暗闇の世界。
見たことがある、そこはまるで俺の精神世界のように何もなかった。
(大体こんなもんなのかなぁ?)
他の人のところなんて言ったことがないため辺りを見渡しても自分の物と遜色がないように見える。
「ないなぁ――そもそも力ってどんな形してるんだ?」
辺りを見渡すも闇、闇、闇。自分を見ても、闇。
(――あれ、俺は何で力を探してるんだっけ?)
(そもそも、力って何の力?)
(うん?ていうか、俺はどこから来たんだっけ?)
(待てよ、出口は――ない。闇だけだ、何でここにいるんだっけ?)
ナナシは気づいていなかったがここに来てからすぐ足元からこの世界の闇がまとわりついてきてたのだ。
(――俺は誰だ?)
「あーあ、何で無策で突っ込んでいくかなぁ――?なんというか――似ちゃったのかな」
目の前にいる男が何やらぶつくさ言っている。それを、***はじっと見るだけでなんのアクションも起こそうとしない。
「―――」
無言。それを見かねてか男の腕が視界に近づいてく。
「しかも、この様とは――ほら、起きろ!」
「いったぁ!?」
パチンと耳に心地よい音を鳴らしながら彼は***。いや、ナナシを起こした。
(いった――くない?)
「寿命が近くなって痛覚が麻痺してきたんだよ」
何故か痛くない説明をしてくれる俺の姿をした誰か。
それは、先ほど生死の境を彷徨っていた時も助けてくれた俺だった。
「そうなんだ――え、ていうかあんたアルターエゴじゃないだろ」
「そういうところは勘がいいんだ。――じゃあ、自己紹介から俺はアポロ」
自分をアポロと自称するこの俺。確かに、容姿はアポロそのものだがそれは俺も変わらない。
「い、いやありえない!アポロはもう――完全に――」
「魂が何度も砕けた?」
「そうだ、俺はアルターエゴと記憶を共有してるから知ってるんだ――アポロはもう蘇れないってことを」
記憶によれば、彼の魂は死によって破壊され結果的にはゴマ粒程度まで砕かれていたはずだ。
「確かに、そうだけど――ほら」
その瞬間、アポロ?の姿が薄くなる。その姿の中核をなしていたのはアルターエゴの記憶に記録されたゴマ粒の魂だった。
「――えぇ?」
「いい反応だね。まあ、驚くのも無理はないさ十を超える死は確かに俺の魂を何度も破壊した――けど、案外――大丈夫なんだよね。あくまで、精神体としてだけど――自我を保つのもきついし、成仏できなかった悪霊みたいな感じだよ」
「お祓いしてもらう?」
「例えだから――それよりも、ジ・アースの力の回収だろ?目的は」
ナナシは頷く、しかし上下左右どこを見ても闇、闇、闇――俺も闇。
「ちょちょ!また取り込まれかけてる、意識を強く持つんだ!」
「はっ――危ない。ここはどこなんだ?」
「ここは――そうだね、まず聖剣の力を回収するためにここに来たのは正解だ。けど、ここには聖剣の犠牲者たちの怨霊も同時に蓄積しているんだ」
「あんたみたいに?」
「俺は、真っ当だから!!」
確かに、足元をよーく見てみれば黒い何かが俺の足に纏わりつこうとしている。
「聖剣の犠牲者って多いからねぇ――こうやっていっぱい積もっちゃうんだ。そして、今はここの悪霊の復讐心によってブリンガーは暴走してしまったんだ」
「それが、暴走の真相――でも、影山は暴走してなかったよね」
なんか、魂を統合して人格がおかしくなっていた気がするが、それでもブリンガーのように言語能力を失うまでではなかった。
「ああ、その違いは簡単だ。本物か偽物を使っているか、それだけなんだ――影山の場合は奪った力はあれど全て真作。しかし、ブリンガーはジェネシスが偽物なんだ」
「じぇ、ジェネシスが偽物!?」
それはつまり、グランとの戦いはオリジナルの聖剣を使っていたはずの彼がぼっこぼこにやられたというわけなのだ。
「ああ、だがあそこまで精巧だと本物の役目も疑似的に果たせてしまうんだ。けどね、偽物と本物の決定的な違いが一つだけ存在するんだ」
「決定的な違い?」
「“勇気の律者”のコアが使われているか、いないか」
「勇気の律者!?」
そういえば、アルターエゴが言っていた。聖剣は律者コアっていう神のごとき存在のコアによって作られていることを――そして、唯一勇気の律者のコアは全ての聖剣に使われているのだ。
「ここからは、あくまで仮説になるけど――勇気の律者のコアが他のすべてのコアを統制する役割を担ってたんだと思う」
「だから、それがない聖剣で万能の力を行使しようとしたブリンガーは暴走状態に――」
「ああ、だからさっさと止めないとね」
その言葉と同時にアポロの手に光が灯る。
「それは?」
「――釣り竿かな。力は下の怨霊たちの中にある、取るためには中に行かなくちゃいけないけど、無理だからね!これを使って取り出すんだ、ほら下にかざして」
光を受け取り言われた通り下にかざす。
「何も起きないけど?」
「糸を垂らさなくちゃ、釣りができるわけないだろ?今回だったら『ジ・アース』を発動させれば行けると思うよ」
「分かった――聖剣_抜錨__」
深い集中状態に入る。それと同時に受けった光は渦を巻き出し、刃となる。その刃は暗闇のため池となった地下へ深く深く潜り込んでいく。
「力は力に引き寄せられるから後は、ほっといても寄ってくるよ」
「結構力使うな――これ」
「そうだね、集中力がないとキツイかなぁ――それと、決して耳を貸さないように」
最後のアポロの一言に疑問を持ちながら、集中して力を探し回る。
「うん?」
『助けてくれ――!誰か――頼む、まだ――死にたくない――!』
Byどこかの戦場の兵士
『クソッ――!動けねぇ――!誰か、誰かいないのか――!?頼む――!』
By災害に巻き込まれた男
『お願いだ――!置いてかないでくれ――!俺を、俺を見捨てないでくれぇぇぇ!!』
Byとある聖剣使いの最期の言葉
『――痛い、寒い――こんなの、嫌――お兄ちゃん、助けて――』
By僅か6歳で聖剣使いとなった
『これのせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ――!いや、だ思考が――あ、あぁぁ、嫌だ成りたくない――あぁぁぁ!』
By途中で――が解けた聖剣使い
『結局、私たちは使い捨ての――これの、どこに正義があるのよ!』
By死の間際に自我を取り戻した聖剣使いの最期の言葉
『世界のために親も殺して、友達も殺して、恋人も殺しました――その結末が、これ?』
By絶望した聖剣使いの最期の言葉
死者の呼び声とはこのことか――もしかすれば、俺もいずれここにたどり着くのかもしれない。
「―――安心して、聖剣は俺が破壊するから」
「いい目標だね、きっとここに眠った人たちもそれを望んでるよ」
ナナシの手には確かにアルターエゴから奪われた聖剣の光が収束していた。
「一応、言っておくけど全てのジ・アースの力を回収できたわけじゃない。どうしても、残滓くらいは残っちゃうんだ――でも、さっきみたいに圧倒的な回復力があるわけじゃない」
「分かった――それじゃあ行ってくる」
暗闇が晴れる。
『俺たちの積み上げてきた物は全部無駄じゃなかった――これからも俺たちが、君が止まらない限り道は続く』
By
最後、振り向いたその時立っていたのは灰色のコートに眼鏡。そして、杖を持った男が優しくも強く、“信念”を持った瞳でこちらを眺めていた。
彼は光となりナナシに宿る。
「――そういうことね」
「サクラからもう聞いてるだろ?ジ・アースのことは」
神でも、宇宙人でも、ましてや鬼とじゃなく“人と共に生きる”ことを選んだ聖剣だということをまじまじと感じ取った。
周りを見れば、既に暗闇なんて存在しなくて――代わりに『ジ・アース』に宿った信念に照らされた世界が広がっていた。
そして、目を覚ます。
「そぅぉれッ!!」
ジ・アースによって奴の胸を貫いていた拳を抜く。
「これが『ジ・アース』だ」
その手には確かに、アルターエゴが奪われた聖剣ジ・アースの力が収まっていた。淡くも暖かく優しいそれは、黒い沼から脱し輝き続けていた。
『――貴様ぁッ!『ユニバースブラスト』
「え?自我が――!」
超至近距離で光が収束していく。
目を見開いたその瞬間。一太刀、袈裟の形にブリンガーが割れた。瞳から放たれる一撃はナナシを抹消するには十分なものだろう。
「私がやらせはしないがな」
彼女の妨害がなければの話だが――エネルギーはあらぬ方向へまき散らされ粉塵を舞わせるのみだった。
「すまない、今すぐここを脱出するぞ」
「おえっ」
そのまま、服の襟を思いっきり引っ張られ首が締まると同時に浮遊感が体を包んだ。
視界が定まったかと思えば、さっきまでいた場所は雷で包まれ地面が帯電していた。
「首がもげるかと思った――うえっ」
「大丈夫か、緊急のため加減ができなかった」
ついているかどうか確かめるために首をさすりながら辺りを見渡す。完全にクレーターから脱出したようだが、未だにブリンガーの気配は健在。
しかし、妙なことにグランの気配は完全になくなっていた。
「課長、ナナシくんお疲れ様です。どうやらそちらは首尾よく済んだようですね」
「あれ、柳さん。グランはどうなったの?」
「残念ながら、最後に『目的は達成したから、ここらへんで俺は退散させてもらうよ』とセリフを吐いてどこかに消えてしまいました」
「――あの野郎!もうすぐでオレ様が決着をつけてやったてのによ!」
地団太を踏みながら悔しがるシーザー。
(しかし、どういうことだ目的は達成した?)
ともかく、今は考えてもわからないものはわからない。
「お疲れ様です。柳さんも、蒼角も、悠真も、シーザーもね。それに、雅も――みんな無事でよかったよ」
「雅だなんて、課長いつの間に名前を呼ぶ仲になったんですか?」
「不思議がることはない。私はナナシの責任を取るのだぞ」
(さっきから、責任責任言ってるけど一体何が起こるんだ――?悠真は妙に哀れなものを見る目で見てくるし――大丈夫だよね、切腹とかしないよね?)
武士らしい側面を持つ雅だからこその嫌な予感がふつふつと湧いてくる。しかし今は――
クレーターの内部から、轟音と共に、大気が震えた。
次の瞬間、重力を無視するかのように、奴が軽々と宙へと舞い上がる。完全に暴走が収まったのか、おどろおどろしい気配は消え、その代わり純粋な憎しみが前面に現れていた。
「アポロォォォォっ!!」
「俺はアポロじゃないよ」
興奮するブリンガー、淡々と返すナナシ。正反対なこの状態、誰もがナナシ有利だと考えるだろう。
(だけど、失うものがない人ってのは強いからなぁ)
アポロがそうだった。仲間を何もかも失った彼は強かった。
(でも、そんな強さに用はない。俺は、みんなと生きていたいから――)
天に上り、見上げる形となったブリンガー。奴は、ここに今残っている全能力、すなわち命を燃やし尽くし憎き敵を粉砕せんと力を溜めていた。
「始まりの――主よ――再創を――!!」
紫紺の炎が燃え盛る。ホロウの中、赤い空をバックに虚無よりも冷たい闇の焔が、大気を蝕みながら渦を巻く。
そこから、現れたのは今ナナシ達を燃やし尽くそうとする闇の不死鳥であった。
(ヤバいな、どう考えても今使える必殺技じゃどうにもできない――そもそもこの技の規模ならたとえ雅が真っ二つにしようが被害は免れない、か)
「ナナシ、大丈夫だよね?」
「――ああ、大丈夫だ。リン、イアス――今の俺は負ける気がしないんだ」
虚勢を胸に、不死鳥に向かい立つ。
(はぁ、はぁ――行ける、集中だ。集中しろ――!)
活路があるとすれば、先ほど回収したジ・アースの力。これを、ぶつけることができればあの不死鳥の滅びすら覆せるかもしれないと考えたのだ。
だが、手に宿った力は形にならない。むしろ、霧散を食い止めるので精いっぱいだった。
「はぁ、はぁ――ぐっ――」
『落ち着いて』
胸から響く声が、ナナシの焦りを止めた。
『今まで、教えたこと学んだことを思い出すんだ』
(思い出す――胸を張って)
手に宿った力を胸に集中させるナナシ。それだけじゃない、今体内に残っている力をすべて胸に凝縮させた。
『――よし、行こうか』
マジン・ザ・ハンドと同じ要領で胸に集めた全エネルギーを次は右手に移動させる。
そのまま、前に突き出す。
(集中――焦らず)
その瞬間、右手にて完全に力は形を成した。
そう、本来聖剣が体内あるナナシにはありえない現象、確かに“剣”が彼の手に握られていた。
「大体お前らは、ホロウに負けた敗者なのだ!俺が負けるはずがない!!」
紫紺の翼をはためかせ、こちらに突撃する不死鳥。
『ダークフェニックス!!』
ブリンガーの魂の叫びに対し、ナナシはとても冷静だった。
「『神なるもの、変化の極みなり。万物に妙にして言を為し、形を以て話すべからざるものなり』」
青ではなく、マジン・ザ・ハンドのような黄金の光が螺旋を描きながら彼の剣に収束していく。
その力は詠唱と共にさらに増大し、剣先は闇の不死鳥――いや、ブリンガーの元へ向けられる。
『ジ・アース、
正しく対界兵器としての姿に戻った聖剣の一撃と不死鳥の飛翔がぶつかり合う。
天を貫く黄金の光が、螺旋を描きながら奔る。その軌跡は眩い輝き満ち、赤い空を照らす希望の光となっていた。
対する、不死鳥はその紫紺の翼をはためかせ、放たれた光を食いつぶさんと浸食を開始していた。
どちらも譲らぬ、力と力のせめぎ合い。
「こんな奴らに負けてたまるか――!!」
「みんなは――新エリー都に生きるみんなは!敗者なんかじゃない!!」
刹那、光が爆ぜ、神々しい剣の煌めきが闇を貫いた。
光が闇を裂き、紫紺の炎が爆ぜる。そして、全てを巻き込むかのような閃光が世界を覆いつくした。
「――きれいな空」
閃光が晴れた後、ふとナナシはそう呟いた。ホロウ内部のため、特段常時見ているやつから見ればそうでもないかもしれない。
「ああ、そうだな――私たちが晴らした空だ」
「だから、綺麗に見えるのかな?」
ブリンガーは完全に消滅した。今回のごたごたもどうやらこれで終わりのようだ。
「んー!あぁ、よし――家に帰ってカレーをまた食べたいなぁ」
「ねぇねぇ!蒼角も食べたい!食べたい!」
『もちろん、いいとも蒼角。どうかな、他の六課の皆さんも食べに来ませんか?』
確認を取ろうと思ったらナイスタイミングでアキラから通信が入ってくる。まあ、狙っていたのかもしれないが。
「いいね、それ!僕もうお腹がペコペコで」
「なあ、それってオレ様も行っていいか!!」
『ああ、シーザーも来るといい。僕も、帰ってきたら寸胴にカレーをたっぷり作って待ってるから』
悠真もシーザーもどうやらビデオ屋に来るようだ。
(――ハッピーエンドって奴かな)
心地よい感覚に胸躍りながら、俺たちはポート・エルビスを後にす――
そこでふと、ナナシが立ち止まった。
「あ、そうだ――」
「どうしたの、ナナシ?」
「いや、そう言えばあいつらの言葉が本当ならブリンガーは本物の聖剣オーガを所有しているはずなんだよね。もしかしたら、どこかに転がってるかもしれないから探しに行ってくる」
「そうだな、ならば私も手伝おう」
流石に聖剣なんていう特級呪物をそのままにしておくわけにはいかない。あの意識の世界で会った人達みたいに犠牲者が増えたら堪ったもんじゃない。
「そういえば、雅のお父さんが言ってたよ――聖剣オーガは零号ホロウで発見されて盗まれたって」
「そんな風に聖剣って見つかるんだ――で、サラたちに盗まれたのか――うん?」
ここで、ナナシは妙に引っかかった。
そもそも、この事件のあらゆる騒動の元ネタは『聖剣オーガ』だ。
(そもそも、聖剣ってそんな風に落ちてるもんだっけ?)
何故か冷汗が額を滴ってきた。何やら、致命的な違和感に感づいたようで。
(――ねえ、サクラ。聖剣って継承者がいないなんて、タイミングは存在するの?)
『ありえないわ、聖剣は使い手が死に至った瞬間別の人間に継承されるわ。けれど、使い手が死ぬ前に聖剣が奪われていたら殺された瞬間に奪われた相手に継承される――これだけのはずよ』
(ヤバい!ブリンガーでも、サラでもない!聖剣オーガの正当な継承者がいるかもしれないってことだ!?)
だが、今のナナシができるのはいち早く聖剣オーガを回収することだけ――
急いでナナシは振り――
「一手、遅れましたね」
次回、エピローグ!!
なんか不穏だって?言ったじゃん、開幕に時は平等で残酷だって――まあ、その時が来たってことですね。
「『神なるもの、変化の極みなり。万物に妙にして言を為し、形を以て話すべからざるものなり』」
「『ジ・アース、神蘊ッ!!』」
まあ、劇場版限定的な必殺技ですね。崩壊3rdをプレイ済みの人は今頃ニヤニヤしてるんじゃないでしょうかね?
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け