ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第80話・物差し

 

 

アジトの発見。もちろん、ありがたいことに変わりはない。

しかし、その知らせを聞いた六課の面々やアキラ、リンの表情は芳しいものではなかった。

 

「――その、本当なのか?店の裏でメロンを齧っているところがカメラの映ったというのは」

 

「うん、私も知らせを聞いたときは耳を疑ったんだけどね」

 

何と、発見場所はホロウでも何でもなくその大規模な窃盗事件があった街に監視カメラをホロウに続く場所まで仕掛けていたのだ。

 

だが、映っていた映像によれば――

 

狐耳をピンと伸ばしながら我慢できなかったのか綺麗に斬られたメロンにかぶりつくライの姿があった。

 

『美味しい!美味しいわ――やっぱり、一番はメロンよね。お肉は――食べれないし、ふふっ、久しぶりのご飯だからいっぱい食べないと――』

 

そう言い残して、そそくさと近辺のホロウに食料を持って帰っていくライの姿が確認できた。その姿に、聖剣片手に雅さんたちを追い詰めた影も形もなく追われているただの少女にしか見えないのだ。

 

 

「でも、本当にそっくりだよね。私、雅さんとライを見比べても双子かなって思っちゃうもん!」

 

「彼女は自身を、三代目当主のクローンだと言っていました。確かに、容姿はほとんど同じですが、性格が異なります――ですが、この映像を見る限り根っこの部分はほとんど変わらないかと」

 

柳さんの分析でも、ほぼ完全一致している容姿。性格は、天然、そしてメロン好き――言うならば、難しい言い回しをしなくなった雅さんとのこと。

 

首を傾げ、手を組みながら映像を観察する悠真と蒼角。

「確かに、課長と似すぎて同じ姿なら見分けがつきませんねこれじゃ」

 

「うん!ボスとそっくり――けど、蒼角ね絶対に許せないから容赦なくやっちゃうから!」

 

「その意気だ、蒼角。柳、悠真隊員、お前たちの考えはわかった。だが、私とライは容姿の上で決定的な違いが存在する」

 

「決定的な違い、ですか?それは一体――?」

短く、雅は頷く。だが、その瞳には絶対的な自信が宿されていた。

 

 

「私の方が可愛い」

 

 

ビデオ屋の工房内を沈黙が包む。叫ぶように告げられず、それが、ただ当たり前のことを当たり前に伝えたと自信を持って断言しているようだった。

 

「―――」

蒼角は驚き、目を見開いた状態で固まり。柳はやれやれという感じに首を横に振り。悠真は、笑いをこらえているのか口を押えて振るえていた。

 

その空気の中で先陣を切るリン。

「――そうだ!それで、結局どうやってライを倒すかなんだけど――実は、シーザーが倒れちゃって、他の陣営にも声をかけてみようと思うんだけど――」

元々、あの戦場にはすぐそこまでヴィクトリア家政が駆けつけて来てくれていたそうだが、六課を相手した後のグランに足止めをされ到着できなかったと報告を受けている。

 

『――ナナシ様の命を奪った方には、十分お礼を差し上げる必要があるようですね』

ものすごい、不謹慎な文脈に見えるがライカンさんの表情は狼というか鬼。他の三人も、同様で特にカリンは最近めっきり笑顔を見せず自分を責め続けているらしい。

 

『カリンの大切な人を――』

なんて、光のない目でぶつぶつ言っていたところをリナが目撃したらしい。

 

 

しかし、六課の返答は予想外の物だった。

 

「必要はない。元より、六課のみで作戦に当たるつもりだった」

 

「え、無茶だよ!いくら、雅さんたちが強いって言ってもライ相手じゃこの間みたいにやれちゃうんじゃないの?」

 

前回の戦いでは、雅さんが相手の未来予視による剣戟を上回ることができず敗北となった。

 

「ああ、そうかもしれないな。だが、助力は不要だ――奴の必殺技を覚えているか?」

 

「必殺技?――えっと、確か『デススピアー』『ニードルハンマー』『エレキトラップ』だったかな?」

 

「そうだ、そのうち一番我らの脅威となるのは『エレキトラップ』だ」

 

「うん――気づいたらみんなが絡めとられてて、イアスの視覚モジュールもやられてたね」

エレキトラップによって全員の動きが止められ。雅さんが腕力で引き裂いて脱出するまでは誰も動けなかったほどだ。

 

 

「あの時のように私が引き裂いても一対一ではおそらく勝ち目はない。だからこそ、一度引っかかり慣れたメンバーで行きたい」

 

「課長の言う通り、あのエレキトラップは初見だからこそ引っかかりました。十分避けられるモーションはありましたし――ですが、もし初見の方々を連れて行けばその方たちが引っかかり、最悪の場合人質、盾――二次災害を起こしかねないと考えたのです」

 

「六課のみんなの言い分は理解したよ。でも、本当に大丈夫かな――なんだか、嫌な予感がするの」

リンの嫌な予感はおそらくこの場にいる全員が理解しているだろう、一番厄介なエレキトラップ対策で六課のメンバーだけで行くのは理解できる。

 

しかし、ライの聖剣は必殺技を使用するたびに姿を変えた。

確認した限り、ハンマー、槍、杖――そして刀。まだ、判明していない必殺技も存在するだろう。

 

 

「だが、やるしかないのだ――現状で最も奴に対抗できるのは我ら以外にはいない――わかってくれ」

 

「――うん、だけど危なくなったらすぐ撤退するからね!ナナシの仇は必ず取るけど、それで雅さんたちが死んだら本末転倒だよ!」

雅さんは強く頷き、凛々しく引き締まった表情からはある種の執念すら感じられた。

 

「わかった、肝に銘じておこう」

 

 

 

 

そして、その日のうちに六課とリン、アキラは窃盗事件のあった郊外の町へと向かった。

 

「ここが、例の窃盗のあった店か」

見た感じはどこにでもありそうな店だが、やはり郊外製で動かない三体のボンプが定員として立っていた。一応人間の定員はいるもののこれでは警備はないものと思っていいだろう。

 

 

周りを警戒する柳と悠真。

「特段、おかしな点はありませんね」

 

「おかしな所があっても僕たちの前には現れないと思いますけどね」

 

「だが、警戒は怠るな」

 

敵が近くにいるかもしれないという緊張。既に未来予視に映っているのではないかという嫌な予感――ともかく、六課の中に流れていた空気は、周りのただの郊外の街並みには合わないほど殺伐としていた。

 

 

すると、蒼角が何やら発見したようで柳を呼ぶ。

 

「ナギねぇ!見て、見て!」

 

「どうしたんですか、蒼角?」

 

柳が向かい、屈んでみるとそこには何かの食べかすのようなものが散らかっていた。

それを一つまみ、つまむんで指先でくるくる回転させている内にピンと来たのか彼女はその場を立ち上がった。

 

「これ、メロンですね――課長、間違いありませんか?」

 

メロンと思われる欠片を星見雅の鼻の近くまでつまんで近づけていく、スンスンと嗅いだ後、彼女は『メロンだ』と断言した。

 

「間違いなく、私たちが追っているライの痕跡ですね――あら?」

周辺にも痕跡がないか右往左往確認して見ると、メロンの食べかすが転がっていた場所から、同じ食べかすが自分たちが今いる店の裏手まで続いていたのだ。

 

(――もしかして、そんなはずありませんよね?)

 

念のために、と三人に手振りで合図を送った柳は足音を立てぬように忍び足で裏手まで接近していく。

 

「――美味しい、美味しい――もっと、食べたい。けど、街には戻れないし――」

そこには、しゃがみながらメロンを小動物のように口に運び齧っているライがいた。その光景に唖然とする柳、映像で見てからなんとなくは感じていたが初対面とのギャップがかなりあるのだ。

 

(――本当に、彼女がナナシを殺したんですか、いや殺せるんですか?)

 

そこには、普通の少女しかおらず。ついその光景を呆然と眺めていた柳。

 

「――あれ?」

その時、何かを察知したのかライの視線が上を向く。

 

「あ」

途端に重なる視線。沈黙が数秒流れた、だがその中でもなぜかライのメロンを齧る手は止まっていなかった。

 

はっ、と正気を取り戻した柳は振り向き呼びかける。

「課長!」

 

「逃げなきゃ!!」

メロンを片手にとんでもないスピードで郊外の荒野を駆けるライ。もちろん、そのスピードはここにいる人間では届くはずもない。

 

 

「先に追っている、後から来い」

だが、彼女の場合は違う。六課の他の面々に指示を出した後、一目散にライを追いに向かう。現虚狩りである星見雅ならばライのスピードに拮抗することもできる。

 

「――追ってこないでって言ったのに!」

目星をつけていたホロウまで全力で走ったライは最後に星見雅の方へ振り向き捨て台詞を吐いたと見るや否や、すぐさま聖剣オーガを取り出しホロウを切り裂き突入した。

 

「逃がしはしない!」

 

それに続くように同じ裂け目に入った星見雅。数度の圧迫感を感じながらもついていく彼女が突如立ち止まる。

 

「私、言ったよね。次会ったら“殺す”って――何で、来たの?」

 

振り向き、同時に沸き上がる巨大な殺気。単純な聖剣使いとして技量だけではなく、初代虚狩りのクローンという名は飾りではないと証明している。

 

「言う必要があるのか?」

 

「――いいわ。殺さないくらいで許してあげる、骨の二本や三本が折れたら帰るでしょ」

途端に苦虫を嚙み潰したよう顔になるライ。

 

「本当に、なぜ――ナナシを殺したのだ?」

一方星見宮は今、そして映像の時の姿を見て彼女の行動に違和感を抱かずにはいられなかった。ナナシやアルターエゴ、主に出会い、話した聖剣使い二人と同様に根っこの部分がどうにも悪人に成れていないような気がしたのだ。

 

「世界を救うためよ」

 

短く、伝える彼女の唇には迷いと、不安が現れていた。一体何を背負っているのか星見雅にはわからない。しかし、推測くらいならばできた。

 

「世界を――聖剣で願いを叶えるつもりか」

 

「そうよ、聖剣を四本すべて揃えて願うの――ホロウを無くしてって」

 

ホロウの消滅。その願いはおそらく本当に叶えられるのだろう、だがそれが何を意味しているのか、虚狩りとして戦ってきた彼女にはわかっていた。

 

「――悔しいが、新エリー都は現状、ホロウから取れるエーテル資源によって存続している。無くせば、多くの市民が犠牲になるだろう」

 

「ええ、でも長期的に見れば人類は復興するわ――世界のためなの。だから、私を追うのはやめて頂戴?――そうだ、他の残り二人の聖剣使いを倒すのを手伝ってくれないかしら?現、虚狩りの力を借りられれば百人引きだもの!!」

 

満面の笑みで微笑む彼女。その姿を見て、星見雅は思わず身震いした。彼女は決して自分を悪だとは思っていない、いや正確には悪ではない。

物差しが違うのだ、彼女は人間ではなく、人類という単位で物事考えている。だからこそ、一人や二人の犠牲も許容するのだ。

 

 

だが、彼女が身震いした要因はそこではない。先ほどまでの彼女はいわゆる人間単位で物事考えているように優しい人物であった。

しかし、目的を聞いた途端その雰囲気は別物へと変わり単位もそれ相応の物へと変化した。

 

「断る。だが、一つ聞かせてほしい――なぜ、お前がそれをする必要がある?」

 

「え――?」

 

空気が変わる。雰囲気が変わる。目つきが変わる。混沌が渦巻いた。様々な変化がその疑問を一つ投げかけただけで発生したのだ。

 

「私“達”の使命だからだよ?」

 

「“達”とはなんだ、お前の後ろに何がい――」

呆然と、その光景を眺める。もちろん、彼女が問いかけた“後ろ”というのは直接的ではなくバックに誰がいるんだ。という、問いかけであったわけだ。

しかし、限りなく近い偽物とはいえ同じ聖剣オーガを持っていた星見雅の目には映っていた。

渦巻く、怨念の塊――表現するならば、死者の呼び声と言わざるを得ないものが後ろに集まっていたのだ。

 

「もう、質問はいいよね?――私と来ないなら、半殺しくらいで済ませてあげる!!」

 

「ッ!望むところだ!!」

呆然としていた、自身を我に返し互いに刀を構えた両者が激突する。相変わらず、押される雅。

未来予視が効いているのか自身の一撃一撃が先読みされ、加速が乗らず威力が抑えられる。

 

 

一対一ならば星見雅の勝ち目は薄い。彼女が祈るのは置いてきた仲間たちが早急にこの場に現れることのみだった。

 




さて、この話で少し書き方を変えてみたんですけど違和感があったり、前の方がいい!って人は感想で教えてください!!

それにしても、ライには違和感がありますね。さあ、一体どういうことなのか?

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
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