ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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ごめんなさいね、どうしても書く時間が取れず遅れました。


第95話・その後のごたごた

 

 

――すべてが終わった一部始終それを観測していた者は静かに笑みを浮かべていた。

 

「――オーガの始末には成功したわ」

 

女、いやサラはどこかへ電話をかけ今回の作戦について報告した。それは、他でもないライを始末するように仕向けたのはこいつらという事なのだ。

 

『そうか、なら早く君も帰ってくるんだ。当然、オーガの回収にも成功しただろうね?』

「そっちは失敗よ。あの状況で取りに行ったら一瞬で刀の錆に変わってたでしょうね」

『――はあ、元はと言えば君がいつぞやの失敗を取り戻すという話じゃなかったのかい?達成するためには刀の錆の一つや二つになってきたらいいじゃないか』

 

サラの通話相手は深いため息をつく。そう、そもそも彼女らの目的は聖剣オーガの回収であった。今回の魔王ブリンガーなどの一連の流れは全て使い手をおびき出すための物だった。

そのために、アルターエゴをポート・エルビスに向かわせ結果的にライvs他陣営という構図を創り出し最終的には漁夫の利を狙うはずだった。

 

「仕方ないじゃない、私も何が起きたのかわからないのよ。それに、一度錆になったら私はもうお陀仏よ」

『――まあいい、それで僕が開発した新型聖剣の調子はどうだい?』

「コマンドタイプは十分運用可能、だけど鎧装タイプはまだ不十分ね。まだ、オリジナルクラスの聖剣使いと戦うのは厳しいわ」

『なら、十分だ。どちらもオリジナルと戦うことは想定されていないからね』

 

コマンドタイプは一瞬でアルターエゴに弱点を見抜かれ対処され、鎧装タイプは聖剣を奪ったはずの彼に敗北となんとも言い難い結果になってしまった。

 

『だが、厳しいな結局オーガもまたどこか知らぬ誰かの手に渡ったのか――しかも、相当力を使い果たしたはずだからね。しばらく、表舞台に来ることはないだろう』

「その話は終わったはずじゃないかしら――それよりも、そっちが血眼で探してるジェネシスの方はどうなったの?」

『――結果は変わらない。依然として消息不明――異常事態にも程がある』

 

ジ・アースは何者かに意図的に隠されていた。ゼウスは魂のリレーによって守られていた。オーガは零号ホロウに放り投げられていた。だが、ジェネシスは旧都陥落以来、全く音沙汰ナシなのだ。

オリジナル聖剣を所有しているということはよっぽど我が強い人間ではない限り何かしら尻尾を出してもおかしくない。

 

「結局、エリシオンの女狐にしてやられたわけね」

『元はと言えば、聖剣ゼウスを奪うために我々が所有していたオーガとジェネシスの使い手をエリシオンに派遣した判断をした君のせいだけどね』

「誰が!あの女狐が満身創痍で起動したアポロ一号に全てぶち壊されるなんて思うのよ!!」

『一つ訂正だ。正確に言えば、アポロ一号に殺されたのは二人の聖剣使いと500人の人工聖剣部隊さ――もちろん、君が派遣した』

 

興奮するサラに追い打ちをかける。こんなにサラが憤慨しているのは理由があった。旧都陥落時、アフロディへ聖剣ゼウスが受け継がれる数時間前。彼女らは、ゼウスを奪うために孤児院に攻め入っていた。

無数の兵士と、無敵の聖剣使いを連れ――それは人が歩くくらい簡単な作戦のはずだった。物量でエリシオンを殺し奪うこれだけだ。

 

 

ただ、一つの誤算があるとすればその孤児院の地下でアポロの肉体の複製品が作られていたこと。

その誤算は作戦を実行した彼らに致命的な歪を作り上げた。

 

「ッ――今でも覚えてるわ。あの尋常ならない戦闘力を」

 

こちらが派遣した二人の聖剣使いはどちらも弱いわけじゃなかった。

聖剣オーガの使い手は、剣技はライほどではないにせよ適合率が高く未来予知の能力も相まって無敵と言っても過言じゃない。

 

――その慢心をする隙すら与えてもらえず首が飛んで行ったが。

 

聖剣ジェネシスの使い手は、固有の能力は備えていないにせよその戦闘力は虚狩りと並ぶ、場合によっては超えているほどの使い手だった。

 

――目が合って3秒で上半身が消えたが。

 

他の部隊も肉壁にもならなかった。結果的に、無量塔姫子の大剣で動揺させることによってなんとかこのなきを得たが下手をすれば旧都陥落自体がひっくり返されていた。

 

『例の大剣はどうしたんだい?』

「奪われたわ。まあ、もう使い道のない骨董品だもの渡しても問題ないわ」

『――そうか』

「それにしても、あの大剣がここまで役に立つなんて思わなかったわ。でも、アポロの弱点の先生の遺品なんてよく知ってたわね」

『彼の先生とは少し縁があったんだ――僕もこんなところで役に立つなんて思わなかったさ』

 

サラの通話相手の声はどこか暗く、その言葉には確かな悲しみの情が含まれていた。姫子の大剣はアポロを救い。アポロ一号、そしてアルターエゴを打倒するために使われた。だが、最終的にその炎はナナシを救った。

運命というのは何とも皮肉なものである。

 

 

「エリクサーの方はまたそっちで話すわ。さようならアインシュタイン博士」

『ああ』

 

それを最後に通話は切れた。

 

 

 

ナナシは目覚めた後、ごたごたを終えてアキラとリンとの交渉の末に雅と一緒に郊外のとある場所に来ていた。

ライとの決戦の後はとにかく後始末が大変だった。曲がりなりにもナナシは死んだ人間だったため、それを知らない白祇重工や邪兎屋はともかくヴィクトリア家政、カリュドーンの子のメンバーからはめちゃくちゃ怒られた。

特に朱鳶さんからの説教はまさに骨身に染みるというやつだ。きつかった。

 

カリンなんてずっと泣いていたし、シーザーは嬉し泣きしすぎて倒れそうになってた。ライトからは、反省のチョップをお見舞いされたり、あのバーニスからですら怒られた。

 

(でも、左腕治ったから義手返そうとしたらシーザーが急に泣き止んだんだよなぁ)

 

さっきまで『よかったぜ~!!』ってめちゃくちゃ嬉し泣きしていたシーザー。しかし、不要になった義手を変換しようとしたところスンッと表情が消え、ついでに目のハイライトも消えなんとなく持ち帰ることになってしまったのは記憶に新しい。

 

「何か、悩んでいるのか?」

「――うん、アポロが白祇重工のみんなに対してすごい無理のある嘘をついていたみたいでね。クレタから『拾い食いはほどほどにしとけよ!――もし、食うもんがねぇならあたしがいくらでも作ってやっからな』って」

「――料理の修行か」

「うん?――どうするべきか、でもアキラとリンに拾われる前は拾い食いしてたのは事実なんだよなぁ」

 

そう言えば、アフロディだがライが撃たれた後どこかへ忽然と消えてしまったらしい。バイト先も変えてしまったらしくクレタに聞いても音沙汰無し。おそらく、今もどこかで生活費を工面するためにバイトに勤しんでいることだろう。

まあ、それよりも腹違いの姉弟であることの方が問題なのだが。

 

 

「酒と辛いもん、宇宙にパンケーキ。もちろん、アポロチョコでコーティング済み。悪いけど、巨乳は用意できなかったよ――」

 

郊外のとある場所。町から外れた人目のつかぬ場所に四つぽつんと墓標が立っていた。それぞれ、アルターエゴ、サクラ、アポロ、ライの物だ。

死者へ祈りをと黙祷を捧げ、供え物は回収する。

 

「――ありがとう」

 

死んだ彼らのために墓を作ってあげたかった。最後まで、誰かを次を思い託して死んでいった者たち、特にナナシにとってはアポロとサクラは両親であり、アルターエゴは自身の師匠としていろんなことを教えてくれた。

 

「すごい、悲しいけど。俺はもう一人じゃないからさ――頑張っていくから。見てて」

 

静かに言葉を紡ぐナナシを雅は真剣な瞳で見つめていた。それは、同じ失った者同士だからだろうか、それとも――

彼女はアポロの最期を目撃した。ハイボルテージを突破し、ジ・アースを奪還した一部始終。

 

(アポロ――お前から受け取ったナナシは私が守ろう。この刀に誓って)

 

言葉にはしない。すれば、すぐ空気に溶けて消えていくからだ。その誓いを忘れぬように、消さぬように胸にとどめておく雅だった。

 

 

 

 

 

その夜、夢を見た。

いや、夢じゃない――あまりにもリアルすぎる人影が暗闇の世界の中ぽつんと立っていた。

その光景にデジャブを感じながらも恐る恐る、ナナシは彼に近づいた。

 

「よっ!!」

「あんまりこういうことは言うべきじゃないのはわかるけど、しぶとすぎない?俺の記憶が正しければ、とっくに肉体は死んで、墓も作った気がするんだけど」

「ひ、酷い!!――でも、確かにナナシの言う通り流石にしぶとすぎるかな。けどさ、冗談抜きでこれが最後なのは変わらないから」

 

ナナシのリアクションに驚いたのは、他でもない容姿は瓜二つ。自身にとっては父親的存在である『アポロ』だった。

死んだ回数は二桁を超えているというのに未だにこうやって話せるなんてどうなってるんだと疑問だったがよく見れば足元が揺らいでいる。限界が近いのは本当らしい。

 

「――それで、どうしたの?本当にかなり満身創痍みたいだけど」

「うん、俺も連れを待たせてるから手短にするよ。まずは、俺の記憶をジ・アース内に入れておいた。もしかしたら、何か使えるかもしれない」

「――うん、必殺技の習得で必要だもんね――」

 

どうにもナナシが乗り気ではないは理由がある。それは、アポロの記憶は本当に場合によってはつらすぎるものが多く。見ている方の精神をぶち壊しかねないのだ。

そんな特級の爆弾をもらっても正直あんまり嬉しくない。

 

「それで、記憶の中で事前に話しておかないといけない部分が二つある」

「――もしかして、ショッキングな話?」

「そう、この二つ特に前者をうっかり見た場合精神を壊しかねないからね――一つ目の事件の名前は、そうだね“聖水虐殺事件”とでも言おうか」

「やっぱりやめない?」

「やめない」

 

こうして、アポロは語り始めた。すごい聞きたくない話ではあったが今後うっかり精神崩壊などやらかしていては目も当てられない。恐る恐る、ナナシは聞き耳を立てた。

 

「2040年。俺が、ちょうど28歳の時の話だ。仮面新教の話はもう聞いてるね?」

「うん、人間の倫理観を超越しすぎた組織だね」

「そうだね、この事件は俺が治めていた国の隣国で発生した事件だ。奴らは、隣国の街の生活用水に向かってMNBウイルス改を放流。それによって、その街に住む住民全員が感染し、適合者だけを奴らが連れ出すというとんでもないことをしやがったんだ」

「――は?」

 

絶句である。それは、バイオテロの域である放流するウイルスによってはバイオハザードが始まってもおかしくないくらいの大罪だ。適合者を探したいからって無差別に人を巻き込むというのはどういうことか――

 

「待って、改って何?」

「奴らは、とにかく適合者を探したかった。だからこそ、MNBウイルスに改造を加えた――適合しなかった人間の飛沫で別の人間に感染できるようにね」

「――バカなの?そ、そんなの一歩間違えれば全人類全滅のリアルバイオハザード状態じゃないか!!」

「ああ」

 

途端にアポロの表情が暗くなる。ものすごい嫌な予感がする。

 

「ところで、どうやって防止するの?もしくは――治療とか」

「治療方法はない、致死率はご丁寧に100%だからね。それで、防止方法だが――どうしたと思う?」

「―――世界と天秤にかけたのか」

「ああ、そのせいで俺はムゲン・ザ・ハンドを使えなくなったけどな」

 

言葉で詳しく語られる必要もなくナナシは理解した。何が起きたのか――当然だが、被害を受けた隣国の街の人々は外に助けを求めるだろう。でも、それをすれば当然被害規模が拡大する。

下手をすれば、世界規模で被害が出る。

 

「ッ」

 

でも、でもだ。もしも、外部に拡大する前に街の住人を皆殺しにできるような人間がいるとすれば――

そう、アポロはムゲン・ザ・ハンドG5でその街の人間を誰一人残らず皆殺しにしたのだ。

だから、影山との戦いでムゲン・ザ・ハンドは使用されず、ライとの戦いでも使えなくなったのだ。その身に刻まれたトラウマによって――

 

「――これが、一つ目だ」

「もう、キツイんだけど――これ以上何かあるの?」

「ああ、むしろここからが重要な話だ――ホロウについて」

 

いつになく真剣な表情のアポロ。思わず頷く、正直大量虐殺だけで十分お腹いっぱいなのだがホロウについてとなれば俺も大歓迎だ。

 

「そもそも、何でホロウが存在すると思う?」

「え?影山が作ったんじゃないの?」

「そうだけど、そうじゃないんだ。真実は少し違う――ナナシの場合はアルターエゴから聞いただけだろ。あいつも、俺の記憶を丸々継承しているわけじゃないから少し事実と相違が出てくるんだ」

 

言われてみれば、アルターエゴと初めて会った時に見せたアポロの戦いを他人行儀のように話していたし、妙だとは思っていた。

 

「さて、それじゃあ話そうかホロウが生まれた全ての原因――第三次世界大戦について」

 

 

 




さて、色々不穏なワードが出てきましたね。最後の、第三次世界大戦についてはまた次回へ~

どうして、ライに聖剣オーガがやってきたのか――その理由はオーガとジェネシスの使い手がアポロ一号によって倒されていたからというね。
まあ、サラが対アルターエゴで余裕だった理由がこれですね。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

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