ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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希望は負けない!!


第92話・理の律者の名に懸けて

 

 

荒野に残る炎のように真っ赤な大剣。それを、呆然とライは見つめていた。

既に、その使い手はこの世におらず星となって消えた。その光景に一種の尊敬と畏怖と抱いた彼女はジ・アースを失ったことも一瞬忘れるほど目を奪われていた。

 

「どうして、そこまで――六課の奴らのため?あのビデオ屋のプロキシのため?それとも、ゼウスの使い手のため?違う、違う――彼は、ナナシのために命を――」

 

その瞬間、我に返ったのか辺りを見渡す。そこで、星見雅が持つ宝石に目をつける。

すぐさま、立ち上がり刀を構える。そう、アポロの決死の一撃は『ハイボルテージ』を破りはしたが、怪我一つなくジ・アースを奪われただけなのだ。

 

「――どうでもいいわ。結局、私たちの使命は変わらない。返してもらうわ、ジ・アースを」

「これは、ナナシの物だ。貴様の物ではない」

 

ボロボロの体を奮い立たせながら、ギリッと睨みつける。その瞳は何の因果か、限界の肉体で奮い立ち立ち上がったアポロに重なるように見えた。

だが、戦況は最悪と言っていいだろう。アフロディの『ヘブンズタイム』は同じ聖剣使いのライには効果がない。

これでは、ゴッドノウズをチャージする隙が生まれないし、今度は命中しないだろう。

 

「分かってるんでしょ?もう、あなたたちが私に勝てる状況じゃないってことくらい」

「ッ、まだ終わっていない。私がいる」

「そうだね、あなたがいれば戦況はいくらでもひっくり返せる――でも、こっちにも私がいるの」

 

ライの刀に狐火が迸る。それは、星見雅の刀にも発現したものと同一であった。その姿に思わず刀を握る力を強め、息を飲む。蒼角、悠真は既に武器を破壊され柳も限界が近い、アフロディは瞬殺されるだろう。

 

「もう、未来視を使う必要もないわ。既に、剣戟だけで私はあなたを倒せる」

「戯言を!――ッ!!」

「もう体力も限界、集中力も全快とは言えない。それだけじゃないでしょ?二回目、だもの目の前で命が散ったのが」

 

そう叫ぶと抜刀し襲い掛かる。だが、その抵抗虚しく二手、三手を軽々とあしらわれ、その後も数度金属がぶつかる音が響いたかと思えば最終的に体重移動のフェイントに引っかかった星見雅が地面に転がる形となった。

 

「いくら、あなたが最強だろうと人間。目の前で親しい人の死を見ればその剣先は鈍る――それも、二回目ならなおさらね」

「だからこそ、私が勝たなければいけないのだ!!」

「ほら、次は剣に怒りが籠った――鈍っているわね」

 

その鈍りを象徴するように、再び振るった刃は先ほどよりも少ない回数で彼女を地面へ転がす結果へとなった。だが、諦めない、何度も、何度も立ち上がり刀を振るう。しかし、立ち向かうたびに拮抗できる時間は短くなっていくのみ。

 

「諦めなさい。どれだけやっても、私の勝利は揺るがないし、あなた達の敗北は決まってる。さっさとジ・アースを渡して――それとも殺されたいのかしら?」

「――貴様は何か勘違いしているようだな」

「勘違い?何を言っているのかしら――そもそも、あら――ジ・アースはどこに?」

「ッ」

 

目を疑ったが確かに懐にしまい込んで少し膨らんでいたはずの場所が今はすっぽりとしぼんでしまっている。だが、一度もライは目を離していない――だとすれば。

周囲を見渡すとすぐわかった。荒野の広場から一目散に走りぬけようとしているボンプがいた。

 

「なるほどわざと私に二転三転と転がされたわけね。でも、あの短い足じゃあ私から逃げられないわよ」

「行かせるはずがないだろう!!」

「行かせてもらうわ『真ニードルハンマー!』」

 

通せんぼした星見雅。しかし、刀が途端にハンマーに変わったと思えば雷撃の一打で彼女を退け、疾風の如きスピード。具体的に言うと時速200㎞でイアスに迫る。

 

『うわわ!来ちゃったよ!ぜ、全力で逃げないと!!』

「その短い足で?」

 

近づくライに気づき全力で短い足をばたつかせるも悲しいかなイアスのスピードでは逃げ切ることができはずもなくすぐそこまで来ていた。

そして、イアスに手を伸ばしたその手は目の前を通過した薙刀によって阻まれる。

 

「やらせません――これ以上、失うわけにはいかないんですから!」

「そう、いい気概ね。でも、邪魔ッ!!」

 

手を引っ込め、瞬時に体を翻し柳の脇腹に鋭い蹴りが入る。すぐさま、ボールのようにぶっ飛んでいく――僅か数刻の時間稼ぎ。これでは、イアスが逃げ切る時間なんて確保できるはずはない。

 

「――ありがとう、柳」

 

だが、イアスは逃げきれなくても彼女が追いつくことはできる。ライを追って駆けつけた星見雅がライとイアスの間に割って入り込み、今度はライをその刀の一打で退ける。

 

「本当に邪魔が好きなのね――でも、それをしてどうするの?あなた一人で私に勝てると思ってるのかしら?」

「不可能だな」

「なら、諦めなさい。恥じることはない――相手が悪かったのよ。さっさとジ・アースを渡しなさい」

 

事実だ。勝てない、どう考えても勝てない。でも、相手が悪かったからと言って諦めるような奴はここにいない。現に、アポロは最後までその命を燃やし尽くして後に託した。その思いは確かに、星見雅に受け継がれそれは形にもなってイアスの手の中にある。

 

「諦める?だと――するはずがないだろう!!私は託された――相手がどれだけ強大だろうと立ち向かった英雄から後を、ジ・アースを」

「ッ、そう――なら、その英雄と同じ末路を辿らせてあげる」

「やれるものなら――はぁッ!!」

 

何度か切り結ぶ、だが依然としてライ優勢の状況に変わりはない。数分も経たず、星見雅はその場に膝をついた。

 

「――威勢だけだったわね。死になさい」

 

刀が上段に構えられまるで断頭台のような風にも見えた。

終わる、終わる。でも、星見雅の目は死んじゃいない。むしろ、その瞳の奥には燃え滾る焔が立ち昇っていた。しかし、それに反するように体は動きを止めたまま。

 

 

『まだ、終わりじゃない』

 

 

声が聞こえた。聞き覚えのある声、安らぐ声。思わずライは振り下ろそうとしたその手を止める。そして、聞こえた方を見てみればイアスの手にある宝石が青い光を周囲に放出している。

 

『雅だけじゃ、勝てないけれど――二人ならどうかな?』

 

男の声。すると宝石はイアスの手から離れ、宙へと旅立つ。

そして、制止したかと思えばこれまでにないくらいジ・アースの青い光は勢いを増す。

 

 

筋肉が形成され、骨、内臓――その他諸々を為した後それらは、人の形へとなった。

 

『――夢じゃないよね?』

「ああ、夢じゃないよ。リン」

 

その場で屈みイアスを撫でる。そこに立っていたのは黒髪黒目、チャーミングポイントのやや長めのショートヘア、いわゆるショートウルフカット風のスタイルの髪型。

この間見た、どこか無機質な機械のような感覚は薄れ温和な雰囲気を纏った青年。

 

 

「――ナナシ、復活!!」

 

あの日殺されたはずのナナシが立っていた。いたずらがバレたような子供の用にピースをしながら屈託のない笑顔でライを見つめながら。

 

「なんで、何で!?あの時、絶対殺したはずなのに!」

「うん、あれは流石に容赦なさすぎだと思う。四肢が全部なくなって通気性が抜群すぎたし――」

「だが、生きていてよかった」

「そっちこそ、無事でよかったよ。雅」

 

雅の検査によると、目、眉、鼻、口、耳、そして匂いを一致しているようなので本物だとすぐわかった。両者は横並びになりライに相対する。

彼女の表情に先ほどまで浮かべていた苦悶の表情は消え、その代わり柔らかな笑顔のまま彼に微笑みかけていた。

 

「はぁ、何でもいいわ。また殺せばいいだけだもの――結局あなたたちじゃ、私には勝てないもの」

「――どうかな?」

「?」

 

何やら自信ありげな表情を見せるナナシ。不思議に思い首を傾げるもその疑問はすぐ解決されることになる。

 

「少し、恥ずかしいけど――変身!!」

 

恥ずかしそうに顔を赤らめながら『変身』と叫ぶナナシ。すると、体が青く発光し始める。ナナシの体内から現れたのは聖剣ジ・アースのコアであった。

だが、その外皮が剥がれていきその中から現れたのは白銀のコアであった。

それが、再びナナシに宿る。すると、発光が終わり中からナナシが現れる。

 

「は?」

 

その姿におもわず、声を漏らすライ。

荒野に立っていたのは蒼き輝きを纏う戦士。黒目から銀眼へと変化しただけでなく。その装いも変わり、まるで執事服の正装のような出で立ちであった。

 

 

 

「ナナシ――あなた、何者なの!?」

 

だが、ただのコスプレ変身ではない。確かに、ライはナナシの威圧感が変化し増大したのに感づいた。

 

 

「何者――そうだね、俺はアポロ十一号にして、ナナシ。母親はサクラ、父親はアポロ!!そして今は――」

 

 

「第一律者、理の律者だ!!」

 

 

大きく、高らかにナナシはそう宣言した。

 

「理の律者?何が何だかわからないけど、それで勝てると思ってるのかしら『デスレイン!!』」

「『真ゴッドハンド!』」

 

刀を機関銃へと切り替え乱射するライ。しかし、ナナシが天に手を掲げると現れる虹色の光を後光に纏ったゴッドハンドがたやすくその攻撃を防ぐ。

そう、真の意味でジ・アースを継承し自身の肉体を再構成するためにある人物の力を借りて、ナナシは理の律者へと自信を変貌させたのだ。

 

 

 

 

理の律者の能力は構造原理を理解している物体を、無から想像する能力。事物を解釈し、構造を理解し、物体を形成するその能力はまさに人類文明を体現した律者と言えるだろう。

 

それにより物体創造の能力を覚醒させたナナシの必殺技は以前に比べてロスが格段に少なく、威力が向上していた。

 

 

「『正義の鉄拳G4!!』」

「そんな――ッ」

 

パッと握らずぐっと踏み込んで、その場でダンッと強く踏み込んだ。その一撃は以前のG4よりも格段に威力が増しており、何か言おうとしていたライの言葉をかき消し受け止めようとした彼女の刀の峰が自身に当たりそうになるくらいまで追い込んでいた。

 

 

「雅、行くよ。おそらく相手は聖剣に人格操作を受けてるんだと思う――平時の彼女と違いすぎる」

「分かった――それで、どうすればいい?」

「あの、聖剣を手放させる。二つ返事でOKくれるんだね」

「お前となら、どこへでも行くと言ったはずだが?」

 

左手にしがみつきながら指摘する雅。本当に疲れているのか疑うくらいのパワーと圧に思わず後ずさりしてしまう。

どうして、こんなに怖いんだろう。後、何でハイライトがないんだろうな――そして、俺が死んだあとみんなどうなったんだろうなぁ――なんて、思いながら宣言する。

 

 

「勝つよ、ライ――理の律者の名に懸けて!!」

 

 

 




さて、ついにナナシの復活――そして覚醒ですね。
まさかの理の律者になるなんて――第一律者、奇しくもと言ったところですか。

理の律者は崩壊3rdのキャラでもあるので、ゼンレスゾーンゼロしか知らないって人はわからないと思うんですけど。今は、わからないままでいてください!!
ちゃんと、この後説明するので!!

ぜひぜひ、せっかくナナシが蘇ったので感想を書いていってください!!

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
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