薄れた後の意識。
また深い深い闇の中に落ちていった。
『・・・が・・・・へ渡ってしまった』
『・・・が起こされるのも時間の問題だな』
俺と初老の男性がしゃべっている。
『・・・・では抑えられないだろう。最s・・・・になるかもしれない』
『そしたら・・・になるだろうな』
頭を抱えている。
『犠牲はどれほどだろうな。』
『わからない。だけれど、わかっているのはただ一つ』
拳を固め、天を仰ぐ。
『俺たちが負けたら・・・も・・・も・・・だって死ぬ。この手に、あらゆる命が乗っている。それだけじゃな・・・・ななななな』
『あぁ』
それを最後に俺の意識は浮上していった。
だが、靄にはまだ手が届かなかった。
(まただな、この感覚。本当に最近も感じた)
瞼を開けると同時に襲う圧倒的な虚脱感。ゆっくり体を起こすと同時に扉が開く。
「あっ、起きたね。ちょっと待ってくれ、おかゆ持ってくるから」
そう言い残し。アキラはキッチンへおかゆを取りに戻った。
「デジャブ・・・だな」
体をところどころ動かしてみるも特にこれと言った異常は見当たらない。しかし・・・。
ぐぅぅぅぅぅ。
まるで、雷のような轟音の腹の音が鳴り響いた。
「ははっ。すごい音だね、ほらおかゆだよ」
・・・恥ずかしさで顔が真っ赤に染まるを感じながら渡されたおかゆを食べきった。
なぜだかよくわからないが。食べるとすぐ、体に力が戻ってきた。俺は起き上がり、その場で拳を放つ。
「うん・・・回復した」
「どうやら、ナナシはたくさん食べないとすぐ倒れちゃうみたいだね・・・ほら、おかわりもあるから」
と言い、今度は鍋ごとおかゆが渡される。
「・・・ところでなんでおかゆなんだ?」
ここに来てから、俺は大根とおかゆしか食っていない。そろそろ、なんかもっと味のついた飯が食いたい気分なのだが。
「そりゃあそうだろう。ナナシは大根しか食べていないんだから、流動食から食べてお腹を馴らしていかないと」
なるほど、と納得しながらおかゆをほおばる。
「そういえば、邪兎屋の皆は結局どうなったんだ?」
「そうだね・・・その話もしないとだね」
俺がここに居るということはリンがキャロットデータくらい貴重な何かを使ってホロウを脱出したということだ。
「まず一つ、邪兎屋の皆はもう帰ったよ。リンのおかげでね」
「そうか・・・。よかった」
と思ったが。ここで、ひとつ引っかかる。俺が目覚めたというのに、リンの姿が見当たらないのだ。これはうぬぼれではない。リンなら、俺が目を覚ましたら来てくれるという信頼があるのだ。
「リンはどうしたんだ?」
「リン・・・妹の方は・・・」
アキラは俺が倒れた後のことを語ってくれた。
まず、俺はビリーがここまで運んでくれたこと。邪兎屋の面々は俺達のことを心配していたということ。達、と言うのはリンがボンプを通じてデータチップを読み込んだ後、何かうわごとをしゃべりながら脱出させてくれたこと。そして、その後HDDとの接続が切れなかったので医者を呼んで何とかした。・・・そして、今現在パソコンには正体不明の人工知能が備わってしまっているということだ。
そうこう話しているうちに、リンが目覚めた。
「あ!やっと目を覚ました。もう大丈夫だ。君は今、家の中にいる」
「おはよう。リン、無事そうでよかったよ」
リンは目覚めたばかりとは思えないほど意識がはっきりしており。すぐ、意識が途切れた時何があったか興奮しながら問いただしてきた。
そんな妹を宥めながら、アキラは説明を促す。
「そうか・・・。それじゃあ、まずあのデータチップを読み取った後、君の身に何が起きたのか教えてくれる?」
「えっとね・・・」
リンはすごい奇妙な共感覚の現象について教えてくれた。
「うん・・・なんだか夢みたいな話に聞こえるけれど・・・」
(すごい、奇妙な夢・・・)
「なぁ、リン。その夢って・・・なんだか『THE・世界の終わり』って感じだった?」
「・・うーん。でも、なんだか終わりが近いようなきがした・・・かな?でも、どうしてそんなこと聞くの?」
俺は、これまで見た奇妙な夢について二人に話した。
「まさか、もっと不思議な夢を見ているなんてね。それに『熱血パンチ』、『ゴッドハンド』・・・はたから見ていただけだけど、まさに超常的な力だ」
「うん、見ていて。あれってどうなってるんだろう?ってずっと思ってたの」
確かに、ビリーもアンビーもニコも確かに人間離れした力を使っていたが、俺のは度を超えて異質だ。
「もしかしたら・・・それが俺の正体の手がかりになるかもしれない」
「・・・そうだね。ニコ達にも調査を頼んでみよう」
ニコ達にはリンの身に起きた現象について調べてもらっている。追加で、俺のことなんか依頼するのは気が引ける。
「それよりもだ・・これを見てくれ」
そう言って渡されたのは誰かのレントゲン写真だ。
「君の体だ」
君・・・と言うと確実に俺、ナナシのことだ。そのレントゲン写真には写るべきものが全く写っていなかった。
「でも、これかなり黒塗りだよな?」
「あぁ、医者が言うところにはナナシの体にはX線を防ぐ何かが存在しているってことらしい。まぁ、流石に腹を切るわけにはいかないからわかるのはそれだけだ」
「うん・・流石に俺も腹は切られたくないなぁ」
レントゲン写真を見ても腰部分は全て黒染め。かろうじて指先は写っているくらいだという。しかし、ゴッドハンドを使った右腕は完全に黒塗りだった。
(・・・記憶がないことがこんなに恐怖だとは・・・。何かしらの人体実験が施されているとみて間違いない・・か)
「さてとじゃあ、リン。説明するね・・・・。」
と俺にしてくれたのと同じ説明をリンにもした。
そして、今度は俺達はパソコンの前にいた。さっき、アキラにも説明されたが対面するのはこれが初めてだ。
「驚かないでよ。コホン・・Fairyいるかい?呼んできた」
急に虚空につぶやくアキラ。はたから見れば、ただのやばい人なのだが、画面が点滅しだした。
パソコンが不規則に画面を変える。
「なんだ?何かが来ている」
「・・・何よこれ!!」
リンがそう叫んだのは当然だった。
『システムを起動・・・Ⅲ型総順式集成汎用人工知能Fairyです。こんにちは、マスター』
「これが悪い知らせさ。君が気絶した後、H.D.Dが再起動したんだ。そして・・・彼女が現れた」
彼女?というか。
「なぁ、HDD・・・ってしゃべるのか?」
「いや、本来ならしゃべらない。だが彼女は人工知能だ。」
『肯定。繰り返しますが、私はⅢ型総順式集成汎用人工知能。Fairy(フェアリー)とお呼びください。マスターがサインした利用規約にのっとり、あらゆる面でマスターをサポートし、あなた様方がご自分の作業を完了できるように協力いたします『その時』がくるまで』
その時・・?なんだか引っかかる言葉だがそれよりも。
「待ってくれ、規約ってなんだ?それに、その時って・・?しかも、今、方って言ったよな、リン以外にもいるのかマスターが?」
アキラが質問をする。
『利用規約に則り、私はその質問に答える権限を有しておりません。回答は適切な時期に、適切な場所でお知らせいたします。ですが、最後の質問にはお答えいたします。私のマスターはリン様とそして、ナナシ様です』
「え?」
『知らないのも無理はありません。私もわかりません。最初からあなたがマスターになるように組み込まれていました。そして、あなたへ言伝を預かっています』
アキラと顔を見合わすも全く見当がつかない。
「気にしない方がいいだろねナナシ。おそらく、君が記憶をなくす前の出来事だろう」
「そ、そうだな。俺バーチャルの女の子の知り合いなんていないし、それで言伝って何なんだ?」
『はい、録音を再生します』
ザザザッと砂嵐のような音声が聞こえた後誰かの声が再生された。
『簡潔に言おう、時間がない。4つの聖剣と担い手を探せ。さもなくば、今度こそ世界は終わる』
その一文だけだった。聖剣?世界が終わる?何を言っているかわからない。だが、驚きは別にあった。
「俺の声だ・・・」
間違いなく、そこから再生されたのは俺の声だった。つまり、これは記憶をなくす前の俺が録音していた言葉だ。
『再生は以上になります。』
(今度こそ?)
まるでどこかで一度世界が終りかけたようないい含みを感じた。
「アキラ、リン。どう思う?4つの聖剣とその担い手を探せって・・・そして、世界が終わるってどういうことだと思う?俺は記憶がない、君たちなら何か心当たりはない?」
「私はない!」
「・・4つの聖剣か。4つではないが聖剣伝説の有名な話ならある」
それは、ありきたりな物語、ある聖剣を手にした青年が悪と戦う物語、普通なら悪を倒してハッピーエンドなのだが、それは絵本の脚色された物語。
「最初に書かれた史実の内容は違う。最終的に聖剣の担い手の青年は悪を食い止めるために命を落としてしまう。そして、守られた世界は青年の代わりに生まれ続ける悪と戦い続けるという物語なんだ」
「・・・うーん。それって何か関係があるのかな?」
「わからないな。それよりも、今はFairyだ。リアルの女の子のこともよくわからないのにバーチャルって・・ここはかわいい妹とナナシに任せるか」
「無理。大根泥棒には無理です。と言うことでリンにパス」
「なんか楽しんでるよね!!」
リンからのツッコミを聞き流しつつ、パソコンの前にリンを誘導する。
『マスターリンのデータが第三者によって削除、および伝達された直近の形跡を検知しました。これにより、マスターの違法ホロウ事務調査員、通称『プロキシ』としての個人事業が損害を受けております。私はこの損害を補填し、マスターのプロキシ事業を再建することができます。』
ここで、アキラが待ったをかけた。
「つまり、削除したデータを復元できるってこと?」
『否定、削除命令は撤回できません。しかしデータベースを再構築することができます。私は全都市80%以上の知能設備に対し、無制限のアクセス権限を有しています。私の協力があれば、累積式でホロウデータを獲得する必要が無くなり、毎回リアルタイムでホロウ脱出ルートを分析することが可能になります。』
「ッ!?」
機械のことは全く見当もつかないが、今こいつが言いやがったことがとんでもないってことくらいはわかる。
「もし、お前がそんなことができる・・・と仮定しよう。『可能です』・・・可能なんだな。と言うことはお前を作ったやつ・・・ホロウデータについて色々詳しい奴がいることになる。」
俺達人間もそうだが、必ず学習するためには本とかから情報を得ることが必要になる。
こいつが、本当にホロウをリアルタイムでホロウ脱出データを分析できるなら、それ相応のホロウデータを学ばせたということになる。
下手すればとんでもないことに巻き込まれている可能性もある。
『肯定。ですが、現在答えることはできません』
「・・・聞いても無駄のようだね」
アキラがため息をつきながらやれやれと頭を振る。
『こちらを。現在のマスターにふさわしい依頼を選んでおります。どうぞお選びください』
どうやら、こちらに協力する意思があるのは間違いないらしい。
「アキラ。こいつの力が本当がどうか確かめてみるのはどうだ。俺がホロウに行こう」
「うん。だけど、明日からにしよう。ナナシもかなり疲れているだろう、今日はゆっくり休もう」
そして、俺はプロキシ、パエトーンの一員となったのだ。
これから、多くの苦難が待ち受けているだろう。だけれど、なんだか不思議とワクワクしている自分がいる。
「ぁ・・でも、聖剣って結局何なんだろう・・・な」
そして、眠りに落ちた。
Season1 完
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け