ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第96話・再開の歌姫

 

 

「ふんっ!」

 

拳を握り思いっきり叩きつける。それだけで並のエーテリアスは埃のように吹き飛んでいく。少し前、ライに殺された後、理の律者として生まれ変わった俺は明らかに肉体が進化していた。

まあ、要するに寿命が延びたっていう事なのだ。一応、エリシア曰く普通の人間くらいは長生きができるらしい。

 

 

だが、特訓していない必殺技が使えないのはいつも通りらしく先日も『イジゲン・ザ・ハンド』の特訓に勤しんでいた。

ゴッドキャッチのような強力な必殺技ではないのは単純に使い勝手の差だが、ジェットストリームは俺には早いということでエリシアから止められていた。下手をすれば体を壊して入院だと――

 

「――ほりゃ!!」

 

と、次は蹴りを打ち込みイアスには指一本触れさせず、必殺技も使わずホロウの奥へ奥へと進んでいく。

 

『何だか、ナナシ調子悪い?』

「え?そんなことないと思うけど、どうして?」

 

ほとんどのエーテリアスはワンパン、一回現れたデュラハンも頭を一撃で刈り取って特に何もせず終わらせた。調子が悪いどころか体が何だか軽い気すらするのだ。

 

『うーん、なんだろ――何だか、ナナシが隠し事してる気がして――』

「隠し事――?」

『うん、ナナシって私たちに隠し事している時何となくちょっと表情にさ、悪く思ってる気持ちが出てるんだよ』

「そっか――うん、ごめん。隠し事してる――」

『いいのいいの、もしナナシに悪影響があるような事だったら私たちがもう潰してるはずだし』

「え?」

 

思わず素っ頓狂な声が漏れる。リンの口から『潰してる』なんて初めて聞いたのもあ他tが、そういえば最近、パンケーキ屋の店長がコスプレを迫ってくることが無くなったなあと実際に思い当たる節があったのだ。

 

「店長に何かした?」

『何もしてないよ――ただ“お話”をしただけだから、ナナシは気にしなくて大丈夫だよ!』

「――うん、危ないことはしないでね」

『こっちのセリフだよ!ほら、行こ行こ!依頼人が待ってるよ』

 

何だか怖くてそのお話の内容は聞こうとはしなかったが、少しリンの声が低くなって彼女から少しばかり感じたことない恐怖を感じたのは言うまでもない。

 

 

 

 

そうこう話している内に俺たちは依頼人の元まで到着した。そして、こんな入り組んだホロウの中、見つけるのは難しいかな、なんて内心思っていたがその心配はすぐに杞憂に終わった。

 

「歌?」

『ナナシ!依頼人はすぐ近くにいるよ!』

 

どこかで聞いたことがあるような歌が地上から聞こえる。俺は地下鉄内を素早く移動しながら階段を駆け上がっていくとすぐに目に入った。まるでスポットライトに照らされたようにそこが明るく照らされていた上に、それに群がる観客たちのようにエーテリアスが迫っていたからだ。

 

「『ムゲン・ザ・ハンドG2!!』」

「ラ~」

 

すぐさま助けようとムゲン・ザ・ハンドG2を展開し向かわせるが、群がるエーテリアスたちの中心にいた歌姫は歌声を響かせ、その手に持ったマイクのような拡散期から放たれた音符型の衝撃波によってすぐさまエーテリアスは退けられた。

 

「聞いてくれて、ありがとう」

「すごいな、やっぱり――」

『ねぇねぇ!ナナシ、あの人ってもしかして!!』

 

ちょんちょんと足を叩くイアスをしり目にエーテリアスにお辞儀をする彼女に思わず笑みがこぼれる。本当に、彼女は歌姫でスターなのだと、相手がたとえ人の成れの果てだろうとその歌声はきっとエーテリアスたちの心に響いたであろう。

 

「あら!!ナナシじゃない!!」

「どうも、アストラさん。元気そうでよかった」

『ナナシ!ど、どういう事!?うわあ、お兄ちゃん――』

『ナナシ、どうなっているんだい?もしかして、知り合いなのか!?』

「あー、説明するから」

 

扉の近くでコンサートを除いていたナナシを発見すると花のようにぱっと笑みが輝きナナシの元に手を振りながら接近してくる。

その様子を見てイアスのぽかぽか攻撃とイヤホンから流れてくる大声に少し苦笑いのナナシはアストラさんに了解を取り、この間に会ったことを話した。

 

『それじゃあ、アストラさんがデタラメチャーハンだったってこと!?』

「そうなるね、本当なら話そうかと思ったけど――余計な禍根は残すべきじゃないかなって――ごめんね」

『いいよいいよ、元々は私がナナシに押し付けちゃったのが悪いんだしね。でも、ちゃんと私たちのことも紹介してね!』

「あら、もしかしてボンプの中に誰かいるのかしら?――かわい~!」

 

ナナシは自分が隠していた隠し事の“一つ”をリンたちに話すと同時に自然に警戒を解かせた。もちろん、ナナシはアポロのことや理の律者のことエリシアのことは全て二人に話している――しかし、まだ一つだけナナシは隠し事をしているのだ。

それを、申し訳なく思いながらアストラさんに撫でられてご満悦のリンたちに自然と笑みをこぼすのであった。

 

「そういえば、アストラさん一人だけ?イヴリンさんは?」

「しーっ!今はイヴは撒いるの!それよりも、私はナナシに一言物申したい気分よ!」

「ど、どうして?彼女は伝説のプロキシだから腕は確かだし、俺も結構強いんだよ」

「だって、知り合いになってから随分経つのに、こんな裏の顔があったなんてちっとも知らなかった――それって知り合ったなんて言えるのかしら?」

「あはは、あんまりプロキシやってますなんて話すもんじゃないよ」

『そうだとも、アストラさんには悪いけどあまりナナシには詮索しないでもらえるかな?』

 

アキラの言葉に少しばかり悲しみが混ざっているのがわかる。大好きなアストラさんに向かって言うのがつらいんだろう――でも、俺には自分自身がアポロの11体目のクローンです!だったり、聖剣ジ・アースの使い手です!だったり、実は一回死んでます!だったりと話せないようなネタが多すぎる。

 

確かにアストラさんの言う通り隠し事していたのは悪いと思ってる。だが、全て話すわけにもいかない彼女にも迷惑がかかるし聞いていて気分が良くなる話でもない。

それを察してくれている二人は俺を庇ってくれているというわけだ。

 

「ふーん、そうでもいつかは全てを話してちょうだい――いつも貴方のことをあの水晶を見て思い出すの、きっと全て話くれたらもっと鮮明に貴方のことを私に刻み込めるような気がするの」

「そ、そう?――まあ、いつか機会があったら多分、きっと――運がよかったら」

「ふふっ、約束よ!でも、幸運だったわインターノットには数多とプロキシが要るのに、私についてきていくれるのが、まさか貴方と伝説のプロキシさんだなんてね。これなら、今日のお宝さがしも、うまくいくこと間違いなしね!」

「お宝さがし?」

「誰もが欲しがる、正真正銘のお宝よ。だから当然、私自身の手で探し出さなきゃ。かのヨラン・デウィンター、最後のコンサートが録音された伝説のアルバムなんだから!」

 

歩きながら、今回のアストラさんの目的について聞かせてもらった。彼女が狙っているのはヨラン・デウィンターと言う方の本物のアルバムらしい。話によれば、ベストセラーまで行ったアルバムが偽物でそれっぽく編集されただけの物。

それを語るアストラさんの表情は美しく、音楽の力――魔法のようなものを体感した気分だったらしい。

 

「だから、貴方と一緒に街を駆け抜けた日も同じ気分だったのよ」

「同じってどういう事?俺のは歌じゃないけど」

「同じよ、どちらも私に魔法をかけてくれた。言葉では言い表せない感覚――それに、あんな風に空を駆け抜けたのは私も初めてなの――音楽は魔法なの!」

「音楽は魔法――」

 

エデンの星による重力操作での移動法、確かに雅みたいな超人的な身体能力を持っている人からすればどうとも思わないがかもしれないが、アストラさんから見ればそれは魔法だったのだ。

 

「それじゃあ、見つけないといけないね。イヴリンさんへの連絡もやめておくよ」

「そうこなくっちゃ!!行くわよ、ナナシ!」

 

イアスを抱えバレエツインズを駆け抜ける。アストラさんは歌姫とは思えないほど動けて、特に俺の足手まといになることもなかった。むしろ、俺が前衛でアストラさんが後衛と言う布陣で突き進んでいた。

 

 

その過程で、探検家の痕跡を見つけその通り進んでいったり道中開かない扉をマジン・ザ・ハンドでぶち抜いたりしてやっと終着点につくことができた。

 

「見つけた!これだわ!本当に実在してた――!ああ、もう最っ高、嬉しくてどうにかなっちゃいそう!!」

「よかったね、アストラさん」

 

彼女の手の中には探検隊の人たちが脱出のために使ったヨラン・デウィンターの伝説のアルバムが握られており、それを手にした彼女はぴょんぴょんとその場で飛び跳ね喜びをあらわにしている。

 

そして、そのまま何事もなく俺たちはバレエツインズを後にした――

 

「ふふっふ~ん、やっと見つけた!」

 

落ちる日差しにCDをかざし喜ぶアストラさんだった既にナナシには見えていた彼女の護衛が待ち構えているのを――護衛、イヴリンさんは喜んでいるアストラさんからCDを抜き取った。

 

「確保――」

「あぅ――いったたたた、も~捕まっちゃった、あはは――」

 

イヴリンさんは、罰だと言わんばかりにデコピンを食らわし、ついでに連絡をしなかった俺に対して少し鋭い目つきが向けられているような気がする。

 

「お嬢様、即興で何かするならせめてステージで頼む、さあ車に乗れ」

 

流石はイヴリンさんと言うべきかなれた手つきで彼女にCDを返し、俺たちに一瞥した後、バレエツインズの前に駐車された、いかにもな高級車たちに合図を送った。

 

「バイバイ、あっ――そうだ、忘れるところだったわ!」

 

すると、彼女はイアスを持ち上げ――何だか、体をくねくねねじらせるイアスのスカーフに向けてサイン替わりのキスをした。

 

「よかったじゃん」

『えへへ~』

「ナナシにも本当は何か渡したいんだけれど――また、今度最高のプレゼントを渡すわ!!」

「期待してる、さようならアストラさん」

 

そう言ってアストラさんは少し振り返って手を振りながら車に戻っていった。イヴリンさんがいれば心配あるまい――と思ったが、少しきょろきょろしていたら嫌なものが目に入った。

 

「――はあ」

 

バレエツインズから数百メートル離れたくらいに待機している黒塗りの車、一般人だと助かるのだが流石にあれだけ車が密集して停車していれば嫌な予感は湧いてくるというものだ。

そもそも、俺はアストラさんの位置をイヴリンさんにばらしていない。つまり、アストラさんは逃走時に自分の居場所がわかる余地を残してきたということになる。

 

「リン、もう少しだけ仕事いいかな?」

『いいけど、どうして?』

「やっぱり、依頼者にはしっかり無事に家に帰ってほしいと思ってさ」

 

そう呟き、イアスを脇に抱えてアストラさんの乗った車をばれないように追うのだった。

 




皆さん、久しぶりですね!!リアルがね!忙しくてね!特に7月がね!夏休みまで待っててね!あと、ペルソナ5xが楽しかったよ!!その勢いでペルソナのss書いちゃったぜ!
また、次の投稿はしばらく空くと思います。
でも、お気に入り増えたのと感想が来ていていたのを見て急遽書いたぜ!ありがとな!

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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