ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第81話・偽ゴッドキャノン

 

 

「くっ――はぁっ!」

 

「それじゃあ、私は倒せないわ!」

数度重なる刃。一撃一撃の重さは本来同じのはず、だが互角ではなく星見雅が押されていた。刀の振りの強さには様々な要因が存在する、筋力、体重、技術は言わずもがな拮抗している。

だが、刀を振るスピードこれが押される展開を作り上げてきた。拳もそうだが、しっかり曲がった肘から加速して真っすぐになった瞬間に一番火力が出る。

 

「そろそろ、潮時ね」

 

しかし、未来予視の能力はそれを許さない。あらゆる数値が互角な二人、未来を見る能力によってライが一歩先を行っているのだ。

一歩先に言っていたとしても星見雅はそれを前提に置き対応する。だが、いくら彼女が天才で、最強だろうともほんの少し、少しだけ歪が生まれるのだ。

瞬時に、刀がハンマーへと変わる。

 

「さようなら、意外とあっけなかったわね」

 

「何を言っている!」

 

ハンマーと刀では当然後者の方が振りが早い。ほぼ拮抗している今の時点でそれは自殺行為、今こそ好機と一歩、踏み込んだ――

 

「なッ――」

 

その歪は距離の誤認という形で現れた。

一歩踏み込むだけでは微妙に届いておらず、それを見越していたのか振りの遅いハンマーを思いっきり振り飛ばした。

 

「既に、見えていたわ『真・ニードルハンマー!』」

 

「ッ、ふぅ――」

 

刀を寸前に滑り込ませて何とか衝撃を和らげるものの、体はゴルフボールのように宙を舞い、彼女が刀を地面に突き刺し勢いを抑えるまで続いた。

すぐ顔を上げ、追撃に備えるも相手は依然として余裕の表情を継続させたまま動かない。

 

「あの振りを刀で受け止められるなんて、流石と言ったところね」

 

「その余裕、私が今すぐ崩そ――」

刀を改めて握り、駆けだそうとしたその瞬間、雅の動きが止まる。

 

「崩れないわ――だって、あなたはもう戦えないもの。今の一撃で肩が外れたはずよむしろ何でその程度で済んでいるのか疑問なくらいだけど」

 

「肩が外れたなら、再び戻せばいいことだ」

ぐりッと鈍い音を鳴らしながら右肩を戻す。

 

「―――もういいわ。ちょうど、あなたのお仲間も来たところです。まとめて、終わりにしましょう」

ライが視線を向けた先に雅も自然を顔を向ける。すると、彼女が予視していた通りに裂け目が開き、彼女の仲間たちが続々とその中から現れた。

 

「雅さん、大丈夫!!」

すぐに駆け寄るイアス。他の三人も早急に来たからかその表情には疲労が少しうかがえる。

 

 

「どうやら、私たちが来るのは既に読まれていたみたいですね」

 

「関係ありませんよ、課長。僕たちがすべきことは結局何も変わらないんですから」

 

「蒼角。絶対に許さないから!」

それぞれが、臨戦態勢へと変わり。その殺気はライ一人に向けられる、虚狩り率いる六課の圧など並大抵のものが受ければ発狂しそうなものだが、冷静で、冷徹な視線を彼女は向けていた。

 

頭を抱え、淡々と彼女は告げる。

「諦めないのは、差がわかっていないからかしら」

 

「差があったとしても、我らならば貴様を超えられる」

 

「――そう、いいセリフね。なら、試してあげるわ」

すると、彼女の聖剣がハンマーから今度は機関銃のようなものへ姿が変わる。だが、一般的なものとは異なり弾丸をベルトでまとめた弾帯のようなものは見えず、まるでただのアサルトライフルのような出で立ちだった。

 

「剣じゃなくて銃!?」

 

「みんな、蒼角の後ろに隠れて!」

その冷たい銃口が向いたことを察知した蒼角はすぐさま鋼鉄の刃旗を立て防御の姿勢に入る。その裏に回る四人、もし本当に必殺技級の連射攻撃ならば刀ではじくには限界が来る。

 

「――ッ、『デスレイン!!』

 

轟音が鳴り響く、予想通りの弾幕の雨がまるでゲリラ豪雨のように降り注ぐ。

だが、後ろに回った五人は防ぎきれると確信していた。なぜなら、機関銃の銃身を交換しない場合の最大連射数は大体数百発~数千発――それならば、蒼角の刃旗の盾が決壊することは――ない。

 

「そんなわけないでしょ」

 

トリガーを引いたままその銃口を下に傾ける。同時に、抉れていく地面その余波は地面に突き立てていた刃旗にも及んでいた。

確かに、本家機関銃とは違い一撃一撃がそこまで強いわけじゃない。しかし、地面を抉り土台を壊せばあの刃旗の盾は崩れる。

 

「な、ナギねぇどうしよう?」

 

「蒼角落ち着いて――今は少しでも持たせることを考えて」

だとしても、依然としてピンチに変わりはない。おそらく、ほぼ弾丸は無限、回避しようにもあまりにも多すぎる。弾いても、攻撃に移れない。

 

下唇をかみしめた。その時だった――何かあったのか弾丸の雨が止んだ。刃旗の影から確認すると機関銃が槍へ変わっている。

 

「ッ、どうしてあなたが!『デススピアー!』」

 

「いくらでも、復活するさ――返してもらうぞ、聖剣を!『偽ゴッドキャノン!』

 

空中に空いた裂け目、そこから現れた赤い大剣を背負ったナナシと全く同じ姿の男。彼は、しゃがんだ時と同じように足を屈め、その先にエネルギーの球体を出現させ、両足で思いっきり蹴飛ばした。

 

 

まるで銃弾のように回転した槍が、エネルギー派とぶつかる。だが、すぐさま槍に絡めとられ虚空へと消えた。

 

「ナナシではないな――アルターエゴか」

 

「ああ、だから手を貸して星見さん!ここから接近するのは俺一人だと厳しい」

 

「承知した、行くぞ!」

着地したアルターエゴが、偽ゴッドキャノンが消滅したと同時に走り出す。それに呼応し、刃旗の影から走る雅。

 

それを確認したライは槍を杖に変化させる。

「まあ、いいわ。本物はこっちが持ってるもの『エレキトラップ』

トンッと地面に杖を響かせる。すると、空中から電撃を帯びた糸が展開されていく、以前との違いで言えばそれが人に向かってではなく空間に向かって展開されたということだ。

 

 

「何も、動きを封じるだけじゃないわ。こうやって、あなた達の動きを制限させることだってできるんだから」

 

「星見さん――」

アルターエゴが頷き、星見雅も頷き返す。すると、先ほどまで横並びになりそうだった二人はアルターエゴが前、星見雅が後ろというようにブリンガーのビームを突破したものとは逆の陣形がとられていた。

 

 

「動きが封じられる前に壊せばいいんだよ『偽ゴッドキャノン!』」

再びしゃがんだように膝を折りたたみエネルギーの球体を生成――稲妻を模したようなその一撃は彼の蹴りだしと同時に放たれた。

射線上にあった、エレキトラップはほとんど切られ、重力に従い力なく垂れる。

 

(相手の強みは先読みからの、相手の本領を発揮させない迎撃能力、持ち前の剣戟もありながらこれをされれば堪ったもんじゃない。だからこそ、俺が先手を取る――出力はかなり低下してるけどやるしかない)

 

走りながら手を胸の前でクロスさせ気を溜める。そして思いっきり強く、一歩を踏み込みゴッドキャノンによって開いた一本道を突っ切り、放った。

 

「『偽ゴッドハンドX!』」

 

突撃の加速と共に放たれた黄金のゴッドハンドはマジン・ザ・ハンドのような固さを誇る。直線的すぎるが、威力はあるし何より今はこれで十分なのだ。

 

すると、離れた指の隙間から彼女の武器が今度は杖から槍に変わったのが確認できた。

 

「ッ、避けられない『デススピアー!』」

 

槍とゴッドハンドXが激突する。まるで、歯医者のドリルのような音を立てて貫こうとするがその手を打ち砕くことが中々できない。それを確認したアルターエゴは後ろに合図を送る。

 

「今!」

 

「終わりだ!」

 

ゴッドハンドXを飛び越えて跳躍した星見雅の刀には先ほどまで背で溜めていた大量の狐火が込められていた。

(未来予視を破るためには、そもそも未来を見ても回避できないくらいの攻撃を浴びせるのが手っ取り早い。少なくとも、相手は常に未来を見ているわけじゃないし、長時間の未来も見えないみたいだ――おそらく見れても五秒先までだな)

 

渾身の一撃。ゴッドハンドXを槍で止めている現状、それを解除し星見雅の一撃を守ればそっちを食らうことになる。逆もまたしかりである――

 

(この二択てっきり星見さんの方を守ればいいように思うが、実際には俺の後ろに柳さんたちが追撃のチャンスを伺ってる。どちらをとっても俺たちが勝つ)

 

 

はずだった、指の隙間から見えたライの表情は一切曇っていない。まるで、こんな状況はピンチではない――と言わんばかりであった。

 

「舐められたものね――」

 

その時、アルターエゴのゴッドハンドXと拮抗していたデススピアーが解除される。その瞬間から再び直進を開始するが――見えた、槍が手袋に変わっていることを――

 

 

「『ハイボルテージ!!』」

 

 

パンッと両手を叩き電撃によるバリアが展開される。その規模は星見さんの一閃、そしてゴッドハンドXの突撃もカバーできるほどであった。

無論、二人ともそのような壁に臆するわけがなくそれぞれ、刀を振り、突撃するも――容赦なく弾かれてしまった。

 

「なんだこの技は!?」

 

「――この技を使わせるとはね」

 

すぐさま、手袋が機関銃へ変化し銃口は柳さんたちの元へ向く。

 

「悪いけど、逃げさせてもらうわね『デスレイン!』

 

「ッ、仕方ない『偽イジゲン・ザ・ハンド!』

 

放たれる無数の弾丸を前に、展開されるドーム状のバリア。受けるのではなく受け流された弾丸が後方で破裂し、その音が戦場の苛烈さを引き立たせていた。

数秒後、弾幕止み――星見雅が斬りに一閃。

 

 

叩き込んだと同時に晴れた煙の中にはライの姿はどこにもなかった。

 




特に書くことがなかったので一応疑問に思っている人がいるかと思うので説明します。
どうして、ナナシはわざわざ四肢をぶった切られてから殺されたのか、最初の不意打ちで聖剣奪えばよかったじゃんって思った人がいると思うんですよ。

それは、奪う前にアルターエゴが両腕失っても散々暴れてたのを見てたので、不意打ちで心臓をぶち抜いてもなんか反撃されそうだと言う理由で抵抗できないくらいやられたというわけです。

それにしても、0号の話を見たんですが、ナナシと親和性が高くてびっくりしました。話の展開がしやすいですね、ナナシは死んだけど。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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