そして、場面は再び戻る。
「ビリー。あんまり撃つな・・・・こういう狭い場だと跳弾するかもしれないからさ」
「だ、だけどよ・・・。ずっとナナシが戦ってるじゃねぇかよ!!」
肩で息をしながら籠城している。
基本的にこういう狭い場では刀も振り回しにくいということで今積極的に戦っているのは俺だ。
ニコとビリーにはサポートに回ってもらっている。
「大丈夫だ。絶対『パエトーン』は帰ってくる」
「そうだ、ありがとう。ナナシ、どうにか持ちこたえてくれて」
後ろから声がする。振り向くと、そこにはいつも通りのボンプが立っていた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!?」
ニコとナナシの叫びが工場にこだまする。
「ちょっと反応が遅くない?」
「プロキシ!?本当にあんたたちなの?」
「実はさっきからいたんだけどね。でも、前線で戦っていたナナシとニコは気づけなかったみたいだね。・・・でも、さっきさ、調査員がいたのに。何でナナシを売らなかったの?売れば、助かったよね」
え?と言う、目でニコ達を見つめる。すると、ビリーがどういうことか説明してくれた。
要するにホロウレイダーでつかまっても、プロキシたちを差し出せば減刑が見込めるらしい。
「そ、それは・・・。ナナシが、私達の盾になって戦ってくれているのに・・・差し出すなんてできるわけないじゃない・・・」
ビリーとアンビーもうん、うんとうなずく
「ニコって・・・思ったよりいいやつだったんだな」
「うぅぅぅぅぅっ!それよりも、金庫奪還作戦、続行するわよ!」
顔の赤いニコを見て、俺もこれ以上追及するのはやめておこう。それよりも大事な仕事がある。
「そうだね、じゃあ。行こうか。みんな」
そして、俺達はパエトーンの案内に従いながら、再びホロウ内の探索を始めた。
その道中でどうして、突然通信が途絶えたのか説明を受けた。
「なるほど・・・。あらかた、ナナシの予想通りだったってことか。」
「ニコが依頼料をケチったことを怒ってたわけじゃないんだ」
「ちょい待ち、本当はもっと払えたの?」
すると、ニコがアンビーにくぎを刺す。
「これまで、パエトーンの設備が乗っ取られたことはないんだろう?」
「そうね、つまり一番怪しいのはパスワードが保存されていたディスクね。そのハッカーは、それを介してあんた達を見つけ出したのかしら?」
「HDDの脆弱診断を行ったけど、その可能性が一番大きい。」
「・・・待て、それじゃあ、赤牙組って奴もどっかからか金庫を奪ったってことじゃないか?それに『ロゼッタデータ』なんてすごいもの、一組織が持っているようなもんじゃないだろう?」
そこまでしてロゼッタデータを欲する人物・・・。記憶がないんだから意味はないか。だが、伝説とうたわれるパエトーンからデータを盗もうとする奴だ。それだけでも、少なからず絞り込めるだろう。
そして、暗証番号が入っているUSBにバックドアを仕込んでいたということは・・・。
・・・これ以上はらちが明かない。
「プロキシ先生達の介入がなかったら、私達が正体不明の黒幕と対峙することになっていたはず」
「やっぱ店長は頼りになるぜ!まるでスターライトナイトの相棒犬、メテオマットみてぇだな!そして、ナナシはいわば二号戦士と言ったところだな!」
「えっと?ありがとう」
「・・・スターライトナイトってなんだ」
だが、アンビーによればビリーにとって最上級の誉め言葉らしい。
「はあ・・・あの時は多額の報酬に目がくらんだけど、結局今回もろくな仕事じゃなかったわね。もう二度と情報屋の口車には乗らないんだから!」
「・・・も。なのか」
「う、うるさいわね!こうなったら、ここを出たら仲介業者に二倍の追加報酬を要求してやる!」
やはり、と言うか裏の人間のつながりは予想以上に大きいらしい。
一応、アキラ達から新エリー都の状況を聞いたが、ここまでピンチに陥っても、裏の人間と言うのはいなくならない。
「ニコ、ホロウでの探索を急ぐ必要がある。私達の滞在時間がエーテル適応体質の限界に迫ってる」
「エーテル適応体質ってなんだ?」
今まで、聞いたことがない単語が聞こえてきたので、思わず聞き返す。すると、まず3人からえ?パエトーン側からもアキラとリンのえ?と言う声が聞こえてきた。
「あんた、エーテル適応体質を知らないの?―――って、そしたらあんたの体は大丈夫のなの?」
「お、おい!赤牙組の組長みたいにエーテリアスになるのだけはやめてくれよ!?」
一応、体をぺたぺたと障ってみるが特に異常は見られない。
と言うか、正直ホロウに居ようが、外に居ようがあまり差を感じない。このことを、みんなに伝えると驚いていた。
「・・・おそらく、かなり高いエーテル適応体質何だろう、そのおかげか現実とホロウでほぼ変わらないパフォーマンスを発揮できる特殊体質・・・なんだと思う。実際にナナシに戦闘力の低下はないし、浸食も一切無効化している。」
「すげぇじゃねぇかそれ!そうか、だからあんなにナナシは強かったのか!まさに、天性のホロウレイダーだな!」
ビリーからなんとも不名誉なことを言われた気がするが、まぁ気にせず。
だが、この特別な能力は何かしら俺の特徴と言える。もしかすれば、これが俺の正体を知る。手がかりになるかもしれない。
「とりあえず、デュラハンより先に、金庫を見つけよう。行こうニコ」
「えぇ、それじゃあプロキシ、引き続きガイドをお願い!」
何度か裂け目をくぐった後、俺達は開けた場所に到着していた。
ボンプがとことこ歩いて行った先に。
「あれが金庫か!」
「あぁ、見つけた」
だいたい30㎝くらいの大きさの箱がそこにはあった。
「今日はついてるぜ!」
「あたしの金庫!」
言いながら、金庫に向かっていく。
(全く不用心だ。もしかしたら、こういう時に罠が・・・ッ)
ちょうど、アンビーの方を向いたのが幸いして、奴に気づけた。
明らかに今まで戦ってきたものとは格が違う存在。
「アンビー伏せろ!」
「ッ!?」
アンビーが伏せたのを確認して、俺は振り下ろされる剣に合わせて『熱血パンチ』を放つ。
「ぐぅぅぅっ!」
だが、体躯の差は如実に響く。俺はそのまま、金庫の方へ吹き飛ばされた。
「全く・・・今日はついてるぜ」
「どっちの意味でもな」
アンビーもすでに撤退している。
俺達の前には盾に、大剣を構えるエーテリアス。『デュラハン』が立っていた。
「あ・た・し・の・金庫!!」
ニコがアタッシュケースを構える。
「やるわよ!」
「おう」「了解」「わかった」
デュラハンとの闘いが始まった。
先ほどまでいた場所は極端に狭かったためアンビーの剣のリーチがうまく発揮されなかった。今回は、アンビーが前衛、そして俺が隙を伺って攻撃。
そして、初めて知ったのだがニコが思ったよりインファイターで、後衛はビリーが務めて、ボンプは煙幕弾を投げていた。
(・・・それにしても、素早い。こういうやつに攻撃を当てるのは苦労するし、その上『熱血パンチ』だと弾き飛ばされる)
自分との相性の不利さ。それを感じていた。
それに、今回邪兎屋の面々はかなりホロウにいるためかなり疲労している。それでは満足な戦闘は難しいだろう。
(何か、何かできないか・・・?)
『ゴッドハンド』
無意識に頭に入ってくる声、昨日の夜俺にインプットされたものだった。
後はそれをアウトプットするだけ。
「ビリー、ニコ!」
「どうしッたの!?」「どうしたんだ?」
「俺がデュランハンの動きを止める。そのうちに、一斉放射で倒してくれ」
もちろん、急に何言ってんだという話である。だが、それでもやらなければ誰かが死ぬかも、怪我するかもしれない。
「わかったわ!」「わかったぜ!」
だが、予想とは反してすぐ了解の返答が帰ってきた。
「・・・いいのか。そんな、簡単に信用して」
「いいのよ。ナナシ、あなたはもう仲間だから」
アンビーの言葉に俺はうなずく。
「タイミングは今から30秒後。動きを止めた瞬間頼む!」
そう言い残して、デュラハンに突っ込む。もちろん、正面から。
当然、それに対してデュラハンの行動はその持つ剣を振り下ろすただそれだけである。
こいつは固い、おそらく首を折ろうと思っても折れないだろう。『熱血パンチ』も数発当てないと致命傷にならない。
ならばどうする、有効打になる火力をぶつけ続ければいい。
そして、熱血パンチがこいつの剣にはじかれたのは当たった角度が原因。もっと早く、相手の剣が加速する前に当てれば・・・
「はじける!!」
拳から火花が散ると同時に剣と共にデュラハンの体制も崩れる。
「今だ!『ゴッドハンド』」
手に気が集中し、俺の手をもとにデュラハンの1.5倍ほどの大きさの巨大な手が出現する。
それは、デュラハンを抑え込み、次の攻撃を封じた。
「今だ!」
「わかったわ」「了解だぜ!」
そして、ニコとビリーの一斉砲火によって、デュラハンは消滅した。
消滅と同時に金庫を運びその影に隠れていたボンプも姿を現す。
「ははっ、ははははは!やっと」
ニコが笑い出した後、俺達に駆け寄る。両手を上げながら。
(ハイタッチかな?)
とビリーとアンビーも同じ考えのようで手を挙げる・・・。
「みーつけた!!」
しかし、ニコは俺達をすり抜け。お宝の方に一直線。
「ビリー・・」
「・・・悪い人じゃあねぇんだ」
顔を見合わせながら、金庫の前へと向かう。
今にも、金庫に飛びつきそうなニコをしり目に、ボンプが金庫の上に立つ。
「水を差すようで悪いんだけど・・・喜ぶのはまだ早いよ!ニコ、落ち着いて聞いてね・・・」
「全部あの悪玉ハッカーのせいだよ!私がホロウを脱出するために用意したデータを削除したの」
「え?」
全員、そう言った。今、なんていったこいつ。ホロウを脱出するためのデータを消された。
いわば、雪山に遭難したような、とにかく。
「ピンチじゃないか!?」
「はは・・あんなに苦労して、やっともとに戻ったと思ったら、まさかこれで終わりなんて」
とほほ、と言う感じをにじみだしつつニコはその場にへたり込む。
「くっそ、モニカ様とデートしたこともねぇってのに、悔しいぜ。けど・・・なかなか悪くいな人生だった」
ビリーはなんだか祈り始めてる
「落ち着いて、他の手がないか考えてみる」
やはりこういう時、頼りになるのはアンビーだ。唯一の真面目枠と言っていいだろう。
「でも、パエトーン。何か、出る方法があるんだろう?なら、わざわざ報告なんてしないはずだし」
「うん。あるよとっておきがね!ニコの同意が必要なんだけどね」
すると、さっきまで悲観的に倒れ込んでいたはずのニコがぴしっと立ち上がり。
「同意する!」
そう高らかに宣言した。
「はやっ!」
そうだ、この金庫の中には『ロゼッタデータ』並みに価値があると言うホロウを自由に出入りできるチートアイテムが入ってるんだった。
「もし、その話が本当なら。それを使って俺たちは脱出できるわけね」
ボンプが頷く。
「同意する!さっきから言ってるじゃん!」
「え?そんなあっさり?依頼人の方はどうするの?」
すると、びっしとボンプに向かって指をさしながら。
「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!第一あたしがここから出られなかったら、誰がッ金庫を渡すって言うの?開けちゃっていいわ!」
そして・・・ついに、金庫が開けられたその時だった。
「あ・・・れ?」
「って、大丈夫!?」
ボンプが駆け寄ってくる。俺が膝から崩れ落ちたのだ。
「ちょっと、もしかしてエーテルの浸食?・・・いや、その様子はないわね・・・」
ぐぅぅぅぅ
お腹の音が鳴り響いた。
「え?」
「・・・どうやら、空腹でもう動けないみたいだ。『ゴッドハンド』も使って、意識が・・・・・」
よくよく考えてみれば『ゴッドハンド』や『熱血パンチ』の力の源は何だろうか・・・。
当然、エネルギーは消費される。そして、俺は最近久しぶりに食べ物にありつけたのと、おかゆ生活の為、普通にエネルギーが尽きたのだろう。
こうして、俺の意識は闇の中に落ちた。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け