ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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この話、多分これまでゼンレスゾーンゼロ・聖剣の中で最も胸糞なものとなります。

注意して進んでね!!


第85話・吐き気を催す邪悪

 

 

階段を数分下っていくと、見慣れない鉄扉の前まで来ていた。無言で姫子は、その扉に耳をかざす、どうやら異常はなく向こう側には誰もいないらしい。

 

 

扉を開け、姫子の手招きと同時に中に入る。そこには、液体で満たされた円柱型のガラス室が複数置かれていた。

中身は液体だけで何も入っておらず、俺たち以外には誰もいない。

 

「姫子先生、あそこに扉があります」

「えぇ、今行くわ」

ちょうど、入ってきた場所の反対側にまたどこかに出られるであろう扉がついている。そこに姫子が近づき、耳を当て向こう側を確認する。

 

『――今日が、例の実験の最終段階なんだろう?』

『ああ、さっき見ただろ――にしても酷いよなぁ、まだ七歳だってのに』

向こう側から聞こえた会話に姫子は目を丸くする。一瞬、これを話すべきか悩んだが彼女は何も言わず、アポロに向き直る。

 

 

「?」

首を傾げるアポロに、ピースの形で人数を伝え彼も頷いた。

その時、端末にアインシュタイン博士からのメッセージが送られてくる。

 

『無事に警備システムは無効かした。いつでも行っていいよ』

その端末を、アポロに見せた後3.2.1と指を折る。同時に腰のホルスターに駆けられた銃――ではなく、それぞれ、風の緑、夜の闇を纏った両手剣を抜く。

 

 

0と折る指が無くなった瞬間、姫子が勢いよく扉を開きアポロが先に単身突入する。

「『デスソード』」

黒の短剣から放たれる剣のような鋭さとビームのような勢いを持った一撃は敵が銃撃での反撃を行う前に銃を砕き、そこを姫子が拘束する。

 

 

「ッ!侵入sy「『マッハウィンド』」――うっ」

そしてもう一人の男も疾風の如く接近したアポロによって一瞬で意識を刈り取られその場に倒れ伏した。

 

 

 

「ナイスよ、アポロ。このまま制御室に向かうわ」

「うん、ロボットは俺に任せて」

アインシュタイン博士が作ってくれた数分間を使い二人は研究室を回っていく、道中警備員が居たりロボットが警備していたが現状、警備システムが無効化されていることに気づいているやつらはおらず、楽々進むことができた。

 

(だけど、警備ロボットの無効化は無理なんだよな。それに、ここまで順調に行くなんて逆に怖いな)

 

しかし、その楽々さは二人に確かな緊張を与えていた。

 

 

その緊張は、ついに到達した制御室にて安堵へと変わった。

姫子が扉に耳を忍ばせ、中の音を探る――どうやら、物音の数は三人分らしくアポロに指で三人と合図を出す。

 

アポロは右手で二、と合図を出し姫子もそれに頷き返す。

 

 

「『マッハウィンド』」

突入と同時に、姫子は左、アポロは右に駆けだす。

疾風の如きスピードで迫る彼に反応することはできず、一人はその場に倒れる。

 

「マズい!」

「やらせないよ――はぁッ!」

 

もう一人が俺たちを見るなりすぐ制御盤にあるボタンを押そうとしたのをすぐ刃を入れ妨害し、そのまま意識を刈り取った。

 

「先生は――流石です」

「さっさとシステムの制御を奪うわよ。セントラルドグマへの道もこれで開けるでしょうね」

二人を聖剣を使い瞬殺した後、姫子も倒したらしくその場に男を寝かせる。

(やっぱり、姫子先生って強いなぁ――聖剣なしで瞬殺なんて)

 

完全に奇襲とはいえ、人数不利かつ相手は完全武装の状態だ。だというのに、姫子先生は圧倒的な身のこなしで背後に回り意識を刈り取って見せた。

 

 

姫子は慣れた手つきで制御室の端末を操作する。すると、端末の一部が光だしそこからICカードのようなものが出てくる。

『よくやった、二人とも。間違いない、施設のマスターキーだ。これでセントラルドグマへは直行できる、後は警備システムを無効化してくれ――そろそろこっちも限界が近い』

 

アインシュタイン博士の指示のもと警備システムの無効化をしようとした――その瞬間。

 

ウーウーウー

 

周りの、画面がすべて真っ赤に染まる。耳障りな警報音と共に聞こえてくるたくさんの足音――画面には、警備員たちが一目散に制御室に向かっている映像が映し出されていた。

 

「ッ!?一体、何が?」

「おかしいわ、確実に間違った操作はしていないはずよ」

困惑する二人の元にアインシュタイン博士から連絡が入る。

 

『よく聞いてくれ二人とも、おそらく僕たちの侵入は最初からバレていた。だから、制御室に罠が仕掛けられていたんだと思う。すぐに、脱出の方法を模索してみるそれまで――「待って頂戴」』

冷静な彼女の分析に待ったをかけたのはアポロではなく、姫子だった。

 

「私たちはこのままセントラルドグマへ向かうわ」

『無茶だ、戦力差があまりにも大きすぎるそれよりも撤退を優先した方がいい』

「えぇ、だけど地図を見る限り出口よりもセントラルドグマの方が近いわ――」

 

姫子の言う通り制御室とセントラルドグマは近い。その上、マスターキーも手に入ったピンチではあるが千載一遇のチャンスでもある。

既に、潜入がバレたというならここでサクラを助けに行かなければ次のチャンスが回ってくるかどうかわからない。

 

『確かに、セントラルドグマの方が近いが無謀としか言えない。今すぐ帰ってきて次のチャン「アインシュタイン、私たちの目的を知ってそんなことを言うのかしら?」――好きにしろ。僕も、ギリギリまで脱出の方法を模索してみる』

「ありがとう、あんたを協力者に選んでよかったわ――行くわよ、アポロ」

「――はい」

 

覚悟を決めた、否決めざるを得ない。アインシュタイン博士にお礼を言い最深部セントラルドグマを目指すことになった。

けたたましいサイレンは鳴ったまま、それがまるでこれから起きる出来事のBGMの用だった。

 

 

鉄の扉を開け、セントラルドグマを目指そうとした矢先その通路に男が立ちふさがっていた。その手には、見慣れないロングソードが握られその異様さから人工聖剣であることがわかる。

「よりにもよって、今日――か、悪いが一歩も――」

 

道を塞いでいた男の目が留まる。その先に、いたのはアポロ――対する、アポロもその男を見て目を丸くしていた。

彼の視界の中でさっきまで研究所だったこの場所が燃える家の内部へと変わり、徐々に鮮明になっていく。

 

「おまえぇぇぇ!!」

 

咆哮するアポロ。姫子は、そんな彼を見て一瞬で目の前の男が誰だか察する。間違いなく、目の前の男はあの日、おばあちゃん殺し、妹を攫った組織の男だと。

 

「あの時の――そうか、これも運命か」

「何が運命だ!サクラを返せぇぇ!!」

「待ちなさい、アポロ」

今にも飛び掛かりそうに、聖剣を抜こうとするアポロを制止する姫子。

すると、彼らしくないくらい憎悪を持った瞳を姫子に向ける――もちろん、理解はしている。目の前の人物が因縁がありすぎる相手だということも、だからこそ姫子は冷静でいる必要があると、暗に諭したのだ。

 

「――わかってるわよね。アポロ、“今”はその怒りをぶつける必要はないってこと」

「はい」

短く、答えた。その心情はあまりある。

 

 

「先に行きなさい、妹を助けるんでしょ?」

「――うん」

冷静になったアポロは、手を掛けた聖剣から手を離す。

 

「これも運命だ――あの時、お前の妹を攫って悪かったな」

「死ね」

謝罪を吐露する男。横を通っていく瞬間、一言恨み言をぶつけ姫子を残し一足早くセントラルドグマへ向かった。

 

 

去った後、男は姫子に向き直る。

 

「――あんたが、育ててここまで来させたのか?」

「ええ、そうよ――あいつが自分で選んだ道よ」

その一言に、男の顔は険しいものへと変わる。だが、瞬間脱力してその場にロングソードを突き刺す。

 

「どういうつもりかしら?」

「――俺はずっと後悔していた。それを晴らすときが来た、わかるだろ?どうせ、他人が苦しむだけならいいと思ってた。だがよ、いざ自分の身になると急に文句を言いたくなったんだ」

「―――そう、それでサクラは無事なの?」

「分からない、俺たちも警備してるだけで詳しいことは何も知らないんだ。俺の娘も、妻も全部実験台になった――無気力に終わると思ってた人生が最後の最後にこんなチャンスがやってくるなんてな」

絶望した表情のまま、男は装備を抜き出す。あらわになったその服の下には夥しい量の人工聖剣による浸食を受けた赤い線が走っていた。

 

 

「もうすぐ、ここに警備兵たちが来る。俺は少しでも、償いがしたい」

「――それは、ここの足止めを手伝うってこと?」

「ああ――どうせ、俺は所長に対して恨みしかないからな。やり返せるチャンスがあるなら今しかない」

どう考えても怪しい。しかし、対面している姫子にはわかる――彼はこちらと同じ失った者であると、もちろんアポロの心情を思うとすぐにでも殺したいが、状況が状況なのは変わりはない。

姫子は何も言わず頷き、協力関係は成った。

 

 

 

一方、アポロはセントラルドグマ前まで到着していた。

『よし、それじゃあそのマスターキーを近くの機械に翳すんだ』

「わかった」

 

長方形の機械にマスターキーをかざす。

『アクセス承認――ロック解除』

機械的な声が無機質に響く。直後、扉の表面に走る幾筋もの光が青白く明滅した。

 

「ここまで来れたのは、アインシュタイン博士のおかげだありがとう」

『――ああ、幸運を祈る』

 

カチッ、カチッ、ガシャコン――

内部機構が作動し、複雑なロックが次々と外れていく。静かなうねりと共に、扉の継ぎ目から向こう側の光が入る。

金属の塊が左右に滑り、熱い走行扉がゆっくりと開いていく。

 

 

「やあ、侵入者君?僕は、ティーフェ。よろしく」

それと同時に、視界に入ったのは椅子に腰かけ白衣を纏い地球のように青いロングソードを握る、青髪の一見少女のようにすら見えた小柄な男だった。

 

「―――」

彼の自己紹介に対してアポロは何も言わない。呆然と、男の後ろにある手術台の上に置かれている“それ”を呆然と見つめていた。

 

「無視かい?――ああ、そうか彼女のことか」

アポロの反応に対し、怪訝そうな態度を示す男。だが、視線の先にあるものに気づいたのか、手術台に近づき乗っていた“それ”を持ち上げ、アポロに対して投げ渡した。

 

 

「っ!――あ」

それを落とさぬように受け止めたアポロ。一糸まとわぬ“彼女”の顔を見つめ嘘ではないかと、ありえないと自問自答し続ける。

だが、その現実逃避は彼の一言で打ち消される。

 

「君の妹なんだろ?もう、用済みだからあげるよ。慰みものとして使ってくれてもいいよ?兄と妹でする趣味があるならだけど!!」

「――何をしたんだ」

僅か十三歳の立、いやアポロの手に納まるほど小さくなってしまったサクラを抱きしめながら男を睨みつける。

 

「ああ、流石に四肢がなかったら気になるよね?――うーん、暴れて邪魔だったから切っちゃった!てへっ?」

「―――」

「あれ?反応が悪いなぁ――せっかく、感動の兄妹再開だっていうのに、笑いなよ?」

何を思ったのか、自身の人差し指で自分の頬を持ち上げ笑顔を作る。その姿からは一切の悪意を感じず、アポロは理解できなかった。

 

 

「あ、そっか!そうだよね、何で死んじゃったのかちゃんと説明しないとか!!実はさぁ、僕のこれ、聖剣ジ・アースって言うんだけど、これを動かすために君の妹の魂が必要でね!盗っちゃったの!てへっ?」

「―――」

「えーまた無視?酷いなぁ――ま、いいけど」

 

 

「サクラ――」

呼んでも、彼女が言葉を返すことはない。虚ろな瞳がアポロの絶望した表情を映すのみだった。

 

 

「あれ?どうしたの、死んじゃった?もしかして、妹が死んだ姿を見てショック死しちゃったの~うけるんだけど~!!」

その姿を見て、男。いや、ティーフェ博士は嘲笑うように腹を抱えて大笑い。それは、少なくとも人間の心を持つものがする行為ではなかった。

 

(サクラ―――)

絶望していた。立ち上がる気力も何もかも失うほど、アポロは肩を落としサクラを抱きしめたまま喪失感を浴びる。

 

 

それは、これまでサクラのためにと生き続け、戦い続けてきたアポロにとって自身の死のようなものだった。

だからこそ、このタイミングに彼は解離性同一性障害――つまり、二重人格となりアルターエゴが誕生した。そう、アポロの意識は分裂したのだ。

 

本来であれば、アポロを生き延びさせるため動かなくなった主人格との交代を目論むはず――だが、その目論見は一瞬で灰燼に帰した。

 

 

不安、不信、憎悪、その他負の感情に満たされた主人格は死んだ。確かに、死んだのだ――しかし、アルターエゴが誕生し交代される間もなく、アポロの主人格は復活を遂げた。

 

さらに、強靭なものとなって。

 

「――どうして、こんなことができる?」

呟くように、ティーフェ博士に問いかける。

 

「え?うーん、やり方の説明は難しいなあぁ――魂の転移、なんて出来るのは僕だけだし」

「―――だろうな」

睨みつける。アポロは決して方法なんて聞いたつもりはない。なぜ、こんな非人道的なことができるのか聞いただけだ。

だが、ティーフェ博士の返答にもはやこれ以上話すことはないと自身が身に着けていた外套でサクラを包む。

 

 

「ごめん、守るって言ったのに――」

誓いは破られた。彼女の前で膝まづき、開いている瞼を閉じさせる。その表情は安らかなものとはかけ離れ、実験の凄惨さが滲むようだった。

 

「おーい、聞いてるのか?そうだ!君の妹の最後!今でも、笑えて来るよ!痛い~、寒い~なんて言って、その場にお兄ちゃんなんていないのに、助けを求めるなんて馬鹿みたいだろ~!!」

「――もう、黙れ」

「は?何、せっかく僕が君みたいなクソガキと話してやってるってのに――ちっ、冷めた。大体、君達は正しいことをしてるって思ってるの?何回も研究所を荒らして、実験体を逃がすし――はぁ、悪だよ悪、住居侵入って知ってるかい?」

先ほどまでの友好的?な態度は豹変し、悪辣な態度に変わるティーフェ博士。その変わりようを見ても、冷静にアポロは聖剣を抜いた。

 

 

「別に、俺たちがやってることが正義だと思ったことは一つもない。黒の中に俺たちはいる――だが、お前は黒の中でも、最も邪悪な黒だ!!」

「何、うまいこと言っちゃったって思ってるの?君と僕を一緒にしないでくれるかな?――それに、そんなおもちゃで何するのさ、僕のは本物だよ!本物!」

「それが?」

聖剣ジ・アースをこちらに向けてくる。確かに、聖剣は本物らしい――その輝きは地球のような希望に満ちたものだった。

 

 

「豚に真珠だな」

「はぁ?――君がほざくのか!それで、僕をどうするんだい?」

その剣は素晴らしい。だが、全体を見ればそうとしか見えなかった。

 

 

「殺す」

 

戦いの火ぶたは切られた。

 




はい、吐き気を催す邪悪ティーフェ博士戦ですね。次回にさっさとぶち殺そうと思っています。
さて、サラっと流されましたがアルターエゴが誕生していますね。すぐに押し込まれたけど

ゼンレスゾーンゼロ・聖剣を書き始める前に設定を用意していたこともあって書きやすかったんですけど、書いている途中めちゃくちゃイラついてました。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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