ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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れ、連続投稿だと!?


第101話・デウィンター

 

 

「道中の敵は、全部『エデンの星』で吹っ飛ばす、最速で行こう!」

「ああ…と言うか、それアストラに渡してたガラス玉じゃないのか?」

「‥‥あっちは危険なものじゃない」

 

そう言いながらも、襲ってくるフーガの奴らと帝高がこちゃまぜになった集団をエデンの星の重力操作で吹き飛ばし壁や地面に叩きつける。

これだけで、大半の敵は動けなくなるがたまに気概のあるやつがいる。

 

「悪いが、眠っていてもらうぞ」

 

そういうやつにはイヴリンさんが速攻を仕掛け瞬時に沈めていく。

そうこうしていると中央制御室に到着することができた。

 

「大丈夫、ただ気を失っているだけだ」

「でも、完全に何か起こった後だね。遅かったか…」

 

中央制御室の扉を勢いよく蹴破ると中には作業員と思われる人たちが倒れており、電気すらついておらず荒らされた形跡もあった。

 

 

「えっ?」

 

その時だった、リンの傍にあるパソコンから怪しい赤い光が放たれる。

映し出されたウィンドウの中には『00:29:53』と表示されていた。

 

「このカウントダウン…まさか、爆弾じゃないよね!?」

「いくら何でもあからさますぎるけど…見てみよう」

 

もし、これが本当に爆弾のカウントであればちょうど30分後に爆発することとなる。

その頃になれば、このスターループは完全に上昇しきっているだろうしライブを楽しんでいる全ての人々を地獄に落とすのに最高のタイミングと言っていいだろう。

 

 

「アストラお嬢様と連絡は取れるか?お嬢様?アストラ?聞こえるか?」

「…ダメみたいだ。このタイミングでスパイはアストラさんに危害を加えようとしているのか!!」

 

中央制御室にあるモニターには今まさに開演しているアストラさんの元に向かっているフーガの連中が映っていた。

 

 

「イヴリンさん、この怪しいカウントダウンは僕たちに任せてくれ」

「ナナシもアストラさんの所に行ってあげて!イアスがいれば通信はつながるから」

「ああ。すまないが、頼んだ!ナナシ、行くぞ」

 

この怪しいカウントダウンを前に戦う事しか能のない俺がいても意味はない。今は、アストラさんの所に向かうことが先決だ。

その時、ピキーンとあることを思いつく。

 

「待って!なら、何も聞かずおんぶされてくれ」

「な、何を言っているんだ!?」

「これが、一番最速なんだ。少しダサいけど……」

「…くっ、わかった!これでいいんだろう…大きい背中だな」

 

俺は、イヴリンさんを背負いエデンの星の力で彼女の体重を軽しイアスを脇に抱える。こうすることで、自動車並みのスピード出せる俺が全力で走れるようになる。

そして、そのスピードでコンサート会場まで向かった。

 

 

「ねえ、イヴリンさんはアストラさんに全てを話す気がある?」

「…そうだな、いずれは話すことになるだろう」

「なら、その時はイヴリンさんが正式にアストラさんの仲間になったってことでお祝いをしないとね」

「……私が、お嬢様に受け入れられないとは微塵も思っていないのだな」

「そりゃそうだよ、アストラさん言ってたよ‥‥」

 

最初の襲撃の時、イヴリンさんと分かれた後、俺はアストラさんからイヴリンさんについて話を聞いていた。

 

「そうか、お嬢様は…」

「だから、どうかもう裏切らないであげて」

「ああ、それは誓ってしない」

「違う違うよ、ていうかイヴリンさんはアストラさんの元で精一杯やってきているんだから裏切ってなんてないよ」

 

それは今、重要なことではない。アストラさんはイヴリンさんのことを唯一無二の友達であると思っている。

その分だけ、彼女への信頼は大きいしそれにイヴリンさんは応えているのだ。

 

「そういう事じゃなくてさ…」

「なら、どういう事なんだ?」

 

まるで、なぞなぞでも言われたように頭を捻るイヴリンさん。だけど、その答えはとても単純なものだ。

 

 

「アストラさんを裏切らないなら、彼女と培った絆を裏切らないことでしょ?」

「それはそうだ、だが…」

「なら、その絆を信じてあげて…本当にアストラさんを信じるなら自分がスパイだと明かして幻滅なんてされないことはわかっているはずだよ」

「……」

「余計なお世話だったかな。実はさ、俺も似たようなことになって結局ずるずると話せずじまいで最後はアキラとリンたちと喧嘩別れみたいになっちゃったんだ」

 

俺の寿命、気づかないうちにひっそりと終わろうと思っていたのだが、ライトやカリュドーンの子たちの文字通りの総力戦によって明かされたその真実はアキラとリンを大いに傷つけた。

 

 

「きっと、俺は疑っていたんだと思う。信頼をさ…それを、ぶん殴られて初めて気が付けたんだ」

「その割には、二人に心配をかけすぎてはないか?」

「それは、申し訳ないと思ってるよ。多分、今も俺は信頼を疑っているんだと思う。だから、全てを話せない」

 

今回の出来事だってそうだ、本当に心から信頼できる間柄であればレインからの依頼も全て話してしまえば最初から楽々動けたのだが、俺はそれをしなかった。

 

「でも、俺はさ…二人を見てて本当に絆を感じたんだ。これでも、人の感情を察知するのは得意だから太鼓判付きだよ」

「本当の絆か…」

「いくら後ろめたいことがあったとしても、アストラさんを裏切らず信じると言うなら!すべてを話すのに何の躊躇も生まれないはずだよ」

 

自分のことを話すのってとても勇気がいることだ相手がどういう反応をするかわからないし、幻滅されるかもしれない。だが、今回の場合であれば相手はアストラさんのため万に一つもない、ノーリスクハイリターンな状況だ。

 

 

「それとも、さっき裏切らないと言ったのは噓だったの!イヴリン・シェヴァリエ!!」

「それは違う!私が、もうお嬢様を裏切らないと言ったのは紛れもない本心だ…だが、怖いんだ」

「そうだろうね、俺も話した時はすごい緊張したし辛かった。だから、さ…もし、言うタイミングがあったら俺も何か秘密をばらそうか?」

「な、ナナシも秘密をばらすのか!?」

「うん、赤信号みんなで渡れば怖くない理論で」

 

正直、これくらいしか思いつかなかった。怖いものは怖いし、信頼していたところで人間は人間なので機械のようにはいかない。

 

「…ふふ、ははっ!そうだな、ならその時が来たら一緒に渡ってもらうとするよ」

「何にしよっかな、正直隠し事が多すぎて悩んじゃうよ。ほら、もうすぐ着くよ!!」

 

 

 

同じころ、ステージ上――幕間で全ての証明が消え、暗闇に没していく中アストラは一人、あらゆるところに連絡を取ろうと焦っていた。

 

「はぁ…ふぅ…ディレクター?ステージ裏?制御室?…イヴ?聞こえてる?」

 

だが、無情にも通信が妨害されているため誰にもつながることはない。

 

「壊れちゃったのかしら?…マズいわね、次の曲が始まっちゃう。ああもう、裾が40メートルもあるドレスじゃ踊れやしないっての。かくなる上は…!」

 

ぱさっ――、がさごそ――、パッ!証明が付く1秒前、アストラは衣装の早着替えに成功した!

 

「次の衣装を舞台袖に隠しといてよかったけど…間一髪だったわね。あのドレスじゃ、曲と全然合ってないもの」

 

そう、安堵したその時どこからかバンッ!と銃声が響き渡る。

 

 

「何?今のって銃声?変ね…あんな効果音入れるなんて話、あったっけ…でも、かっこいいかも!どうして思いつかなかったのかしら!」

 

だが、現れたのは銃声だけではなくフーガの連中もステージに上がってきていた。

 

 

「ふふ…おじさんたち、ちょうどいいところに来てくれたわね。あなた達に、一曲踊ってもらおうかしら!」

「その澄ました顔で、よくここに立っていられるもの、だ‥‥!?」

「イヴリンさん、先行して!『正義の鉄拳G4』」

「ああ、その手でお嬢様に触れるな!!」

 

フーガの連中が一瞬意識を奪われたのは明後日の方向から飛んでくる黄金の拳。死闘の末にさらに磨かれたその拳はアストラさんの脅威を殲滅していく。

 

 

「うふふっ!!」

 

最高に気分がいい、イヴが電光石火のようなスピードで私の目の前に現れて助けてくれた。それに、ナナシが遠くから大きな拳を放ってきているのを見て大興奮だった。

 

 

「…アストラさん?大丈夫?」

「うふふっ!!大丈夫よ!」

 

何というか、先ほどまで多勢に囲まれていた人とは思えないくらいの満面の笑みに思わず引いてしまう。

 

「でも、どうしてナナシがいるのかしら?トイレはもう大丈夫なの?」

「あ、うん…ちょっと長めでね。そりゃあ、アストラさんを守る騎士様を連れてきただけだよ」

 

そういえば、適当に誤魔化して情報収集するためにトイレと言っていたのを思い出した。もしかして、あの時からずっと心配をかけていたのではないだろうかと思うとちょっと罪悪感が浮かんでくる。

 

「まさか、おんぶで連れていかれるとは思わなかったがな」

「ええ!?イヴがおんぶされてたの!?ナナシ、絶対後で教えて頂戴」

「お、お嬢様!それは…」

「うふふっ、そうね…ナナシ、手伝ってくれる?」

 

一人でも多く、アストラさんの寄り添う歌を届けるために――

 

 

「全身全霊で、その障害は斬り開く!変身!!」

 

全身から青白い光が放たれる。ナナシの体内から現れる聖剣ジ・アースのコア――否、それこそ理の律者のコア。

 

ステージの中で、蒼き輝きを纏う戦士。黒目から銀眼へと変化したもののいつものように執事服の正装のようなものに変わることなく、その代わりまるで卵くらいの蒼の中でも輝く橙色のイヤリングが耳に掛けられている。

 

「イヴリンさん、アストラさん!行くよ!」

「ええ、後方は任せて!」

「行くぞ、ナナシ!」

 

相手の武器は鋭利なものはなく警棒や重火器程度、これだけで俺たちを倒せると思ってるなら片腹痛いというものだ。

 

 

「聞いてくれ、フーガの手下がセキュリティーを破った。奴らの狙いはこのコンサートを荒らすだけではない」

「一番ヤバいのは、このスターループの落下だけど何かが起こる前にここを離れるべきだね」

「待って、ナナシ!お客さんたちのことを忘れないで!」

「そうだね、みんな救わないと!『エデンの星!』」

「なっ、おい!なんで動けねぇんだよ!!」

「お前が離れろよ!」

 

赤黒い宝玉が光を放つと同時に、膨大な重力が奴らの動きを完全に止める。その場から脱出しようと藻掻くもそれを嘲笑うかのように目の前に高く跳躍した彼女の姿あった。

 

「これで、終りね!決めちゃって、イヴ!!」

「ああ!!はあぁぁぁ!!」

 

炎舞、この言葉がしっくりくるくらい美しい舞のようだった。先ほどと同様にイヴリンさんの必殺キックを食らって立ち上がるものはおらず、フーガの奴らを殲滅することができた。

 

その時、タイミングよくイアス越しにリンから連絡が入ってくる。

 

「イヴリンさん、アストラさん、ナナシ!聞こえる?通信ネットワークが完全に壊れちゃってるから、イアスを通して話すしかなくて、このカウントダウンだけど、起爆装置と連動してるの!」

「起爆装置…そうか、やっぱりこのスターループを落とすつもりなんだな。だとすれば、俺の予想は当たっていたかもしれないね」

「…ああ、どうやらフーガは見事に嵌められたらしい」

「えっと、そのわからないけど…とにかく、狙いは私だけじゃないってことね。ここにいるお客さん全員が標的なんだわ!」

「いや、正確には……彼女自身もだね」

 

既に気配は感じとっている。その隠す気もない殺気と悪意はこちらを殺そうと言わんばかりに刺さっていた。

 

 

「そうなんでしょ?デウィンター夫人」

「貴方は、VIP席でいた人ね。まさか、私のことを感づいているなんて驚いたわ……でも、生を希求するその姿…なんて羨ましいんでしょう」

「デウィンター夫人…どうしてそこに?」

 

黒幕登場と言わんばかりの圧力で一歩、また一歩と浮遊しているリングを伝ってこちらに近づてい来る。

そして、彼女がこのタイミングでアストラさんの前に現れたということは狙いは一つしか考えられない。

 

「とっくに想像はついていると思うけれど。私がここにいるのは、ヨランの妻として責務を果たすため」

「義務…?」

「ヨランを殺したやつらの悲鳴と懺悔を聴いてからでなければ、ここを離れることはできないわ。そうでしょう?」

「殺した…?よくわかってないけれど、ヨランは…自ら命を絶ったんじゃないの?」

 

アストラさんの言う通り、ヨラン・デウィンター氏の最期は他殺ではない。ただ、デウィンター夫人の反応から見るにその自殺の原因に何かあるらしい。

 

「ふふふ、アハハハハ!!自ら命を絶った…つくづく都合の良い言い訳だわ。そう言いさえすれば、罰を免れ、罪の意識に苛まれることなく生きていけるのだから」

「大資本のしがらみが原因だったってこと?」

「ッ、あなた探偵が向いているわね。そうよ、けれど今は帝高とフーガに『感謝』しているわ。依然として馬鹿げた権利争いを続け、お互いを死地に追い込もうと躍起になってくれなかったら…私のように、独り残された者には何もできなかったでしょうから」

 

確かに、帝高とフーガの争いはスパイを送ったりアストラさんを襲撃したりとやりたい放題の上に雑だった。それを見ごとに彼女に利用されたという事だろう。

 

「だから、それと似た……今、輝いているアストラさんをヨラン・デウィンター氏を死に追いやった観客を狙うって言うのか!!」

「ええ、アストラさんの素敵な歌が、ヨランから価値を奪って行ったのと同じように、あなた達全員が人殺しであり、あなた達全員が、ヨラン・デウィンターを死に追いやったのよ」

「アストラさんがヨラン・デウィンターの価値を奪った?あのディスク…」

 

帝高とフーガの利益争いによって死を選んでしまったヨラン・デウィンター氏の音楽が、アストラさんの手によって再びに大資本に利用されることとなった。

彼女からすれば、それが何よりも許せないのかもしれない。

 

「…私の最も美しい夢を、私と最も響き合う…真の、愛を…そろそろ時間ね。まあ、私ったらとんだ失礼を…皆さんへの歓迎がまだだったわ」

「歓迎…?まさか!!」

「3,2‥‥」

 

カウントダウンが終わろうとしている。中央制御室の方でも、解析が終わらないため何とかしようとアキラが外に駆けだした瞬間――

 

「1…皆さん、亡き夫の葬儀へのご参列感謝いたします…」

「マズい、アストラさん、イヴリンさん!俺の近くに来て!」

 

近くにいたイアスを抱え、二人を呼ぶとすぐさま俺の近くに来てくれる。

 

 

バゴンッ!!

 

 

嫌な爆発音がちょうど足元辺りから響き渡る。すると、スターループはバランスを失い俺たちがいたライブ会場も傾いてしまう。

 

「『ムゲン・ザ・ハンドG2!』『エデンの星』『真ゴッドハンド』これで、どうだ!」

 

だが、ムゲン・ザ・ハンドを発動さえアストラさんとイヴリンさんが俺から離れないように固定し、エデンの星で軽量化、真ゴッドハンドを思いっきり地面に叩きつけることで落下は防ぐことができた。

 

 

「くっ、どうすれば…」

「誰も傷つけさせない!!」

 

彼女の杖が光り輝くとコンサートの四方に設置させられた協律コアに光が灯る。すると、主エンジンが復活しスターループの体制が整った。

 

「私の歌声で…みんなを救う」

「早速、助かった!」

 

このスターループは確かに推進力を保っているロケットが破壊されれば落ちるが、アストラさんが直接協律コアに歌声を響かせれば飛ぶことができる。

ただ、それを見越していないデウィンター夫人ではなかった。

 

「失礼な人…まだ序曲よ!」

 

その時だった、ギリギリと機械が落下してくるような音が聞こえたかと思えば我々がいる舞台の上のど真ん中に巨大なロボットが鎮座していた。

 

「よく見る奴か、このスターループの警備ザルすぎだろ!」

「ぐぅの音も出ないな…ッ、協律コアが!!」

 

あんな巨大ロボットを一体どこに隠したらバレないというのだろうか、だが問題はあのロボットが出てきた衝撃波のように出された電磁攻撃が協律コアを破壊してしまったのだ。

 

協律コアが失われるということは動力が失われたということだ、浮遊していた舞台が地に落ちこのスターループすら墜落しかけている。

辺りの観客はその光景に阿鼻叫喚と言う雰囲気でありカオスが極まっている。

 

そして、敵のロボットはこちらに銃身を向けてきていると来た。

 

「葬儀にふさわしいのは……レクイエムだもの!」

「なら、賛美歌に変えてやるよ!」

「ナナシ、行くぞ!!」

 

戦いの幕が上がった。

 

 

 

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

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