ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第77話・暴走する自然

 

 

「$%&#%&$&#%#&$&!」

クレーターを下る途中。その中心に立っている人型の何かはただ雄たけびを上げていた。

 

「完全に理性はなくなっているみたいだ。このまま、攻撃してこないんだったら楽なんだけど――」

「そうはうまくは行かないようだな」

ズザァと砂埃を上げながら下っている途中。相手の胸部で開眼している巨大な目がこちらを見つめていた。

 

そして、完全に最下層まで下りた時、ブリンガーの瞳に光が収束する。

「来るぞ!」

 

『ユニ$%#ス#$“$スト』

雅の言葉と同時に放たれる極太の光線。

それはまるで、宇宙の一部を切り取り放ったような神秘的な雰囲気と恐ろしさを纏っていた。

 

それを、両脇にそれぞれ分かれることによって回避した二人。しかし、その光線は継続したままブリンガーの体の向きが変わることでナナシを追う。

(こっちに来たか。どうやら、光線自体が屈折するってわけじゃなさそうだ――)

 

クレーターの中を全力疾走しているナナシ。ブリンガーを挟んで向こう側には雅が刀を納刀し狐火を纏っている。

目線だけはこちらを向き『時間を稼いでいろ』と暗示しているようだった。

 

 

ならばと、進んできた道を振り返り光線を相対する。

「じゃあ、このまま真っすぐ走るわけにはいかないな」

 

 

一見自殺行為に見えるこの行動。しかし、いくら光線が極太とはいえ大きさはブリンガーの胸で開眼している瞳よりちょっと大きい程度。

「――よっと」

 

ならば、その下を潜り抜ける程度訳ないのだ。

 

「『ムゲン・ザ・ハンドG2』」

再び背中を追いかけてくるビームに注意しつつ、ムゲン・ザ・ハンドを発動させ今度は気を引くためブリンガーに向かって攻撃を開始する。

 

しかし、途端にビームが収束する。

 

『タマ$%&ザ$#&$%ド』

再び瞳に光が収束したと思えば、巨大な赤い手が現れ突撃したムゲン・ザ・ハンドをすべて握りつぶしてしまった。

 

(あれは、タマシイ・ザ・ハンド!そうか、ジ・アースの力も使えるのか)

アルターエゴも使用していた必殺技。性能的にはアポロの最強防御である『ゴッドキャッチ』にも匹敵するだろう。

しかし、幸いにも弱点がないわけじゃない、G5でもないし。

 

「あの防御を正面から打ち砕くのはきついなぁ――でも、背面がお留守じゃない?」

ブリンガーの背後、ナナシの視線からはくっきり見える。剣士の顔。

 

 

開眼。そして、抜刀――ナナシの視点から見れば一瞬の動作。しかし、それを食らうものが見ればその動作は数秒にも数分にも感じ取れるだろう。

 

妖刀に一つ目の火の玉のような存在が宿り狐火の勢いは加速する。

 

「はぁッ!」

振りぬかれた斬撃。

既に、妖刀との交渉を済ませ力を引き出した彼女にブリンガーを真っ二つなど苦ではない。

 

それどころか斬撃はその後ろにあったクレーターを駆け上り、ホロウに停泊されていた船すらやホロウの壁すらも切って見せた。

 

 

「――結構あっけなかったな」

クレーターの中心で力なくバナナの皮のように分かれたブリンガーを見ながらそう呟いた。しかし、妙だ。同じく万能の力を手に入れ願いを叶えた影山はとんでもない力を行使しアポロを追い詰めていた。

 

(いや、理性がないとこんなものなのか――それとも?)

嫌な予感を感じたナナシは近づき残った肉体を切り刻むため接近する。

 

「聖剣_抜錨__」

ゆっくり念じるようにつぶやいた。その瞬間、彼の手に青い光が螺旋を描きながら収束していく。それは、今のナナシの鼓動に応じてか冷たい輝きを放ちながら、静かに渦を巻いていた。

 

 

しかし、トドメを刺そうとした瞬間気が付いた。

雅の一閃によって切り裂かれた傷の断面が動き、そして徐々に再生しているのだ。

「『ジ・アース!!』」

 

螺旋の輝きはブリンガーに向かい。既に縦に引き裂かれた体を横へ、斜めへまるで玉ねぎをみじん切りにするように細かく切断していく。

 

「やったか!?」

 

だが、細かく分裂したブリンガーの肉体は未だに動いている。それどころか、切り刻んだはずの胸にあった瞳がこちらを覗いている。

『#$%&#%$&#%&!!』

 

耳障りな声。響いたと同時に沸き上がる嫌な予感。それらを感知したナナシは一目散に雅の元に駆ける。

「しゃがめ!!」

 

 

短い一言と目線で意図を伝わったのか、しゃがみ防御姿勢になる雅。そして、一方のナナシはブリンガーと雅の間に立つ。

(間に合う、間に合わないじゃない。もう、防御を展開するんだ)

『ムゲン・ザ・ハンドG2』で前方に疑似的なバリアを生成。

 

『マジン・ザ・ハンド改』で上空の警戒。

 

『ゴッドハンド』でムゲン・ザ・ハンドの補強。

 

『真・熱血パンチ/ジャンプ』で身体能力の補強。

 

『____________』

今のナナシができる全力全開で防御を固めきったその瞬間。声にならない声が響いたと思えば、白く染まった。

 

 

ナナシの反射神経がぎりぎり終えるぐらいの速度。何かはブリンガーの周り、すなわちクレーター内にいるすべてを攻撃した。

 

「ナナシ、ナナシ!!」

「――――ッはぁ!なんだ、一体何が起きた?」

雅に揺すられたことで意識を取り戻すナナシ。すぐさま立ち上がり、周囲を確認する。

 

(それよりも、完全に防御を固めたのに突破されて跡形もないなんて――はっ!?)

周囲の大地を見てみると、なんと帯電していた。

 

「雷だ。ナナシが私の前に立ちふさがり盾となった瞬間、上空とブリンガーから同時に放たれた」

「か、雷?」

もちろん、聖剣の能力のはずだ。しかし、奴は今必殺技の名前を叫ばずに発動させた。

タマシイ・ザ・ハンドなどは名前を聞き取りにくいとはいえ叫んでいたというのに。

 

(なんだ、あの能力は――?いや、本当に知らないのか――引っかかる。多分、アルターエゴとの会話の中に答えがある)

 

「雷か、だからあんなに早かったのか――何発も連射されたらひとたまりもないな」

「ああ、だがどうやら連発はできないようだ。見ろ、上の雨雲がなくなっている」

上空を見てみればしっかり雨雲は晴れていた。

考えてみれば、聖剣四本分の出力だ。影山は『カオスブレイク』や『ノーザンインパクト』しか使わなかったから油断してけど技の種類も圧倒的なはずなのだ。

 

 

「厄介だな、奴の回復力」

「ああ、まさかみじん切りにしても再生するなんて――おそらく聖剣ゼウスの能力の『超再生』だろうね」

「『超再生』か――どうする、いくら切っても再生し続けられれば我らの敗北は揺らがないぞ」

てっきり雅の初撃で真っ二つにされて終わりかと思えば回復され、みじん切りでも回復され。

 

(アポロが使っていたツァーリボンバで吹っ飛ばすわけにはいかないしなぁ――)

そもそもないのだが、もはや相手に臓器の類はないし、弱点に見えた目玉もノーダメージと考えていいだろう。

 

 

「どうだ、作戦は何か思いついたか?」

真っすぐな瞳に思わずクラっと来るが、信頼されたなら答えようと気を引き締める。

 

(やるしかない)

「うん、でも――可能性があるってだけだ、耳貸して」

キツネ耳がこちらに向けられ、シリオンと人間の違いを感じながら伝える。雅は少し思案した後、納得したのか頷いてくれた。

 

 

「雅、もしも俺が――「その先を言う必要はない――安心しろ、私がいる」――心強いよ」

言葉の途中、雅に首根っこを引っ張られ目線まで誘導され喝が入る。

 

(アポロが言っていた、願いを叶える機構はあくまで聖剣四本あってこそ発動するもの。ならば、俺が外部から聖剣ジ・アースの力を吸い出すことだってできるんじゃないのか?)

 

 

そうすれば、聖剣たちのバランスが崩れあの意味不明な回復能力だって消えるのではないかと考えたのだ。

 

「始めよう、雅」

「ああ、いつでも抜ける」

言葉を交わす。それが、合図となり雅が前衛、ナナシが後衛で真っすぐクレーターの中心に陣取るブリンガーの元へ走り出す。

 

『#$%#%$%#$“%#』

再び、先ほどの極太ビームを放った時と同様に胸の瞳に光が収束してく。

 

「俺が守るムゲ「待て」――え?」

当然、後衛にいる俺がムゲン・ザ・ハンドで防御しようかと思ったのだが雅から待ったが入る。

 

すると、走りながらこちらを向き。

「お前は、必殺技を使うな。私についてくればいい」

「で、でも流石にあれを雅さんだけで受けきるのは無理があるんじゃ?」

「雅だ――三回目の間違いだな。後で、修行に付き合ってもらうぞ」

絶賛シリアスの最中を爆走している場面で、一体何をやってるんだと頭が痛くなったが再度ナナシは尋ねた。

 

「だから!雅があれを一人で受けきるのは無理が「ない」ある!!」

「――私に任せろ。必ず、お前を無傷でブリンガーの元に届けると、この刀に誓おう!」

刀身をこちらに見せ、誓う雅。その瞳には確かな覚悟が宿っているのをナナシは目撃した。

 

 

意を決したナナシは、生唾を呑み込み決心する。

「――わかった。お願い、雅!俺を守って!」

 

「ああ、応援もあると助かる。その方が、私はやる気が出るからな」

「頑張れ!頑張れ!絶対いける!カッコカワイイ雅が見たい!!」

応援するナナシ。彼の視点からは見えないが確かに雅は笑顔を見せていた。

 

『ユニ$%#ス#$“$スト』

再び、宇宙を切り取ったような神秘的な雰囲気と恐ろしさを兼ね備えた光線が真っすぐこちらに襲いかかる。

 

「ッ――」

思わず、ナナシは目の前を手で覆う。しかし、いくら待っても衝撃が訪れることはない。

 

「どうした、応援が途切れているぞ」

「――うわぁ、マジか。ビームも切っちゃうのか」

絶句。極太の光線は雅の刀によって真っ二つに切られその中を俺たちは直進していた。

いくら刀に色々厄ネタが詰まっていたとしてもここまでできるのは彼女の努力と才能のたまものであろう。

 

 

これでは暴走し力をまき散らすだけのブリンガーでは勝てないわけだ。

「――繋いだぞナナシ」

彼女が振り向くと同時に開ける視界。それは、辛く険しいビームの道を完走したことを示していた。

 

「ああ、ありがとう。雅、絶対帰ってくるから」

入れ替わるように前に出るナナシ。

 

 

ついに相対する、ナナシとブリンガー。彼らが対峙するのはアポロと影山が戦った因果からであろうか――

「お願い、答えて!『ジ・アース!!』」

拳に纏う青い螺旋の渦と共に放った拳はブリンガーの胸にのめりこんでいった。

 

その瞬間まるで、パソコンをシャットダウンしたみたいに世界が真っ黒に染まった。

 

 

 

 




多分次の、次くらいでエピローグだと思います。つまり、次回!決戦です!
余談ですが、聖剣ゼウスに『超再生』って能力があるように、他の聖剣にも固有の能力は存在します。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
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  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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