ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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時は残酷ですね。


エピローグ:さらば友よ

 

 

「――あ」

耳元で声が聞こえた瞬間。痛みはないが、異物が通る感覚が右腕を襲った。

一体何が起きたのか、目を見開き刀に手を置く雅。焦る、仲間たち――短い足を頑張って動かすリン、イアス――それで何が起きたのか直感的に理解した。

 

 

(右腕が斬られた――ッ)

「聖剣_抜錨__!!」

目の前を舞う肩から飛んだ自身の右腕。すぐさま、振り返り敵に相対する。

もし、敵が右腕がなければ義手の左腕は必殺技の発動が不可能なため『ジ・アース』を放つことはできないように考えられるだろう。

 

しかし、青い螺旋は腕ではなく彼の右足に渦巻いた。

 

靴が壊れる音と同時に左回転で全力の右回し蹴りを放った。

しかし――思考が止まる、目の前にいる人物を見てありえないと目を疑った。

「――ライ?」

 

足は彼女の顔の前で寸止めされる。

「ごめんなさい――だから、外出はやめてって言ったのに――私が、抑えられなくなっちゃうからァ!」

 

ギャキンッ!音を立てながら、ライの一撃がナナシの両足をまとめて切断する。

太もも辺りから斬られたナナシは立つ力を無くし力なくその場に倒れる。

 

 

倒れる瞬間見たのは、狐耳をピンと立たせ、いつもの黒髪の長髪はまとめられポニーテールの彼女。そして――尻尾がないことに初めて気が付いた。

 

(あれ?――何で、気が付かなかったんだ。ライって、めちゃくちゃ雅に似てるんだ。というか、同じだ!!顔も全く同じじゃん!?)

普段からパンケーキに心を奪われていたナナシはそんなことに全く気が付かず過ごしていたが、今まじまじと見ると雅と特徴が一致しているのだ。

 

 

突如として現れた敵、動揺する仲間たちの中で真っ先に飛び掛かった雅だった。

 

 

「貴様ァッ!」

 

 

普段から冷静な彼女からは想像できないほどの怒りを纏いながらその遺志に刀も呼応してか纏う狐火はブリンガーを切った時よりもはるかに増大していた。

 

接近する刃、しかしライは動揺するそぶりは見せなかった。その瞬間、彼女の刀がハンマーへと変わる。

 

「あなたじゃ、私には勝てない――『ニードルハンマーッ!』

「ぐっ――」

雷を帯びたその一撃は刀と激突すると同時に鈍い音を出し、雅を押し――吹き飛ばした。

だが、すぐさま体制を立て直し目にもとまらぬ剣戟がライを襲う。

 

しかし、その虚狩りの剣戟でもライは冷静にハンマーを刀に戻し構える。

 

「どういうことですか、課長が二人いますけど――?」

弓を引きながら目を疑う悠真。もちろん区別がつかないわけではない、しかし双子かと言われるくらい似ているのだ。

 

「いえ、浅羽隊員問題はそこではありません。課長は間違いなく本気で剣を振るっています――ですが、拮抗するどころかむしろ押されつつあります」

「僕もあの戦いの中援護は難しいですね――どうにか、ナナシだけでも救助しないと!」

「――はっ、お願い!六課のみんな、シーザー!ナナシを助けて!!」

敵の撃破も優先すべきだが、一番ピンチなのは右腕と両足を失ったナナシあれでは必殺技の発動は難しい。絶句していたリンもどうやら正気に戻ったようだ。

 

 

 

しかし、当然ライ側からすれば救助されるわけにはいかない。それは、つまり星見雅との決着を早めるのは仕方がないことだろう。

 

「悪いけど、あまり時間がないみたい――だから、さっさと負けてもらうわ!」

「うぐっ――はぁぁぁ!!」

さらに密度の増す剣戟の嵐。もちろん、傍から見ればもう何が起きているのかわからないほどだろう。しかし、それでも星見雅ならば対応できる。

 

はずだった――

 

(何故、私の動きが読まれている?――私の動き出しよりも早く対応されている、こちらが攻め手に回れない)

 

「不思議って感じね――教えてあげるわ。あなたたちの大切な人を奪うお詫びにね」

「その必要はない」

きっぱりと言い切る雅、それを予想していたのか満足気に微笑むライ。その不気味さに雅は内心恐怖を感じていた。

 

「流石、虚狩りってところね、でも教えるわ。私の聖剣の能力は『未来予視』――まあ、漫画やアニメを見たことがあるならわかるけど、読んで字のごとくね、未来が見えるの」

「――ならば、貴様の予知が間に合わない剣速で倒せばいい!」

大体のフィクションで未来予知を破る方法の一つに、相手が予知しても間に合わないほどのスピードで倒す、というのが存在する。

 

 

「っ――早い」

しかし、それができるのは相手と自分の力量差が大きく乖離していた場合のみ使える時の、みである。

力関係が拮抗している場合、ましてや劣っている時に使えるものではない。

 

加えて、星見雅はブリンガーとの決戦を終えた後、消耗した後ではライに押されるのは必然というものだろう。

 

「さて、長引かせる必要もないわね。消耗した貴方じゃ私を超えられない――『真ニードルハンマー!!』

「はぁ――ッ!!」

再び形状がハンマーへと変化し、今度は容赦なく本気の一撃が振るわれる。しかし、ここは流石と言ったところか刀は一時拮抗し、その後弾かれることもなく一時距離が生まれた程度であった。

 

だが、これが致命的だった。なぜならば、このわずかな距離が彼女の武器をハンマーから杖に変化させる時間を作ってしまったのだ。

 

「この状況、既に“見えてました”――『エレキトラップ!』」

 

「――こんな、ものッ!!」

トンッと地面に杖を押し当てる。それと同時に、空気に電気が帯電する――それは、般若の如き表情を見せた彼女すら止めて見せた。

 

「なんだ、これ動けない――ぐっ」

もちろん、他の六課の面々も捕縛済み――悠真なんて、感電し自身の武器を落としてしまうほどだった。

 

「人間って、5~10mAで筋肉が収縮して、手が動かしずらくなるんだよ――いくら、貴方たちが超人であったとしてもそう簡単に動けないと思うけど――」

「それが、どうしたッ!!」

「――例外はいるわね」

エレキトラップを無理やり突破しかけている雅を見ながら呟く。どうやら、超人オブ超人にはあまり意味がないようだ。

 

(何とか、彼女と刀を分断できてよかった――所見殺しみたいなものだから、助かったわ)

 

すれば、彼女はしゃがみ彼の胸に手をかける。

「どう、して――ライ」

「ごめんなさい、世界のためなの――だから、死んでもらうね?」

聖剣の力を手に込め、どんどんナナシの体の中に入り込んでいく。

 

 

痛覚がないからか何も感じないが、そんな状況だからこそナナシは冷静に彼女に問いかけた。

「――それは本当に君がやりたいことなのか?」

「ええ、そうよ――これが私“達”の使命だもの」

「そっか」

 

彼女の言葉を聞き、かつての自信を思い出す。

(人の振り見て我が振り直せ――ってこのことかぁ)

 

「なら、どうしてそんなに泣いているんだ?」

ぽつり、ぽつりとナナシの顔にかかる彼女の涙、きっと本意ではないのだろう。

 

「え、私――泣いてる。いや、違うわ――私の、私“達”の使命は――」

「それが、本当に君のやりたいことなのか?」

世界のためにと使命を遂行しようとする彼女の顔がどうにも過去の自分と重なって仕方がなかった。

 

俺の場合はアキラやリンと出会って、みんなと生きたいと、一緒にいろんな事をしたいと願った。

 

「したいこと――そうよ、そのはずよ。でも、私はナナシを殺したくない――あれ、でも聖剣を奪うには――やっぱり、殺さないと!」

「―――」

力なく、ナナシは彼女を見上げる。

『そんなことないよ、何かあるんだったら話して――絶対力になって見せるから』と口を動かしたつもりだった。

 

 

もう、彼にそこまでの力は残っていない。残りは、漠然な状況しか感じられない脳みそが動いているのみだった。

(――希望は、残さないと、俺はもう彼女を救えない)

 

左腕は既に機械。だが、完全ではない肩から少しだけ腕が伸びている。アポロが両腕が飛んでもゴッドハンドを使い続けたように、指向性を保つくらいならできるかもしれない。

 

今残っている、そして行使できる力をすべて左腕に乗せる。

「―――」

 

「何をするつもり――やらせないわ!!」

瞬撃。ナナシの左腕も今度は肩から斬られ、力なく転がっていく。

 

「やめろ!!」

その光景を、見ることだけしかできない雅は口から血がにじむほど歯を食いしばりながらエレキトラップを突破しようとライを睨み続けていた。

 

(希望は残せた――)

ナナシは、僅かな猶予で希望を残し安堵した。

既に、未来は変えられない。いや、最初から変えられる状況じゃなかったのかもしれない、本当に未来を予知していならこの足掻きも無駄かもしれない。

 

 

(でも、無駄じゃないし、無価値じゃないんだろ――アルターエゴ。俺は、足掻いたよ――あとは、アキラとリンに――)

 

 

 

自身の命が消えるのはわかってる。だからこそ、残っている全ての力をライのためではなくアキラとリンに使いたかった。

 

「リン、アキラ――ありがとう。俺――二人のおかげで人間になれた、希望をもらえて、毎日楽しくて――幸せだった。でも、聖剣のごたごたに君たちを巻き込みたくない。だから――」

『やめて、ナナシ。そんな、最期みたいな話しないでよ!!』

『僕と約束しただろ!――死なないでくれ、ナナシ!!』

イアス越しに叫ぶリンとアキラ。しかし、彼らの叫び虚しくナナシは最後の言葉を口にした。

 

「気にしないで、どうか俺のことは忘れて」

 

その瞬間、ナナシの胸に刺さっていたライの手が引き抜かれる。

「あ、」

 

 

その手には、地球の輝きを収めたような宝石が握られていた。その姿を見て、本物だと確信したライは次のようにつぶやいた。

 

「さようなら、ナナシ。あなたのおかげで世界は救われるわ」

 

 

ナナシの命は完全に消え去った。

 

 

 

 

 

意識空間の中、ナナシはぼーっとそこを眺めていた。

 

「あ、サクラ。どうしたの?見送りでもしに来た?」

「そんなところよ――」

てっきり負けたことについて散々言われるかと思ったが本当に見送りに来たようで拍子抜けするナナシ。

 

「一応、話しておくわ。あなたがお兄ちゃんみたいに蘇るのは不可能だから」

「――そっか」

「驚かないのね。もし、あなたの魂を聖剣に保存しようと思ったら似た存在と融合を始めちゃうの――アルターエゴは元からお兄ちゃんと別れた存在だから問題ないけど――あなたの場合はお兄ちゃんと融合を始めちゃうから――」

 

 

「分かってるよ――ありがとう」

「え?」

感謝を伝えられたことが意外だったのか声を漏らすサクラ。

 

「あんたのおかげで、俺は幸せな毎日を送れた。すごい感謝してるよ」

「そ、そう?――でも、私あなたに凄い酷いこと言ったわ、それに寿命だってものすごく短く――」

「確かに、酷いと思ったけどあれはいつか誰かが言わなくちゃいけないことだったから、恨んでないよ。それに、時間はあんまり関係ないんだ――俺はあの一時を全力で生きてこれた――すごい楽しかったよ」

ナナシの笑顔を見てきゅっと胸を占められるサクラ。

 

 

「それじゃあ、行くね」

「――えぇ」

ナナシは立ち上がり暗闇の道を歩く。どこに行きつくかはわからない、もしかしたら聖剣被害者の会の一員になるかもしれない。

 

 

 

だが、ナナシは言い忘れていたことを思い出し振り向く。

「どうしたの?」

「いや、言い忘れを思い出して、その――」

何やら照れているようでもじもじとしながら、意を決したようで顔を上げた。

 

 

その照れを誤魔化すように彼は全力で叫ぶように言った。

 

 

「産んでくれて、ありがとう。お母さん!!愛してる!!」

 

 

「ッ――」

笑顔のまま、彼は去っていく。サクラにはその後姿を眺めることしかできなかった。

 

 




さて、登場しましたね次回の章のボス。聖剣オーガの使い手、ライ(Lie)でした。
もしかしたら、過去の話で怪しんでいた人はいるかもしれませんね。

まさかの、原作キャラは生存してオリジナルキャラが死亡とはね、しかも主人公――

この章も終わりということで、どうか!モチベのために!この章の感想を残して行ってください。

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