ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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記念すべき100話ですよ!!


第100話・説得は失敗した!!

 

 

そもそも、デウィンター夫人がここにいることがナナシには違和感があった。

別にあの人がどこへいようがそれは本人の勝手だが、まるでアストラさんに何か言おうとするためにあそこで待ち構えていたように思えたのだ。

 

(いや、考えすぎか…俺も、今日何かが起こるって言われて神経質になってるだけなのかな)

 

だが、その違和感があっていると言うかのように先ほどと比べてほんの少しだけイヴリンさんの表情が曇ったような気がした。

 

 

「イヴ?どこに行くの?もうすぐコンサートが始まるわよ」

「ああ…ただ、ずっと三人の客人に付き添っていたからな。まだ確認しなければならない仕事がたくさんあるんだ」

 

その後も、少しアストラさんと話した後イヴリンさんはどこかへ行ってしまった。

 

(……動くか)

 

ここに来るまでにあらかたの監視カメラの位置は把握した。スターループは、新造された場所ではないので内部構造も案外簡単に調べることができた。

 

 

「アキラ、リンそれにアストラさん。ちょっと、俺トイレに行ってくるよ」

「わかった、なら僕も一緒に行こうかな」

「え…」

 

それは、困る。この後、俺はせっせと裏工作に励むというのにアキラが来れば危険なことはきっと止められるためご破算となる可能性がある。

 

「あ、その…ついでに、スターループを回りたいなぁって思ってるし、お土産とかも見たいなぁって」

「なら、僕も一緒に回るよ。それに、お土産が気になるのは僕も同じだからね」

「そ、それは困るって言うか…あ!今のなし!!えっと、そのトイレは一人で行く方が落ち着くというか…その、とにかく一人で行きたいなぁ…って」

「ナナシ」

 

焦りに焦りすぎて、アキラの提案に不自然な回答が続く。リンからは100%怪しいという目で見られており、事情を何も知らないアストラさんですら首を傾げている。

 

だが、うろうろと言い訳している最中に名前を呼ばれはっとアキラの方に向くと、最後通告だと言わんばかりに鋭い視線で俺を見ていた。

 

 

(どうする、イヴリンさんのことを明かしてついて行ってもらうか?でも…)

『違うよ、私は一人で突っ走りそうな古い友達を助けてほしいていうだけ――彼女、守らなきゃいけない人がいるみたいだからさ』

 

イヴリンさんを助けるためにアキラに情報を渡してついてきてもらう。これが、現状の最善手で俺も動きやすくなるだろう、もちろんイヴリンさんだけで対処できるなら何事もなくよかったで終わる。

 

でも、それは違うと思う。既に、帝高に彼女がスパイであるとバレた可能性は非常に高い、だからと言って俺が彼女の秘密をばらすのは違う、それは大きなお世話と言うやつだ。

 

それに、スパイ云々の話は本来であればイヴリンさんが乗り越えるべき案件だ。彼女が勇気をもって、アストラさんに打ち明けてあとくされ無くなって笑い合うそんな未来を掴むべきだ。

 

 

「…何となく、俺が隠し事をしているのはバレてると思う」

「ああ、すごくわかりやすかったよ。ナナシ、教えてほしい一体、君は何を隠しているんだい?」

「いえない、これだけは俺から言うわけにはいかない。でも、何も言わないで俺一人を行かせてほしい」

 

道理が通ってないのはわかってる、でも恥でも何でも忍んでやるしかない。

 

「…また、誰かのために命を懸けるのかい?」

「そこまでじゃないよ。単なるお助けキャラとして頑張ってくるだけだから…ちゃんと、無事に帰ってくるから」

「なるほど…それを、僕とリンが了承すると本気で思っているのかな?」

「うっ…そ、それは……」

 

そもそもの話、了承されると思っているならこんなこっそりやろうとしない。

だけれど、俺の場合は短期間で信頼を失いすぎた、自身の寿命を明かしていなかったり、ツール・ド・インフェルノでは単独行動で死にかける。

 

最終的にライには結局、殺されるなど盛りだくさんである。

蘇ったからよかったものの、本当は完全に取り返しのつかないことだった。

 

 

「だから、僕も一緒に行くよ」

「え?で、でも…俺は、何も言えないよ」

 

イヴリンさんのことは明かすわけにはいかない。

 

「それでいいよ、僕がいればナナシが無茶なことをしても止められるからね」

「もしかしたら…アキラに危険が及ぶかも…」

 

敵地に乗り込むのと同義だ、アキラに危険が及ぶかもしれない。

 

「ナナシが、守ってくれるんだろう?」

「……その通りです」

「それじゃあ、リン。僕たちは少し長めのトイレに行ってくるよ」

「わかったよ、お兄ちゃん。なら、アストラさんは私が独占しちゃうからね!」

 

結局、敵わないなとため息をつきながら見事丸め込まれたナナシはアキラと共に行くこととなった。

 

「まず、どこに行くんだい?」

「そうだね…あ、そうだ…フェアリー」

『はい、マスターナナシ。例の準備は整っています』

「ナナシ?例の準備って…」

 

そう、アストラさんたちを襲った襲撃者が持っていたように今回も通信機を使って何かしてくると考えた俺は事前にスターループ内の通信を傍受する準備を進めてもらっていたのだ。

 

 

「それじゃ、よろしくフェアリー」

『肯定、ただちに傍受を開始します……現在、通信中の媒体はありません』

「そっか、まあ当たると思ってなかったし、それじゃあもう少し探索してみようか」

 

だが、てっきりスパイのイヴリンさんに情報を渡すために色々仕掛けが施されていると思って探索したがそう言ったものは何一つ出てこなかった。

 

(もしかして、既に持ち去られた後?)

 

可能性は十人分にある。しかし、問題なのはもうすぐ開園間近だというのにイヴリンさんに助力するための活路すら見えない。

 

 

「ナナシ、流石にもう‥‥」

「そうだね、一回リンの所に戻ろうか…って、あれ?イヴリンさん?」

 

もうすぐ開演時間のため仕方ないとVIP席に戻ろうとしたその時、どこかに向かおうとしているイヴリンさんを発見した。

 

「あっちは、裏方の方じゃないよね…」

「ああ、あの先にあるのはアトリウムのはずだけど、イヴリンさんがどうしてそっちに行くんだろう?」

「……アトリウム」

 

てっきり、イヴリンさんはアストラさんの準備の手伝いのために彼女の傍にいるのかと思いきや開演間近に明後日の方向に行くのはどうにも引っかかった。

 

(わからない、このタイミングでイヴリンさんがアトリウムに行く必要なんて…いや、まさか…)

 

アトリウムと聞いて連想するのはとにかく広いという事、そしてバレエツインズでアフロディと戦ったのも確かアトリウムだった。

もし、俺がイヴリンだとすればアストラさんの身に災いが降りかかる前に払おうとするだろう。

 

 

「…フェアリー。俺についてるGPSの位置情報を教えて」

『肯定…探索完了…マスターナナシの位置情報がスターループのアトリウム内にも存在しています』

「ナナシ、どういうことかな?」

「さっき、ボブソン専務にも俺のGPSをこっそりつけておいたんだ。アキラ、行くよ」

 

このタイミングで、イヴリンさんとボブソン専務が会う理由なんて一つしか考えられない。十中八九スパイを断罪しようとしているのだろう。

 

 

 

「イヴリン・シェヴァリエ。『ラッキーエリ―』のプロデューサーを務め、その後パル化ファクトリー・フィルムズに3年間、助監督して在籍。2年前、モニカ君の推薦を受けて、わが社でのキャリアを始めた」

 

アキラを連れアトリウムに到着したころ、イヴリンさんと多くの部下を引きつけているボブソン専務がそこにはいた。

俺たちは相手から見て陰になるところでチャンスを伺っていた。

 

「まったく素晴らしい経歴だな!本当の経歴ならどれだけよかったことか…なあ、『ジェーレ・グリーン』?」

(やっぱり、バレているか…幸いにもこの距離だとアキラには聞こえていないのが救いか)

 

とはいえ、一番の問題はそれじゃない。問題は二人とその部下以外にも大規模な足音が聞こえてくることだ。

 

 

「諜報組織の精鋭が、わが社の最も重要な資産の傍に潜んでいようとはな。まったく、憂慮すべき事態だ。フーガの連中が打ち込んできた釘なんぞは、とっとと抜いてしまうに限る。そうは思わんかね?」

「それは、アストラお嬢様の意向でしょうか?」

「おやおや、彼女に『意向』を表明できるような権利があると本当に思っているのかね?」

「…そうか、資格がないのは、私の方だったな」

 

イヴリンは一瞬でもアストラを疑ったことを恥じていた。

 

「たとえ陽の光の元にいようとも、陰から這い出たものは…影以外にはなれはしない」

 

――イヴリンさんは底に視線を落とした。だからと言って、これから起こることを放置しているわけにはいかない。

 

「ふん、どんな言い訳が聞けるのかと思っていたが…まあ、面倒を省いてくれる分には大歓迎だ」

「だが、お前の敵と言うわけでもないんだ。フーガはあくまで、私のいる組織に金を払っているに過ぎない。故に、私個人とフーガの間には、いかなる『忠誠』も存在しない…」

 

(“私のいる組織?”ヴィクトリア家政みたいな人材派遣だったのか…)

 

「聞け。奴らが帝高に送り込んでいるスパイは、私一人ではない」

「な、なんだと!?」

(えぇ!?イヴリンさんレベルに帝高に潜り込めるスパイだけじゃなく他にも手札がいるのか…)

 

 

だが、それに相当する人物に覚えはない。打倒、帝高を掲げるとすればそのウィークポイントと言ってもいいアストラさんの元にいるイヴリンさんだけで事足りる。

でも、それをしないということはイヴリンさんの心変わりはバレている。

 

(だとしたら、誰がスパイだったら一番アストラさんを苦しめられる?)

 

一番に名前が挙がるのは十中八九イヴリンさんだが、彼女に限ってそれはありえない。素直にスパイでした、と謝ればアストラさんが怒ることはないだろう。

 

だが、一人だけいる。アストラさんのあこがれの人物、その奥さんが――

ならば、あそこまでアストラさんへ敵意をぶつけていたのも頷ける。

 

 

「ナナシ、イヴリンさんが戦い始めたみたいだ」

「くっ、仕方ない。加勢しますか……!!」

 

そうこう、考えている内にアキラから声がかかるとイヴリンさんをボブソン専務の部下たちが襲っていた。

 

「待つんだ、ナナシ。僕たちはボブソン専務に顔が知られているんだ、何か対策をしないと」

「ふっふっふ!大丈夫、大丈夫…対策はばっちりだから、ここまで来てくれてありがとうアキラ。先に、席に戻っておいて『エデンの星』」

 

止めてきたアキラを振り切り、エデンの星を片手に戦場に潜り込む。

 

「うぉっ!?」

 

そして、ナナシが戦場に現れた瞬間、ナナシの顔を知っているボブソン専務が急に何もない場所に転び猛烈な力で押さえつけられ起き上がれなくなった。

 

「ぼ、ボブソン専務!?」

「…イヴリンさん、お助けいる?」

 

そして、重力の力によって押さえつけられたボブソン専務はその場で意識を失った。現れた、俺にイヴリンさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 

「…助かる。正直、今なら猫の手でもプロキシの手でも借りたい気分だからな」

 

だが、ポンっと肩を叩きながら訪ねると少しホッとした表情になり俺たちは敵に向き直る。

 

 

「ボブソン専務が!お前ら、何をした!」

「寝てもらっただけだから大丈夫だよ。そして、お前たちも…寝てもらおうかな」

「ナナシ、私が右をやる残りは頼んだ」

「了解ッ!」

 

必殺技を使えばうっかり殺してしまうので、順当にぶん殴ることで倒していった。

敵は流石に最初の襲撃よりは上手だったが、俺やイヴリンさんの敵じゃない。

 

 

「『エデンの星!』…イヴリンさん、今だよ!」

「な、なんだ動けないぞ!」

「おい、離れろよ!」

 

エデンの星の重力操作で敵を一辺に集める。ボブソン専務の部下たちは何とか重力の檻を突破しようとももがくもライですら動きを止められるエデンの星を突破できるはずもなく――

 

「ああ、これで決めるッ!!」

 

イヴリンさんの必殺の蹴りを食らってまるでボウリングのピンのように吹っ飛んで行った。

これで、一件落着と行きたいところだがイヴリンさんとボブソン専務が話している間に聞こえていた足音がすぐそこまで近づいてきている。

 

「目標地点に到着…何事だ!?」

 

ぞろぞろと通信機片手に現れたフーガの工作員たち、どうやら倒れている帝高の奴らを見て驚いているようだ。

 

「イヴリンさん、アレがフーガってことだよね」

「ああ、行けるかナナシ!」

「もちろん!!」

 

 

 

 

ちょうど、開演時間だった。今頃、アストラさんは舞台に上がり多くの人に夢を届けている所だろう。

 

「こんばんは、新エリー都」

 

花で作られたブランコに乗りまるで妖精のように歌姫はそこに現れる。

 

 

「イヴリンさん、そっち行った!」

「わかった、すぐ拘束する」

 

その陰で、俺たちは奴らを怒涛の勢いで殲滅していく。

 

 

「ナナシ、早急にアストラの元に向かいたい。もう一人のスパイを突き止めるのが先だ」

「わかったけど…多分、スパイはある程度見当がついてるっと」

 

その時、体が一瞬ぐらつく――地震かと錯覚するもすぐに違うとわかる。

 

「この建物が浮かび上がってる!?」

「ああ、お嬢様が協律コアに動力を供給する必要があるがな、それでスパイは誰だと言うんだ?」

「あくまで可能性だけど、デウィンター夫人だと思う」

「そうか…」

 

戦闘中に話しているため相手の言葉の真意を100%察知することはできないが、どうやら薄々そうなんじゃないかと思っていたらしい。

 

 

「で、スパイがデウィンター夫人だと仮定してもアストラさんに危害を加えるとして何をしてくると思う?」

「おそらく、彼女がアストラにできる最も嫌なことはこのスターループの落下だろう…このスターループを飛行を制御している中央制御室を占拠されていたら厳しいな」

「でも、そしたら彼女もろとも…もしかしてそれが狙い?」

 

デウィンター夫人の言葉からはアストラさんへの敵意だけでなく他にも強い覚悟を感じた。

もし、俺の予想通りならかつてヨラン・デウィンター氏が歌ったこのスターループを棺桶にしてみんなで落下してやるくらい考えそうだ。

 

 

「もし、本当に中央制御室を抑えられていたら私一人では突破できない…」

 

イヴリンは知っていた、アキラとナナシがこっそり隠れていることに、ならばボブソン専務の話も耳に入っているだろうし、私が裏切り者だと既に知られているだろう。

 

「…全て、私のせいだ。もっと早くお嬢様に正体を明かしていれば…頼む、お嬢様には罪はない、一緒に来てくれないかナナシ」

「…まず、イヴリンさんのせいじゃないよ。まあ、もちろんスパイはいけないことだと思うけどね。でも、今回の出来事は決してイヴリンさんのせいじゃない」

 

帝高も帝高で十分あくどいことをしているし、フーガもフーガだ。そもそも、イヴリンさんは何一つアストラさんに危害を加えていない。

今回の出来事で攻めるのはお門違いもいいとこだ。

 

「いや、私は…決断すべき時にしないまま、一歩、また一歩と進んでしまった結果が今だ。これでアストラお嬢様に何かあったら…」

「頑固だね、でもそれならアストラさんに何事もなければいいんじゃないかな?」

「それなら…!!」

「うん、もちろん一緒に行こう。それで、アストラさんの笑顔を守れるなら」

「なら、僕も行くよ」

「私もいるよ!」

 

さっきまで俺が隠れていたアトリウムの陰から声がかかり振り返ると、てっきりもうVIP席に戻ったと思っていたアキラと席に残してきたリンがそこにはいた。

 

 

「あ、アキラ!?まだ帰ってなかったの?それに、何でリンがいるの!?」

「ナナシを置いて行けるわけないじゃないか…それに、それどころじゃないみたいだからね」

「ナナシにたくさんついてるGPSを追って来たんだよ」

 

確かに、それなら理論上はここまで来ることができるが――

 

「で、でも…あんなにアストラさんのライブを楽しみにしてたのに」

「確かに、アストラさんのライブが見れないのはつらいけど、仲間が戦っているのに僕だけ逃げるなんてできるはずないだろう」

「私も、同じ気持ちだよ」

「…ありがとう…それじゃあ、イヴリンさん。アキラとリンも連れて行こう」

「ああ、私も『パエトーン』の助力が得られるのは大きい」

 

こうして、俺たちは中央制御室へ向かうことになった。

 

 

 




そういえば、なんですけど『聖剣と末路』を縦読みしてみてください。

あと、知っての通り私はpixivにも投稿してまして、ハーメルン内の感想で書くのを決めるのではなくpixivも含めて悩むので、あれ?ハーメルンの感想爛にないぞと言う場合はpixivから選ばれたという事です。

ちなみに、なぜかナナシが相手の敵意とか感情を読み取るのがやたらとうまいのは、元の存在であるアポロが虐待の末に、母親と父親の敵意などの感情を読み取れるようになったからです。
その力によって、アポロは実質的な未来予知ともいえる危機感知能力を得てそれがナナシにも受け継がれているという事です。もちろん、劣化ですが…え?じゃあ、アポロ一号もそれを持っているのかって?
そうですよ~

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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