ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第106話・欠陥品の上に贋作

 

 

翌日、目を覚ますと11号とトリガーの姿はもう部屋になかった。

アンビーから話しを聞くと、どうやらトリガーが11号の面倒を見られる証明のために彼女を連れ出していったらしい。

 

 

(でも、それを判定するのってアンビーだよね。二人だけでどうやって証明するんだろう)

 

重症だった11号も全エネルギーを優先的にバイタルの安全に回して、戦闘能力を最高の状態に保つ――

と言うぜひとも、教えていただきたい方法によってすぐに外をうろつけるくらいまで回復していたようだ。

 

 

「それにしても、アンビーはアキラとリンに全てを話す気はないの?」

「ええ、私にはわかるの…本当のことを全て話したら2人とも、きっと私たちのことを放っておけなくなるわ」

「…もう手遅れじゃないかな」

 

100歩譲ってアンビーは二人から問い詰められないだろうが、俺の場合はあまりにも前科が多すぎるので白状を強要されるだろう。

そのせいか二人がこっそり話している俺たちを怪しそうにジーっと見つている気がする。

 

「プロキシ先生から色々聞いているわ。二人をかなり悲しませたみたいね」

「ぐうの音も出ません。でも、体が勝手に行っちゃうというか…そうせざるを得ない状況だったりするんだよ」

 

大体俺が怪我をする場面と言うのは、正直俺が怪我しなかったら代わりに誰かが犠牲になるということが多い。

それに、グランだったり、ライにスターループの落下など、どうにもならないことも多いのだ。

 

「確かに、状況も相当悪いみたいね。だから、こんなことに巻き込んでしまって申し訳ないと思ってるわ」

「それは別にいいよ。むしろ、アンビーが俺を頼ってくれて嬉しいよ」

「…そう、なら追加で頼ってもいいかしら。邪兎屋のみんなに話をしに行きたいの」

「もちろん!」

 

少し照れ臭かったのか頬を赤く染めたアンビーに頼まれた俺は彼女と共に邪兎屋の3人の元に向かった。

ちなみに、アキラとリンの賭け事でアンビーが邪兎屋に打ち明けるというのをやっていたので、ひそかにガッツポーズしているリンを見逃さなかった。

 

 

ゲームセンターの前にいたニコはアンビーを見つけると鋭い目つきでアンビーを睨みつけた。

 

「あ~らアンビーじゃない。あたしのこと、まだ覚えてたのね?」

「何も言わずにいなくなって、ごめんなさい。どんな罰でも受けるわ」

 

急に部屋に入って来て首根っこ掴まれてハンバーガーを片手にトリガーさんを待っていた時点で薄々気づいていたが邪兎屋のみんなに本当に何も言っていないのは本当らしい。

 

「あんたに罰なんか与えて、あたしに何のメリットがあるわけ?そんなのより大事なのは誠意よ。せ・い・い。どうやって落とし前をつけてくれるのかしら?」

「わ、私は…」

「私は?」

 

完全に怒っているニコを前に言い淀むアンビー、俺も助けになりたいのは山々だが彼女が行ったことは的確に俺にも突き刺さっていたため何も言えなかった。

 

(うーん、これまでたくさん二人から怒られてきたけど、はたから見ると庵感じだったんだなあ)

 

アンビーは必死にニコに誠意を示すためにハンバーガーを辞めてラーメンを食べることにしたり、ニコと猫又が映画を見ている時に二人の間に割って入ったりしないや、最後にはビリーと自身の給料を誠意として差し出そうとしていた。

 

 

「…あんたねぇ、ホワイト企業・邪兎屋の看板を粉みじんにたたっ壊そうとしてるワケ?もういいわ、今回は貸し一つってことにしといたげる。埋め合わせは…思いついたらまた言うわ」

「ニコ…」

「ああああ、もう…!!そんな小動物みたいな目であたしを見ないで頂戴!って、何でナナシもそんな生暖かい目であたしを見るのよ!」

 

真っ赤っかの家計で看板は叩き壊されそうになりかけている邪兎屋とは言えその発言は給料の件で興奮しなければもっとよかったのにと思わざるを得なかった。

 

 

「邪兎屋の中で訳ありなのは、あんただけじゃないんだから。もっと、あたしを信用しなさ!じゃないと、あたしが頼りないみたいじゃない」

「ごめんなさい、言い訳もしようもないわ。何も言わずに出ていったのは、考えが足りなかった。全部が終わったら…どんな質問にも答えるわ。もう隠し事はしない」

「よしよし、いい子ね~ナナシもこれくらい素直に全部話しなさいよ」

「…邪兎屋の従業員じゃないんで」

 

二人の会話に完全に静観を決め込んでいた俺にも最後の最後にロックオンされたようで必死のごまかしを試みる。

 

「…まあいいわ。でも、あんたのことを心配してるのはあの兄妹だけじゃないってことを忘れないで」

「うん、ありがとうニコ」

 

最後に、ニコにトリガーと一緒にどこかへ行った11号を探してくれるよう頼んでその場を後にした。

 

 

「ありがとう、ナナシ。私についてきてくれて」

「そんなことお安い御用だよ。…それにしても、ここで言うってことは覚悟を決めたってことかな?」

「ええ、ここからは私一人で話してみるわ」

 

彼女についてきてほしいと言われるならこのままついて行こうとするほど昨日から少しメンタルが心配だったがニコと話して少し吹っ切れたらしい。

これ以上はお節介になるし、彼女の表情を見るに覚悟はしっかり決めなおしたようだ。

 

「なら、俺は適当にぶらついてるよ」

 

と言うことで、俺とアンビーはそこで分かれて彼女は早速ビリーの元へ向かった。

 

 

 

(うーん、アンビーにはああ言ったものの本当に行く当てがないんだよなぁ)

 

ビデオ屋に戻ることも考えたがあの勢いだと再び説教モードに入りかねない。

六分街をうろつくことも考えたが、アンビーに八合いそうで気まずい。

 

 

「あ、ナナシさんじゃないですか!」

 

どうしようとかと悩んでいると後ろから声がかかった。

 

「え、あ!アリエスさん。久しぶりですね」

 

振り返るとそこにいたのは、雅曰く俺のストーカーをしていたが、NTR?と言う性癖?に目覚めたシリオンの少女アリエスさんがそこにはいた。

 

 

「はい、それにしても最近雅様とはどうなんですか?」

「う、うーんと結構いい感じ…だよ?」

「どうして疑問形なんですか!!」

 

彼女のストーカーを辞めさせるために雅が彼女の前で婚約者として一芝居をしてくれたのだが、雅のお父さんを紹介されたくらいしかやったことはない。

 

それに、騙している気もしたのでどうにもいい気分がしなかった。

 

 

「でも、不仲ではないよ!」

「そうですか!…あの、良ければ雅様との生活について是非教えてくれませんか?」

「雅との…?うん、いいよ!」

 

ストーカーの件もあって少し違和感があったが、アキラ曰く彼女は俺と雅が楽しんでいるのを知ると楽しいらしいので快く受け入れた。

 

「ッ…」

 

受け入れたその瞬間に向けられた彼女の笑顔を見たその時に頭に針でも刺したような頭痛が襲い掛かって来た。

 

『…エス、君は連れていけない。影…を止め…のは……俺た…』

 

砂嵐が酷い、アルターエゴが調整してくれた後にはこんなことは一度もなかったはずなのに記憶の損傷が酷いなんてもんじゃない。

 

痛みに耐えられず思わず手で覆った右目の中には酷い砂嵐で必死に俺――いや、アポロに縋りつく緑髪の少女がいた。

 

 

「…ナシさん!ナナシさん!!」

「ッ!?……あれ?今のは…」

「大丈夫ですか!!急にその場でうずくまってどこか痛いところがあるんですか?」

 

気づいたら頭痛は消えていて、“黄髪”のアリエスさんが心配そうな表情で背中をさすってくれている。

 

「いえ、大丈夫です。それよりも、行きましょう」

「ダメです!!ぜぇったいに大丈夫じゃありません!今日は家に帰ってしっかり寝てください…ほら、あそこがナナシさんの家なんですよね」

「なんで、家を…?」

「ストーカーしてた時に知ったんですよ!!ほら、行きますよ!」

 

サラっと衝撃の事実が彼女の口から言われたが言葉の勢いに押されあれよあれよと俺はビデオ屋に戻ることとなった。

 

「それじゃあ、またどこかで!!雅様との話もぜひ聞かせてくださいね!」

 

そのまま俺はビデオ屋に帰宅しアリエスさんは嵐のような勢いでで去って行った。

 

 

「…本当に大丈夫なんだけどなぁ」

 

これまでの経験則から察するに何かしらの出来事がトリガーとなってアポロの記憶が蘇ってきたことによる頭痛なのは間違いない。

それによって俺に何かが起こるわけでもないし頭痛も一時的なので本当に心配する必要はないのだが、彼女の心配が今の俺にはとても暖かかった。

 

 

 

 

 

暗い暗い研究所の実践訓練所の中で青髪のぼさぼさ頭が特徴的な女は放たれた光線に向かって手をかざす。

 

「『模ゴッドハンド』」

 

その華奢な手からは想像もできないほど巨大な手が出現し、放たれた光線をたやすく防ぐ。

 

 

『出力50%上昇、放ちます』

 

先ほどとは比べて圧倒的に巨大な光線が再び少女に向かって放たれる。

 

「『模マジン・ザ・ハンド』」

 

その言葉と共に背面から巨大な魔神が出現し光線を前に一歩も引くことなく防ぎ切った見せた。

 

 

「…所詮模造品か。だが、あの欠陥品(ゴミグズ)を壊すには十分だね」

『模擬戦闘システムを起動…エーテリアスを出現させます』

 

機械的な音声と共にぞろぞろと現れるエーテリアス。

その中にはデュラハンやデッドエンドブッチャー級の雑魚とは言えない巨大なエーテリアスも続々と出現していた。

 

 

「『模ジ・アース』」

 

力は籠らず、淡々とそう呼ぶと彼女の手に、青い光が螺旋を描きながら収束していく。

それは、かつてアポロが使用した必殺技の中でも最強の威力を持つ必殺技であり“使いこなせれば”切れぬもなしの聖剣を手に作り出す必殺技だ。

 

その前には、どんなエーテリアスですら等しく塵に帰るほかなく瞬きの間には無数にいたエーテリアスは全ていなくなっていた。

 

 

『戦闘訓練終了…お見事です。アインシュタイン博士』

「ああ、そうだ用事を済ませてくる。サラには留守だと伝えておいてくれ」

 

そう、彼女こそ聖剣使い達を除けば最もジ・アースについて知り尽くした者

アポロからその先代そしてそのまた先々先々代前の『ジ・アース』の使い手と共にいた100年以上の時を生きる少女である。

 

そして、この世界で唯一と言えるナナシに対して憎しみを抱く者でもある。

 

 




新しいキャラのシード…心がない、浸食が効かない…なんか聞き覚えがありますね。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
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