ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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ちなみに、今回の話には過去のお話との矛盾点が存在しています。ぜひぜひ、見つけてみてね!!


第103話・エデンの星、第四定格出力

 

 

「すまない。アストラお嬢様、ずっとあなたに打ち明ける勇気がなかった……私はフーガのスパイで、コードネームを『シェーレ・グリーン』と言う」

「どうしてグリーンなの!イヴの髪の毛は、誰が見たって木の葉みたいなイエローでしょ!」

「ははっ……そうだな、本当に不思議だ…」

 

ナナシの言う通り、アストラお嬢様が私を責めることは決してない。それに、彼が先陣を切ってくれたおかげか幾分か心が楽になったような気がする。

 

「なんて呼ばれたようと、貴方はすべての不協和音から庇ってくれるパートナーで優しく、辛抱強く、私を守ってくれる人…貴方の体には、優しくて純粋な旋律が流れてる。私には聞こえるもの」

「ありがとう…アストラ……だが…」

「『もしも』なんてないのよ、イヴ。誰にだって間違っちゃうことくらいあるわ。でも、それは私たちの結末が決まってるって意味じゃない」

 

その通りである、ナナシが寿命のせいで来年を迎えられないと宣告されたとしても、なんやかんや生き返りその後の人生を歩めるようになっている。

 

 

「過去はどこかへ行っちゃって、未来のことはまだ何にも起きていない。私たちがこの手に握っていられるのは『今』だけなの。たとえ破滅する運命だったとしても、私たちなりに向き合っていくのよ」

「破滅する運命だったとしても…?」

「そうよ!後悔なんてしちゃダメ!大きく口を開けて待っている終末を、一番素敵な旋律で迎えてあげるんだから」

 

結果は決まっていても、その道中を帰ることはできる。結果がすべてではなく、その結果に向かおうとするものことこそが愛おしいのだ。

 

「ここは新エリー都、人類最後の希望。どう見ても絶望しかない中で、私たちは何度も何度も根拠のない楽観と共に生き延びてきた。だって結局、運命は私たちを愛してるから。今回だって、いい感じに誤魔化しておけば乗り越えさせてくれるわ」

 

これまであった、数多の絶望。

アキラとリンとナナシの周りだけでも色々なことがあった、首無し騎士に、四腕ゴリラ、未確認生命体、神、ブリンガー、オーガ、何回も酷い目にあったが生き延びているのだ。

 

「リン、アキラ、イヴ。私と一緒に最後の一曲、歌ってみない?」

「お嬢様‥‥こういう即興で、と言うのは…私には絶対に向いてない。あなたも知っての通り…私に、歌の何たるかはかけらもわからない。だが……」

 

今一度覚悟を決める。決めなくてはならない、少なくとも現在進行形で私の仲間が私たちに命を懸けて戦っているのだから。

 

「それがあなたのための戦いなら、私は躊躇いなどしない」

 

イヴリンは身を翻すと、そのまま飛び降りた。ステージの下では、フーガも、帝高も、『組織』の人間も恐怖のあまり混乱に陥っていた。

――だが、まだ希望はある。ナナシが作る時間の中で、三台の協律コアを再起動さえすれば――

 

「な、なんだ!?」

 

協律コアを起動しようとステージまで下りた瞬間、地面が一瞬だけ揺れて何というか妙な感覚に落ちる。

一つだけ感じ取ったのは、確かにこのスターループの落下が遅くなったということだ。

 

 

「…頼んだぞ、ナナシ!!」

 

おそらく、長くはもたない。今一度覚悟をし直し、協律コアの前に突っ立っているフーガと帝高の連中に襲い掛かった。

 

 

 

時間は少し遡る――

 

『得策とは言えないわよ、はっきり言うけれど……失敗の可能性の方が高いし失敗すれば貴方はぺちゃんこよ!それに、成功したとしても体の浸食で‥‥』

「分かってるよ、ありがとうエリシア。だけど、やらなくちゃいけないんだ。このスターループで誰も死人は出さない!!」

 

パリンッ!と思いっきりガラスを蹴破り下を見下ろす。まさに、気分はラピュタ王のそれだがこれほどの高度だと足が竦む。

 

だとしても、覚悟を決め空へと飛び立った。

 

 

「頼んだよ『エデンの星』

 

金属装飾が施されている赤黒い球体――もとい『エデンの星』を取り出し自身にかかる重力を反転させ浮遊する。

 

さて、そもそもなぜスターループは落ちているのか――当然、エンジンが止まったせいで重力に抗えなくなり落ちたのだ。

ならば、俺が今しているように重力を反転させればいいと思うがその場合、このスターループが空のかなたに行きかねない。

 

 

「だからこそ、正面から受け止める!!『真マジン・ザ・ハンド』『ムゲン・ザ・ハンドG2』『真ゴッドハンドW』

 

魔神が現れ、8本の手がスターループに四方八方と飛び、魔神の手にグローブでも嵌めるかのようにゴッドハンドが出現する。

 

現在、俺は重力を反転しているためスターループの方――つまり、上空に向かって落ちている。

その上で、俺の足元からさらに重力を掛けることでスターループの落下を減速できるくらいには強固な足場ができただろう。

 

(なら、後の問題は……)

 

上から降ってくるスターループを眺める。

 

「俺が、押しつぶされないかだろ!!!」

 

重力の足場とスターループのサンドイッチになれば俺は死ぬ。魔神の腕がスターループの底面に激突した瞬間腕全体に鈍音が響いた。

 

(両腕が逝った!!)

 

結果、足場を一時解除し落下しながらそれを理の律者の能力でどうにか補填するも、スターループの落下は食い止められていない。

その理由は単純明快――パワーが足りない、俺一人ではこの巨大なスターループの落下を食い止めるなんて不可能なのだ。

 

 

「…でも、不可能可能にするのが律者の力だ」

 

神の鍵、その正体は5万年前――容赦なく人類を滅ぼそうとする崩壊の力に対抗するべく、目には目を、と言うことで律者の力には律者で対抗しようということで作られた、律者たちのコアを使用して造られた12の武装の総称である。

 

すなわち、聖剣と呼ばれる呪具の前身であり、俺の理の律者のコアはかつて『虚空万象』と言う武装に使われていた。

 

 

特筆するべき特徴として神の鍵には、それぞれ『定格出力』と呼ばれる機能が備わっている。

『第〇定格出力』という名称と共に発動し、〇に入る数字が小さければ小さいほどその威力や効果が増大するが――

 

「代償として、使用者にかかる負担も大きくなるか……」

 

全て、エリシアからの受け売りだがその負担と言うのが激やばなのだ。

 

 

『この、神の鍵の負担ってどうなるの?この前、使った時は体の血管に赤い線みたいなのが走ってたんだけど‥‥やっぱり、死んじゃうの?』

『もちろんよ!』

 

何だか、一回死んだ身になると死に親近感を覚え始めているのか、内心「そっかぁ」くらいの危機感しか浮かばなかった。だがこの後、聞き捨てならない情報が開示された。

 

『だけど、それだけじゃなくて貴方の場合だと意識を律者コアに乗っ取られて本当の律者になっちゃうわよ』

『嘘!?ほ、本当の律者って例えばどんなことするの?』

『うーん、あたしたちの時代だと…大量虐殺は当たり前だし、もしかしたら本当に今度こそ人類が滅んじゃうわね』

『ダメじゃん!?』

 

どうやら、理の律者はその時代、創造の力で暴れまわり核ミサイルを落としまくったり、大型質量兵器を落としまくったりやりたい放題だったようだ。

それに乗っ取られるとか堪ったもんじゃない。

 

 

「…『エデンの星、第四定格出力解放』

 

だとしても、自分ができる背いっぱいで抗わなくちゃいけない。

 

俺は、自分が時間をかけて作り出した最高品質の『エデンの星』にありったけの力を流し込み切り札を発動させる。

 

 

浮星重天(ふせいじゅうん)!!』

 

アストラさんが音楽と言う魔法で多くの人を救おうとしたように、俺はこの魔法の力でその手助けをして見せる。

 

赤黒い球体は眩い光を放つ、それと同時にスターループの底面に巨大な重力力場が形成されスターループの重力が軽減される。

 

「うおぉらぁぁぁ!後は!全力で!!止めるだけじゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

再び、魔神の腕とスターループの底面が接触する。今回も当然、腕とそれを支える体全体にとんでもない衝撃が襲うもさっきほどじゃない。

その時、確かにスターループの落下が遅くなった。

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉ!こんなことになったのも全部、シェーレ・グリーンのせいだ!!」

「悪いが、お前らに構うほど余裕はない!!!」

 

暴走するフーガと帝高の奴らはこうなったのは全部イヴリンのせいだと責任を転嫁しながら襲い掛かる。

だが、生憎イヴリンにこいつらを相手する時間はない。足早に彼らの間を駆け抜け、ワイヤーで縛り上げる。

 

「そして、私の名はイヴリンだ!!」

 

それと同時に高速のキックが火花を散らせ奴らを吹き飛ばす。

 

 

「私も、イヴをサポートするわよ!!力を、貸してナナシ『エデンの星!』」

 

彼から渡された赤黒い球体が光り輝くと私が狙った場所から重力の力場が展開されて帝高とフーガの人たちを吹き飛ばしてくれた。

 

「ナナシったら、最高の魔法だわ!」

 

そして、この力を使っているとまるで魔法少女にでもなったような気分になって思わず口角が上がる。

興奮したアストラは次々に『エデンの星』を発動させ敵を吹き飛ばしていく。

 

 

「本当に、頼りになるなアストラお嬢様は…」

 

アストラお嬢様との絆を信じ続ける限りもう、二度と恐怖に縛られたりはしない。

彼女から流れる歌声を耳に響かせながらそう誓った。

 

 

 

だが、一つ疑問な所がある。ナナシが作り出した第九の神の鍵『エデンの星』それは、重力を操ることができるのだが、ナナシが使用すれば当然彼のエネルギー、つまりは体力が減っていく。

 

しかし、使用した当人であるアストラには全くその兆候が見られない。ならば、一体誰がその代償を払っているのだろう。

 

 

 

「…ッ、はぁ…本当に容赦なく使っていくなぁ」

 

受け止めながら、息が切れるのを感じる。そう、全てのエデンの星の代償はナナシが支払っているのだ。

だから、いくらアストラさんがたくさん使おうが彼女には全く影響はない。

 

「そろそろきつくなってきた……でも、不思議と心は疲れないなあ」

 

むしろ安らいでいるくらいである。スターループの下にいても聞こえてくるアストラさんの歌声がまるで魔法のように俺を癒してくれる。

 

 

 

その時だった、自身の血管に段々と赤い線が伸びてくるのがわかった。

 

「これが…タイムリミットか」

 

いわゆる、崩壊の浸食である。これが、全身に回った時に俺は新の理の律者に姿を変えこの新エリー都を塵にするだろう。

もちろん、反動と言うのはそれだけではない。体全身がものすごい虚脱感に支配されかけている上に頭も白い靄がかかったかのように意識が薄い。

 

 

「ぐっぅぅぅううう!!」

 

でも、力は抜かない。意識も失わない、決して折れぬように、彼女の理想を現実にするために、この魔法は解いてはいけない。

 

 

「ッ、がっ!!」

 

グリと嫌な音が手元から届く、そういくら『エデンの星』で軽くしようともスターループは重いもんは重い、長時間支えていればその手首は曲がり、腕は折れ、体はまるでプレス機に押されるように潰されてもおかしくない。

 

その証拠に、ナナシの両手は手首からあらぬ方向に曲がり魔神もミシミシと嫌な音が鳴りだしている。

 

(あ、アカン…流石に痛すぎるし見たことない曲がり方してる。なるべく早く、直してくれよ…イヴリンさん!)

 

 

 

 

一方その頃『エデンの星』の代償がナナシに行っているとは露知らず、重力波で攻撃し続けていたアストラは無双状態とも言える状況にあった。

 

そのおかげか、イヴリンの前にいた敵は大半歌姫の魔法の餌食となり楽に協律コアの修理までこぎつけることができた。

 

 

「~~~~~~~」

 

歌が歌われる。それと同時に、協律コアに歌声が注がれ、主力エンジンに火が灯る。

それと同時に、一瞬だけスターループが揺れその後、すぐに安定し始めた。

 

 

曲はクライマックスとなり、盛り上がりと共に黄金の噴水が弾きあがる。

 

「ラ~ララ~」

 

観客も彼女の歌を聴き皆々が口々にそう歌い出す。彼女の歌は多くの人に希望と進む力を与え、その姿を見てさらにアストラの音楽は力を増す。

 

 

ゆっくり、ゆっくりとスターループは降下していく――もう、心配はいらないだろう。

 

 

 

「…あ~れ~」

 

ただ一人を除いて――

 

 

そう、スターループが点火し着陸の準備が整ったのはいいものの、これまで底面からスターループを支え続けたナナシにはここから這い上がる方法などなかった。

エデンの星も、フルスロットルで使いすぎたからか勝手に自壊し重力は無情にも彼を下に落とす。

 

 

(まあ、このくらいの高さなら死なないし大丈夫か)

 

スターループは高い位置に存在するもナナシからすればこのくらいの落下なら死ぬことはない。

全身、打撲で痛いだろうけど後で理の律者の能力でゆっくり直せばいい話くらいに思っていたため全身の力を抜いて激突に備えようとしたその瞬間――

 

「全く!!どうして、自分で無事に帰れない作戦を実行しようと思ったんだ!!」

「…本当に、信用してるよ」

 

クルクルと落下するナナシの腕に何やらワイヤーが巻き付けられ落下はギリギリで阻止される。

何が起きたのかと見上げてみれば、眉間にしわを寄せたイヴリンさんがワイヤーを持って俺を引き上げようとしてくれていた。

 

「ナナシ、帰ったら説教だからね!!」

「全くだよ、心配する僕たちの身にもなってほしい」

 

だが、いたのはイヴリンさんだけではなく青筋立てて鬼の面でも被っているのかと言うくらいの鬼の形相をしたアキラとリンが立っていた。

 

とりあえず、俺がすべきなのは――

 

 

 

「……ごめんなさーい!!!!!」

 

 

 

『ふふっ……』

 

ワイヤーで片手を吊るされながら引き上げられているナナシを彼の“中”から見ながら思わず笑みを漏らす。

 

『もう、本当に危険なことするんだから…定格出力の開放はやめておきなさいとあれほど言ったのに…』

 

その証拠にナナシの崩壊の浸食は顔まで進み、後数秒ほどアストラの着火が遅れればナナシは死んでいただろう。

だが、普段のエリシアならナナシが死ぬようなことは絶対にさせないし、無理やり意識を奪ってでも止めるだろう。

 

 

『これで、よかったのよね…エデン』

 

もうすでに亡き友を想いながら、ナナシをじっと見つめる。

 

 

エリシアの親友、エデンは5万年前の時代にその歌声で世界中を魅了したスーパースターであった。

だが、第七次崩壊によって彼女は火を追う蛾に保護され、戦士たちをその歌声で癒し続けた。

 

『まだ、ナナシにはその歌声は届くみたいで本当によかったわ』

 

“末期”まで至った“勇気の律者”は既に誰の声も届かないほど修羅へと変貌を遂げていた。

毛色が似ているナナシもいずれ彼と同じ道を歩むのではないかと冷や冷やしているが今のところはあのビデオ屋の兄妹がいれば何とかなるだろう。

 

 

しかし、日々苛烈になる崩壊によって人類から娯楽を楽しむ心を奪っていき、あらゆるエンターテイメントは顧みなくなっていった。

 

そんな、状況でもエデンの歌声は人々を癒しつづけたが、前ほどの熱狂は得ることができない。

文明の終わりとはこのことだろう、それは突然滅ぶ物ではなく、あらゆる美しいものは徐々に光を失っていき、かつてそれが光っていたことすら忘れ去られていく。

 

もちろん、火を追う蛾は最期の瞬間まで滅びに抗い続けたが、エデンからすればもっと早く人々が芸術を鑑賞しなくなったと気づいたときに既に文明は滅んでいたのだろう。

 

終焉の律者との月面決戦に向かった14人のうち彼女は戦闘要員ではなく生き残りを連れて帰る役割であり戦闘には参加せず無事に帰還している。

 

もし、人類が崩壊によって滅ぼされることが決定したその瞬間『火種計画』を実行し、5万年前の文化を次の世代に伝える役割を担うはずだった。

 

 

しかし、彼女はそれを拒否し文明と共に滅びることを決意した。つまり、コールドスリープし未来に行くことなく、荒野に一人で歌い続け、前文明と共に死ぬ――と言うことになるはずだったのだが――

 

 

『結局、勇気の律者が終焉の律者を倒しちゃったから全て意味が無くなっちゃったのよね』

 

文明の光は芸術が尊ばれなくなるほど人々に心の余裕ないときに無くなったと思っていたら勇気の律者がその命を対価にして再び灯して見せたのだ。

 

 

『…どうか、ナナシは幸せに欲しいわ!!いいえ、あたしがするのよ!!』

 

彼女の記憶にある勇気の律者――その姿は、アポロ、ナナシと全く同じ姿をしていた。

 

 

 




第一律者、理の律者から作り出された神の鍵『虚空万象』

こいつは、崩壊3rdだとなんか意思を持って暴れたヤバい奴に加え崩壊スターレイルではヴェルトと共に列車に乗ってきたやつ、ちなみにもう下りたらしい。

ちなみに、エデンの星、第四定格出力はオリジナル技です。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

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