ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第72話・鎧装

 

 

その頃、デッドエンドホロウに隣接したブリンガーの演説会場に向かう護送車の中――

 

「――久しぶり、旧都陥落以来じゃない。アポロ」

「―――」

ブリンガーの傍で何か耳打ちをしていた女――確か、ヴィジョンの事件にもいた、名前は確かサラと言っていたはずだ。

そして、彼女の挨拶に対して、アルターエゴは沈黙で答えた。

 

 

「忘れたとは言わせないわよ。あなたに私たちの計画が何度ぶち壊されたか――」

「忘れた」

「殴っていいかしら?――まあ、いいわ。もう、わかってるんでしょこの護送車が総局に向かわないことくらい」

女は足を組みなおし、アルターエゴに問いかける。

(なるほど、旧都陥落の記憶はほとんど共有されていないからこいつの記憶がなかったのか――それにしても、いやな雰囲気だな)

 

「まあ、あんなに死んで蘇ってたら記憶の不備が出るのも仕方がないわね。――でも、一つ教えてあげる。私はあなたのことがものすごく嫌いなの」

「そうか、奇遇だな」

「ええ、私たち気が合うのかもね。――今でも、夢に見るわ。あの日、あなたがいなければカカリアから聖剣ゼウスを奪えたのに」

「カカリアだと――」

初めて、アルターエゴが反応らしい反応をした。それが、女にとって満足だったのか怪しげな笑みを見せた。

 

「そうだったわ――それは、以前の名よね。こういった方がいいかしら?あなたが与えた名前、エリシオンって」

「―――」

立ち上がり、アルターエゴに近づく女。

「だんまり?そんな態度取っていいのかしら手錠が繋がれた状態――」

その瞬間、アルターエゴが軽く力を入れると手錠はまるで綿菓子で作られていたのかと思うほど簡単に砕け散った。

 

「――やっぱり、核でも持ってくるべきだったかしら」

「今すぐ、お前の顔面に足跡を付けてもいいんだが――素直に何をする気か教えてくれるか?」

「そうね、この距離ならあなたの一撃を私が避ける方法はないわね――ふぅ」

難しいと判断したのか、再び彼女は背もたれに背を預けた。それと同時に運転手に何やらハンドサインで合図を行う。

 

 

「残念だったな、星見雅じゃなくて」

「あら、私はあなたでも大歓迎よ」

「――そういうことじゃない、お前らの狙いは彼女の刀だろう」

そう本来なら、がっかりした顔の一つでも拝んでやろうと思っていたが彼女の反応はまた違うものだった。

 

「ふふっ――はははっ!!」

「何がおかしい?」

何と、腹を抱えて笑い出したのだ。

 

 

「そう睨まないで頂戴――いいこと教えてあげるわ。私たちの狙いはあなただけよ」

「何?」

「既に、聖剣ジ・アース以外の聖剣は私たちの手に堕ちてるもの――あとはわかるわね?」

「―――」

じっと睨みつける。脈拍にも、目線にもその他諸々にも異常は見受けられない。

(本当なのか?――いや、アフロディの負傷。グランの件――ありえない話じゃないか。それに、辺り周辺の車の走行音が消えてるどうやら完全に人払いは済んでいるみたいだな)

 

「だから、もらうわね。あなたの、聖剣を――」

「なんだ、これはお前の霊柩車だったのか」

「違うわ、あなた用の棺桶よ!!」

彼女が吠えた瞬間、つけていた赤い指輪が光り出す。

(あれは――こいつもか)

 

「『ファイアトルネード!!』」

車の急停車と同時に後部が開かれ戦闘が始まる。それと同時に、彼女の指先から放たれた炎の渦がアルターエゴへと襲い掛かる。

 

しかし、アルターエゴはそんなことは意に介さずまるで、ハエを落とすように弾き落とした。

「少し、火葬には早いんじゃないか?」

「怪物ね、やってられないわ。『ドラゴンクラッシュ』」

今度は青い指輪が光、同時に指先から青い竜が現れ、アルターエゴに襲い掛かる。

 

「邪魔」

前に思いっきり跳躍したアルターエゴはその勢いのまま竜の頭をぶん殴り破壊する。

そのままの勢いで、女の眼前にまで迫る――そして、拳を振るおうとしたその瞬間――アルターエゴの目に映ったのは女のほくそ笑む顔だった。

 

 

バンッと銃声が遠くから響く。それは、容赦なくアルターエゴの脳天に向かって放たれたものである。

「それが?」

「うっ――噓でしょ」

弾丸は命中した。それは間違いない、しかし女の想定外はスナイパーライフルから離れたその弾丸がアルターエゴの肉体を貫通するほどの火力ではなかったということだ。

つまり、結果的にアルターエゴの拳を妨害できなかったことを意味する。

 

「―――ッ」

翻訳できない声を上げながら女の頬に拳が突き刺さり途中に停車されていた車に激突する。

(腕利きのスナイパーで助かった)

 

最初から、どこかからか狙われているのはわかっていた。微量だが殺気を感じ取っていたからだ――もし相手が腕利きのスナイパーかつ、女が囮としている場合狙うべきは頭か心臓のみ。

 

心臓が狙いなら、スナイパーが着弾した後でも防御は間に合う。だが、頭はそうはいかない。当たれば戦闘続行不能のダメージを負いかねないからだ。

だから、自身の体内にある聖剣の複製隊の力を頭の防御に“全力集中”させることによって防いだのだ。

 

「ッ――やっぱり、怪物ね。少しくらい、ダメージを負うべきだと思わないかしら?」

「思わない。――それとも、この程度で力を奪うとか言ってたのか?」

妙だ、切り札の一つであったであろう自身を囮にしたライフル狙撃も通じなかったというのに余裕な笑みは崩れない。

 

「そんなわけないじゃない。ちゃんと、あなたのために準備して――」

言葉は途切れる。なぜなら、話している瞬間にアルターエゴのキックが彼女の顔面に炸裂したからだ。

 

「『偽ジェットストリーム!』生憎だけど、俺は興味ない――ッ」

だが、蹴りは激突の瞬間止められ足の影からは女の余裕の笑みがちらついていた。

「その必殺技の弱点は、何度も見ていると慣れること――私がその蹴りを何度食らったか覚えてるかしら?」

「生憎、全く覚えてないね!」

アルターエゴはそのまま腹筋に力を入れ、片足を軸にまるでガラケーのように体を折りたたみながら拳を振るった。

 

「危ないわね――それじゃあ、私も本気でやるわ」

「―――」

拳を振るったときに掴まれた足は解放されたものの、代わりに女は懐から何やらベルトのバックルのようなものを取り出した。

彼女が、それを腰にかざすとベルトが出現し装着される。

 

「なんだそれ?」

「あなたが使っている聖剣たちを過去のものにする新兵器。科学の進歩というのは素晴らしいわね」

「――碌なもんじゃないことはわかった」

人工聖剣の研究がかなり進んでいたことはわかっていたが、ヘンテコなドライバーを作るほどだったとは――まあ、アレが一体どう使われるのかは未知数だが。

 

「まだ試作品だけど――古い骨董品を使うあなたくらいなら倒せるはずよ」

「―――」

「また、だんまり?なら、見せてあげるわこのドライバーの力を!」

ドライバーの上部分が開き、彼女がそこに緑のひときわ目立った指輪を装填する。

 

「『鎧装(アームド)』」

彼女がそう呟くと同時に緑の光が辺りを包む。思わず、目を覆わざるおえない輝きに何が起こるのかと戦々恐々しながらも光は晴れた。

 

 

その先にいたのは――

「―――」

(ダサいなぁ)

まるで戦国武将の足軽のような装備を付けた女、しかしなぜかカラーリングが緑。緑なのだ、一応訂正しておこう、着るべき人が着ればダサくない。むしろかっこいいはずなのだ。

 

しかし、彼女が元からつけている今ではインナーとなってしまっている赤いドレスと合わせると壊滅的なダサさを誇る。

 

(ダサい、絶対ダサい。ていうか、一瞬ブロッコリーに見えてからブロッコリーにしか見えなくなってきた)

 

「――何か言いなさいよ」

「その、流石にダサいなーって。せめてその緑の兜ぐらい外せないの?――ていうか、試作品って言ってもカラーリングくらい変えればよかったのに。なんでそれにしちゃったのやら」

「――試作品だからよ」

「はいはい、そうですか――でも、本気ってのは本当みたいだね。何それ?」

一見、お笑いのような出で立ちからは想像できないほど纏う気は圧倒的に増している。

 

 

鎧装(アームド)よ、文字通り指輪ごとに違う力を身にまとうことができるの」

「――そう、ならこっちも本気で行かせてもらうよ」

首と指を鳴らしながら、ゆっくりと加速し拳を引く。

 

「ふふっ、『精鋭兵ポーン』の力見せてあげるわ!!『マシンガンビート!』」

「『偽ジ・アース!』」

手刀としてではなく拳を強く握りこむ。彼の両手には青い光が螺旋を描きながら収束していく。宵闇の中、冷たい輝きを放ちながら静かに渦を巻いていた。

 

互いの拳が何度も、何度もぶつかり合う。その接地時間はわずか数コンマ程度であるが触れ合うたびに青い螺旋が彼女の鎧を破壊していた。

すなわち、全く意味をなしていないのだ。もし接地時間がわずかに多ければとっくに破壊されている。

 

 

「――ッ、やっぱり格落ちなのは否めないわね」

限界が来たのか、数歩後方に身を寄せる。近距離を挑むのは分が悪いと感じたのか今度は護送車のトランクからショットガンを取り出してきた。

 

(ショットガン?それも、ダブルトリガー式、銃身は二つか。同時に飛んでくるかもなぁ――だが、妙だ。この状況でショットガンはナンセンスと言わざるをえない、あれは狩猟などに向いているものなんだから。単純な殺傷力ならもっといいものがあるだろうに)

考察を巡らせながら、敵の行動を予測しようとするアルターエゴ。

 

「あら、緊張しているのかしら?」

「どうかな」

正直、色々やってすべて破られているというのにまだ余裕の笑みを崩さない相手が不気味で仕方ないのだ、一応スナイパーの方は気を張っているから音が来る前によけられるだろうけど、相手が二度同じ策を使ってくるとは思えない。

 

 

(もしかしたら、今この緊張状態が相手の狙いか?時間稼ぎが狙い?――いや、もういいか。ごちゃごちゃ考えるのは後にしよう)

「『偽ゴッドハンド』」

巨大な手の盾が二人の間を遮る。これによって、ただの銃弾ではこれを貫通することはできない。

 

 

「終わらせる気なの?連れないわね」

「ああ、あんたの顔を見るのも飽きて来たんだ」

ゴッドハンドを盾に突撃するアルターエゴ、相手は動揺することなくショットガンをこちらに構える。

 

「ただの弾丸なら突破できないわね」

パンッ――向こう側から、火花が散る。二つある引き金の片方を引いたのだ――放たれる弾丸、その軌跡を見た時悟った『必殺技』だと。

 

 

「『グレネードショット!!』」

「ッ」

着弾と同時に爆発が起こり、偽ゴッドハンドが粉砕される。煙で視界が覆われたその瞬間。パンッ――ともう片方の引き金を引かれ、そこからも必殺技が放たれる。

 

「決着よ『ガンショット!』」

本来ならば、ライフリングを施されていないショットガンではありえないほど弾丸を回転させながらアルターエゴの胸へ接近する。

だが、未だにアルターエゴは防御の態勢を取らない。否、取れないのだ。

 

 

先ほどのグレネードショットによって偽ゴッドハンドを破壊され右手は完全に後ろに向き、左手もその衝撃を受けているので間に合わない。

そして、ライフルの時とは違い煙の中から発射されているので全力集中で防ぐなんてことはできないのだ。

 

 

そのまま、凶弾はアルターエゴに迫っていった。

 

 




こんな感じにアームドは出していこうと思います。それにしても、アルターエゴ強いですね。これなら絶対力が奪われるはずない!!(フラグ)

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
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