悲鳴を上げる体に鞭を打ちながらチャンスを探し続ける。
ともかく一つわかったのは足を止めたら復活しやがったビームに打ち抜かれて一発であの世生きということ。
「降りてこいよ!!」
「必要はない!」
こちらを警戒してか上空からじわじわとビームしか打ってこなくなったことだ。こちらには現状遠距離への攻撃手段はない。
その上、体力の限界も近い俺に対してじわじわと休ませる暇を与えてくれない。
(その上、失血死も近いと来た。エーテルの浸食も始まってる、人工聖剣一振りじゃきついか)
いわゆる、飛車角落ちという感じだ。
しかし、勝ち筋が完全に途絶えたというわけではないと言っておこう。
(これは、本当に薄い勝ち筋だけど――いくら、あのヘンテコな薬を吸収したと言っても無限じゃない。エーテルの補給もなしに大技を何度も打ち続けられるのか?)
「それに、俺には切り札がある」
手元にある最終兵器を眺めながらそのチャンスを探る。相手がこのポート・エルビスに現れた理由は必ずある。
(本当に薄い勝ち筋――だが、手繰り寄せるしかない)
「ふん、てこずらせる!ならば、こちらも手段を問う必要はない!!」
その瞬間、赤いドーム状のオーラが辺りを包み込む。空が赤く染まり、こちらに敵意を持つ者の気配が所々に点在し始める。
「エーテリアスだとぉ!?」
さっきまで、姿かたちもなかったというのに隙間という隙間からゴキブリがはい出すように虫型のエーテリアスが現れ始めた。
(本気でマズい――ただでさえ、肉体の限界も近いのに)
あっちらこっちらから攻められてはもうやってられないというやつだ。
「――あっちか」
だが、悪いことばかりではない。奴が、この小型エーテリアスを出現させた際、珍しく複数ある瞳がある一点の個所を見た。
(複数のコンテナ――諦めなければ、だな)
「ッ、邪魔だ!」
小型エーテリアスを一刀両断しながら、ブリンガーが向けた視線の先まで向かう。それは、そこに行けばこの状況を転換できる“何か”があると直感しているからだ。
だが一方でブリンガーはアルターエゴがせっせと移動している方角を見て外見的にはわからないが内心笑い続けていた。
気づけば、ブリンガーの攻撃の手は緩められ、唯一アルターエゴの進路を妨害し続けるのは小型エーテリアスのみとなっていた。
(なんだ、ビームが止んだ。一体、何を考えているんだ――いや、何であろうと行くしかない)
(そうだ、そのまま行け。そこで、先の復讐を遂げて見せよう――惨たらしい最期を迎えさせてやる!)
互いの考えが交差する中、両者はコンテナが複数積まれた開けた場所へと到着した。
到着したアルターエゴが目撃したのは――
「何も、ない――のか」
本当にただ開けた場所。辺りの気配を探っても、あるのは無数の小型エーテリアスの大群が東西南北から迫ってきているのがわかったのみだった。
「何もない?違うぞ――お前にはないも同然だがな!!」
声が聞こえた先に視線を向けると、大量のコンテナの内部にあったエーテル貯蔵庫からエーテルを吸収しているブリンガーの姿があった。
「はははははははっ!!愚か、愚か!!それに滑稽と来た!」
「ブリンガーッ」
「まさか、お前が万に一つでも勝機があると思っていたのか!!」
ここで、エーテルを補給されれば完全に勝機は失われる。
そして周りからはエーテリアスの接近。
「俺が――負けるの」
「そうだ、お前の敗北だ!!」
耳障りな声を上げながら、こちらを嘲笑うブリンガー。こちらに遠距離攻撃手段がないことをいいことに完全に調子に乗っているのか視界すらエーテル貯蔵庫に塞がれている。
だが、絶望的な状況に変わりはない。弓矢や銃などがないのも事実なのだ。
(なーんちゃって)
『俺が――負けるの』だとか、何とか言って項垂れているアルターエゴ。内心は、めちゃくちゃほくそ笑んでいた。
「一条の光明が見えた!」
こちらの遠距離攻撃手段がないことを前提においてエーテルの補給を行っているんだろうが、その行動は悪手と言わざるを得ない。
普通はこちらを倒してから補給すべき場面。
(きっとさっき目玉を潰され、真っ二つにされたのが気に食わずこちらをすっきり倒したい――なんて思ってるんだろうなぁ)
小物が力を持つと大体こうなるのが定めというものだ。
「――さて、決着をつけますか」
ブリンガーが辺りのエーテル貯蔵庫のエーテルを吸収している途中、アルターエゴは見逃していなかった。
一つや二つほど可燃性のガスが入っているマークの付いたドラム缶も宙に浮いて吸い寄せられていたことを。
「結構、遠投は得意なんだよねぇ」
適当にそこら辺に落ちていた鉄パイプをちょうどいい長さに切り、先を鋭く加工する。
最後はカチッと最終兵器のスイッチを押し、鉄パイプを構える。
「でぇぇぇりゃぁ!!」
鋭く尖った鉄パイプは勢いで可燃性のガスが入っているドラム缶を貫く。
(だが、これだけではガスが噴き出しただけ――爆発は起きない。だから、こいつを使う)
それは、覇者から渡されたお守り。
「なんだ、何をするつもりだ!」
「もう遅い!いっけぇぇぇぇ!!」
アルターエゴの手から離れ、まっすぐ突き進んでいくキューブ状の物体。
それは『ツール・ド・インフェルノ』への『切符』。
中には特殊な燃料が詰められ、火の湖に投入すると周囲の天然ガスとエーテル混合物による大規模な爆発を誘発し、エーテル結晶を木っ端微塵にする優れもの。
「爆発しろ、火打石!」
さて、今の状況を整理しよう。天然ガスは先ほどの鉄パイプの遠投によってガスは噴出済み。
そして、圧倒的なエーテル濃度を持つブリンガー。加えて、辺りにはエーテルを積んだ貯蔵庫が大量にある。
もし、こんな状況で火打石が爆発すればどうなるか――
「―――」
世界が裂けた。
轟音が空気を切り裂き、爆風があらゆるものを薙ぎ払う。大気が吹っ飛ばされたせいか一瞬呼吸も困難になっていた。
光と熱が空間を支配し、大地はまるで巨人が通ったのかと間違うほど揺れ、かなり距離が離れていたというのに周囲のほとんどの物体が無に帰っていた。
「――ッ、はぁ――痛い。もっと離れとくべきだったなぁ」
当のアルターエゴは爆風に吹き飛ばされ何回か体が地面を舐めた後壁に激突しそれでやっと止まることができた。
「うわぁ――このお守り除霊効果強すぎない?でも、シーザーがお守り代わりにって渡してくれて助かったよ」
独り言をぼやきながらできたクレーターを下っていく。というのも、ついさっき真っ二つに切って倒したと思ったらまた復活させられていたのだ。
(また復活してたら堪ったもんじゃない。こっちは、切り札を使っちゃったんだから)
思い足に鞭を打ちながらクレーターを完全に下りきる。
「嘘だろ。ゴキブリでも死ぬぞ」
そこには、ほとんど肉体は消し飛んでいたがまだうねうね動いているブリンガーの姿があった。
だが、死に体であることに変わりはない。止めを刺すとことに抵抗がないわけじゃないが、今やった方がいいに決まっている。
背負っていた大剣を構える。
「じゃあ、さようなら。ブリンガー、正直こんなに手こずるとは思ってなかった」
そのまま振り下ろすつもりだった――
クレーターの上部分から声がかかるまでは。
「ああ、俺もここまで手こずるなんて思わなかったよ。アポロくん、いや――今はアルターエゴだったかな」
「お前は――グラン!!」
顔をのぞかせていたのは『ツール・ド・インフェルノ』でナナシを追い詰め、左腕を奪い。そして、寿命を削らせまくった憎い敵でもあるグランであった。
(――ヤバい、そういうことか!)
なぜこのタイミングにこいつが現れたのか、簡単だブリンガーとの繋がりがあるということだ。
なおかつ、さらにマズいのはサラが車で言っていた『既に、聖剣ジ・アース以外の聖剣は私たちの手に堕ちてるもの――あとはわかるわね』というセリフに信憑性が一気に加わったのだ。
ブリンガー目掛けて大剣を振り下ろした。
「なら、俺がすべきは『ジ・アース』の回収!」
「させると思ったかい?『ソニックショット!』」
確かに振り下ろした。正確には、振り下ろしたと脳が認識しただけ――現実はより非常な結果を指示している。
大剣を振るっていた右腕は背後からのソニックショットによって吹き飛んだのだ。
「ッ、これじゃ――」
既にブリンガーを始末する手段を失ったため、グランをどうにかしようと振り向いたその瞬間。既に目と鼻の先まで奴は迫ってきていた。
「遅いよ――『ノーザンインパクト!!』」
聖剣ジェネシスから放たれた氷結の柱。聖剣がないアルターエゴに防ぐ手立てはなく直撃し、その勢いは壁にぶつかるまで継続した。
「ぐぅぁあ!」
氷の柱はアルターエゴの腹部を完全に貫通しまるで画鋲のように壁に突き刺さり動きを封じていた。
「そこで、奇跡の瞬間を見届けるといいよ。抵抗はしていいけど、両手がない状態でどうやってそこを抜け出すのかな?」
「くっ――ぁぁあああ!!」
叫び声を上げながらメリメリと肉が崩れ、内臓が傷つくのを感じながらも腹筋の力を使い何とかノーザンインパクトから抜け出そうとアルターエゴは足掻いていた。
「嘘だろ――はあ、ナナシもそうだけど脳にアクセルしかついていないのかい?」
血が噴き出すのも顧みずに動き続けるアルターエゴを気味悪く思いながらグランは懐からジ・アースが封じ込められた指輪と同じタイプの指輪を取り出す。
「――それは、ゼウス!?」
「ああ、アフロディは既に返り討ちにしててね。さあ、始めよう――」
ブリンガーの体内から一振りの刀が排出される。帯びるエネルギーは禍々しく見る者が見れば魅入られてしまうだろう。
『聖剣オーガ』
『聖剣ゼウス』
『聖剣ジェネシス』
『聖剣ジ・アース』
「今、全ての聖剣はここに揃った!今こそ、万能の力を再誕させる時!」
必死に叫んでいた。悪しきものが聖剣を手にしたとき一体何が起こるのか、想像に難くはないからである。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
しかし、現実は非常かな。四本の聖剣は全てブリンガーの中に吸収されてしまった。
「#%&$&#$&$#&%#&#%&#&#!!」
聞き取れない叫びを上げると同時に嵐が目の前で吹き荒れる。限りなく白に近い光が立ち昇る――それと同時にブリンガーの肉体は再生を始める。
「また、再生するのか――いや、違う!?」
てっきり先ほどと同じ手が生えた謎の怪人になるかと思いきや腕は現れずその代わり先ほどの人型の形態に変わる。
「何が起こってる――?」
「やっぱり、暴走しちゃったか――まあいいかな」
「いいわけあるかぁ!!」
突っ込みを入れた直後。先ほどまでのブリンガーの形態のトレードマークと言ってもいいくらいたくさんあった目玉は全て閉じられ無骨な腕へと作り替わっていた。
閉じられた瞳の代わりに胸の部分に大きな眼が開眼されこちらを映していた。
そして、ブレードのあった左腕は星見さんの妖刀のようなものへ作り替えられ、味合わなくともわかるほど威圧感を放っていた。
今、ここに四本の聖剣を伴って降臨した。
『魔王サクリファイス・ブリンガー』
「くっ――」
思わず、アルターエゴは息をのんだ。
第三ラウンドのコングが耳元でなったような気がした。
一方、アルターエゴがブリンガーとの第二ラウンドが始まる数分前。
意識の中の空間。ここはよく来たことがある、それだけ覚えている。
『―――』
何というか、意識がふわふわしているのだ。上下左右どこを見ても真っ暗で――どこに行けばいいのかわからない。
(俺は、何をしてたんだっけ?)
『何をやってるんだ?』
声のかかった方を向くとそこには“俺”が立っていた。
『――そうだ、アルターエゴだった。どうして、俺は忘れていたんだろう』
記憶が徐々に蘇ってきた。ここにいるということは俺は気絶したか寝たかのどちらか――当然、前者の可能性が圧倒的だろう。
『どうやって出るんだっけ?ていうか、出口はどっち?』
『――行くの?ここにいれば少なくとも楽に最期を迎えられるよ』
『最期?――それって、ッ!そうだ――俺は郊外で、星見さんの刀に』
記憶を取り戻したナナシは、一層出口に向かわなければとあてもなく走り出す。
『くそっ!俺は早く行かないと!――目を覚まさないと!』
『――そうやって、適当に当てもなく走り続けるの?』
暗闇の中を走っている途中に再び目の前に現れた“俺”
『っ、そうだアルターエゴならすぐここから出せるんじゃないか?頼む、早く目覚めないといけないんだ』
『そんなに目覚めたいの?――忌憚なく言うけどさ、本当に余命はないよ』
『だ、だけど――行かないと』
だが、空間は変わらず黒いまま。むしろアルターエゴの表情は曇ったものになっていた。
『それって、仲間のため?』
『そ、そうだ!仲間を全員助けに行かなくちゃ!』
『お前、それを一瞬でも使命とか何とか思ったか?』
『―――』
言葉が詰まる。そんなことはない、と言おうとした唇が止まる。アルターエゴのブラックホールみたいに黒い瞳に見られるとなぜか止まってしまった。
『やっぱりか――お前はもう忘れちゃったの?ちゃんと本音は情けなくぶっちゃけてるはずさ』
(本音?)
何かを忘れてしまったのか――
『お前、正直もう寿命が短いって聞いて少しやけくそになってるんじゃないか、違う?』
『――違く、ないです』
もう生きられないと知ってからの俺の行動は酷いものだった。時にはエーテリアスに当たりちらしパイパーから心配され、煙草や酒に逃げていた。
『周りが見えてなかった――』
『そうだな――そこまで行けばあとは自分で本音が語れるだろ。ほら、言え正直どうして目覚めたいんだ?』
(何で、目覚めたいのか)
『――たとえ、もうすぐ消える命でも死にたくない、生きていたい!もっと、みんなと話していたい、一緒にパンケーキとか食べに行きたい。まだ、まだやり残したことがたくさんあるんだ!』
『なら、どうする?』
『だから、ここで寝てる場合じゃない――起きて、みんなに会いたい!!』
泣きはらした目でアルターエゴへ訴えかける。もう、彼はアポロでもなく、アルターエゴでもなく、アポロとサクラの息子である『ナナシ』なのだ。
『うーん、50点かな』
『えぇ、50点!?な、何点満点で?』
『もちろん、100点満点中だけど?――でも、十分赤点回避だね、もう50点は後から必要になった時に埋めようか』
滲んだ瞳に映った景色の中、笑みを浮かべながらアルターエゴ?は立っていた。
『じゃあ、いってらっしゃい』
『い、いってきます?』
手を振りアルターエゴ?はナナシを送り出す。その瞬間、地面が崩れ体に浮遊感がまとわりつく。
落下する体、空を見上げてみればそこには手を振るアルターエゴ?の姿が変わらずそこにあった。
『違う、アルターエゴじゃない――誰?』
『一つ、おまけに教えてあげるよ。アルターエゴがだいぶピンチみたい――助けられるのはお前しかいない。これは、別にお前の仲間が弱いという話じゃない、お前じゃないと救えないんだ』
そのまま、ナナシの意識は浮上した。
「―――」
重い瞼を開けながら、目線だけで辺りを見渡す。それだけで、今どこにいるのかすぐわかった。
体がまだはっきりと動かないため急に目線に入った二つの人影に思わず目を見張ってしまう。
「ナナシ!――よかった、よかった!!」
「ナナシよ、よく目覚めた。体は動かせるか?」
二人の言葉のおかげでやっと体も正常に動き始め、どうやら傷の方も完治してるようだ。
「うん、大丈夫。見て、傷も治ってる――それにしてもどうして青衣さんがここにいるの?」
辺りを見渡してもここは独房ではなくビデオ屋の工房部分だ、そしてリンがいないことも不思議だった。
「そうだね、まず何があったか説明するよ」
「お願い、アキラ」
ナナシは端的にいろいろ説明を受けた。結局、気絶した後何が起こったのか――ブリンガーはどうなったのか、などなどだがその中でも一際興味を引いたのはアルターエゴが俺の代わりに色々やってくれているということだ。
「そっか、アルターエゴが――よかった」
その時、謎の俺が言っていた言葉が脳裏をよぎる。
「そうだ!アルターエゴを助けに行かないと」
「待て、どこに行こうというのだナナシよ」
その場で立ち上がり、ビデオ屋を出ようとするナナシを青衣が呼び止める。
「あ、そうだね――うん、報連相は大事だし――実はね――」
ナナシは、謎の俺から聞いた話を端的に二人に伝えた。こんな突拍子もない話を信じてくれるか内心冷や冷やしたが、アキラはともかく青衣さんも納得してくれた。
「だけど、今のナナシが行くのは危険すぎる」
「――わかってる。この前も言ったけど俺の命はもう長くない――それに、俺が傷つくとアキラたちがどう思うのかも知ってる」
「それをわかった上で行きたいのかい?」
真剣な表情のアキラ。それに、誠意を示すべくナナシはその場で膝を折る。
「うん、俺は死にたくない。だけど、みんながいないまま生きていくのはもっと嫌だ!だから、お願いアキラ、青衣――俺にアルターエゴを助けに行かせて」
いわゆる、土下座というやつだ。頭を下げ、誠意をナナシは示した。
「店長殿――」
「――わかった」
アキラのその一言で顔を上げる。見えた表情は何か感情をかみ殺したような状態になっていた。
「それじゃあ、行ってくる」
立ち上がりビデオ屋から出発しようとした次の瞬間。
ぐぅぅぅぅ
「――ナナシよ、これでは締まらぬぞ」
青衣の突っ込みに爆音の腹の音を店内に響かせ思わず赤面するナナシ。
「い、いやぁ全然食べてなかったし――それに、なんだかカレーの匂いがするからお腹が減っちゃって」
「やっぱり、ナナシはナナシということだね。そこに座っていてくれ、カレーを持ってくるよ」
アキラもナナシもどちらも出会ったときの日を思い出していた。そういえば、あの日も爆音の腹の音を響かせておかゆを食べていた。
数分後、お皿にこんもりと乗ったカレーライスがやってくる。
「おお!アキラのカレーだ!」
「まずはこれで腹を満たすといい、他に食べたいものがあったら、用意するよ」
ナナシはカレーの皿を手にガツガツと食べ始めた。
「うんっ、美味しい!美味しすぎるよっ!」
「ゆっくり食べるんだ。まだあるから、喉に詰まらせないようにするんだよ」
しばらくして、カレーは完食された。
「ごちそうさま!」
「ははっ、寝起きだっていうのに、ナナシの胃袋と食べっぷりは何も変わらないんだね」
「いやぁ――ま、ずっと寝てたと言っても体力は使ってたからね!ふぅ――この爽やかな口当たり、程よい辛さ。やっぱりアキラの料理が俺にとって一番だ!」
「――ッ、気に入ってくれてよかったよ。少し辛くしすぎたんじゃないかって心配だったんだ」
「大丈夫大丈夫!ちょうどいい辛さだよ、汗も出てスッキリだし美味しい!」
自身に出た汗を見せながら、屈託のない笑顔を浮かべるナナシ。
「ああ――水も飲むんだ、むせないようにね」
ナナシは渡された水を飲み干して、満足そうに背伸びをした後ビデオ屋のドアノブに手をかけた。
「ナナシ、危険だって判断したらすぐに逃げるんだ、いいね?」
「分かってるよ――心配しないで、アキラ。俺は大丈夫だから」
「ああ――ナナシ、きっと良くなるさ」
「きっと――良くなるから――」
その言葉を背に、ナナシはビデオ屋から出発していった。
「店長殿はこの後、ポート・エルビスに向かうのか?」
「いや、洗い物をしてくるよ。青衣はポート・エルビスの援軍に向かってくれ」
「承知した」
そして、アキラは洗い物へと向かった。
シャァァァ――
「―――」
水はアキラの指から落ち、砕けて、小さな渦に消えて、細い嗚咽となる。
アキラは皿を拭き、棚に戻そうとしたときにうっかり横の皿にぶつけて、その勢いで何かが地面に落ちてしまった――
「―――」
カレーを作るときに余ったパプリカだ。
ナナシが全力で走れば、すぐにポート・エルビスに到着してしまうだろう。
アキラは工房に戻る。店には自分以外だれ一人おらず静寂が包み込んでいた。
「――バカ」
彼はそのままソファに身を預け、祈る。
「パプリカのカレーは、辛くないんだ―――」
ナナシ戻れぇぇぇぇ!!アルターエゴは助からない!両手失って腹に穴空いてるやつは死ぬ!
さて、この話を読んだら(特に最後の方)何か思う人がいると思いますがぜひぜひ感想として書いてくださいな!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け