眩い光が暗いホロウの中を照らした直後、ツイッギーたち味方の表情は安らぎ、顔色も良くなっていた。
だが、対する敵のアインシュタインは光に飲まれた瞬間に言い難い苦痛に飲まれ藻掻いていた。
これぞ、黒淵白花の力によるものである。
敵には死を与え、味方には安らぎを与える。
まさに、命を司る神の鍵である。
『ナナシ!!』
「ッ、けほっけほっゴホッ……」
絶大な力を持つ神の鍵であることに変わりはないが、当然それを行使する人間にもそれ相応の代償を払うことになる。
ぶっつけ本番で、加減もわからず使用してしまったナナシは目、耳、鼻、口から血が流れだし息も絶え絶えになってしまっている。
なおかつ、神の鍵の発動の共通的なデメリットとしてナナシの肉体には赤い線によって浸食が始まり、まさにボロボロの状態になっていた。
「……本当に煩わしい。偽物の分際で、僕の武装の半分を破壊するなんてね」
「アイン、シュタイン!!ゴホッ、ゴホッ……まだ、生きていたなんて」
黒淵白花の光に飲まれても彼女は健在で、人工聖剣もまだ扱えるようだ。
それに、アンビーの姉妹たちも黒淵白花で救えないかと思っていたが、どうやらウイルスを取り除くことはできなかったらしい。
「そうか、やっぱり君はアポロじゃないんだな」
自身を殺せず、悔しがっているナナシを見てアインシュタインは残念そうにつぶやいた。
そして、満身創痍のナナシにトドメを刺すため歩み寄る。
「待ちなさい。アナタをここから先に行かせる気はないわ」
「気はなくても、そうさせてもらう『模ゴッドハンド』」
俺の前に立ちふさがり剣を向けるアンビーを一瞥したアインシュタインは青色のゴッドハンドを展開して一閃を防ぐ。
その直後、まるでロケットパンチのように射出されたゴッドハンドはアンビーを壁まで叩きつけ動きを封じた。
「っ、動けない」
「悪いけど、そこで見ているといい……この、戦いの結末を」
「……ッ、アインシュタイン!!」
歩みを進める彼女を前に俺は黒淵白花を片手に再び立ち上がる。
既に、体は満身創痍で定格出力の解放なんてできるはずもない。
それでも、黒淵白花はナチュラルに強烈な死の気配を漂わせている。
普通の人間なら、当たれば確実に殺せるだろう。
黒淵白花を握る力を強めながら、形状が変化し白い槍は黒く染まる。
「……はぁ、はぁ!!行け、黒淵白花!」
「なっ、ヤケクソの投擲だって!?」
最後のあがきとして俺がしたのは黒淵白花の投擲。
それも、死の部分を全力で解放した攻撃だ。
距離が離れていれば避けるのも容易かもしれないが、彼女は俺を仕留めるためにわざわざ近づいてきている。
これなら、回避は間に合わない。
それは、アインシュタイン側も当然理解している。
ここから彼女が生き延びるにはどうにかしてこの一撃を止めるほかない。
「……アポロ、僕に力を!!」
「なっ!?」
彼女の動きはとても見覚えのある姿だった。
手を前にクロスで構え、気を止めて解放すると赤いマントを身に着け、顔つきも神々しく威厳に満ち溢れた黄金のオーラの集合体が出現する。
「『模ゴッドキャッチ!!』」
執念、執着とも表現できる彼女の信念はアポロが持ちうる最強の防御必殺技、ゴッドキャッチを劣化品とは言え再現した。
その、巨大な魔神は勢いよく両手を突き出し当たったものに死をもたらす黒淵白花の投擲を軽々しく受け止めて見せたのだ。
「なん、だって……ゴホッ……」
最後のあがきすら正面から破られ、俺の体はまるで糸が切れた人形のように地面に落ちたまま動けない。
「僕はね。アポロ十一号、君のことをずっと見ていた」
「……?」
「一号以来だったんだ自由意思を持ったのは……」
エリシオンによって作られたアポロは合計十体、これらは全てアポロの蘇らせる器としての役割を担っていた。
その望み通り旧都陥落時にアポロの意識を持ったアポロ一号が起動した。
だが、何らかの理由で二号以降は彼の魂が砕けたことにより意識が薄れ、ほぼ本能的に動くようになってしまった。
その後、サクラによって十一人目のアポロ十一号――すなわち、後にナナシと名付けられう存在が誕生した。
ここまではナナシも知っていた。
「最初は十一号である君にアポロの意識が宿ったんだと思ったんだ。肉体が脆弱で、必殺技が弱体化してもその行動はアポロそっくりだったから」
「……っ」
確かに、目覚めて間もないナナシは意識の狭間で見たアポロの記憶を参考に動いていた。
助ける理由なんてわからなくても、アポロが仲間を命を懸けて助けると言えば俺も助けようと戦った。
「……でも、違った。その中身はアポロに似た誰かで、欠陥品で自分を持たない。ブレブレの存在だった」
その通りだ。
生まれて間もない、パエトーンに出会った頃の俺はまだ自分が何かもわかっていなくて、とにかく記憶の中のアポロを真似ていた。
「だから、こんな結末になるんだ。アポロ十一号」
「っ……!」
『やめて!!』
アインシュタインの足が動けない俺の顔の上に置かれ踏みにじられる。
それを見てイアス入りリンが飛びつくもアインシュタインの前には無力で、軽々と吹っ飛ばされてしまう。
「ずっと考えていた。君は一体何だろうと……それで、こう結論を出した。君は、アポロがした行動に基づいて動く機械的な何かだとね」
「……」
ストンと胸の奥で何か腑に落ちたような感覚があった。
「機械の心は芽生えるか……いや、芽生えない。その証拠に君は、アポロが感じない、否定している感情を同様に感じられないんじゃないか?」
「……」
「理解しているはずさ。例えば、恋慕としよう。アポロはある特定のワードでトラウマを持っている。だけれど、そのトラウマはなぜか君にも作動する」
分かっているとも、俺にはリンとアキラに出会う前の過去と言えるものはない。
だというのに、俺はアポロのトラウマが作動して苦しんでしまう。
「君の正体はアポロのなりそこないであり、意志を持たない人形。人間のふりをした機械、周りを悲しませるだけの欠陥品だ。そんなもの、さっさと死んだ方が良いと思わないか?」
「……」
まどろみの意識の中、指一本すら力が入らない。
普段なら限界なんて知らずに立ち上がろうとするのだが、答えを突き付けられた俺にはそれを整理するので精一杯だった。
(……)
アインシュタインの言っていることは大体が腑に落ちて、まるで模範解答をそのまま聞いているようだった。
――だけれど、少し大事なことを見落としている気がした。
始まりは不安からだった。
誰も俺を知らない、俺も誰も知らない。
記憶がなくて、自分が誰かもわからなくて――なのに不思議な力だけはある。
そんな時に、アキラとリンに出会った。
初めての仕事、不安だった。
だから、聖剣に見せられたアポロの記憶を元に振舞ったり戦ったり――それで始めはよかった。
だけれど、アポロの在り方を実践するためにはあまりにも俺には力が足りなかった。
そのせいで、最終的には二人を泣かせてしまった。
でも、どうすればいいかよくわからなかった。
それ以外、俺は知らない。
アポロを元に俺は生まれたのだから。
だけど、それはライに殺される前の話だ。
アポロ、アルターエゴ、サクラ
俺一人のためにこの三人があの戦いで命を落とした。
その理由を、その愛を俺は受けている。
あの時に、俺はアポロ十一号じゃなくてナナシに成れたとそう思っている。
そうだ、俺はアポロ十一号じゃない。
ましてや、君の言う人形でもない、機械でもない。
「……なんだ、簡単なことじゃないか」
「ッ!?」
既にもう抵抗する意思がないと思って油断していたアインシュタインはナナシの一言に思わず踏みにじっていた足を上げてしまう。
その隙を見逃さず、残った力を振り絞って何とか立ち上がり後退する。
「どういうことだ……?」
「……どうやら、少し疲れていただけみたい。ちょっと寝たら、すっきりしたよ」
体はもう限界だと悲鳴を上げている。
だけれど、まだもう少しだけ頑張れそうだ。
「っ、忘れないでくれるかな。僕には、人質がいるってことを……アポロ十一号、君が大人しく殺されなければあのゴッドハンドを起点にジ・アースを起動する」
「それは……」
確かにあの距離でジ・アースを起動されればアンビーはただじゃ済まない。
せっかく気合で立ち上がったのにこれでは意味がない。
「脅しなんて正々堂々じゃないわ。なら、私も混ぜてもらおうかしら」
「え?」
その時だった。
どこか聞き覚えのある声が上から聞こえたかと思えば炎を撒きながら落下したものがアンビーを拘束していたゴッドハンドを砕いた。
「……アナタ、どうしてここに?」
「11号!?」
「話は後よ。ナナシだったわよね……そいつとの因縁があるならきっちり決着をつけなさい!!」
間違いない。
ビデオ屋で眠っているはずの11号がこの場に現れたのだ。
「もちろん……さあ、決着をつけようアインシュタイン」
「……いいだろう。人質がいなくても、今の君じゃ僕には勝てない」
「それは、どうかな?」
ここまで来て、たくさんの物を積み上げてきた。
仲間との思い出、親からの愛、聖剣の力、あらゆるものをここに集める。
「聖剣_抜錨_!!」
くっ、久しぶりに投稿頻度を上げたせいで副作用が……!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け