ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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この体は無限の絶望で出来ていた!!

――そうだ、絶望を作るんじゃない。俺は無限に絶望を内包した世界を作る。それだけが、うどん米に許された魔術だった。


第88話・最後の授業

 

 

「――散々私を弄んでいて実際に自分がそうなったら、どういう気分になるのかしら?」

サクラが掴んでいたのは、もはや少し大きな枕くらいのサイズになってしまった男。そう、組織が彼女にやったように四肢を斬られ、現在内臓をこねくり回されながらも聖剣で無理やり延命させてるのだ。

 

「ッ、最悪だよ。自業自得を体感しているだけだ――ああ、でもそれで君の気が収まるなら構わない」

「――つまらないわ。もっと、痛い、寒いって泣き叫べばいいのに、それとも感じることもできなくなったのかしら?」

サクラの予想は的中している。男は既に、聖剣を活動させすぎた代償に体中を侵されつくしもはや感覚という感覚はない。

 

 

(姫子はもう――セントラルドグマにたどり着いたかな――それならよかった。もう、思い残すことはない)

 

「ちッ、もういいわ。あんたで遊ぶのはもう飽きた――死になさい」

「ッ――」

男の腹をこねくり回していた聖剣に力を込め放出した。放たれた光は彼の肉体を呑み込み、その跡には影、塵すらも残らず焼けた空気がその出来事を象徴していた。

 

「――これで、あと一人。これが、終わったら人類を滅ぼしに向かいましょう、蛆虫みたいに湧いてる人間を、プチ、プチ、プチって潰してみたいの」

指もとで、何を潰すジャスチャーをしながら静かに笑う。その時、気配を察知したのか目線を向ける。

 

 

「そうね、あなたで試してみましょうか」

悪魔か、天使か、それとも神か――もはや人間の領域を逸脱したサクラの鋭い視線が一点に突き刺さる。

 

「返してもらうわよ、アポロを!」

その瞬間、暗い世界に一筋の光が差し込む。そして、サクラは見た―――烈火の光を。

姫子が握る大剣の刃に熱が籠り、辺りの空気を熱しながら切れ味を増す。

 

「遊んであげるわ――じわじわと、なぶり殺してあげる!!」

ジ・アースと姫子の大剣がぶつかると同時に震える大気。それは、世界の悲鳴のようにも聞こえたが、拮抗してる。

数度のぶつかり合いにも姫子は対応して見せていた。

それは、目の前のサクラと姫子が同等に渡り合えているということを示唆していた。

 

 

「ッ、せい!!」

「―――!」

大剣からさらに炎をジェットのように噴射し、ジ・アースを握るサクラの手を振り払う。そのまま、追撃の一閃はサクラの頬を掠めた。

 

「――!?その装甲は?」

「はぁ、はぁ。血が出たわね。あんたも負傷するのね?」

頬を掠めた部分からは血が垂れ、それを手で軽くふき取る。手についた血を見て、焦りもせずただ姫子を睨みつけた。

 

「どうやら、骨のある害虫が出てきたようね。ふっ、知ってるわ――お兄ちゃんの先生でしょ?あなたをじわじわとなぶって、叫んで、そして殺したら、お兄ちゃんはどうなるかな?」

「それは申し訳ないけど来ないわ。私って――結構――手ごわいのよね!!」

途中で息が切れ、その様子から装甲による浸食は深刻であると想像できる。体力の限界が近づこうとも、姫子の目は死ぬことはなくむしろその瞳は手に持つ大剣のように燃えていた。

 

「ふーん、無礼な人間ね」

「人間人間って、あんたアポロの記憶を探って私の名前を知らないってわけ?よく覚えておきなさい!あんたが今戦ってるのは――無量塔姫子よ!」

「よく知ってるわよ――お兄ちゃんを戦いに引き込んだ愚図ってこともね」

再びのロングソードと大剣のぶつかり合い、光と影が重なる。

 

 

「吹き飛びなさい!」

ジ・アースから光が発せられ、死が煙塵に纏わりつく。しかし、炎の剣が巻き起こす旋風がすべてを焼き尽くす。

 

「――あの装甲、ただの骨董品かと思ったけど妙ね。ジ・アースと似た力を感じる――もしかして、他の聖剣?それにしては、能力が足りない」

体のベースがアポロのせいかサクラは冷静に姫子の装甲を分析していた。

 

 

 

「――ここからが本番みたいね」

覚悟を決める。纏った雰囲気が先ほどまでとは別物に変わる、おそらく男や他の警備員を消滅させたときは本当に遊び感覚で殺しつくしていたのだ。

それが、今は全力で姫子を殺そうと殺気を向けて来ていた。

 

(教え子の成長をこんなところで味わうことになるなんてね)

 

そう、そもそもあの肉体はサクラの物ではない。これまで、自由にジ・アースの力を行使できているのはアポロが必死に鍛えたことによる努力を賜物であった。

 

 

大剣を構える姫子。対して、サクラの足元には円形の魔法陣が展開された、魔法陣からエネルギーがジ・アースに集中し放たれた。

「死を迎える準備はできた?『オーディンソード!』」

「うっ!」

黄金の剣は真っすぐと姫子に襲い掛かる、何とか大剣の腹で受け止めるもその勢いを抑えることができず足は地面を離れ吹き飛ばされる。

 

 

「『ザ・タワー』力の限り、抗うといいわ」

吹き飛ばされている姫子の背後の地面から塔が迫り上り、そこに姫子が激突する。

パチンッと指を鳴らすと脱出する間もなく地面から塔がさらに立ち昇り姫子を呑み込んだ。

 

 

さらに、サクラは剣先を姫子が飲み込まれた塔に向け力を集中させる。

「これで、身動きは取れないわ」

『クロスドライブ』『オーディンソード』『エクスカリバー』『ガラディーン』『ジ・アース』空気が震えた。あらゆる、必殺技が姫子を殺さんと塔もろとも塵に変えていく。

 

圧倒的な輝きが地を這うように奔り、空気を焼き、すさまじい熱と衝撃が起こり、姫子の悲鳴すらも飲み込んでしまった。

光に触れた塔は一瞬で蒸発し、僅かに遅れて衝撃波が襲う。

 

 

「――こんなものね、少しやりすぎたかしら。これなら、死体の塵一つ残らないわ」

その結果に満足したのか、視線を外し背中を晒す。

これで、ここの戦いは終わる。姫子は破れ、世界は聖剣の力によって混沌に落ちるだろう――もう、アポロを救う手段はない。

 

 

諦めるほかない――だって、どう考えても勝てない。そもそも、ただの人間が神様みたいなやつに挑むことから間違ってたんだ。

 

 

でも、ああ――彼女は決して諦めない。

 

 

どうして、かな?

 

 

なんで、また立ち上がるのかな――いくら頑張っても結果は変わらないのに――。

 

 

弱い、弱い人間なのに

 

 

こんな、美しくない世界でいくら抗っても無駄なのに

 

 

――いや、人間だからこそ最後まで立ち上がるんだ。

 

 

その時だった。ザ・タワーの塵の奥から烈火の光が上がったと思えばその中から大剣から射出された剣の一部がジェットエンジンにのって射出されサクラを襲う。

 

「ッ、はぁ!」

 

それを、ジ・アースで何とか防ぎ。軌道をずらす、その一撃は確かにアポロに憑依したサクラを倒せるほどの物だった。

だが、それよりも驚いたのはあれだけの必殺技の猛攻を避けられない状態でくらいまだ、反撃できるほどの余力を持っていたということだ。

 

「はぁ、はぁ――」

しかし、姫子の状態は酷いものだった。体は既に聖剣で侵されつくし、彼女の身体能力を補強していた真紅の装甲はボロボロに崩れ落ち形を保つのがやっとというほどだった。

 

 

「あんたの攻撃は終わり?それなら、私の番ね――」

体は既に死に体。当に限界を超えている、手足の感覚も薄れつつあった。それでも、彼女は倒れない、諦めない。

何よりも、その燃える炎のように真っ赤な瞳は死んでおらず睨み続けていた。

 

 

 

「文句ある!?」

 

 

 

彼女が啖呵を切った途端。サクラは聖剣に力を込め、足元に魔法陣を展開する。そこから蓄えられた力は聖剣に集中し『オーディンソード』を放った。

 

「死ね」

 

突き進む『オーディンソード』を前に大剣を構える姫子。すると、先ほど放たれた剣の一部が再び結合し今までにないほど大剣から炎が噴射される。

 

(アポロ、あんたが目を覚ました時すべてが変わってる)

 

炎と共に放たれた一閃は『オーディンソード』を逸らし、背後の壁を抉るのみだった。

その結果に目を丸くするサクラは更なる必殺技を放とうと聖剣を構える。

 

(あんたと一緒に平凡な日常を歩んであげることはできない。でも、諦めないで――何があっても諦めないで)

 

「ッ!『ジ・アース!』

放たれる極光。渦巻く螺旋は炎すら無に帰さんと襲い掛かる。本来であれば、人間が抵抗できるものではない、警備員も協力者の男も等しく塵すら残らず散っていった。

 

 

「はぁぁッ!」

ぶつかり合う炎と光。

その衝撃を利用して宙に浮かぶ姫子――サクラと視線が交差する。ジ・アースを回避された彼女はすぐさま『ザ・タワー』を展開し道を塞ごうとするも、すぐさま炎の大剣に突破される。

 

 

「そう――完膚なきまでの死がお望みならくれてやるわ!」

今までにないほど、ジ・アースに黄金の光が螺旋を描きながら収束していた。それは、サクラが聖剣を継承したときに習得し発動できる中で最強の必殺技。

 

 

 

「神なるもの、変化の極みなり。万物に妙にして言を為し、形を以て話すべからざるものなり」

 

詠唱と同時になった聖剣。正しく対界兵器としての姿と成った聖剣の剣先は姫子へ向けられる。

 

 

『太虚剣気、神蘊(しんうん)ッ!!』

 

 

天を貫く黄金の光が、螺旋を描きながら迸る。その軌跡は眩い輝きに満たしながらも、込められた力は禍々しいものであり人類の絶望を象徴するようだった。

 

それに対するように、炎の大剣を上段に構えた振り下ろし。その大剣に刻まれた必殺技の名は『マキシマムファイア』無意識に発動されたその大火は姫子の意志を汲んだのか、夜でくらいこの世界を太陽の代わりに照らすほど燃えていた。

 

 

 

だが、それでは足りない。本来世界を救うために振るわれる聖剣を打ち砕くためには、姫子一人ではあまりにも矮小すぎる。

事実、ジ・アースの光はさらに増すばかりであるがそれに拮抗し最も近い場所にいる姫子は全身が今にもどこかへ吹き飛んでいきそうなほどの痛みを感じていた。

 

 

かつて抱いていた夢の話をアポロにした。

『夢――俺にも夢ができるかな』

 

 

ずっと、サクラを助けるしか言わなかったこの子が未来を見ようとしてた。

最初は、冷酷で、有能なアポロを言い拾い物をしたくらいの感覚だったけれど一緒にいてわかった。

 

(あの子は、そこら辺にいる子供と変わらない。もっと、人に恵まれてたら、運命がもう少し微笑んでくれていたらきっと戦いの道には行かなかったわね)

 

普通に生まれて、普通に学校に通って、普通に友達ができて、普通に恋愛をして、普通に就職して――

 

 

きっと、最期は安らかに終わるそんな人生を歩む子供だった。

運命が、世界がそれを許さなかっただけで――他の人と同じ、夢も希望も未来も信じられるただの影山立として生きるはずだった。

 

 

「ッ!うぁぁぁぁっ!!」

 

 

強く、強く握る。大剣は放さない、それがあの子の未来になるならば――もう、迷いもない、逃げるつもりもない。

その思いに、呼応したのか。真紅の装甲は最後の力を振り絞り、背中の部分からジェットのように焔を吹かせる。

その姿はさながら不死鳥のようであった。

 

「人間ッ!」

「立、顔を上げなさい!」

神の剣を突破し、姫子はその大剣を上段に構えたままアポロの元に落下していく。

 

 

「あんたは前に進むの!この不完全な物語をあんたの望む姿に変えなさい!!」

振るわれた大剣の一撃、それは惑星の最後――すべてを己も燃やし尽くした最後の烈火の光だった。

光に包まれた後、姫子先生は呟くように言った。

「――()きなさい、立」

 

 

 

光が晴れた瞬間。サクラの目の前に映ったのは、だらんと力なく大剣に寄りかかった状態の姫子だった。

大剣はアポロの体には傷一つつけなかった。ただ、彼女は目の前で制止しアポロは膝をついていた。

 

「これで――授業はおしまいよ」

 

こちらに倒れ込む姫子、どうしてもサクラはその姿から目を離せずにいた。同時に、耳元で聞こえるキンッという大剣が折れた音。

 

それを――

 

「ッ!邪魔だ!」

衝撃波を発生させ、姫子の抱擁を拒否する。それによって吹き飛ばされた姫子の体――そこからは、血の匂い、焼け付くような匂い、死に体であり。

何よりも、先ほどまで焔のように燃え滾っていた瞳すらも完全に光を失っている。

 

 

だが、姫子は役割を完遂した。

カシュッ――サクラの耳元でなった音、それはアポロの体に『神殺しの槍』が注入された音であった。

 

「うあぁぁぁぁぁ!!」

突如として感じる異物感、それにより抑え込まれるサクラ。だが――ああ、タイミングが最悪だった。

そう、神の殺しの槍が注射されたということは、肉体の主導権はアポロが取り返すということになる。

 

 

「―――」

目の前にあったのは、姫子の死体――間違いない、それをアポロは見ることになった。言葉も出ない、なぜなら一部始終を中で知っているからだ。

 

「あ、え――先生――姫子、先生」

呆然と既に息絶えた彼女の体を揺する。しかし、当然返事が返ってくるはずもない――

サクラも助けられず、人をたくさん殺して、先生も自分の手で殺した。その事実にアポロの心は押しつぶされた。

 

 

 

「――俺は、何をすればいいんだろう」

まともではない、既に心は折れていた。粉々だった。

姫子先生は、アポロに生きて、前に進めと行った――これが、どこかの主人公であれば彼女らの死を乗り越えていくのかもしれない。

 

ただ、問題はアポロは決してそんな英雄のような行動はとれない。しでかしたことを償うすべも何もかも知らない。

 

「あ、ッ――あぁ」

だから、何もかも終わらせてしまおう。虚ろな瞳で、彼は制御室へ向かった。

制御室は幸いにも全壊を免れていてシステムも一部だけなら生きている。

 

「―――」

アポロは制御室にある厳重なカバーで守られている赤いボタンに手をかけた。どうなるのかは知らないが、もう何でもよかった。

 

『自爆シーケンス起動。自爆シーケンス起動。研究所内にいる全職員は避難してください、二分後に自爆します。繰り返します――』

 

押した瞬間、警報が鳴り響く。

(――これで、終われる)

 

 

最後の時、彼はセントラルドグマに置いてきたサクラの死体を右手で何とか姫子の死体がある場所まで運ぶ。

 

「―――ッ」

すると、姫子の所までたどり着いたがその場で何かにつまずき前のめりに倒れる。

立ち上がろうと、体に力を込めるも全く動かない。

 

(――もういいや)

 

前の景色が掠れている。もう、先生の顔も見えない――血を流しすぎたのか、左腕を失って聖剣の力を使いすぎただとか思い当たる節はいくらでもある。

 

『警告します。警告します。自爆まで、後一分です。研究所内にいる職員の皆様は避難してください。繰り返します――』

 

(――これが、俺の最期なんだ)

 

(そっか)

 

 

 

本当は、父親の根性焼きも暴力も、母親からの水攻めも、臓器が取られたのもずっと苦しかった。

 

サクラが目の前で奪われたことだって、育ててくれたおばあちゃんを殺されたことも苦しかった。

 

サクラを救えなかった時も、いっぱい人を殺すのだって、姫子先生を殺した時も、苦しかった。

 

 

(死ねばもう、苦しくない――苦しまなくていいんだ)

 

 

『警告、警告!自爆まであと三十秒です。繰り返します――』

 

 

(――あれ、でもならどうして俺は生まれたんだろう)

 

生まれなければ、不幸に感じることもなかったのに。

 

生まれなければ、絶望を感じることもなかったのに。

 

生まれなければ、痛くも苦しくもなかったのに――

 

 

(―――)

自分が生まれた理由を模索していく中、アポロは一つの答えにたどり着いた。

 

 

 

(そうか、俺は苦しむために生まれて来たのか)

もう、見えなくなった目を閉じ終わりを待った。その数秒後、一帯は光に包まれた――これで、アポロの物語は終わる。

 

苦しい物語も、現実も終わり!!

 

 

そのはずだった――世界、運命というやつはアポロに死という安らぎもくれてやる気はないのだ。

 

 




はい、実はブリンガーを吹っ飛ばしていた詠唱はこの時に出てきた物でした。
もし、崩壊3rd未プレイだよ!!って人は崩壊3rdの9章、『最期の授業』がYoutubeにあるのでそっちも見てもらうと、この話の解像度が上がると思います。
ゴリゴリにオマージュしてるので

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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