ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

149 / 186
ここまで、読んでくれた人ありがとう!!これで絶望は終わりだよ!希望が待ってる!!


第89話・命を大切にしない馬鹿野郎

 

 

「――あ?」

目を覚ましたのだ。驚きのあまり、口からは変な声が漏れ起き上がり周囲を見渡す。

天井が爆破によって突き破られていたので空からはお天道様も見えている。

 

――そう、この時アポロはまだ理解していなかったが爆破の寸前、近くにあった聖剣ジ・アースと融合することによって生き延びることができたのだ。

無論、最悪と言っていいだろう。ついに終わると思ったつらい現実が、勢いよく迫ってきたのだから。

 

「―――ッ!!!」

それだけではなかった、体の左側に違和感があったので目をやるとなくなった左腕がまた生えていたのだ。

 

 

 

「――ははっ、はははははははははっ!!」

 

もう、笑うしかない。周囲を見渡してもホコリ一つないクレーターが出来上がっている。姫子先生の死体もない、サクラの死体も塵に消えた。

 

「俺だけ、俺だけ?――生き残ったの?なんで?、どうして、俺が死ねばよかったのに――く、そ、くそ、くそ!!――――くそぉぉォォォッ!!

咆哮、虚しく誰も答える者はいない。みな、塵に帰ったのだ――そして、アポロは人とのつながりを失ったことで、孤独感も彼の心を蝕み始めていた。

 

 

 

 

「―――」

クレーターから脱したアポロは歩いた。ひたすらに歩いた――自分たち姫子先生との隠れ家に、何かないかと探し求めたのだ。

道中、何度も自殺を試みた――しかし、全ては失敗に終わる。アポロは知る由もないが、内部の聖剣の意志――すなわち、サクラが妨害し続けているのだ。

 

 

 

「――ただいま」

隠れ家に到着し、明かりをつけ見渡す。

 

『おかえりなさい、アポロ』

「姫子先生!!」

どこからか、姫子の声がしたかと思い隠れ家を必死に駆け回るも――いない。当然だ、姫子はアポロが殺したんだ、やった人格はサクラとはいえアポロの体には姫子へした攻撃の感覚が残り続けている。

 

 

 

「―――」

ガクッとその場に膝を落とす。返ってこない、何もかも帰ってこないのだ――その時、ふとキッチンの中途半端に空いた引き出しに目が行く。

記憶が正しければ、出発前にも空いていた気がする。

 

姫子先生が呼んでいるようでアポロは引き出しの取っ手に手をかける。

 

「――ッ!」

その中にはまだ未開封のパンケーキミックスが入っていた。途端に、あふれ出す先生との思い出――でもいくら回想しても、最後に映るのは姫子先生の最期の――姿が脳裏について離れない。

その時、アポロはパンケーキミックスの裏に何か紙が張り付いていることに気づく。

 

 

『誕生日用・9月21日』

 

 

「――あ、あっ、あぁぁッ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

いくら泣いても、手を伸ばしてくれる人は誰もいない。叫んでも、その声は虚しく空気に消えていくだけ――

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!う、うっ、先生――姫子先生ッ!!」

 

それでも、泣き叫び続けた。そうでもしなければ、自分がどうなるかわからなかったからだ。

それを最後に、意識は浮上した。

 

 

目を開け、上体を起こす。眼がしらに熱いものを感じながら、ゆっくり寝るのに使っていたソファから降り、一言漏らした。

 

「――最悪だ」

 

ぽんっと手のひらを頭にかぶせ、涙を見せぬよう拭い去る。工房を出てビデオ屋の窓から外を見ると未だに空は完全には明るくなっておらず、どうやらうなされた末に起きたというのが顛末のようだ。

 

「夢なんて見れないんだけどなぁ――こいつのせいか?」

そう、本来アルターエゴの肉体は夢を見ない。あくまで、過去の記憶が投影されただけなのだが――夢だと思いたかった。

視線は、立てかけられた大剣の方に向く。

 

 

「――あの後、一心不乱だったからな――まさか、聖剣のコアが回収されてるなんて」

感慨深げにつぶやく。その炎のように真っ赤な大剣は、かつて姫子先生が使っていたものを作り直したものだ。

コア以外はあの場で朽ち果てた――はずが、回り回ってよりにもよってアルターエゴの手元に戻ってくるなんて。

 

「少し、歩くか」

どうにもじっとしていられる気がしなかった。少しだけ準備を整えて、アキラやリンを起こさないように慎重にまだ眠っている街に繰り出した。

 

 

 

「―――あれからどれだけ経ったんだろう」

正確な時間はわからないし、知りたくもない。町の姿は変わり、それが終末を匂わせる。

そこから、アルターエゴは街を見て歩いた。どこも、ナナシが行ったことのある場所でいわゆる知らないが知っている状態という奴だろう。

 

「―――」

一人、すなわち孤独である。あの時代からもう生きている人間はいない――多分。

どこを見ても、知らない人――人はいるのに孤独なのだ。俺を知っている人がいてもきっとナナシだ、ここにあるのはナナシの居場所なんだ。

 

 

「――はぁ、何やってんだ。帰ろ――「待て」」

ナーバスな気分になったためさっさと帰ろうとしたところ後ろから呼び止められる。聞き覚えのある声に安心して振り返るとそこには相変わらずの狐耳をピンと立たせた星見さんが立っていた。

 

「おはよう、星見さん。どうしたの?こんな朝早く、集合はまだ少し先だったはずだけど」

「ああ、おはよう――普段は緊張などしないが、夢に見てしまった。ナナシの最期をな――どうしても、じっとすることができなかった」

「だから、一人なんだ――そっか、俺も似たような感じかな」

アルターエゴも姫子の最期を見たように、星見雅もナナシの最期を見せ続けられているのだ。

(――悪夢は終わらないだろうな。俺も、いつまでも終わらなかったし)

 

失った者は帰ってこない。きっと、星見さんもよく理解している、もちろんアルターエゴも、たとえ仇を取ったとして心が晴れる瞬間は来ない。

 

「星見さんが良ければだけど、少し話さない?まだ、朝も早いしゆっくり寝てるアキラとリンを起こすのも悪いから」

「わかった――互いに悪夢を見た者同士、な」

アルターエゴと星見雅は適当な話題でその場で話し込んでいた。最初の話題は、星見さんの刀からコレクターとして語られたり、アルターエゴも話せたため盛り上がっていた。

 

しかし、結局はナナシの話題で収束した。星見さんは、アルターエゴからナナシのあれこれを聞き出したのだ。

 

「――ナナシの好物はパンケーキだよ。そうだね、追加でチョコレートとかでコーディングしてあげると喜ぶと思うよ。でも、急にナナシのことを知りたいなんてどうしたの?」

「そうなのか、パンケーキ――墓に持っていこうと思ってな、他に好きなものはあるか?」

「――墓か」

いずれそういう物も作らなければいけない。確かに、ナナシにパンケーキを持ってくれば喜ぶだろう。

 

 

「ほかに好きなもの――胸だな」

「――ッ!?だから、我らの初対面の時、柳の胸ばかりに視線が行っていたのだな。そうか、胸か――サラシを取れば――」

「?」

何やら自分の胸を見て何かぶつぶつつぶやく星見さんを見て流石にこの話はまずかったかと反省する。

 

すると、星見さんは恥ずかしいのか頬を赤らめながら風が吹けば消えそうな声でつぶやいた。

「――その、だな。男はみんな大きな胸が好きなのか?」

「人それぞれかな――でも、ナナシは星見さんが想像したような理由で好きなわけじゃないんだ」

「つまり、どういうことだ?」

「――落ち着くんだ。――昔、大好きな先生がいた。母親のように思ってた――その人の胸に抱かれると、とにかく安心できた。何よりも、大切で暖かいものを俺はあの人からもらった」

この話をして登場した先生は星見さんからすれば一般的な学び舎の先生が想像されるだろうが、それは違う。

間違いなく、その先生というのは姫子先生のことである。

 

 

「いい先生なのだな」

「ああ、最高の先生だ――忘れることはなかった。ああ、でも俺がいい生徒だったかはわからないままだけど」

手放しで絶賛するアルターエゴ、その表情からは確かな尊敬と寂しさ、そして目の奥には少しの絶望がちらついていた。

 

「――私はプロキシたちにも言ったが信頼に対しては、同じように信頼で答えてもらえると――とても嬉しい」

「え、どうしたの?俺は、間違いなく星見さんのことを信頼しているよ」

突然の問いかけ、今更?と思いながら真意を問いただす。

 

 

「先ほどまでの問答でわかった――お前はアルターエゴではない、また別の誰かだな」

「―――」

スンッと今までの笑顔が消え、表情がこわばるアルターエゴ?放たれる覇気は並大抵のものではなく、常人ならば発狂しかねないだろう。

 

 

 

「どうして、わかったの?」

「ッ、今までアルターエゴとの会話をしてわかったことがある。それは、奴は過去を他人事のように話す――対してお前は自分ごとのように話す、それがお前らの違いだ」

すると、アルターエゴ?は観念したように両手を上げ自分の正体を語り出した。

 

 

「――俺は、アポロ本人だ」

「待て、アポロはもう蘇れないとアルターエゴが言っていたはずだが?」

「その通り、本来なら俺はもう蘇れない――はずだった」

 

 

 

ちょうど、アルターエゴがナナシの肉体に戻った時。肉体も魂もズタボロになった彼は、ゴマ粒のように砕けたアポロの魂の前まで来ていた。

 

『――ッ、ここからは俺はもう必要ない』

 

魂を明け渡す。それも、自分の魂を漂白した後――それは、本来であればナナシがやるはずだった行為なのだが、それをアルターエゴが代わりに行ったのだ。

 

『アポロ――頼む、お前しかもうナナシを助けられる奴はいない。こんな状態になっても、お前に頼るしかない俺をどうか許してほしい』

魂を明け渡し、アポロの砕けた魂を補強。それにより、一時的とはいえ人格すらも取り戻すことができた。

 

「分かった、元はお前も俺も同じ存在。だから、その負担も分かち合おう――ゆっくり眠るんだ」

これを最後に、アルターエゴはこの世界から完全消滅した。

だが、彼の働きによってナナシは魔王ブリンガーからジ・アースの力を取り戻し、最終的には『ジ・アース、神蘊』によって決着をつけることができた。

 

 

「――そうか、アルターエゴはもう」

彼の最期を聞いた星見雅はがっくりと肩を落とす。あの時、守れたと思った奴は勝手に自分の命を使い切ってしまったのだ。

 

「一応、言っておくけどこれは、二人には内緒で――ただでさえ、ナナシが死んで精神的に参ってるんだ。さらに、アルターエゴの死も追加したら何が起こるか分かったもんじゃない」

「――わかった。お前は、どうする?戦いが終わった後、勝手に死ぬことは許さないぞ」

ナナシ、アルターエゴに続いて同じ顔をしたアポロまでも死に行くのではないかと心配するが、妙にアポロの表情がさえない。

 

 

「――問題がそこなんだよね。実は、俺の肉体も魂ももう限界が近くて正直もう余命はあっても二日、最悪今日で死ぬんだよね」

 

「ッ!!なぜ、お前たちは自分の命を大切にしない!!!」

 

「ごもっともです――でも、仕様なもんで」

 

グイっと襟をつかまれ、怒られるアポロ。だが、彼に言われても困るのだ、魂はもう最初から死に体だったし、肉体もナナシの突貫工事で維持が限界なレベル、だからこそアフロディを昨日の今日で呼びつけ、決戦までのスパンが短いのだ。

 

 

「ふぅ――星見さんそろそろビデオ屋に行こう?六課のみんなも揃ってるだろうし」

「逃げるつもりか?――まあ、いい」

どうやら、結構な時間話し込んでいたようで太陽が昇ってきたということでアポロは星見さんにがっつり睨まれながらビデオ屋までの帰路を辿る。

 

「――あ、そうだもしナナシのお墓に何かお供え物をするなら辛いものとか宇宙の物とかもついでに置いてあげるといいと思うよ」

「それも、好きなものなのか?」

 

 

「ああ――俺も好きだからきっとナナシも気に入るはずだ」

その表情に一瞬の影を落としながら、アポロは絞り出すようにつぶやいた。

 

(――あと、いいお酒もあれば十分ですかね。姫子先生)

その日の朝は、まるで焔が燃えているように赤く、輝いていた。

 




Q&A!!を書いてみました~ぜひぜひ、感想でもなんで?ってところは聞いてください。

Q.何故、ナナシが巨乳好きなのか!!
A.姫子先生に抱かれた感触を思い出せる!!人の暖かさを始めてそこから知ったから!!

Q.何故、ナナシはお酒が好きなの!?
A.目の前でずっと飲んでた姫子先生のせい

Q.何故、ナナシはパンケーキが好きなの?
A.母親が最後に作ってくれた料理なのと、姫子先生との思い出だから

Q.最後の辛いものと宇宙って何?
A.姫子先生が好きなもの

Q.アポロはどうやってあの後復活したの?
A.あの後、姫子先生の師匠であるラグナに拾われて海賊狩りになった。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。