今日は誰とも会う予定のないお休みで、こういう日はなんとなく朝からチューハイやストゼロを買ってのんびり飲んでいる所だ。
(でも、そういう気分でもないんだよなぁ…)
悠真との一件で、なんやかんや腹回りの臓器が全損し、それを修復したばかりなのでまた内臓に負担をかけるのは引き目を感じていた。
なら、特訓しようと適当なホロウに入ろうとしたのだがアキラとリンに協力者であるフェアリーを抑えられることによって失敗に終わった。
「…暇だなぁ、アレなんだろう?」
何となく行く当てもないままルミナススクエアを彷徨っていると遠目から人だかりが見える。
そこは確か、戦闘訓練などに使える施設がある――ところだったはずだ。
(人目につくとこで聖剣使えないんだよな…一度は使ってみたいけど)
「ん?」
ググっと目を細め、人ごみの渦中にいる人物を見つける。と言うか、見つける前に見知った顔が映った団扇が目に入った。
「対ホロウ六課の四人だ、悠真も元気そうでよかった‥‥ちょっと、見に行ってみるか」
師匠との別れからかなり落ち込んでいるように見えたけど、墓参りの後には持ち直したように見える。
「雅様ぁ!!あたしを踏んでくださいっ!」
「踏んでください?」
バレないように気配を消しながら接近すると、服にも雅、団扇にも雅、雅と似たような羽織を装備した狐?犬?にも見えるシリオンの少女が熱烈なファンコールを送っていた。
「対ホロウ六課って本当に人気なんだなぁ…」
「そりゃそうですよ!対ホロウ六課の皆さんは私たちの希望であり、救世主なんです!特に雅様は当代最年少で虚狩りになったお方なんですよ!!」
ぼーっと呆けているとさっきまで熱烈にファンコールしていたシリオンの少女がズッと現れ熱弁してくれた。
「うん、本当にすごい…貴方は雅…いや、雅さんのファンだよね?よければ、色々教えてくれない?」
そういえば、雅との最初の出会いは自己紹介すらせず、と言うかそれどころなく俺が殺されてゆっくり話す機会すら失われていた。
「もちろんです、ファンが増えるのは大歓迎ですよ!!喫茶店にでも入って話しましょう」
「本当、ありがとう!…ッ!?」
話を聞けてラッキーと思ったその時、どこからか殺気とはまた違う、突き刺すような気配が俺の背中を貫いたのを感じた。
すぐに振り向いたものの、それらしい人物は見当たらないし、これほどの気配を放てるであろう対ホロウ六課の面々も既にこの場にはいなかった。
「どうしましたか?」
「…いえ、何でもないですよ。それじゃあ、行きましょう!あ、俺の名前はナナシって言います」
「ナナシさん…そうですか、あたしの名前はアリエスって言います!」
と言うことで、この日は彼女と星見雅について語り合っていることで暇も潰せて気づいたら陽が落ちていた。
「あ、あの…また、会えませんか!?」
「もちろん!!連絡先、交換しましょ!」
――と、言うことがあったのが今からちょうど一か月前のお話なのだが
「私に全て説明してもらおうか‥‥」
「えぇ…」
なぜ、俺はカンカンに怒っている雅さんに馬乗りで跨れているのだろうか。
記憶を漁って思い出してみても、朝になって突然雅さんが訪ねてきたと思ったら首根っこ掴まれてベッドに押し倒されたと言うことだ。
やっぱり、何もわからな――
「あの、雅さん。申し訳ないんだけど、この後遊ぶ用事があるからここでのんびりできないんだよね」
「雅“さん”だと…?私のことは雅と呼べと言ったはずだが、それにあの“女”とはどういう関係だ?」
「あ、やべ…」
すっかり、アリエスさんと話し込んでいる内に雅さんと言うのに慣れてしまったらしい。
と言うか、どうして雅さ――雅があの子のことを気にするんだろうか、と言うかどこで知ったんだろう。
「か、関係って言われても…きっかけは雅で、そこから雅を話題に話してるだけだけど…」
「なら、これはどういうことだ?」
「それって、あっ!この間、あの子と一緒に行ったゲームセンターの写真?」
写真に写っていたのは、シューティングゲームで肩を寄せ合いながら遊んでいる俺と彼女の姿だった。
確かに、最近はきっかけであった雅とは関係なく遊んでいる気がするが、それがどうしたのだろうか――?
「それだけじゃない、これも、これも、これもだ」
そう言って、彼女の懐からばらばらと落ちてくる写真が落ちてくる。
そのどれもが、俺とアリエスさんだけでなくニコ、アンビー、猫又、エレン、リナさん、朱鳶さん、シーザー、悠真、etcたちとのツーショット写真であり目線がこちらを見ていないことから盗撮されたものだとわかる。
「一昨日、私の誘いを断ったな…何をしていた?」
「え、先約が会ったからあの子と一緒に映画館に……「そうだ」」
「お前は、何度も何度も私の誘いを断ってあの女と遊びに行った……今日もそうだ、私が約束をしようと思ったらその日には既に約束が取り付けられている」
「それに関しては、先に誘われた方を優先するのは普通じゃない?」
確かに、彼女の言う通り雅に誘われてもことごとく先約が入っていたため最近全く遊べていなかったが、それもこちらから誘おうかと思っていたところだった。
「ダメだ…私はお前の責任を取ると言ったはずだが?」
「言ってたけど、傷は治っているんだから気にしなくていいって言ったよね?」
「だが、お前は言ったはずだ、私に笑って欲しいと…なら、私とデートに行くべきだ。もう、忍耐の修業には付き合いきれないぞ」
「で、デート!?しゅ、修業って何を言って…?」
デートと言えば、アキラとリンによれば仲のいい男女が行うお出かけ――とだけ教えられている。
「それなら、いつでもいいよ!こっちから誘おうと思ってたくらいだよ!」
つまり、恋愛的な面は全くない――と言うか、理解していないナナシにとってはただ単に男女とのお出かけをそう形容しているだけだと読み取ってしまった。
「そ、そうか…なら、今日はいい…明日はどうだ?」
だからこそ、雅の怒りを鎮めることができるのだが――それと同時に、怒りを爆発あっせる燃料にもなりえるのだ。
「そう、だね…明日も明後日もデートだし…あれ、今日もデートだから今週中はずっとデートだった!それじゃあ、来週の月曜日に…うげぇ」
「この浮気者ッ!!」
まるで猪のような突進力でナナシの首を締め上げる彼女――ま、仕方があるまい、無知は罪と言うわけだし、認識の差によって生まれた悲しい事故であった。
「う、浮気?ちょ、ちょっと待ってそんなことした覚えは…「問答無用だ!!」」
「私は恐ろしい。いつか、ナナシが別の誰かの物になるのではないかとな……と言うかそのチョーカーは何だ?」
「あ、これ?悠真からもらってね、俺も気に入ってつけてるんだ」
「…悠真とは話しをする必要があるようだな」
「それに、俺は誰のものでもないよ。俺は、俺の物だからね」
「そうか…」
何だか落胆したようにしわしわと肩を落としたと同時に俺の首に掛けられていた手が離される。
「…私には、ここでナナシの足を折ってでも行かせないようにするほどの覚悟はない」
「足を!?」
項垂れながら、ハイライトのない瞳で俺の足を撫でながらそう呟く。
流石に、冗談と思いたいが彼女の表情と徐々に強まる足を締め付ける握力が無視できないものになってきた。
「ああ、だから…今日の所は行かせてやる」
「あ、ありがとう?…それじゃあ、失礼して…」
スッと力が抜かれたと同時に圧迫感も解かれ、馬乗りになっていた彼女も下りる。
そういう事で、雅には悪いけど俺はあの子とのデートに向かった。
(そういえば、雅さんがどうやってあの写真を手に入れたんだろう…?)
知っている限りで、彼女はそんなことをする人、と言うかできない人だった覚えがある。
その上、写真を見ても俺すら気が付いていない――そこまでの隠密ができる人物なんていただろうか。
(そんなこと考えても仕方ない、か…殺気があったらすぐ気が付けるし)
「あ、ナナシさん!こっち、こっちですよ~!!」
考えながら走っていると、駅の近くからよく響く声が耳に入る。
目を向けると、そこには初対面とは違い星見雅を推す装備ではなく黄色を基調とした衣服に身を包んでいる。
「はーい、ごめんなさい少し遅れちゃって」
「いいんですよ、あたしも今来たところですし…でも、他の女の子にうつつを抜かしてたらただじゃ置かないんですから!!」
「あはは…実は、友達が引き留めに来ちゃって…」
流石に彼女が推している星見雅に引き止められてました。とは言える訳もなく、適当な嘘で誤魔化すが、何か癪に障ったのか妙に冷ややかな視線が俺に向けられている。
「すんすん…もしかして、その友達って女の人ですか?」
「え、すごい!!よくわかりましたね」
「えへへ!!…って、違う…あたし、言いましたよね。他の女に現を抜かさないって!…知ってるんですよ、ナナシさんがたくさんの女の子と遊んでるって…今日くらい、あたしのことだけを考えてくださいよ…」
さて、ナナシと彼女との縁のきっかけは星見雅であった。
最初はアリエス自身もそんな気はなかったが、星見雅と共に戦い絆を深めたナナシとの談義は非常に楽しかった。
そこから話して行くうちに、仲を深めていった二人は最初の方は星見雅に縁のある場所に聖地巡礼と言うことで向かって行ったが、アリエス自身の提案で本当のデートのようになっていた。
「そうだね、せっかくアリエスさんと一緒にいるんだから全力で楽しまないと!!」
「ふふっ、そうですよ。そうですよ…あたしとずっと一緒にいましょう…」
その中で、徐々にアリエスは独占欲と言うのが芽生え始めているのを感じていた。
それを自覚し始めていた頃――ナナシと他のエージェントが一緒にいるところを見てしまったのだ。
神のいたずらか星見雅と一緒にいるところは目撃していなかったものの、それでも十分な脳破壊をされたアリエスはどうにか彼を繋ぎとめる方法を探していた。
その力によって彼の家、仕事、家族構成、周辺関係などなど全てを調べ上げた。
流石に、聖剣など深すぎる情報などは知ることはできなかったがその情報量はとてつもない。
「その必要はない」
そして、いつかはナナシをあたしの物にすると意気込んでいた彼女だが、天は皮肉にも最大の試練を与えたのだ。
「えぇ!?」
「雅、様?どうして、いやそれよりも何でナナシさんと同じ匂いがするんですか?」
そこにいたのは、他でもないアリエスの最大の推しであり尊ぶべき存在である星見雅だった。
もし、今までの彼女であれば目の前に現れた時点であの日のようにラブコールをしだすだろうが、それよりも彼女からする匂いに注目していた。
「それは、私とそこにいるナナシが婚約しているからだ」
「えぇ!?」
「う、嘘ですよね。雅様!」
「嘘ではない」
完全に話に置いてかれているナナシは俺って雅との婚約者だっけと記憶を掘り起こしている間にアリエスはその場に涙を流しながら崩れ落ちていた。
「…あははっ、はははっ!!!!」
「あ、アリエスさん?大丈夫ですか?」
だが、次の瞬間ホラー映画のゾンビでも立ち上がったようにはね起きたアリエスは怪しげな笑みを浮かべながら俺と雅を交互に見つめる。
「うふふっ、はははっ、大丈夫ですよ。ナナシさん、今日はやっぱり解散しましょう」
「え?…は、はい…」
どう考えても大丈夫そうではないのだが、あまりにも圧倒的過ぎる覇気に身じろぎした俺と雅は彼女を呼び止めることすらできず本当に彼女は去って行った。
「すまないな、ナナシ。こうしなければ、ストーカーの撃退はできなかった」
「す、ストーカー?」
「気づいていなかったのか、お前の周りを連日ウロチョロしていた奴の正体だ。殺気がないからナナシも気が付かなかったんだろう」
「な、なるほど…」
確かにここ最近、どこからか見られているような感覚があったのも事実。
しかし、それ以上に謎なのはストーカーを撃退するだけなれば俺がビデオ屋で押し倒される意味は会ったのだろうかひたすら疑問だった。
結局、その日は雅と一日デートをして終わった。
ちなみにその後――
今日は、久しぶりに雅と一緒にビデオ屋で映画をのんびりと見ていた。
そして、ちょうど終わったタイミングで雅が話を切り出した。
「ナナシ、来週実家に来ないか?父上に紹介したい」
「来週?いいけど、雅さ…雅のお父さんってめちゃくちゃ偉い人でしょ…緊張するね」
結局、あの後から数日たったがアリエスさんから連絡は来ていない。
一応、アキラとリンが会って少し話したらしいが、どうやらNTR?と言う性癖?に目覚めたそうで、俺と雅が楽しんでいるのを見ると楽しいらしい。
だけど、どういう物か二人に聞いてみても――
『ナナシは知らなくていいよ』
この一点張りで、フェアリーですら検索を妨害してくる始末だ。
まあ、そこまでして俺に知らせないようにするということは知らなくていい事なのだろう。
それよりも、問題は雅がした婚約者発言であった。
婚約者と言うのが、男女が結ぶ契り?みたいなものであることは理解していたが、流石にそんなことをした覚えはない――と言うことで、アキラとリンが説得して撤回となった。
「それにしても、ストーカーを撃退するとはいえ婚約者だなんて…もっと、雅は自分のことを大切にするべきです!!」
「お前には言われたくない……だが、確かに“今は”まだ婚約者ではないな」
「うん?」
何やら意味深な一言があったような気がするが、早く映画の続きが見たいので二作目のディスクを入れ再びソファに座りなおす。
「…ははっ」
隣で怪しい笑みを浮かべている彼女には全く気が付かずに――
ちなみに、アリエスさんはオリジナルキャラです。
どうしても、脳破壊をやってみたかった。後悔はない
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け