ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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そういえば、アンケート調査でナナシが推しって人が6人いるんですよねぇ――謎。
でも、そしたらナナシの腕が飛んだり、死んだりしたシーンはどういう気持ちで見てたんだろう?


閑話・ナナシと悠真

 

 

目を大きく開く。マジンの拳は霧島の元に行くことはなく急に現れたエーテリアスによって受け止められたのだ。

 

『AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「ッ、うぐっ」

 

とんでもない叫び声に思わず両耳を塞ぐ、それと同時に正体不明のエーテリアスの姿は変わり、体格はデュラハン程度まで成長し、両手を塞いでいたブレードは消え去りその代わりに人間のような五本指が姿を現した。

 

(来る!)

「変身!!」

 

体内のコアが光り輝き彼に力をもたらす。蒼き輝きを纏う戦士。黒目から銀眼へと変化しただけではなくまるで執事服の正装のような出で立ちに変わっていた。

 

『SEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!』

 

突如として変異デュラハンは手をパッと開かずグッと握って、その場でI字バランスの如く勢いよく振りかぶられる――そのまま、ダンッ!と音がするほど踏み込んだ瞬間。

 

 

シュンと拳を引き――ドカン!と奴の手から巨大な拳状のエネルギーが放出された。

 

「なっ!『真マジンッ――!』」

 

その拳を真マジン・ザ・ハンドにて何とか止めようとするも、出が遅く右手が加速しきる前に到達した拳になすすべなく吹き飛ばされ激突したコンテナに軽いクレーターを形成する。

 

「ナナシ!!ッ、ゲホッ、ゴホゴホ――」

「ふん、お前の体も何やら訳ありのようだ、急速に衰弱していってるじゃないか、それにあのエーテリアス――こちらに運が向いてきたな」

 

意地の悪い表情で悠真を見下すように顎を上げる霧島。

 

「ふん、ここに来れた時点でお前らはもう用済みだ。せっかくだこの俺が直接手を下してやろう」

「はぁ、はぁ――」

 

その手に付けられたのは、アルターエゴに致命打を与え、ライの命を奪った人工聖剣。その戦闘力はバカが使っても強い、それは明白なのだ。

 

「――ははっ」

 

はっきり言って全快とは言い難い、その上ナナシ達には内緒にしているが自身の脊髄を身代わりとして抜き、佳奈ちゃんたちに渡しているのだ。

そんな状況ながら悠真は笑みを浮かべていた。

 

「何がおかしい?」

「いや、まさかそんなのがあるから勝てるって思ってると思ったらついね。ちょうどいい、二人の仇だ」

「二人?」

「こっちの話だよ――決着をつけようか。そっちは頼んだよ、相棒」

 

謎のエーテリアスはナナシに託す。悠真は一瞬、ナナシの方を振り向くと、いつも通りいたずらっぽい笑みを浮かべて、黄色い鉢巻を風になびかせる。そして長弓をしっかり握りしめると、ためらいもなく前に進んでいった。

 

「まあいい、消えろ。シュートコマンド01――『スピニングトランザム』」

「はっ、せいッ!」

 

霧島の右手に空気の層が渦巻き、鋭利な姿へと変わり悠真に向け放たれる。それを、間一髪で身をひるがえし躱す。

 

「ふん、その体で一体どこまで逃げられるかな」

「さあね!」

 

連射されるスピニングトランザム。それを、躱し、躱し、躱し続ける。すると、突如としてスピニングトランザムの連射が止まる。

 

「ちっ、弾切れか」

「ここだ――ッ、ゴホッ――はぁ、くそッ何でこのタイミングに――」

 

その隙をつき突撃しようとした悠真の足が止まる。もはや戦える体ではない――その隙にカートリッジを交換し装填した聖剣を悠真に向ける。

 

「案外、呆気ない終わり方だったな――死ね、悠真!シュートコマンド01―「ここだね、アルターエゴ」――なっ!」

 

シュートコマンド01――宣言後、発射されるまでの溜めの時間はわずか約1秒。だが、それを着くことは彼にとっては造作もない。

悠真は既に知らされていた、アルターエゴとの最後の会話にて伝えられたメッセージは彼の助けになっていた。

 

 

突如の突撃の対応できず霧島の右腕はあらぬ方向に向きスピニングトランザムも虚空に消える。

 

「これで終わりだ――霧島!!」

 

届く、スピニングトランザムの発射は間に合わない。この一太刀を霧島に妨害する方法はない――はずだった。

この時に悠真の視線が一瞬、使われなかった霧島の左腕に着けられた腕輪に向かう。当然気づいた――それは、グランの時に着けられていた物とは別物だと。

 

 

直後、霧島の口角が上がる。

 

「キーパーコマンド03『ドーンシャウト』」

「なっ」

 

彼の両腕に装着された人工聖剣が共鳴し、音による壁が形成される。それにより、悠真の一撃はずらされ虚空を切り裂くのみだった。

 

「うぐっ、はぁはぁ――」

「本当に勝ったと思ったのか?結局お前もお前の師匠と同じで愚かだな――さて、もうお前の相手をしてやる気もない」

「ッ、まだ諦めるわけには――」

「その様子じゃ、耳も目も使い物にならんだろう?」

 

霧島の言う通り、一連の戦闘で既に悠真の顔には緑色の線が血管に浮き出ており顔を見ればすぐさま限界だと理解できる。

 

「それ返しなさいよ!」

「っ、どけ!」

 

だが、その様子を見てイアスが彼の手にある救急バッグを取り返そうと手を伸ばすも軽くあしらわれてしまう。

 

「こいつ――!」

「がはッ、ぐっ――」

 

それどころか逆上した霧島の蹴りをイアスの代わりに悠真が庇う形になってしまった。

 

「安静にしとけ長生きしたいならな、ははっ」

「くそっ――絶対に許さ、うっ――」

 

嘲笑う霧島。その姿に倒れながらも手を伸ばそうとする――しかし、悠真の意識は闇に落ちていった。

 

「悠真、寝てる場合じゃないって!起きてよ!」

 

 

 

 

 

 

「ここは――?」

 

倒れた悠真、暗闇の世界の中、その周りには半透明で涙を流しながら駆け寄る人々がいた。

 

「悠真、まだ、終われないだろ?こっちに来るのも早いんじゃないか」

(――ナナシじゃない、誰だ?)

 

声が聞こえた、倒れた自身に伸ばされる手。無意識にその手を取り悠真は立ち上がる。

 

「あいつの背中、守ってあげて」

「――ああ、まだ終わりじゃ――ない!」

 

目の前のナナシの姿をした誰かは消え去り、その光はまるで星々のように分かれ、そして悠真の長弓に宿る。

 

「僕は――やり遂げる」

 

霧島は既にコンテナに乗り移り、勝利を確信したからかその手首から人工聖剣も取り外し悠真に対し背を向けていた。

 

 

長弓を引き絞る中、集中し見えない霧島に向けて狙いを定める。彼にはもう暗闇しか見えておらず限界も近い。

 

『いいかい、悠真』

「――師匠?」

『弓の神髄は己の心にあるそれが宿るのは常に――』

 

 

「『弓を射る刹那!』」

 

放たれた光の矢はまるで流星のように煌めき、暗闇をまっすぐ切り裂きながら進んでいった。そして――

 

「うわっ!」

 

霧島に命中し、彼を地に落とした。

 

 

 

暗闇が晴れた後、ゆっくりと倒れた霧島――ではなく、救急バッグの中身である薬に近づく悠真。

 

「無駄だ、叩き壊そうと――1滴あればいくらでも複製がきく――」

「――ぐっ、あんたの野望はここでおしまい」

 

霧島の遠吠えをよそに、薬を自身の首に注射した。確かに、こうすれば1滴も残らず悠真の中に入って行くだろう――だが、信也くんの例を考えると今すぐにでもエーテリアス化しかねない。

 

「悠真!これじゃあんたが――」

「ごめんね、プロキシ。こんなもの存在しちゃいけないんだ――あと、ナナシにも代わりに謝っておいてくれない、それと僕のこの姿を見て命を大切にしてって伝えてほしい」

「ちょ、悠真!!悠真!!」

 

そのまま、悠真の意識は闇に落ちていった。

 

 

 

 

少し時間を巻き戻し一方、ナナシは――

 

「はあッ!」

『UGAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

やりにくさに頭を内心抱えていた。というのも、エーテリアスは生前の人間が強く反映されることもあるのだが、このエーテリアスはどうもかなり強い人が変わった姿らしくナナシの一撃はあれやこれやと見切られ防戦一方になっていたのだ。

 

 

まあ、それは大した問題ではない。ナナシは聖剣使いなのだ本来なら必殺技を絡めていけば並みのエーテリアスは手も足も出ないのだが――

 

「『ムゲン・ザ・ハンドG2!』」

『MUUUUUUUUUUUUUUUU!!』

 

頭の上で両手を合わせ、背後に手のオーラをいくつも作り出す、すると背中からゴッドハンドが少し小さくなった程度の手が無数に出現する。と言っても、ナナシは8本、エーテリアスはなんと32本というまさかの完全上位互換と来た。

 

(どういう事?なんで、俺の必殺技と似た技を使えるんだ?)

 

放たれたムゲン・ザ・ハンドを俺が持つ8本でまず同数を相殺、残りの24本はエーテリアスとの距離を詰めながらなんとか躱していく。

だが――

 

(誘導されている)

 

『ジ・アース』がもし使えればこれらの手を瞬時に切り落とせるのだが、今の俺に発動はできない。

そして、距離が十分詰まった瞬間奴は動いた。

 

『NEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

 

目の前で奴の拳が炎を纏い、ナナシに迫る。その技はまるで『熱血パンチ』の用だった。

当たれば、死ぬ。そう直感させた、背中から刺さる気配も認知しているもし背後にバックステップでよければ無数の手によって追撃されることも――

 

「だから、今だ!第九の神の鍵『エデンの星!』」

 

ナナシは懐から事前に作成していたエデンの星を取り出し重力の力場を発生させる。

 

 

どの向きに?

 

 

こいつの拳に真正面から重力をぶつけたところで意味はない。突き抜けて俺の頬にぶっ刺さるだけだ。ならどうするか、ナナシはそっとエーテリアスの背中に向けて重力を発生させ逆に拳を加速させる。

 

「――間一髪だな『真熱血パンチ!』」

 

それによりタイミングのずれた拳は虚空を裂き、空気を焼く匂いのみが鼻に残るだけだった。

そして、反撃とばかりに振るった熱血パンチは確かにエーテリアスに命中し、実際に奴をフェンス越しまで無数の手ごと吹き飛ばした。

 

『AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「――効いてない?」

 

吹っ飛んだは吹っ飛んだ、しかし何事もなかったようにすぐ立ち上がりこちらに殺気を向けてくる。すると、再び手をパッと開かずグッと握って、その場でI字バランスの如く勢いよく振りかぶられる――そのまま、ダンッ!と音がするほど踏み込んだ瞬間。

 

 

シュンと拳を引き――ドカン!と奴の手から巨大な拳状のエネルギーが放出された。

 

「今度は間に合うぞ!『真マジン・ザ・ハンド!』」

 

距離があったため、何とか真マジン・ザ・ハンドで受け止める。しかし、どうにも相手の限界が見えない。白祇重工と一緒に入ったホロウの時にグレースと共闘して戦ったデュラハンはアフロディに力を与えられていたせいで体が崩壊し明確に限界が見えていた。

 

 

しかし、相手には全くそれが見えない。

 

(こっちもまだまだ行けるとはいえ有効打がない。じり貧だ――なら――)

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

体内のエネルギーを絞り出す。限界を超える――両手に『ゴッドハンドW』『正義の鉄拳G4』『真熱血パンチ』を同時展開。

 

体の外殻は『真マジン・ザ・ハンド』を発動し、体に密着させマジンと一体化する。

 

足は『ムゲン・ザ・ハンドG2』4本を巻き付け、『真熱血ジャンプ』を起動し、装甲と展開しつつ増強する。

さらに背面に4本ムゲン・ザ・ハンドを展開し攻撃補助、防御補助を行う。

 

 

最後にマジンの仮面がナナシの顔を覆い、表情が隠れる。

 

「行くぞ、これが今の限界点――!!」

 

あの時のように命は削らない。だが、俺の全力全開でお前を倒し、悠真を助けに行く――

 

 

「『フルアーマー・ザ・ハンド改!!』」

 

それは、グランを倒すときに使ったナナシ独自の必殺技。一つ、一つが弱いのであればすべてを同時発動することによって補強する。その考えから生まれた必殺技だ。

 

(これなら、あいつの技にも対応できる――はず?)

『FUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』

 

ありえないものを見た。今、見せた必殺技そのはずなのだが――目の前のエーテリアスが雄たけびを上げたと思えば奴の背後から無数の手が展開され奴の体に纏わりつく。

それだけじゃない、手にゴッドハンドWのような巨大な手が展開されると思えばすぐさま圧縮される。

 

 

それで終わらず、両手両足には炎が纏われ、無数の手とはまた別に鎧が形成されエーテリアスを守る。

 

すなわち――

 

「真似かよ!!」

『AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

最後に、顔も俺と同じように隠れ視線が交差する。沈黙――すると、悠真が矢を放った音が響いた。

 

 

直後、走り出す二人。

 

 

「はぁぁぁ!!」

『UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

激突する拳、まるで雷鳴がとどろいたような轟音が広場に木霊する。それは一瞬拮抗したように見えた――が、ナナシの見ている光景は突如として後ろに引っ張られた。

 

 

 

「ぐっ、がはっ――はぁ、はぁ――」

 

否、正確に言えば相手にパクられたフルアーマー・ザ・ハンドに敗北しコンテナにクレーターを形成することとなったのだ。

 

(なんだ、こいつは――こんなエーテリアス見たことがない。一体――?下手すれば雅よりも)

 

「私を呼んだか」

「え?」

 

唐突に思考の外から現れた存在に意識が奪われる。声が聞こえた先に視線を向けると、そこには対ホロウ六課の星見雅がスタンバイしていた。

 

「ナナシ、行けるか?」

「ああ、問題ない」

 

フルアーマー・ザ・ハンドもまだ生きている。さらに雅も戦力として加えられるなら百人力だ――

 

「でも、どうやって雅が一人で?」

「一人ではない、アキラがここまで私を送り届けてくれた」

「アキラが?――確かに気配がする」

 

だが、まだ裂け目の近くにいるようだ。これはおそらく裂け目を通ってすぐに雅が飛んできたと考えていいだろう。

 

「でも、アキラがホロウに入ったらマズいんじゃ――」

「多少なら問題ない。それに抗浸食薬を使っているからな――行くぞ、ナナシ!」

「了解、合わせるよ」

 

どうやら敵さんもこれ以上待つつもりはない様子。先ほどと同じように雄たけびを上げ接近してくる。

 

「悪いけど、俺はサポートなんだ。『エデンの星!』」

『UUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』

 

一瞬、奴の動きが鈍る。なぜかわからないが奴の殺気は俺以外に飛ばない。ヘイトは取り放題だ、そこでエデンの星で奴の足に集中的に重力を展開する。それによって、奴は転ばないようにと少し速度を緩める。

 

「そこを私が狙う、だな」

 

雅の周りを浮遊する一つ目の精霊?が刀に宿る。鞘の指紋認証機能を突破し抜刀する。そこから放たれるのは目で追うことも叶わない剣戟の嵐。

 

 

 

「――固いな」

 

だが、雅はその刀の感覚に妙なものを覚えた。確かに命中したはずの一撃――しかし、ふと見てみればエーテリアスの周囲には無数の手が奴を守るように展開し防いでいたのだ。

 

『JEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!』

 

すると、その直後エーテリアスの姿がぶれる。

 

 

 

 

「え?――がはっ」

 

気づけば口から血を吐いていた。フルアーマー・ザ・ハンドは強制的に解除され、何が起こったのか理解ができないまま呆然としていた。だが、雅の剣戟の直後から奴は一切動いていないはずなのに俺は後方に吹き飛ばされている。

 

(いや、動いたのか――俺や雅が認識できない領域のスピードで――)

 

『偽ジェットストリーム』とは比べ物にならない加速力。もし、この一撃が雅に命中していればどんなことになっていたか――やたら固い自分でよかったと安堵しつつ、腹部を確認する。

 

「ナナシ、大丈夫か?」

「大丈夫。このくらいなら――ふぅ、だけど早すぎる。見えた?」

「奴が少しぶれたのは認識できたがその直後にナナシが吹き飛ばされていった――なるほど、アポロやアルターエゴの『偽ジェットストリーム』に類似した技という事か」

 

陥没した腹部を内臓ごと理の律者の力によって再生させる。

それにしても類似どころの話ではない。そのものと言ってもいい――だが、もうその使い手はこの世にはいない。

 

「――問題はどう考えても一度や二度見ただけじゃ反応できないスピードってことだね。エデンの星の拘束も意味をなしてないし」

「強いな、圧倒的なスピード、圧倒的なパワー、私の刃が通らない防御力か」

「逃げるのも視野に入れるべきだ、悠真が倒れてるし――俺が囮になるからそのうちに先に脱出を――」

 

そう言い終える前に雅に刀の柄で思いっきり叩かれた。視線を向けるとかわいらしく頬を膨らませた雅がいた。

 

「――何でもない」

「よろしい、安心しろ――もし、お前が先に逝ったら私も後を追おう」

「やめて!!俺が命かけられないし、冗談でもそんなことは言わないで!」

「そのつもりだが――冗談に見えているのか?」

 

内心、冗談に見えないから釘を刺してんだよと思いつつ打開策を探り続ける。だが、こちらには決定的な有効打はないし、あちらの方が圧倒的にパワーもスピードも上ときた。

特にスピードはまさに雲の上の存在と言えるだろう。

 

 

 

だが、違和感を抱いた。エーテリアスの視線がある一点に注がれたまま動きを止めている。

 

「一体、どこを――?アキラ!!」

 

エーテリアスの視線の先にはまさに雅を追ってここまで来てしまったアキラが立っていたのだ。

 

(まさかこいつ俺だけを狙うんじゃないのか?アキラまで狙われたら――)

 

ともかく、アキラの盾になろうと彼の前に立ちふさがる。だが、そんな行動を見せてもエーテリアスは一切のアクションを見せず呆然としたようにアキラを見続けている。

 

 

――その時だった。エーテリアスの体が端から自壊し始めたのだ。

 

『アァ―――ヨカッタ、イキテ、クレテ』

「誰、なんだ?君は――」

 

そう言葉を言い残し彼の体は完全に消滅した。瞬間、抜ける緊張感――思わずその場にへたり込む、全然気が付かなかったがあいつがアキラを視線に入れた瞬間、恐ろしいまでの殺気は消え去っていた。

 

 

 

 

(ていうか、エーテリアスなのに言葉を――一体何だったんだ?)

 

謎は残るものの俺たちは霧島を倒れた悠真を回収しホロウを出た。彼は意識を失ったまま緊急搬送されていった。そして、佳奈ちゃんの方はというと無事に共犯者ごと一網打尽にされこの事件は決着がついた。

 

 

 

悠真の容態は深刻で、言っときは危篤の知らせも届けられたものの意志全員が匙を投げかけたその時、彼は奇跡的に目を覚ましたのだった。

 

 

ちなみに、ナナシは謎のエーテリアスから受けた攻撃を適当に直していたせいで後でめちゃくちゃ痛い目にあったらしい――

 

 

悠真が目覚めて数日後――彼に誘われてよくサボるのに利用するという近くの屋上までやってきていた――

 

 

「ふぅ――風の吹くところに、勝るものなしってね――」

「バカと煙はなんとやら――って言うけどね。ま、勝手に脊髄ぬいて渡しちゃった悠真にはピッタリかもね~」

「それはこっちのセリフさ、謎のエーテリアスから受けた攻撃を適当に直したせいで突然血を噴き出したナナシに言われたくないかな」

「いやいや、そっちはよくわからん薬を自分に注射してバカでしょ!!」

「まあ、実を言うと、こうしてまたナナシに会えるとは思わなかったんだ。あの薬を首に注射したときは、あ~、終わったな~って感じだったから」

 

医者が言うには悠真が無事に生還した理由が全く分からないそうで曰く『現代医学の奇跡』ということでかたずけられてしまいそうらしい。

 

「でも、元気そうでよかったよ。霧島の件なんだけどさ、今後のことはどうするの?」

「療養所の子供らは全員鳩首して専門の医療機関に送ったから、もう大丈夫。信也君も完全に回復したみたいだしね。今後の生活費やらなんやらは、僕が援助していくよ」

「半分出そっか?」

「やめておくよ。大体、ナナシってそんなにお金は持ってるのかい?」

「今はバイトもしてるから余裕あるし、それに店長が色々なコスプレしたら給料上げてくれるって言ってたから払えるよ」

「――ナナシ、そのバイト辞めない?」

 

その後、どうしてと首を傾げるナナシに必死にどういう事がいけないのかしっかり教える悠真、そして色々やる前に必ず店長二人に説明することを約束させたのだった。

 

 

「それと、師匠のことはどう?色々あったけど、整理できた?」

「ああ、遺品の整理は済んだから、来月にはお葬式をするよ。もっとも、参列者なんて僕くらいだろうけどね」

 

悠真はおもむろに手を上げ、黄色い鉢巻の端に軽く触れた。

 

「ねえ、ナナシ――」

 

その時だった。不意に、スマートフォンから呼び出し音が鳴った――悠真を長年見ている主治医からだった。

 

『浅羽悠真さん、お知らせがあります。君の診断結果を基に、我々はある一つの仮説を立てました。分析結果を見る限り、君の命を救った可能性が高いのは最後にご自身で注射した薬剤です』

「どういうことです?あの薬は僕にとって毒も同然で、病気の進行を早めるだけのはずじゃ――」

『毒?いえいえ、あれは君のためだけに作られた、特効薬と言ってもよいものです。体内に残留した有効成分の検査したところ、君の体調に合わせて症状を抑制するように調合されていることが判明しました。言ってしまえば、この薬は君にしか効かない――君を知り尽くした医者でもなければ到底作れない代物です』

 

その後、医者と少しばかり話した後、悠真は電話を切った。彼は戸惑った様子で、事実を受け止めるまで長い時間を要した。

 

「つまり――奇跡なんかじゃ、なかった――」

「なるほどね、あれは信也くんに打たれたエーテル適性を強化する薬じゃなくて悠真の症状を抑えるための薬だったのか――だから、エーテリアスになっても薬の傍を離れなかった――うん?」

 

(待てよ、じゃあ謎のエーテリアスは俺に何かしらの因縁があったってことなのか?)

 

悠真は屋上の手すりに持たれて黙り込んでいた。眠ってしまったのではないかと思うほど時間がたった後、彼はようや口を開いた。

 

「ナナシ、少しお願いがあるんだけど」

「どうしたの?そんなかしこまって」

「一緒に墓参りに行ってくれないかな?」

「お師匠さんのね、いいけど――俺って行ってもいいのかな?」

「いや、そっちじゃないんだ――」

 

そっちじゃないというところに疑問を抱きながらも、悠真は天を仰ぎながらその光を懐かしそうに見つめる。

 

「アルターエゴの墓参りに一緒に行ってくれないかな?」

「―――ああ、もちろん」

 

 

 

 

ちなみにその後――

 

郊外にあるアルターエゴの墓参りの帰宅途中――

 

「僕が倒れた時、目の前に現れたんだ。君の姿をした彼がね」

「そっか、というかアルターエゴの野郎。俺が倒れた時は出てこなかったのに――ま、でも――あいつらしいかな」

 

気づかないうちに別れは訪れていた。アルターエゴは何も言わず己の魂をアポロに託し消えていった――本当にわずかで短い人生、だけどきっと楽しかっただろう。

 

「そうだ、はいこれ」

「これって、チョーカー?」

「そう、プレゼント。今回の件で巻き込んで悪かったと思ってるし、ナナシに迷惑をかけたのは変わらないからね」

「そっか――なら、ありがたく受け取っておくよ。ありがとう」

 

渡されたチョーカーは悠真がつけているものとそっくりでサイズもなぜかちょうど俺の首が入るくらいの大きさになっていた。

だが、今までチョーカーなんてつけたことがないナナシはその装着にひたすら苦戦していた。それを見た悠真はナナシの後ろに回りチョーカーを受け取る。

 

「ははっ」

 

何か、後ろから笑い声が聞こえるが悠真にチョーカーをつけてもらった。

 

「おーピッタリ似合ってる?」

「――ああ、似合ってるよ。ナナシ」

 

 

二人は帰路につく。ナナシは前を歩いていたせいで全く気が付かなかったが悠真はなぜかナナシのつけているチョーカーを見てずっとニヤニヤしていた。

 

 

 

 

おまけ クラウチングスタートしている絶望

 

 

 

薄暗い研究室。その中では忙しなく人が動き何やら難しい専門用語が飛び交っている。その中でも異彩を放つのは見た目はもはや中学生くらいにしか見えない少女。

 

「――脱走した個体は?」

「はっ、脱走したアポロ十号はホロウに突入後、エーテリアス化しその後理の律者と交戦しその後自壊しました。例の薬は一滴残らず使用され霧島も確保、失敗したと思われます」

「ありがとう、もう下がっていいよ」

 

青髪のぼさぼさ頭を掻きむしりながら、今回の結果を確認する。どうやら、満足の行かないものだったようでその顔には落胆が伺える。

 

彼女の目の前にあるのは二つの巨大な培養ポット。一つは空で識別には十号と記されている。だが、不思議なことに中身がある方は一号と書かれているのだ。

 

 

「結局、薬も作れず十号は脱走するはで散々だ――」

「それで、どうするのかしらアインシュタイン博士。例の薬がないとアポロは人工聖剣が扱えないんじゃなかったかしら?」

「そうだ――けど、別に僕はもともと重要視していない。問題はアポロ一号を操れるかどうかだ」

「聖剣無しでしょ?それで、本当に使えるのかしら」

「問題はない、大体君はその聖剣無しのアポロに負けてるじゃないか」

「――それもそうね、でも結局暴走したら意味ないわよ」

 

旧都陥落時、アポロは一号から十号まで起動し謎の勢力と戦った。アインシュタインたちは自身が倒した一号と、ヘ―リオス研究所で倒れていた十号を鹵獲し年月をかけ厳重な警備のもと肉体を再生させていたのだ。

 

最も、最弱のアポロ十号にすら厳重な警備とやらは突破されるのだが――

 

 

「そっちの方は問題ないさ――そうだろ、アポロ」

 

アインシュタイン博士は恍惚とした笑みを浮かべながら培養液を見つめていた。

 




やりやがった!!絶対にナナシがブチ切れることやりやがったよ!!
はい、ということでナナシは全く気が付かずに行われていたアポロ十号VSアポロ十一号の戦いです。
何と、全く歯が立たない。こんな状況で一号と戦うことになったらナナシは勝てるのか!?

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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