次に目を覚ました時、俺は気づいたらその場に立ち尽くしていた。
だが、ビデオ屋ではない。
暗い、暗い――まるで、海の底にいるような息の詰まる感覚があった。
その時、目の前でぽつりと光が灯る。
『ジ・アース!!』
見まごうはずがない、俺が到底使いこなすことの叶わない聖剣の輝き。
アポロらしき人物が発動した螺旋の剣は真っすぐと――巨大な”エーテリアス”を貫いた。
当然、螺旋は彼の肉体を傷つけることはない。
俺が作った
(エーテリアス?アポロが生きていた時代に?)
記憶が正しければ、アポロが生きていた時代にホロウはない。
だとすれば、こいつは――アポロ一号から十号の誰かなんだろう。
よく見れば背景は赤く、燃えていることから旧都陥落時の記憶だ。
『……見られてる』
そうぽつりと映像の中にいるアポロが呟くとぐるりと首だけをこちらに向ける。
(ッ)
恐ろしかった、怖かった。
映像越しだというのに息を呑んだ。
一体何を想い生きて来れば、そんな目が出来るのかというほど濁り、怒りと憎しみにまみれた視線が俺を貫く。
『見えないが……敵か、味方か。どちらでも、10数えきれないうちに今すぐ出て来れば見逃そう。そうでないなら、塵に還る準備をしておけ』
不穏すぎる一言。
俺は確かに過去の映像を見ているはず、だというのにまるでその場にいるかのように鳥肌が立って来た。
『10、9、8……』
当然、出て行くどころか帰り方もわからない俺に何かアクションが起こせるわけもなく、10のカウントダウンが始まる。
『……1、0。そうか、出てこないか。ならば、その蛮勇を抱いて死ぬがいい』
そう言い放った瞬間、何者かがアポロを襲うために現れると思ったが現れない。
今になって、怖気づいて逃げてしまったか――いや、俺の方に映像に段々と近づいてくる。
何だと思って首を傾げていると、すぐそこで彼は足を止めた。
『
瞬間、決してあってはならないことが起きた。
俺達は普段生きている中で、空間が裂ける瞬間なんて見ることはない。
見える物じゃない、触れる物じゃない、知覚できる物でもない。
ああ、でもそれは――その、常識は目の前の
「アポロ一号」
最初に作られた10体のアポロのうち、最初に起動したことで真にアポロの精神と魂を継承した最強のクローン。
目の前に立つ圧倒的な質量すら感じる覇気。
そこから、自然と導き出された答えは胸の奥ですとんと腑に落ちた。
「……」
空間を破って現れた彼に思わずその場で後ずさりした。
「同じ顔。二号が言っていたのはこのことか。二回もこう他人についた自分の顔を見るのはいい気分じゃないな」
「え?」
「そう怖がるな。別に殺して首を晒そうというわけじゃない」
「え、ぅつぅ……!?ゴホッ、ゴホッ」
そこで、やっと気づいた。
目の前の存在に自分が息するのも忘れるほど恐怖していたことに
(本当に、同じクローンなのか。何か、決定的というか覆せない力の差を感じる……)
一つわかるのは、確実に俺が出会ってきた全ての人よりも強い事だけ。
というか、クローン元のアポロよりも強い気がする。
「聖剣が壊れてるな。相当な無理をしたか、ラッキーパンチを食らったか」
「何で、俺の心臓が……」
その時、俺の体に鋭い痛みが走る。
間違いない――首を傾けると心臓が貫かれていた。
吐血と、その直後体の末端から力が失われていく感覚が伝播していくのがわかる。
「動くな」
意識がぶれていく、反撃を試みようとするがその一言を前に指一本動かない。
「こんなものか。多少雑だが、しばらく経てば馴染むはず……多分きっと」
「多分きっと?ゴホッ、ゴホッぅ……本当になんなんだ」
「ただのお節介だ。後は勝手にしろ、もう時間もないみたいだからな」
その場に倒れ込む俺の視界の先にいる物々しい武器を構えた謎の集団。
いや、今の俺の目ならわかる――あれは、本物の聖剣と人工聖剣を携えた戦士たちだ。
「ざっと500人以上の人工聖剣使いにオーガとジェネシスの使い手。誰かは知らないが敵は確実に俺を殺したいらしい。それとも、他に狙いがあるのか……」
「一体全体何が……何が、起こってるんだ」
「さあな。それより、お前には帰る場所があるんじゃないのか」
そう告げてアポロ一号は振り返らずに元の世界に戻っていく。
去り際、俺はその背中に向かって全力で叫んだ。
「俺がお前が羨ましい!!圧倒的な力を振るって、何もかもを助けられるお前を!!」
「……こっちのセリフだ」
そうぼやくだけで振り返ることもない。
「羨ましいよ。お前にはまだ守る者があるんだな」
最後に聞こえたその一言には深い悲しみと絶望の色が浮かんでいたような気がした。
***
その場に立ち尽くす俺は今までにない調子の良さに驚いていた。
だが、その感情はすぐさま別の驚愕によって塗り替えられる。
「これ、俺の血?」
今度こそ、現実に帰って来たのだが俺が立っていたパソコン周りは真っ赤に染まっていたのだ。
反射的に自分の心臓のあった個所を抑えると傷は全くなかった。
「ナナシ起きたの!大丈夫!?」
「リン?うん、大丈夫……って、一体どうしてアキラは何でライカンさんに掴みかかってるのさ!?」
「それはこっちのセリフだよ。僕たちがH.D.Dシステムのアップグレードを終えた瞬間に急にナナシの心臓から血が噴き出したんだ」
俺がちゃんと無事なのを確認するとアキラはライカンさんから手を離した。
「心臓から血?」
アポロ一号に貫かれた個所も同じく心臓だった。
あれは決して夢――ではなく、過去の存在が現実に影響を及ぼしたわけだ。
「な、なるほど。それで、市長が犯人だと踏んでアキラはライカンさんに掴みかかってたわけなんだ」
「ああ、申し訳ないライカンさん。カッとなってしまって……」
「いえ、私共が意図しない形とはいえナナシ様に危害が加わったのは事実。アキラ様が激高したとして不自然ではありません」
「俺も謝ります。迷惑をかけたみたいでごめんなさい」
迷惑をかけたみんなに向けた頭を下げる。
事前に何が起こるかわからないと言われていたのにそれを受け入れたのは俺だ。
だとしても、あんなことが起こるなんて誰も予想なんて出来なかっただろうが。
「とりあえず血を拭いちゃ……エレン。それ、何舐めてるの?」
「……あんたの血。ほら、拭き出した時にあたしの手についたから、もったいないなって」
「いやいや!汚いでしょ。ほら、吐いて拭いて!!」
「いいって……それより、市長の話の続き聞かなくていいの?掃除はあたし達がやっておくからさ」
そう言い、エレンは結局吐くことなくむしろ美味しそうに少し頬を緩ませながら彼女の手についた血をなめとっていた。
(美味しいのかな?サメって雑食って聞くし、そんなにお腹が空くんだったら今度何か差し入れしに行こうかな)
自分でも舐めてみるが美味しくない、ただの血だ。
「コホンッ、ナナシ君。すまなかったね。あのちゃらんぽ……いや、彼が何かしたみたいで」
「いえ、大丈夫です。むしろ、何だか体が軽いような気すらします」
「そうか、問題なさそうなら本題に入ろうと思う」
俺はアキラとリンの顔を交互に見ながら頷いた。
まだ、目覚めて間もないが体には元気が有り余っている。
それこそ、失われた必殺技たちも使えるんじゃないかと思ってしまうほどに
「わかった。実の所、今回君たちに接触を図ったのは、君たちにとあるオークションにて競り落としてもらいたい品があるからだ」
「オークション?」
何だか、最近そんな話を聞いたような。
「あ!あれじゃないかな、ナナシ。ヒューゴさんが言ってた著名なオークションが開催されるって話」
「その通り。君たちに白羽の矢を立てたのは、ますます正しい選択だったようだ。単刀直入に言おう。この件は君たちがかつて遭遇した『サクリファイス』と関係がある」
「サクリファイスだって!?」
忘れようとも忘れられない工事現場で出会い開口一番に俺の聖剣を奪おうとしてきた存在。
アポロの記憶にも映っていた――よくわからない何かだ。
確か、今は治安局に回収されていたはず
「解析の結果。サクリファイスはホロウ外でも存在を維持することが出来るという、恐るべき力を持つこと、そして体内には人間のDNAが組み込まれていることが判明した」
「ホロウ外で存在を維持する力……それに人間のDNA」
到底、自然発生するとは思えない二つの組み合わせ――どうにもきな臭さを感じざるを得ない。
「そのサクリファイスの体内から、我々は奇妙なコアを抽出することに成功したのだが……コアにもまた、サクリファイス同様謎めいた力が働いておりエーテル環境から離れた場所でも存続できるのだ」
「それと、オークションが関連するってことは……盗まれた?」
「恥ずかしい話だが。その通りだ。コアは新エリー都で最も厳重なセキュリティが敷かれたラボから盗まれた」
「じゃあ、コアが出品されたってことですか?」
「正確にはサクリファイスのコアを埋め込んだ品をオークションに出品したということだ」
あんなものを埋め込んで出品とはとんだ悪趣味な奴もいたものだ。
だが、それ以上に怪しい。
わざわざ盗んだ物を出品、その情報を市長が知るほどまでに公開しているのだおびき寄せる気満々の餌だ。
「市長が直接競り落とすのは流石に厳しいからってことですか」
「……ああ、貧乏くじを引かせる様で悪いがね。だが、資金は豊富に用意したし、ヴィクトリア家政の面々が全面的に君達を補佐しよう」
「どうする。リン、アキラ」
「や、やるだけやって見ようと思う」
「感謝する。君たちはやはり、信頼に値する同志だ」
気になることはある。
主に二号が残していった不穏な予言だ。
それが、このオークションで降りかかるのかと思うと不安だが――
(一号。俺はまだ、守るものがあるよ)
守って見せるさ。
そう、今一度誓った。
アポロ一号さんほぼ、ラスボスやんけ!?
ちなみに、オーガとジェネシス、500人の人工聖剣使い達がどうなったのか……もうすでに、過去の話で語られていますが秒殺されてます。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け