ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第111話・回れ廻れ希望と共に

 

 

心臓が早鐘を打つのがわかる。

力の消費、命の消費、己のアポロ十一号としてではなくナナシとしての魂が震えるのがわかる。

 

体内の聖剣に呼びかけ力を起動する。

青い螺旋は右腕に収束し波紋を形成していく。

 

「ッ……!!」

 

だが、次の瞬間波紋は俺の右腕を肘から上まで消し去ってしまった。

 

 

「ナナシ!!」

「はっ、はははははは!!なんだそれは?何をするかと思えばただの自爆じゃないか」

 

アンビーの心配をよそにすぐさま理の律者の能力を使い体を再生する。

 

(やっぱり……あれしかないか)

 

今の俺の実力ではジ・アースを発動させられない。

それは揺るがない事実であり、変えようのないことだ。

 

だから、仲間を頼るんだ。

 

「アンビー!11号!……少しだけ時間を稼いでもらってもいい?」

「わかったわ。今度こそ、貴方を守り切って見せる」

「いいけど、やるならきっちり決めなさい」

 

二人は応えてくれた。

俺はその場から数歩下がり、彼女たちはそこに立ちふさがる。

 

「……あなた、戦えるの?」

「戦闘の技術を忘れていないわ。あなたこそ、私についてこれるのかしら?」

 

挑発するような笑みで互いの顔を覗き込む。

それに呼応するように、その顔に笑みが、手に力が、心に熱が籠っていく。

 

そして、その姿をアインシュタインは何の感情も見せずに見つめていた。

 

 

「……その熱意は褒めよう。ただ、それだけでは僕には届かない」

「ッ」

 

雰囲気が変わる。

ナナシと相対した時とは違い、感情的ではなくまるで機械のようだった。

 

 

「聖剣起動、究極奥義……再現『ムゲン・ザ・ハンドU』」

 

彼女がそう唱えた次の瞬間、背中についていた人工聖剣に光が収束し放たれる。

次に現れたのは無数の手、アポロが使っていたムゲン・ザ・ハンドG5を超えた規模の必殺技だった。

 

最初は10程度だったが、20、30、50――100を超えたあたりで手の出現は止まった。

 

 

「これが、ジ・アースの力。これを使って君たちを潰す」

「……ジョークじゃすまないわね」

「ナナシ!なるべく早く終わらしなさいよ!」

 

無数の手はまるで台風のように瓦礫を呑み込みながら俺たちに迫ってくる。

 

それを俺はイアスを抱えてひとまずは安全な場所に移動した。

 

『ねえ……あれってどうにかなるの?』

「……わからない」

 

あれはもう天災そのものだ。

ムゲン・ザ・ハンドの一本一本が人間の体なら容易く破壊する力を持っている。

 

それが、台風のように動いているのだ。

その上、当のアインシュタイン本人は台風の目の中心にいるようで姿が見えない。

 

 

だが、幸いと言えるのはあっちからもこちらの位置を完全には理解できないようでアンビーと11号の攻撃を食らうたびに進路を変えている。

 

 

「だけど、何かしないと始まらない」

『っ、ナナシそれって!?』

 

リンが驚くのも無理はない。

俺の手の中には最後のあがきとしてアインシュタインに投擲した黒淵白花が握られていたのだから。

 

 

「……ふぅ」

 

息を吐く。

覚悟だ、今の俺には覚悟がいる。

 

 

「聖剣抜錨」

 

呪文を唱えた。

これ自体には意味はない、これは暗示だ。

 

回る、廻る、周る、回れ、廻れ、回れ、廻れ、回れ、廻れ、回れ、廻れ――

 

青いエネルギーは波紋を描きながら俺の右腕に収束していく。

回り続け、やがてそれは全てを切り拓く最強の剣を作り出すはずだった。

 

しかし、完全に制御できていないジ・アースは己の体を傷つける。

 

 

「ッ」

『ひっ』

 

リンが思わず恐怖の叫びを上げる。

青い螺旋はナナシの肉を抉り、神経を切り裂き、嬲り、潰し、ぐちゃぐちゃの肉塊に変え始めていた。

 

やがて螺旋は骨を傷つけだし右腕は跡形もなく消えかけていた。

 

 

だが、ナナシが黒淵白花をかざすことによって肉体は再生する。

それによって、ジ・アースを成功させるための螺旋の加速は継続するのだ。

 

すなわち、ジ・アースが発動するまでの間ナナシは自身の腕がボロボロになり続ける激痛を与えられ続けるのだ。

 

 

そして、ナナシはその痛みを歯を必死に食いしばって耐え続けている。

 

(……っぅぅ!!揺らぐな、螺旋を収束しろ。右腕は発動のための芯さえ残ってればいい!)

 

その痛みはこれまで左腕を失ったり、両腕両足を失って殺されてきたり、お腹に穴を開けられたりしてきたナナシでも耐えがたいものがあった。

 

いや、逆に考えればこれまでの積み重ねがあったからこそ耐えられたのかもしれない。

 

 

『ナナシ、だめっ!ダメだよ!!』

「いいんだ、これで……これは俺の覚悟だからだ!!絶対に、絶対にアイツにだけは負けられない」

 

痛々しい姿に思わずリンが声を上げる。

だが、それでも止めるわけにはいかない。

 

たとえ、神経がちぎれそのたびに想像絶する痛みが体を蝕もうとこの螺旋が完成するまで止まれない。

 

 

 

「聖剣収束、完了。これで終わらせるぞアインシュタイン!!」

 

やがて、光が彼の右腕に螺旋となって収束する。

完成したジ・アースには一点の曇りも光の漏れもない。

 

あの時と同じ青く冷たい光を放っていた。

 

「ありがとう。アンビー、11号……あとは任せて」

 

アンビーと11号は何も言わず道を開けてくれた。

そして、俺は台風となったムゲン・ザ・ハンドの前に降り立ち聖剣となった右腕を構える。

 

「そうか、なら消え去るといい!!」

 

台風が一旦解除されたかと思えば俺を殺すために最適化した形に姿を変える。

すなわち台風のように周辺を巻き込むのではなく津波のようにある一方行を殺す形に変化したのだ。

 

 

「聖剣抜刀!!」

 

青い螺旋を変形させ先端をより鋭く、まるでドリルのような形に変形させる。

 

 

「全て呑み込め!『ムゲン・ザ・ハンドU』」

「『希望仕掛けの聖なる剣(ジ・アース)!!』」

 

 

青いムゲン・ザ・ハンドと青い螺旋の激突。

数では圧倒的にジ・アースが不利だった。

 

だが、そんなものは関係ない。

 

 

何でも切れる手刀を作り出すというのがこの必殺技の本質である。

 

 

ならば、たとえムゲンの手が相手だろうと究極の一が砕けるはずがない。

 

「だが、それも僕の予想通りさ」

 

だが、台風の目に侵入したその時だった。

何の因果か鏡写しのように同じ構えをしたアインシュタインが立っていた。

 

 

「『機械仕掛けの聖なる剣(模ジ・アース)!!』」

「ッ!おおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

赤く渦巻く模造品のジ・アースと俺の手を破壊しながらも螺旋を描き続けている本物のジ・アース。

 

その激突は、一見本物のジ・アースを放っているナナシ有利に見える。

 

 

だが、実際は違う。

ナナシのジ・アースはあくまで彼の右腕を起点として発動されている。

 

そのため、技の自傷によって右腕が消滅すれば技は停止してしまう。

 

 

(っ、拮抗されてる)

 

徐々にアインシュタインが押されているとはいえ、ナナシの右腕の消滅まで拮抗するほどの威力はある。

 

(そう、このまま行けばたとえあの槍で回復されたとしても僕が勝つ……ッ!?)

 

だが、そのとき彼女はある違和感に気が付いた。

ナナシの左手には自身の体を癒すために使うはずの黒淵白花が握られておらず無手だった。

 

「螺旋よ。回れ廻れっ!!」

 

その直後、ナナシの右腕が完全に消滅する前に青い螺旋が彼の体を伝い無手の左手に移動した。

 

そうなれば、当然圧倒的な破壊力を持つジ・アースは螺旋の消えたナナシの右腕をたやすく突破してしまう。

 

 

つまり、左手から見れば背を向けるような形になるのだ。

 

「色々、たくさん言ってくれてどうもありがとう。アインシュタイン!!」

「っ!!」

 

視線が交差する。

もう、アインシュタインが打てる手はない。

 

「だけど、俺はアポロじゃない……ナナシだ!!」

「思考も、行動も、戦う理由だって彼を真似ただけの癖に!!」

 

確かに、思考も行動もそうなのかもしれない。

だけど、戦う理由だけは立派なものを俺は持っている。

 

「戦う理由なんて、みんなが!仲間が!!大切で大好きだからに決まってんだろうが!!」

左腕へ完全に螺旋が収束し青い渦が剣となる。

 

 

「『希望仕掛けの聖なる剣(ジ・アース)!!』」

 

最後のジ・アースを一閃――

それを目だけで追っていたアインシュタインに蘇ったかつての記憶

 

 

 

***

 

 

『どうしてアポロは戦うんだい?』

 

特に深い理由はなく、単なる興味本位だった。

妹を失い、恩師を失い、何の縁もゆかりもない場所で戦う彼を不思議に思っていた。

 

『アインシュタインはおかしなことを聞くね』

『おかしなことって……僕から見ればおかしなことだよ』

 

その反応は当たり前のことを聞かれたような感じで、だけどすごく優しい笑みだった。

 

『あれを見て』

 

彼が指さした先には子供たちが笑顔で公園で遊んでいる普通の光景だった。

だけど、それは決してアポロが手に入ることのなかったものだった。

 

『俺は守りたいんだ。ここに住む仲間たちの平和な日常を』

『すごく大変なことだ。ただでさえ、今は世界情勢が良いとは言えない』

『だけど、俺はへっちゃだよ。仲間がいるし……何より、みんなが大切で大好きなんだから!!』

 

その時の笑顔を僕は一生忘れない。

 

 

 

***

 

 

 

「欠陥品がァァァ!」

 

完全に崩れた口調。

ナナシのジ・アースはアインシュタインを完全に切り裂いた。

 

しかしながら、ナナシには知る由もない何かが彼女を再起動させた。

 

「なっ」

「『機械仕掛けの聖なる剣(模ジ・アース)!!』」

 

だが、所詮は火事場の馬鹿力ですらなく。

戦士でもないただの技術者が最後に絞り出したあがきでしかない。

 

めちゃくちゃボロボロで限界を超えているナナシですら回避は不可能とはいえ致命傷を避けるくらいは容易だ。

 

 

「ぁ」

 

その時、事件が起きた。

まるで、一方的に殴られてばかりの防戦一方のボクサーが攻防の末の反撃で勝利したような逆転劇。

 

本来、人の急所というのは大体頭か胸辺りである。

だから、基本的にそこを避ける動きを取ることになる。

 

 

だが、ナナシの場合は少し話が違う。

ナナシの本体はあくまで理の律者のコアの為これが無事なら頭や心臓を潰されようが大体何とかなるのだ。

 

 

「ナナシ!!」

 

目から生気が消え、ナナシの体は重力によってそのまま地面に落ちる。

 

そう、逆に言えば何かの間違いで律者コアが傷つけられればそれはどうしようもないくらいの致命傷となる。

 

 

ましてや、大体何でもぶった切れるジ・アースによる攻撃なんてただじゃ済まない。

 

(……)

 

思考すらできない。

頭が、体がまるで自分の物じゃないような気がしてきた。

 

そのまま、ナナシの意識は深い深い闇の中に落ちていった。

 

 

 

 




作者「はっ!!」

ここで作者の脳裏に電流が走った。

作者「ここでナナシを殺せばなんやかんやゼンレスゾーンゼロ・聖剣「完」って行けるんじゃね……?」

この先の展開はどうなるのか!!
それは……作者の気分のみ知る。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
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