プロローグ:お前は人間じゃない
アポロはかつてロボットの振りをした人間、そう形容すべき存在だった。
確かに、数多の戦いで幾戦も心が傷つこうと決して諦めず戦い続けた彼の姿はロボットのように合理性を突き詰めていくものであったが同時に人間らしさも持ち合わせていた。
先生の死には涙を流し、その罪悪感と絶望で自らの生を終わらせようとするほどには――だが、幼少期の彼には仲間がいた。
仲間と共にどんな絶望とも戦って見せた――その、絆は不変であり仲間が皆、命を散らせても彼に絶望を打ち砕く力をもたらし続けた。
結局、アポロは死にその力と知識は次の者に受け継がれるようになった。
これが、人間の振りをしたロボット――『
もちろん、ナナシに仲間がいないわけじゃないし、心がないわけじゃない。
だとすれば、どうして彼をこう形容できようか――?
最初から違和感があった、普通の人間であれば反応の一つでもするであろう行動がナナシにはなかった。
ニコと話した時も、アンビーと映画に行った時も、猫又と猫探しに行った時も、クレタの仕事を手伝った時も、グレースから弁当をもらった時も、リンと遊んだ時も――
カリンをエスコートした時も、リナさんの料理を食べた時も、エレンとパンケーキを食べに行った時も、シーザーのピアノを聞いた時も、ルーシーに煙草吸ってる所を見られた時も、パイパーの胸の中で涙を流した時も――
あの日、星見雅に愛を伝えられたあの日ですら彼は“普通”の男の子のように照れることすらしなかった。
それどころか、ナナシがこれまで生きて来て“幸せ”と言う感情を抱いたことはない。
もし、恋愛が成立する条件に双方の幸せならばナナシと恋愛が成立する可能性は限りない0なのだ。
なぜ?それは、ナナシが誕生し活動したのはせいぜい6か月程度、その大半を自身の記憶を取り戻すということに注いでいたナナシには感情の成長が不十分であった。
それゆえに、自身がアポロ11号と言う存在であろうともアポロの影を追うようにその感情“らしきもの”は成長していった。
それが、致命的な欠陥を生んでしまった。
元々のアポロですら精神疾患を抱えた状態で生まれ、その後も何度も精神崩壊させ続け、戦争の兵器のような人間の影を追って成長した人間は果たして人間と呼べるのだろうか。
そこに、ナナシはいるのだろうか?
ある日の昼下がり、珍しく一人でアキラがチョップ大将の所に行ってラーメンを食べて帰って来た。
「さっき、錦鯉でラーメンを食べて来たんだけれど…」
「チョップ大将に何かあったの?」
「いや、何もないよ…多分、大したことではないと思う。ただ、『11号』がしばらくラーメンを食べに来ていないらしい。僕たちの方にも連絡がないだろう?」
「11号って『パエトーン』を語る任務で会った子だよね」
俺と11号に直接の接点はない、まあ単純に任務で俺がいない方がよかっただけだし、あの時期は治安局から姿を隠していたこともあって防衛軍の前にも姿を現すわけにはいかなかったというのもある。
正直、自身の正体を知ってからは他人とは思えない――まあ、ただ11と言う数字に親近感があるだけだが。
「うん、防衛軍のね。もしかしたら、任務中なんじゃない?」
「任務中…か。それでも、リンには何か連絡がありそうだと思うけれど…今までも暇を見つけて通信をくれていたしね。どこかのタイミングでナナシを紹介しようと思ってたんだけど」
「俺も、11号さんとはどうにも初めましてって感じがしないから会ってみたいよ!」
だが、11号と出会うきっかけは思わぬ形で果たされることとなった。
「こんにちは」
「ど、どうも」
「インターノットでご連絡を下ったのは…あなた?いや、あなた達ですか?」
さて、なぜ俺が六分街でチキンバーガーを持ちながらアンビーと一緒に誰かと待ち合わせをしていたのか――
『ナナシ、シルバーの復活を止めに行くわ』
『え?う、うん?ごめん、シルバーの復活って何?』
『あなたにも関係のない話じゃないの。だから、私と来て…』
『え、ちょちょッ!?』
と、もはや成立していない会話のキャッチボールの末に突然、ビデオ屋にアンビーが現れた。
そこから、アキラとリンが気づかないほどのスピードで俺の部屋に入って来たかと思えば有無を言わさぬ勢いでここまで連れてこられたのだ。
「あ…ごめんなさい。チキンバーガーが目印だったのに…お腹が空いてから食べてしまったの」
「本当によかったよ、俺も買っておいて…それで、俺も何が何だかわからないけれど、名前を聞いてもいいですか?」
「自己紹介のタイミングを失いましたからね。…それ以前に、あなたが信用に値するかどうか、まだ決めかねておりますが」
それはそうだ、俺もアンビーに連れてこられなければ、反撃しているし――こちらも、おそらく盲目の女性の素性は何一つ知らない。信用しようって言うのがおかしな話だ。
「そう…」
「そんなに悲しい声色を出さないでください。初対面な上に、インターノットで知り合ったとあれば、警戒してもおかしくないでしょう。論より証拠、情報を開示するのが先かと存じますが?」
「そりゃそうだね、それじゃあ自己紹介を俺はナナシ。近所のビデオ屋で働いてるよ」
「ビデオ屋…なるほど。それでは、そちらの方は?」
「私の名前はアンビー。聞いたことがあるかもしれないけど、今はなきシルバー小隊の隊長、アンビーよ」
シルバーの復活、そしてアンビーがシルバー小隊の隊長だという事、完全に話に置いてかれているナナシにとっては寝耳に水だった。
と言うか、盲目の女性のバイザーはどうやら感情に連動して色が変わるようで今の一連の会話だけでもかなりの回数表情が変わっている。
「あなたが…あの…」
「そうよ『トリガー』。11号の代わりに死んだのが私。彼女の件で私にも責任がある理由、わかるでしょう?」
「…すぐには信用できないと言っても、ご理解いただけますか?そして、なぜナナシさんもここに呼んだんでしょうか?」
(それは俺も気になる)
「安心して、あなたよりも警戒心が強い人に会ったことがあるから。それに、ナナシも部外者ではないわ。ホロウで会いましょう。論より証拠、だもの」
「え?だから、何で俺は……はい、行きますか」
代わりに死んだ、だとか俺と関係のある案件であることは間違いなさそうなのに、アンビーの無言の圧に負け結局何も聞くことができないまま、アンビーは少しアキラとリンに用事があるらしく席を外した。
「あの、何で俺が呼ばれたのか心当たりってありませんか?」
「さあ、そこまでは…ただ、あなたは軍とは何も関係がないんですよね?」
「はい…それじゃあ、一体?」
まあ、そりゃあ俺が知らないのに依頼主が知っているわけがない。
だが、俺に関係していると言っている時点で嫌な予感はマックスだ、聖剣絡みか、讃頌会を嗅ぎまわっているのがバレたのか、サクリファイス絡みか――いくらでも上がってくるせいで一つに絞れない。
「それじゃあ、行きましょうか」
「うん…」
数分後、帰って来たアンビーの表情は今までに見たどの時よりも覚悟に満ち溢れていた。その表情を見て否応がない不安感を抱いた俺はこれから起こることに若干の恐怖を感じるのであった。
この章で、ナナシの心?らしきものは、ぼっこぼこに破壊される予定です。
総合評価下がった…でも、脳破壊をやったことに後悔はない!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け