは、少しばかりのフォローだったのかもしれない。
「私は朱鳶という人間のことをよく知っている。彼女は決して、正義に反するようなことはしないだろう。それに、朱鳶をなだめるのは難しくない。手を握り、まっすぐ目を見て、思うことを伝えればいい。試してみるんだな。なお、距離を詰めるほど効果が高まる」
「課長ったら――どこでそんな悪いこと覚えたんです?」
まるで、すらすらと攻略本でも見ながら説明する星見さんに悠真は突っ込みを入れた。付き合いが長いんだろうが、それにしては妙なことを覚えている。
「朱鳶の御母堂が教えてくれた。私も試したが、有用だったぞ」
「使ったのかよ」
「ああ、朱鳶からの信頼を勝ち得ているナナシがやればさらに効果を増すだろうな」
そういえば、ナナシの記憶を探ってた時にそんなことが一度あったような。その時は、とにかく投げられなくて安堵していただけだった気がするが。
「さて、みんな。H.D.Dシステムにはちょっと色々あったけど、フェアリーがパールマンのバイタル信号を見つけたよ!悪いおじさんを奪還しに行こ!」
その号令と同時に4人は動き始めた。
「――ねぇ、アルターエゴって言ったかな?いいの、僕に背を預けちゃって。後ろから打っちゃうかもとか思わないの?」
唐突に、道中の雑魚どもを成敗しながら悠真がアルターエゴに話しかけてきた。
「思わない」
「即答か。どうしてそう思うだい?君はさっき僕たちを倒したわけで、それで恨まれてないって思ってるのかな?」
「違う、別に恨みが消えたとは思ってない。ただ、あなたたちの課長が共闘するって言ってるのにそれに反するような奴には見えない」
「それは、君の主観だろ?――それだけで、僕を100%信じられるのかい?」
「まあね、でも――俺には君は優しい人にしか見えないし、どう考えてもやるとは思えないんだよねぇ」
なんの根拠もなくアルターエゴは断言して見せた。思わず、その話を盗み聞きしていたリンとアキラの表情をしかめさせるくらいにはナナシにそっくりの返答。
いや、本当にナナシと根っこが同じなんだろう。一挙手一投足、戦いから見てもナナシの面影を感じるのだ。
「成程ね、せいぜい“後ろ”には気を付けておくんだね」
「ああ、背中は任せた」
言葉を交わしながら、進んでいく。
道中、俺たちを襲ってきたやつらと同じ装備を付けた輩が現れたものの。
「悪・直・斬!」
と、他が戦闘態勢に入る前に星見さんにぶった切られてしまうので全く出番のないまま奥に進み続けていた。
「もう、あの人一人だけでいいんじゃないかな?」
「普段よりもだいぶ張り切ってるみたいだね。そのおかげで僕は楽だけど――」
(うわぁ、もう二度と戦いたくねぇ――絶対勝てないよ、これ)
初見殺しが何とか通じてよかったなぁ、と胸を撫でおろすアルターエゴをよそに破竹の勢いで進む星見雅。
だが、その道中――
「よし、パールマンが拘束されている場所を見つけた。どうやらこの近くのようだ!」
制御室のような場所にたどり着き、パールマンがとらえられている場所まで行く権限を取得しようとしたその瞬間。
モニターに3,2,1――と何やらカウントダウンのような表示が出る。
「一体――?」
なんだと言おうとした瞬間。リンによって恐ろしい事実が語られた。
「これって、権限のリクエストが爆弾に紐づいてたんだよ!!逃げて、この部屋は爆発するよ!!」
数秒後、全員が急いでその部屋を後にしたその瞬間、ドガァァン!と爆弾が爆発した。
「――やっばいな」
「人質はどうなってもいいようだな」
考えてみれば、パールマンが死んだほうがいいに決まっている。
(でも、なんですぐ殺さないんだ?)
しかし、疑問を解消する前にロビーのようなところにたどり着き突っ立っているパールマンを発見した。
「この辺りは吹き飛ぶぞ!とっととこのとんでもない場所からでなければ!」
発見するや否や物騒なことを言い出すパールマン。
「とりあえず、さっさと出口に向かおう」
そして、再び星見雅を先頭にリンの指示で出口を目指して行った。
だが、一向にフェアリーが復活しない。よほどダメージが大きかったのだろうか。
道中にいたでかいロボットをぶっ飛ばした後、少し離れたところにある裂け目が光を放っている。徐々に迫り来る爆発音。その時、H.D.Dの耳障りの警報音が再び鳴った――
『H.D.Dの音声出力に失敗。予備出力デバイスを起動』
『警告!前方のルートにはリスクがあります!』
「うん、確かに出口は前方だね――でも、測定結果がちょっと気になってて。普通ならいくつからある出口が一つしかないから――」
「待って、もしかしておびき寄せられた?」
「わわわ、私はまだ死にたくないぃぃぃぃいいい!!」
叫び声をあげるパールマン。だが、ここら一帯が吹き飛ぶまでの時間はもうない。仕方ないとパールマンを抱えながら裂け目へと逃げ込んだ。
裂け目の光が瞬時に五感を遮り、ホロウ特有の奇妙で重々しく、不吉な雰囲気が突然消えた。次の瞬間――
「これはこれは――本当に予想外の邂逅だ」
「え?」
裂け目から出た先、そこに待ち構えていた治安官たち、その中でも先頭に突っ立ている男の名前は――。
「――ブリンガー」
星見さんが短く、そう呟いた。
「パールマン!ヴィジョン・コーポレーション事件の黒幕め、司法府の飛行船を乗っ取り、郊外に逃げたかと思えば――選挙のデリケートな時期に乗じて、この街に戻ってくるとはな。よほど治安局につかまりたいと見える!それと――」
言葉が詰まる、おそらく星見雅に対して言葉を続けたかったのだろうが視線はアルターエゴの方向に注がれていた。
「――誰だ貴様は、まさか新しいH.A.N.D.人員でもあるまい」
「彼は私が直々に要請した者だ、何か問題でもあるのか?」
鋭い眼光がブリンガーを突き刺す。その力に思わずたじろいでいたがすぐさま体制を立て直し続ける。
「まぁいい――対ホロウ六課の執行官たちが、重大な被疑者であるパールマンと共に現れたということは、やつのホロウへの出入りを幇助していた可能性もあるな。ヤヌス区治安局副総監の名において――治安総局でじっくりと話を聞かせてもらえるかね?」
(まずい、こいつにパールマンの身柄を渡すなんてしたら――いや、おかしい。こいつらからすれば、殺すチャンスなんていくらでもあった。だというのに、どうしてわざわざ俺たちをおびき寄せるようなことを――)
何か、見落としている可能性がある。相手の狙い――おそらくは対ホロウ六課。
その中でも、相手が欲しがるものという前提で思考を加速させる。
「星見雅課長。君は重要事件の犯人パールマンと不正な取引をしていた疑いがある。君の部下と共に我々とご同行願おうか」
言葉と同時に彼の部下が一斉にこちらへ銃口を向ける。
(――そうか、星見雅の刀だ!あれは、明らかに聖剣の類。それも、かなり世代を経て強力な力を持ったものだ)
それなら、納得できる。もしかしたら、ナナシが刺されたタイミングに暴走が起こったのも偶然じゃないのかもしれない。
俺はそそくさと星見さんに近づき耳元で囁く。目線が下に動いたのを確認し、構える。
「――助けに来てくれるって信じてるよ『偽ジェットストリーム!』」
その時、ブリンガーたちの視点からは一瞬アルターエゴがぶれただけにしか見えない。
だが、気づけばその場からはパールマンどころか、星見雅、悠真、蒼角、イアスの五人は忽然と姿を消していた。
「な、何をした!?」
「うん?あぁ、いやぁ――俺って日雇いで雇われたんだけどさ、給料30%カットって言われたから怒ってホロウに投げちゃった!」
もちろん、嘘である。ジェットストリームでパールマンはうざかったので適当にホロウに投げておいたが他の四人は死角に隠しただけである。
「いやぁ、俺ってちょっと怒りっぽくてさぁ――あ、もしかしたらついあんたのアホ面に蹴り入れちゃうかも――で、どうする?」
相手を嘲笑うかのような演技をするアルターエゴを前に憤慨するブリンガ―それを、隣にいた女がなだめる。
「もうすぐ演説よ。こじれる前に、適当なところで切り上げましょ。――――」
最後の方に何を言っていたのかは聞こえなかった。しかし、明らかに先ほどまで憤慨していたブリンガーの表情が和らぐ。
(あの女だけは、俺のジェットストリームを知っていたみたいだった。どういうことだ?)
「ふっ――いいだろう。お望みどおりにしてやる!ヤヌス区次期総監の名において――対ホロウ六課への暴行容疑により、逮捕する!!」
こうして、アルターエゴに手錠はつけられそのまま連行されることになった。
これやばい!!もし、アルターエゴから力が奪われたら――
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け