ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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閑話の章4
閑話・ナアリと悠真


 

 

ある朝、ビデオ屋には一人の客が訪れていた。どうやら裏の仕事を知っているようで慣れた手つきで工房に近づきノックをして中の人間を呼び出した。

 

「やあ――?――どちら様?新しい従業員でも雇ったのかい?」

 

そう、入ってきたのは悠真で工房の扉を開けたのはナナシだ。だが、すぐさま悠真の目が点になる、後ろに控えていたアキラとリンに尋ねるもしてやったりとした表情のまま首を振るのみである。

 

 

無理もない、扉を開けた先にいるのはメイド服を着た黒髪ロングの美少女、おまけにリナさんのような巨乳を備え、黒髪のリナさんと言われても通じてしまうほどの美貌を持った女性だったのだから。

 

「――俺だ、悠真」

「ッ!?もしかして、ナナシ――なのかい!?生き返った時からとんでもないと思ったけどついに性転換まで可能にしたのかな?」

「いや、違う違うから!!あくまで女装だから!!店長の趣味なんだよ」

「店長?まさか、店長二人にそんな趣味があったなんて意外だなあ」

「あ、それも違う。店長って言うのは俺が始めた新しいバイトの店長だから、アキラとリンの趣味ってわけじゃないから」

 

数日前――

俺はとある店にバイトの応募に来ていた。アキラとリンは三時間にも及ぶ説得の末に許可をもらうことができたのだが、幸先は早速悪かった。

 

「――女装、ですか?」

「はい、やってみませんか?」

 

渡されたのはメイド服。ちょうどリナさんが来ているものとそっくりだ。まあ、あんなにえぐいスリットは入っていないのだが。

 

「実は私の勘がピンと来まして!あなた絶対に女装似合いますって!!」

「女装って――でも、他の従業員さんはみんな女性ですよね?男性スタッフも普通にいますし、そもそもメイド服は制服じゃいないじゃ?」

「すみません嘘です!!完全に私の趣味です!!お願いします!メイド服着てくださーい!!」

 

店長の必死の懇願。その光景は恥も減ったくれもない大人の姿だったがその姿を見たナナシはそっと首を縦に振った。

 

「分かりました!!そこまで言うならやってみましょう!」

「ええ、ええ!!――ぐへへ、男の娘完成――」

「何か言いました?」

「い、いいえ何も!!」

 

結果、胸には元からあった胸筋+パット、髪はかつらを装着、そして支給されたメイド服を着て完成。

 

「――ていう事があってね」

「そうかい、どうやらその店長はかなり“いい趣味”してるみたいだね」

「だよねだよね!やっぱり似合ってるよナナシ!正直言って女の私から見ても一級品の美少女だよ!」

「ああ、だがガードの緩いナナシのことだ。そういう目で見る輩もたくさんいるだろう、もう朱鳶さんには連絡してあるからそこの常連になってもらおう」

「だけど、どうしてナナシは急に新しいバイトを始めたんだい?ビデオ屋の稼ぎだって裏も合わせれば悪くないはずだけど」

「―――」

 

少しの沈黙。その後、ゆっくりナナシは口を開いた。

 

「俺の行きつけのパンケーキ屋さんのバイトさんがいなくなっちゃってね。人手が足りないみたいだから応募したんだ」

「――パンケーキ屋。なるほどね」

「それで悠真は何の用で来たの?」

「ああ、そうだったナナシの女装が衝撃的過ぎて忘れてたよ。実は、ちょっと助けてほしいことがあって―――実はさ、店長たちには僕の命綱に、ナナシは一緒にホロウに入ってほしいんだ」

「プロキシの力を借りたいわけね。具体的には?」

「待ってくれナナシ。――一応言っておくけど、危険そうな任務の場合ナナシを行かせるつもりはないし、そこに悠真一人を見す見す行かせるつもりもない」

「あ、アキラそこまで過保護にならなくても――はい、何でもありません」

 

この前、ポート・エルビスのホロウでの決戦でナナシは命を失った。そのせいか、どうにも二人は過保護になっているのだ。

結果的に無言の睨みによって有無を言えなくなったナナシは黙ることとなった。

だが、しっかり悠真も心配しているのが二人らしいと言えばらしい。

 

「ふふっ、いい関係じゃないか。それで、事件の話だけど――指名手配犯の追跡。もう何年も行方をくらませてる。罪状は、非合法な手段による違法な薬物の開発――」

「乗った!!」

「待つんだ、ナナシ。まだ全貌を聞いていない」

「続けるよ。この薬、既存のセオリーがまるっとぶっ飛ぶような代物でね。短時間だけエーテル適性を大幅に上昇させられるんだ」

「――乗った、確実にその実験場ごと灰にしてやる」

「判断が早すぎるよ。それに、指名手配犯ごとやられたら逮捕できないじゃないか」

 

非合法、違法、薬物、エーテル適性の増大。ナナシが聞いたら切れる役満が揃った状況である。薬物というのは恐ろしいものだ、簡単に人を狂わせ、使い方によっては天使にも悪魔にも変わる。

 

「でも、そんな薬があったら、誰でもホロウで活動できちゃうね。まあ、まともに使えるならだけど――めちゃくちゃリスキーな副作用とか、あるんじゃないの?」

「確かにね。ナナシが使う聖剣みたいにノーリスクとは言えないさ。まあ、聖剣もノーリスクというわけじゃないけどね」

「ねえ、悠真。それって人工聖剣ではないんよね」

「そうだね、何年も前に破棄されたはずだけど、最近になってまた噂になり出してる――そのどれもが、元を辿れば薬の研究者――僕の言った指名手配犯にもつながるはずだ」

「それを見つけるのが依頼ね。わかった、研究所の位置はわかる?すぐさまそこを地図から消せるように作戦を立てよう」

「どれだけ嫌いなんだ――わかったよ悠真。どうやら、ナナシに危険が及びそうな相手ではなさそうだし、やる気も十分みたいだから引き受けるよ」

「ありがとう、それじゃ行こうか――相棒」

 

依頼は締結完了。その後、悠真とナナシはポート・エルビスのホロウに向かうのだった。

 

数十分後、ナナシと悠真はともにホロウへ突入していた――のだが。

 

「どうしてナナシはそのままの服装なんだい?」

「よくぞ聞いてくれた、悠真!今回は情報収集からの指名手配犯を探してとっ捕まえる――なら、変装がやっぱり必要だろ!」

「――なら、喋り方も工夫して、声も変えられるなら変えてみるといいんじゃないかな。そうすればかなり女性っぽく見えるよ」

「そう?――でしたら、これでよろしいでしょうか――私、パエトーン様にお仕えしているメイド、ナアリと申しますわ」

『すごい!しかも、身長もほぼ同じだから黒髪のリナさんにしか見えないよ!』

 

口調を参考にしたのはもちろんリナさん。声もなるべく似せて髪以外はほぼ一致と言っていいだろう。問題が一つあるとすればリナさんのようにかなりえぐいスリットが入っている服装ではないため足技が繰り出しにくいということだ。

 

「ナアリってどういうことだい?」

「いやさ、ナナシは男。ナアリは女~みたいに変えた方がスパイっぽくない?」

「映画の見すぎじゃないかな?」

 

そうこう言いながらホロウを探索していると目線の先によく見る治安官の制服の青色が見えた。

 

「――あれは、セス君か」

「治安局に見つかると流石にマズいでしょ、ほらナナ、ナアリは遠くに離れておいてくれよ」

「承知いたしましたわ――って、今これやる必要ある?」

 

だが、実際マズいのは本当なのでその場を悠真に任せナナシは少し遠くに身を隠した。

さて、実はセス君とナナシは知り合いなのだ。というのも、工事現場で迷った社員を見つけてほしいという依頼を受けたナナシはその社員を発見後脱出しようと思ったが運悪く治安局と追われている山獅子だか山猫とかいうやつらにさらわれた。

 

その時、人質交換という形でやってきたのがセス君だったのだ。その後もなんやかんやあったのだがまあ、俺が散々ボコボコにやられたことだけ記憶していればいいだろう。

その時、どこからともなく見知らぬ少年が現れて、よろめきながらナアリの前にやって来た。

 

「た、助けてくれ――」

 

瞳はどこか虚ろで、焦点が定まっていない状態だがかなり限界が近いのは察せられる。周囲のエーテリアスの反応は悠真たちが応戦しているためエーテリアスに追われたというわけではないだろう。

 

「どうした?エーテリアスに何かやられたのか?」

「あいつらが――まだあそこにいるんだ――助けて――」

 

その瞬間、少年の体に急速にエーテル浸食が回り始める。

 

「ッ、大丈夫だ」

 

それを圧倒的な反射神経とスピードでコアが生まれる前にナナシは彼の手を取った。すると、ナナシの聖剣の力によってエーテル浸食は抑えられ彼のつらそうな表情も徐々に引き始めた。

 

(なんだ?妙に軽い――それに、首元に傷。こんなのどこで付けてくるんだ?――いや、俺はこれをよく知ってる)

 

その時、セス君や悠真でもない気配が接近していたため嫌な予感がしたナナシはそっと彼にグランから奪っていた緑の指輪をそっと嵌めて隠した。

 

「――すみません。ここにこの写真の少年が来ませんでしたでしょうか?」

「申し訳ございませんが、存じ上げておりません。よろしければ、私にその写真の少年とあなた様のご関係をお聞かせ願いますでしょうか」

 

謎の白衣の男は現れるなり開口一番問いただしてきた少年というのは先ほど俺が匿った少年だが、何かに追われていたような雰囲気だったうえにエーテルの浸食が急激だったのも妙だ。

 

「申し遅れました。霧島と言います。一応、医者をやっておりまして、先ほど見せた写真の少年は私の患者でした」

「なるほど、お医者様だったのですね。よろしければ、ご病名を伺ってもよろしいでしょうか?危険な症状であれば早急に見つけなければいけませんもの」

「はい、彼の病名はエーテル適性減退症候群と言って生まれつき虚弱体質の人間が罹患する疾病で、身体の一部病変が起こりますが、常人よりも高いエーテル適性を発揮するんです。しかしひとたび末期に至ると、激痛と共に諸感覚を失って体が急速に衰弱します」

「何を話しているんだい?」

 

霧島と名乗る医者と話していると治安官たちとの用事が終わったのか悠真が現れた。そして――どうやら、二人は初対面というわけでもないようだ。

 

「久しぶりだな悠真。ここ数年、どうしてた?」

「悠真様のお知り合いでしょうか?」

「悠真“様”か大層立派になったものだな」

「昔から面識があるってだけさ。あんたはどうしてここに?」

 

どうやら関係は良好とはいえないらしい、悠真の視線が霧島を見ず明後日の方向に向いていたり、返答も少しぶっきらぼうに見える。

だが、一番違和感があったのが霧島の視線が悠真の顔からではなく彼の首のチョーカーから視線が動いたことだろう。

 

(――あの少年の首元にも傷があった。まさかね――)

「そうだお前はこの写真に写っている少年を見なかったか?実は俺の患者なんだがエーテル適性減退症候群の終末期でな、おそらく苦痛に耐えかねた末、ホロウで自ら命を絶とうとしたと思うんだが、どうだ?」

「見てないね、それにあんたと深めるような話もないよ――行こう、ナアリ」

「はい、悠真様」

「待ってくれ!俺は当時『あの男』が身を隠すのに使っていたシェルターを見つけた。後になってホロウに浸食されてしまったようだが、あの男にまつわる手がかりがゴロゴロしてたよ。俺たちが手を組んで調べれば、このまま今の隠れ家だって突き止められるかもしれないぞ」

「――考えさせてもらえますかね」

「それだけ聞けたら十分だ。俺は、治安局に見ていないか聞いてみるよ」

 

そう言って、霧島はその場を去って行った。

 

「――どう思う?」

「怪しい、怪しさ100%ってところだね」

「それで、あいつが血眼になって探してる少年はどこに隠したんだい?」

「コンテナの隙間に置いていおいた。あいつの言う通りエーテル浸食が一気に広がったよ。今は何とか聖剣を使って抑えてる――でも、さっさと脱出した方がいいね」

「了解、僕としてもあいつとはなるべく関わりたくないしひとまずビデオ屋まで戻ろう」

 

こうして、謎を残しつつ倒れた少年を抱えながらビデオ屋まで撤退するのだった。

 




さて、なんと少年君生存!!ということで、この物語はこの時点で爆速で終了することが確定したわけですが――
まあ、非合法、違法、薬物、エーテル適性の増大、副作用。ナナシが切れてもおかしくない要素の詰込みですね。
余談ですが、ナナシが働き始めたのはライが働いていた場所です。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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