僕の人生はそれほど良いとは言えなかった。
だけれど、口が裂けても悪かったとも言えなかった。
小学生くらいの身長に、ぼさぼさの青髪、これが僕の100年以上変わらない標準スタイルだった。
その原因は、研究所にあった聖剣『ゼウス』の実験の失敗によるもので僕は不老になり今が今まで生き残って来た。
その中で、多くの出会いと別れを経験した。
ヴェルト・ジョイス、聖剣ジ・アースの担い手で『世界』の名を持つ青年。
僕の夫でもあった、かつては『Ω1』という名で僕が務めていた研究所に移送されてきた実験体だった。
その中で僕と彼は恋に落ち、そして――
彼は死んだ。
原因は実験の失敗と、それに乗じて攻め込んできた敵対組織は対聖剣使い兵器『ムーンライト・スローン』によって彼を焼き尽くした。
許せなかった。
どうしても許せなかった。
その時だった、実験の失敗で首になった前所長の代わりに現れた所長の名はティーフェという悪辣外道な存在だった。
彼は、僕たちにある話を持ち掛けてきた。
「ジ・アースの創造の力を解明すれば死者蘇生ですら夢じゃない。どうだ、僕の元で研究を続けないか?」
迷いはあった。
それは、ジ・アースの使い手をどれだけ苦しめる行為なのか理解していたから。
だけど、自分の身に残る不老という人知の及ばない力を見て、もしかしたらという気持ちもあった。
親友は止めてくれたけど、僕はその手を取った。
取ってしまった。
彼が連れてきた新たなジ・アースの使い手の名は『ヨアヒム・ノキアンビルタネン』という少年だった。
それは、皮肉にもヴェルトが最後に守った少年だった。
出来なかった、出来るはずがなかった。
実験を行うたびに彼と全く似ていないはずのヨアヒムから彼の面影を感じ取った。
だから、せめてティーフェの目が届かないうちは普通の人間に接するようにしようとした。
その結果、僕の親友である『フレデリカ・二コラ・テスラ』という、僕と同じく不老になってしまった少女と恋に落ちた。
僕の隣で、彼の面影があるヨアヒムと親友のラブラブっぷりを見せられるのは苦痛だったが、それでも幸せそうで僕も嬉しかった。
その後、ティーフェ博士からある報告が入った
「Ω2が自身の肉体を再構築に成功した!理論上は、コア…つまり、聖剣と魂が無事なら何度でも蘇ることができるってことだ。これから、もっと苛烈な実験を施せるぞ!!」
最悪の報告だった。
Ω2というのはヨアヒムにつけられた名前だ。
ティーフェ博士一味は人を人とも思っていない畜生集団だと理解するときにはもう遅かった。
ヨアヒムが死んだ。
原因は、単純に実験の失敗だった。
もちろん、僕もテスラ博士も心の底から悲しんだ。
だけど、失敗した奴らはまるでやり直しができるゲーム位の感覚でまた試せばいいと楽観的だった。
「…次は、私みたいね」
そう、テスラ博士に告げられた時は何が起きたのかわからなかった。
何で、奴らがあそこまで楽観的だったのか。
それは、今まで規則性が見当たらなかった聖剣の担い手の法則をある程度見破ってしまったからだ。
「それじゃあ、テスラ博士。次は、君ね」
「…えぇ」
こんなところから逃げようと必死に説得した。
だけれど、彼女の頭の中にあったのは聖剣を御することで『ヨアヒム』を生き返らせるという物だけだった。
案の定と言うべきか、その数か月後テスラ博士は息を引き取った。
今度は自分だと思った。
もし僕が担い手になれば、過酷な実験が始まり精神は破壊され、もう生きて帰ることはできないだろう。
でも、もう疲れた。
夫も、親友の愛した青年も、親友も失った僕にはもう何も残っていなかった。
だが、運命は皮肉なことに別の人間を聖剣使いに選んだ。
***
僕のいた研究所は崩壊した。
比喩じゃない、文字通り物理的に崩壊したのだ。
聖剣ジ・アースの暴走、それによる破壊衝動によって辺り一帯は砂地へと姿を変えた。
それを起こした張本人はどこかへ消え、僕は失意のまま適当に彷徨うことになった。
「アインシュタイン博士……?」
落ちぶれに落ちぶれ、物乞いになりこのまま死ぬものだと思っていた矢先に再開したのは、あの時ジ・アースと共に消えた少年『アポロ』だった。
話しを聞くと、あの後ラグナという人に拾われ、海賊狩りをしたり、紛争を鎮めたり、なんやかんやたくさんあって王様をしていると言っていた。
一体、何が起きたらそんなことになるのかわからないが、ともかくそこで研究者をやらないかと言われた。
本当に色々ありすぎて、もう研究なんてやりたくないと思っていたが、彼には大きすぎる借りと負い目があったので渋々了承することになった。
そこからの生活は、まさに天国そのものだったと思う。
研究は元から好きだったし、アポロはあんまり資金が回せなくてごめんと謝っていたがそんなことは関係ない。
ないなら、僕が稼げばいい。
そしたら、国の財源が増えたってアポロが喜んでくれた。
これまでの研究を思い返しても、こうやって僕の研究で笑顔になってくれるのは心の底から嬉しかった。
それだけじゃない、国に来てからアポロ以外にも仲間ができた。
国で孤児院を経営していたカカリアもとい、『エリシオン』、女癖が悪いジークフリードもとい『タウラス』、その奥さんであんなのとはもったいないくらい美人のセシリアさんもとい『ヴァルゴ』などなど
今でも、思い出せば笑みがこぼれるくらいいい思い出があの時代に詰まっている。
そんな幸せを全部くれたのはアポロだったが、僕が彼にしたことと言えば彼の幸せを全部奪ったことくらいである。
だから、必死に働いた。
そのたびにアポロは喜んでくれて、国も良くなった。
アポロは僕に感謝のしるしと言ことで聖剣の加護を与え機械を操る能力を得ることができた。
これなら、もっとこの国のためにアポロの役に立てると喜んだ。
本当に本当に――この幸せが続いてほしいと願っていた。
***
「…アインシュタイン」
こんな顔、君にだけは見せたくなかった。
旧都陥落時、僕は聖剣ゼウスを奪取するためエリシオンが経営している孤児院に強襲をかけた。
そこに現れたのは、他でもないアポロ。
いや、アポロ一号だった。
――アポロ一号を殺した。
殺してしまったが正しいだろう、本来の戦力差なら僕が彼に勝つ可能性はゼロだ。
最後まで、彼は僕が戻ってきてくれると信じていた。
でも、僕はもう戻れなかった。
あの幸せな日々には戻れなかったんだ。
だから、彼の恩師の剣と彼がくれた加護でアポロを殺してしまった。
その後のことはあまりよく覚えていない。
彼を殺してしまった後、半狂乱状態になりながら気づいたらヘ―リオス研究所にたどり着いていた。
そこにいたのは、僕と似ているけど少し薄いぼさぼさの青髪少女を抱えたアポロ十号だった。
不思議なことにそのアポロにはもう聖剣の力はなかった。
「………!!」
言葉も発せられないほど魂が砕け、元の人格はほとんど残っていない。
体もほとんど別人で、アポロ十号という肩書があるだけだというのにそれは命を懸けて少女を守っている。
紛れもないアポロだった。
彼は、残りカス程度しか残っていない聖剣の力を加護として少女に全てを渡してこのホロウの浸食から身を守っている。
おそらく、あの少女は僕同じように機械を操る能力を得るだろう。
そんなことをすれば、元からあまり浸食に強くない彼の体はたちまち浸食されエーテリアスに変わるだろう。
「…僕が、終わらせてあげるから」
そして、アポロ十号にも引導を渡した。
十号が最後に助けた少女は遠目で巨大な機械生命体に連れられて行ったのが見えた。
きっとすぐに保護されるだろう。
***
まだ、十号までは理解できる。
何故なら、アポロ一号から十号はほとんどアポロではなくなっていたがその奥底には確かに彼の精神があった。
だが、十一号お前は違う。
顔と能力が似ているだけでお前はアポロじゃない。
ただの欠陥品だ。
「なんのつもりだって?別に、何でもないゴミ掃除さ。特に、ツイッギーたちに恨みがあるわけじゃないが、どうせ役に立たないなら僕のために役立ってもらうよ」
そう言うと、彼女は周囲にいたアンビーの姉妹たちに向かって何か緑色の液体が入った注射器を刺していく。
「うっぅぅぅ…………」
途端に頭を押さえ苦しみだしたかと思えば、すぐに何も言わなくなってしまう。
「何をした…!?」
「ふふっ、そうか知らないのか。今注射したのはMNBウイルス。これを注射された生物は僕が扱う人工聖剣のエネルギータンクに変わる」
「MNB……ウイルスだって!?」
致死率脅威の100%のナノマシン型ウイルスであり、アポロの国の滅亡の要因ともなった死のウイルスだ。
「僕と言えど人工聖剣の行使にはエネルギーが足りなくてね。こうやって現地調達をするしかないんだ」
「げ、現地調達だと…!!人間を……命を何だと思ってるんだ!!」
「人間?おかしなことを言うね、こいつらはクローンだよ。君も人間じゃない、作り物の人形と変わりない存在だ」
今の問いかけだけで目の前の存在とは相いれないと深く理解できた。
だが、それと同時に不思議に思った。
誰よりも命の尊さを知り、アポロの友として戦い続けてくれた彼女がこんな言動をするなんて俺には全く理解できない。
でも――
「敵、なんだね」
「…ああ、僕は君の敵だよ。アポロの偽物、欠陥品、贋作、失敗作よ」
『何で、あんたはどうしてそんなにナナシを罵倒できるの。ナナシは私たちの仲間なの!そんなに言うなんて許さないから!!』
俺への執拗な罵倒に対してボンプ越しにリンとイアスが反論する。
だが、彼女は決して俺を睨む目を変えない。
「改めて自己紹介をしよう。僕の名前は『リーゼル・アルベルト・アインシュタイン』かつてアポロと共に戦った盟友であり今はとある組織で研究者をやっている。いご、よろしく」
「私たちの姉妹や仲間を罵倒するあなたとなんてよろしくする気はないわ。ナナシ、ここは私に任せてツイッギーをお願いできる?」
「アンビー!?それは…でも……」
ツイッギーはもういつ死んでもおかしくないくらいだ。
だからこそ、この場で助けられるとすればできるかどうかは別として俺の理の律者の能力で何とか体を補填するほかない。
だが、なぜかはわからないがアインシュタインはアポロが使う聖剣ジ・アースの必殺技を発動できる。
その中にはジ・アースもあるし危険というほかない。
「安心して、私はあなたのことをずっと見てきた。なら、あんなパクリに負けるわけないわ」
「…そう、だね。なら、少し時間を稼いでもらってもいいかな?」
迷いはあった。
だけれど、アインシュタインに相対したときの彼女の横顔からは確かな自信を感じた。
「パクリだと?」
アンビーの発言にアインシュタインのこめかみがぴくッと上がる。
確実に怒っている。
「あなたは死なないわ。私が守るもの」
「パクリと言ったこと後悔させてあげるよ!!」
ツイッギーの治療を俺に任せ、アンビー対アインシュタインの戦いが始まった。
ということで、なぜナナシをそんなに目の敵にするのか…という話でした。
まあ、要するに八つ当たりだね!
最後のアンビーのセリフ?言わせたかっただけだよ!!
それにしても、久しぶりでごめん!
これからも亀投稿だけど投稿していくし、モチベになるから感想とかお気に入り登録お願いします。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け