ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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ははははっ!!終わらねぇぇ!!自分でシナリオ考えるのがしんどすぎる!!


ドキドキデート大作戦!!(中編・1)

 

24日の朝、新エリー都からブレイズウッドに休まず2時間ほど走ってやっとたどり着いてシャワーを浴びて寝たはず――。

 

「よぉ、ナナシ!いい朝だな!」

「――ふぇ?」

だから、まさか目を開けたらシーザーが馬乗りになってるなんてありえないはずなのだ。

時計をちらりと見ると、約束の時間は朝5時に日の出を見る――はずなのだが。

(深夜3時?寝て3時間しか経ってねぇ――)

 

 

何だか、妙に眠いなと思っていたが――

(夢かな、シーザーが夢で出て来るなんて疲れてるのかな――てか、家に鍵かけてるしそもそも入ってこれないか)

自身で結論を付け、再び瞼を閉じて睡眠に移行しようとした時だった。

 

「な、ナナシ?寝ちまったか――おーい、起きろよー!――起きねぇならいたずらしちまうぞー」

シーザーのいたずらとは一体何なのか、下手したら全体重でのダイブとかきそうだなと思いながら半目を開けていつでも『ゴッドハンド』を展開できるように準備する。

 

 

だが、半目では見えない所からごとっと何か固いものが置かれた音が鳴る。

(なんだ?剣か盾でも置いたのか?――マジで腹にダイブ?)

見えないことへの恐怖をひしひしと感じつつ、視線をシーザーの方に向けると――。

 

「何で脱いでるんだよ!?」

勢いよく飛び起きた、さっきのごとっと言う音の原因はシーザーが自身の胸部装甲を取り外し置いた音だったのだ。

 

 

「なんだ、起きてんじゃねぇかナナシ――それじゃあ行くぜ!郊外をかっ飛ばすぞ!」

俺が飛び起きたと同時にすぐさま置いていた胸部装甲を付けたかと思えば首根っこ掴まれ、とんでもない力で引きずられる。だが、寝起きで全く力の出ない俺はそれでも何とか抵抗し、その場に踏みとどまる。

 

 

「待って、シーザー。俺まだ着替えてないから、一回外に行ってて――あれ?」

「おっ、そいつは悪かった。ナナシ少ししたら出直すぜ」

と素直にシーザーは家を出て行ってくれたのだが、さっさと鍵を閉めてまた寝ようと思い扉を凝視するも――。

(鍵、壊れてるな。――ていうか、壊されたって感じだなちょうど――剣とかでぶった切られたみたいな)

 

 

なんとなく犯人は浮かび上がってきたが、大人しく外に出て行ってくれた今がチャンスと言うことで睡眠は諦め朝の3時にも関わらずさっさと着替え終えた。

 

 

(外まだめっちゃ暗いな――寒いし――)

 

「よし、着替えたな――それじゃあ、ほら乗ってけよナナシ!」

「待って、待って――勢いが強すぎる。その前にさ、ほら――暗いじゃん。俺達はさ何時集合だったか覚えてる?」

空を見上げると、郊外だからかなんと星空すら見える――そして、集合時間は5時だ。

 

「覚えてるに決まってんだろ!オレ様を舐めすぎだぜ―――5時集合だろ?」

「うん、そうなんだけどさ――今何時?」

俺は自身がつけている時計を見せながらシーザーへ答えを求める、正直この時はまさかの3時間睡眠でちょっと苛立っていた節があるからこんなことをしていたのだろう。

 

 

「うっ、3時だけどよ――昨日、ルーシーやバーニスとどんちゃん騒ぎしててよ。ライトからも『大将は明日でしょう?』って言われてたからよ、我慢して――早く来すぎちまった」

しょんぼりする、シーザー。心の中で足止めしてくれていたライトにグーサインを送りながら自身の頬をパシンッとぶっ叩く。

 

「ど、どうした?ナナシ」

「シーザー、ごめん。何だか急にシーザーとバイクでかっ飛ばしたくなってきた!行こう!ドライブにさ!!」

たかが睡眠を妨害されただけだというのに、苛立っていた自身を恥じながら――改めてシーザーと向き合う。

 

(そうだ、シーザーは俺とドライブに行くことを楽しみにしてくれたんだ――なら、俺も全力で答えるのみ!!)

完全にアルコールは抜けていない上に二日酔い気味でふらついているがきっとバイクに乗れば全て解決するだろう――多分。

 

 

 

「い、いいのか?よし、じゃあ早速行くぜ!最高に星空が見える場所を教えてやるからな!」

「――バイクで行けるのかな?」

普通そう言うところってバイクでは行けず徒歩のみな気がするが、ともかくシーザーの後ろに乗り込む。

 

 

「行くぜ、ナナシ。振り落とされるなよ!」

「『ムゲン・ザ・ハンド』――よし、これで少なくとも振り落とされることはないな」

手の平を合わせ、4本の小さいゴッドハンドを出現させる。それらを、バイクの椅子やとにかく引っ掛けられそうなところに引っ掛け体を固定する。

 

「そういや、ナナシにはそれがあったな――別に心配ならオレを掴んでくれていいんだぜ」

「――そうだな、流石にバイクの上じゃムゲン・ザ・ハンドだけで上半身の固定は難しいし、ご厚意に甘えさせてもらうよ」

当然バイクに乗って進めばシーザーと言う風よけがあるとはいえとんでもない風圧がかかる。それを、素人の俺が受け流すのは難しい――ということでシーザーの腰に手を回す。

 

「うんっ」

「え?くすぐたかった?」

回した瞬間、シーザーから聞いたことがない声が漏れる。

 

「い、いや気にすんな。――結構ごつごつしてんだな」

「まあ、結構な戦いしてるからね~それ相応にはごつくなっちゃうかな――」

特に俺の戦い方は素手がメインだからやっぱり一番ごつくなるのは手なのだ。

 

 

だが、この時ナナシは全く気が付いていなかったが昨日の疲れがもろに出たのかシーザーの背中にもろ密着する形で乗り込んでいた。

 

「よしっ、飛ばすぜ!」

そして朝3時半、俺達はブレイズウッドから出発した。

 

 

「早っ!!」

郊外の景色がまるで紙芝居のようにすらすらと変わっていく、瞬きしたころにはすぐに別の景色に置き換わっていて星空と月が落ちながらも辺りを照らしているからか、荒野とホロウのコントラストがいい味を出している。

 

(すごいな、今ですら満天の星空なのに――これ以上いいところがあるのか)

「どうだ、ナナシ――夜の郊外も案外悪かねぇだろ?」

「ああ、最高だ!新エリー都じゃこんな景色はお目にかかれないな」

いわゆる金で買えないものだ、こういう感動は何にも代えられないものだ。

 

(だからこそ、アキラやリンにも見せたかったな――カメラの一つでも持ってればよかったんだが――)

 

 

「着いたぜ、ナナシ」

「え?ここ道のど真ん中だよね?」

右見て、左見てもどこかの町への接続や登山道みたいに人が整備した道には繋がりそうもない。

 

 

「ああ、こっからは歩いていくぞ――まあ、別にナナシがバイクで行きたいって言うんだったらいいが――初心者にはきついぜ」

シーザーが指さした先、綺麗な崖になっていわけなのだが――もしこれをバイクで登ろうと思ったら――。

 

「うん、歩こう!!」

即答した。

二日酔いのダブルパンチで下手したらその場に出すものを出しかねない。俺が出して苦しむ分はまだしもシーザーにぶっかけるわけにはいかない。

 

 

「うし!じゃあ、行くぜ――ついてこいよな!」

シーザーの後ろにつき道なき道を進み崖の上を目指す。しかし、体の不調は唐突に襲い掛かった。

 

 

「はっぁ――はぁ」

その場で膝をつき、肩で息をする。昨日2時間かけてブレイズウッドまで走ったせいかその反動が体に降りかかり節々が痛み始める。

 

「ナナシ?」

俺が止まったことに気づいたのか、シーザーが後ろを振り向く

(マズイ、ここで悟られるわけには――まだ、行かなきゃいけない所が――)

 

 

「ちょっと――靴紐がほどけちゃってさ」

不幸中の幸いと言うやつか夜の闇のおかげで顔色が悟られず、なおかつ瞬時の気転で靴紐をほどきあたかも靴紐を結ぶために屈んだように演出したのだ。

古典的な誤魔化し方だが、昨日のバックボーンを一部しか知らないシーザーが俺の消耗を感じ取ることはできないだろう。

 

「そうか!てっきり3時に起こしちまったから体調崩しちまったのかと思ったぜ」

「あ、ははは」

何だか妙に勘がいいシーザーに苦笑いしつつも、何とか悟られぬように上体を起こし頂上まで歩いて行った。

 

 

 

崖に上がり、天を見上げる。星空を宝石に例えることもあると聞くがうなずける、郊外の夜もうすぐ開けるというのに空と言う宝石箱には転々と眩い宝石がちりばめられていた。

 

「――綺麗だ」

その一言のみで十分、感想はそれ以外に思いつくことはない。

(本当に綺麗、場所は覚えたし次はアキラかリンを抱えて行ってみようかな)

 

 

「ありがとう、シーザー。こんないい所に連れっていってもらって」

「おう!気にすんなって、こっちこそ悪かったな――実は、郊外の崖の上なら見える景色はそう変わらないんだ」

「そうだったの!?も、もしかしてこんな遠くじゃなくてもよかったってこと?」

シーザーは頷く、確かにブレイズウッドも夜になればかなり暗くなる、ならばブレイズウッド近辺でも十分見れるはずなのだ。

だが、ナナシには二日酔いと3時間睡眠などの弊害によりそこまで頭が回っていなかったのだ。

 

「じゃ、じゃあどうして?」

「最初はオレ様と日の出を見るって話だっただろ、けどよ――昨日見ちまったんだ、ナナシがルーシーを振り切って郊外を出るところをよ」

昨日、バーニスとの戦いに勝利した俺はパイパーと共に新エリー都に向かっていた。その一部始終をシーザーは遠目から確認していたのだ。

 

(まさか、シーザーの気配に気づけないなんて――相当酒が入ってたな)

 

 

「メールでも言ったが――『もし空いてるならよ、走った後も一緒にいれねぇか?』ってよ――無理なんだろ?」

「ああ、返信したときにも伝えたけどこの後、人命に関わる用事が有るんだ」

嘘ではない、実際にリナさんのもとに行かなければヴィクトリア家政で死者が出かねない。ひいては、おそらく味見役で呼ばれる俺の命も保証ができないだろう。

それに、早朝のうちにシーザーとの約束を終え、なぜかものすごい圧がかかっているエレンとアンビ―を何とかしなければいかないのだ。

 

「――なら、こうするしかねぇよな」

シーザーは片手剣の『来た』と円盾の『見た』を装備し剣先をこちらに向ける。

 

 

「――シーザー、冗談なら笑えないよ」

「冗談なもんか、だからわざわざナナシをブレイズウッドから遠ざけたわけだしよ」

その言葉から、朝のから今一連の行動の真意を読み取る。確かに、ここからならば増援は呼べない――完全にシーザーと俺の1on 1だ。

 

「ナナシ、頼む今日1日でいいから一緒に居てくれねぇか?」

「っ、どうして?――悪いけど、リン曰く今日は爆弾を処理する日らしいんだ。シーザーと一緒に居たらその爆弾が爆発しちゃう――だから、今日1日は上げられない」

ナナシは自身のオリジナルであるアポロとそのアルターエゴが主に人格データを構成しているのだが、アポロもアルターエゴも訳がありすぎて絶望的に“恋愛”などに疎いのだ。そして、その弊害は今まさに発揮されていた――

 

(シーザー、どうして俺と1日過ごしたいんだ?もしかして、ルーシーとバーニスが昨日の件で二日酔いでダウンするから、カリュドーンの子の戦力が下がるから――俺をってことか、つまり!ここで俺をダウンさせ、何かやらせたいことがあるって考えるべきだな)

 

と言うとんでもない結論に帰着していた。

「シーザー、君がそのつもりなら――俺も全力で答える『マジン・ザ・ハンド改!』」

崖の上と言う、俺の利点である小回りが利くという部分が十分に発揮されない場所故、すぐさま広い範囲を迎撃し、なおかつシーザーの守りを突破するのに十分な破壊力がある『マジン・ザ・ハンド』を展開する。

 

「そういや、ナナシとやるのは初めてだったな――オレ様も本気で行くぜ!」

先に動いたのはナナシ、本来ならカウンターでの戦術も可能なシーザー相手には愚策と言えるが、それ以上に別の問題があった。

 

 

(目指せ、短期決戦!そう何分も戦えない――)

早朝に起きて、朝ごはんも食べず、ろくに寝れずじまいの俺には必殺技を長時間展開できる余力はない。

なおかつ、それを悟られてシーザーに逃げ続けられれるだけで敗北となる。

 

「はぁぁぁぁ!!」

マジンの拳がシーザー目掛けて振るわれる、そのような大振りな攻撃シーザーに対応できぬはずはなく難なく盾で受ける。

 

 

「そのまま盾ごと押しつぶす!」

はずだった、しかしシーザーは半身でマジンの勢いそのままに受け流す。その結果まるでマジンは盾の上をすべるように移動し、それに呼応して俺も重心がぶれる。

 

「届いてねぇよ、ナナシ――はぁぁ!」

首筋に迫るわ、シーザーの剣の腹――それが命中すれば俺の意識は暗闇の中に落ちるだろう。しかし、寸前で炎が舞い寸前で刃は制止させられることになった。

 

 

「ライト!!」

「どうやら間にあったみたいだな、ナナシ」

赤いマフラーをたなびかせ、夜空の星の光が注ぐ中そのような光にも負けず輝く炎を纏う戦士が現れた。

 

「助かったよ!!でも、どうしてライトが?」

「プロキシからナナシが3時くらいから動きだしたって連絡をもらったんだ。おかしいと思って身に来てみれば大将がナナシを連れ去っててな」

ライトの発言からもしやと思い、懐の財布を取り出し触って感触を確かめる。

 

「――この間取り外したはずの発信機がついてるなこれ」

ツール・ド・インフェルノの後に発覚したのだが、アキラとリンは俺の財布の裏地に発信器を取り付けていたのが発覚したのだ。もちろん、すぐさま取り外し返却した。

 

 

「大将諦めな、ナナシにはこの後も予定がびっしりあるんだ。大将が独占してたらそいつに間に合わなくなる――それとも、ナナシと俺の二対一がご希望か?」

「ライト――ちっ、仕方ねぇか。ここはオレ様も矛を収めるぜ」

シーザーは『来た』と『見た』をしまいその場に座り込む、ともかく休戦と言うことになった。

 

 

「ほら、行けよ。ナナシ――他の女のとこに行くんだろ」

「そうだけど、今じゃないよ」

ゆっくりシーザーの隣に歩み寄り、腰を下ろす。

 

「行かねぇのかよ――オレ様がいつまたナナシを襲うかわからねぇんだぞ」

「襲わないよ、確かに猪突猛進してる時のシーザーは何するかわからないけど、今みたいに一度冷静になったらちゃんと考えるタイプだからね」

わざと目を逸らすシーザーに対して無理に目を合わせるのではなく耳元で逃がさないように囁く。

 

 

「それに、言っただろ今じゃないって――行こう日の出を見にさ、見たら朝ごはん食べて――その後に俺は郊外を出るよ」

「いいのか?オレはさっきナナシを襲ったんだぞ?さっさとパイパーにでも連れて行ってもらえばいいじゃねぇか」

もちろん、シーザーとの用事が終わったらパイパーに連れて行ってもらおうと考えていた。シーザーに追いかけられない限りはここからならブレイズウッドへ走って戻れる距離でもある。

そのため、一考の余地はあるのだが―――

 

 

「今の俺は、シーザーと一緒に居たい――それに、そもそもいい星空も見せてもらったから気にしてないよ」

「――でもよ。オレ様が抑えきれるかどうか――」

もごもごと何かぶつぶつ言うシーザーにライトが声をかける。

 

「大将もうすぐ日の出が上がりますけど――ナナシといれるチャンスですよ?」

ライトに言われ時刻を確認すると、確かに日の出が上がる5時に近づいてきていた。

すぐさま、俺は立ち上がりシーザーの腕を引く。

 

「行こう!日の出に向かってさ!」

「ナナシ――おう!かっ飛ばすぜ!」

 

 

(ありがとう、ライト。わざわざこんな朝早く来てくれて)

(いいってことよ、ナナシ。この後も頑張れよ)

目線だけでライトを会話をしながらも感謝を伝えテンションが戻ったシーザーに逆に腕をひっぱられ崖を後にした。

 

 

 

「ほら、見ろよ!ナナシ」

シーザーの呼びかけと同時に顔の位置を横にずらし確認する。

 

「わぁ!!」

崖と道にかぶりながらも上がっていく太陽、今まさに進んでいる道が太陽への道とすら錯覚するほどぴったりフィットしていた。

(文字通り目に焼き付くって奴だな――ああ、それに)

 

 

「どうだ、ナナシ!最高だろ!」

 

太陽と共に見える、シーザーの眩い笑顔――思わず俺も笑みがこぼれた。

「あぁ、最高に綺麗だよ――!」

 

 

 

日の出を見終わった後はUターンしてブレイズウッドへ戻ってきていた。当然、朝ごはんを食べるために家に戻ったのだが。

 

「ナナシ、悪かったな――早く会いたくてよ」

ドアノブに手をかけた瞬間に思い出したのだ、俺の家の鍵がシーザーに切られていたことに。

 

「まぁ、盗られて困るものはないし襲われても俺なら大体返り討ちにできから――うん、うん――ごめん流石にダメだわ」

「だよな、今日のうちに直しとくぜ――ライトが」

ライトに直してもらうのは申し訳ないと思いつつも、それ以上に気がかりなことがある。

 

「何で、シーザーが来てるんだ?」

「何でって――そりゃあ、ナナシ飯食ったらもう行っちまうんだろ?――だったらよ、その――とにかくだ!ナナシと――そうだ!なんとなく、ナナシと朝飯を食いたかったんだ!」

「ふーん、なら適当に座ってて――作ってくるから」

何か、とってつけたような理由だが、彼女なりに真剣に考えたのだろうと推察しあえて深くは突っ込まずに適当な椅子に座るよう促す。

 

「なあ、オレ様も何か手伝えねぇか?」

「シーザーが?そうだな――」

冷静に分析し、7:3で家が燃えると推察する。もちろん、シーザーが料理できないのは憶測にすぎない、しかし燃える少年スピリットの持ち主であるシーザーに任せれば食材に火を通す前に家に火を通されかねない。

 

(いや、何事も経験だ――リナさんみたいには流石にならないだろうし――目玉焼きと一緒に焼こうと思ったけどシーザーの腕前を見るのにはいい口実になるか)

 

「それじゃあ、ウインナーを焼いておいてくれないか?」

「任せときな!オレ様がばっちり焼いてやるぜ!」

袋を手渡し、隣で油を引き焼き始める。こちらも、目玉焼きを作り始めている――横目で確認した限り流石のシーザーと言えど多少の料理の心得はあるらしく難なく進めているようだ。

 

 

「よし、焼けたぜナナシ!そっちも――できたみてぇだな」

「ああ、ちゃっちゃと並べて食べちゃおう――あ、食器は」

 

「ここだろ――ほらっ」

食器棚からスムーズに食器を取り出しその上にウインナーを並べていく。だが、あまりにも慣れすぎているというか“ここだろ”と言っていたがシーザーが俺の拠点に入るのは今日が始めてのはず――。

 

「――うん、ありがとう!」

ナナシは考えるのを辞めた。

(きっと妖精か何かが教えてくれたんだろう、もしくは聖剣のいたずらかな)

 

 

朝ごはんを食べながら、現在の時刻を確認すると朝の6時――3時に起きて、3時間経過していたわけだがこの調子に行けば9時を予定しているアンビ―との映画が鑑賞の約束は余裕を持っていけるだろう。

(できれば――どこかで、仮眠を取りたいけど下手したら映画の途中で寝ちゃいそう――でも今の所ドキドキデート大作戦は成功してるこの調子でいけばいいんだが)

 

「そうだ、シーザー美味しいかな?アキラほどは上手くはないんだけど口に合ったら嬉しいよ」

「最高だぜ!何だろうな、いつもそう変わらねぇ物を食ってるはずなんだが、今日は一段とうまい!」

目の前で元気にがつがつ食べるシーザーを見て笑みがこぼれる。鏡でちらっと俺の表情を見ると、俺が食べている姿を見るアキラそっくりだった。

(アキラもこういう気持ちだったのかな――きちんと気持ちを伝えるのは大切だな)

 

 

朝ごはんを食べ終え、パイパーのトラックで少し眠らせてもらおうかと考えたその時だった。

トントン

 

 

「お客さんかな――俺が出て来るよシーザー」

立ち上がり、ドアノブに手をかけようとした瞬間――手が止まる。

(待てよ、何で俺が接近に気づかなかった?)

 

ノックされるまで俺はシーザーと話していながらも周辺の危機察知を欠かさず行っていた。たとえ、二日酔い中で在ろうともここまで近づかれれば気づくはずなのだ。だというのに、ドアの向こう側にいる人物は気づかず接近してきた。

 

 

(接近できるくらいの腕前――それに、どうしてノックでわざわざ知らせて――嫌な予感がする。ここまで接近したのは俺、もしくはシーザーを逃がさないためか?)

息を殺し、扉から離れる。危険かどうか確かめるために窓から外に出て回り込もうとしたその時だった。

 

 

扉があっけなく開いた。

「来ちゃった、ナナシ」

「――アンビーか。そういえば、鍵壊れてたな」

何でアンビーがいるんだという疑問の前に、気配を殺して現れたのがアンビーでほっと胸をなでおろす。

 

 

「それで、アンビーは一体どうしてここに?」

「決まってる――ナナシ、来て」

アンビーが言い終えると同時に腕を掴まれ引っ張られる。

 

「ちょ、ちょっと待って――今、シーザーと!それに、アンビーとはちゃんと9時に集合って約束してたよね!?」

「えぇ、そうね。けれど――他の女とナナシが楽しんでるって思ったら居ても立っても居られなくなったの――早く来て」

グググッと再び、強く腕が引っ張られるが何とか抵抗する――しかし、痺れを切らしたのかアンビーは懐から何やら箱型の何かを取り出す。

 

 

「あ、アンビーちょっとそれは――痛いかなぁって」

「大丈夫よ、痛みは一瞬だから」

何も良くないのだが、首筋に迫ると同時にビリビリと音を立てスタンガンが迫る。確かに、攻撃に電気を用いる彼女らしい武装と言えるが――そこまでして早く俺を新エリー都に連れていく理由があるのだろうか。

 

「待てよ、ナナシなら連れて行っていいぜ」

寸前でスタンガンが止まる。

 

 

「シーザー!?ど、どうしたの?」

「やっぱりよ、オレ様はやっちゃいけないことをしたんだ。だから、こいつは自分への戒めさ――だから、いいんだ」

「そう――なら連れていくわね」

シーザーの発言に驚き力が抜けたところを、思いっきり引っ張られると同時に俺を持ち上げお姫様抱っこの形になる。

 

「ふぇ!?一体全体どうしてこうなった!?」

「さようなら、ナナシは私と遊ぶから」

その発言と同時にシーザーの表情が曇る。

 

 

「ちょ、ちょっと待ったぁ!!――ほいっ」

そのまま、なすすべなく連れ去られるわけにもいかないので暴れ、アンビーの抱っこから脱出する。

「ごめん、アンビーまだ、シーザーに用事が有るんだ、先に行ってて」

「――わかったわ、過去は振り切らないと今に集中できないものね」

 

何か妙にアンビーの言葉から裏と言うか、悪意的なものを感じるがしょぼくれたシーザーのもとに戻る。

「シーザー!これ、クリスマスプレゼント!!」

「――こいつは」

俺が渡したのは『愛とラブは劇場で』のDVDだ。ルーシーから『あれはあれで結構恋愛映画や少女漫画を好んでいますのよ』と言う発言と、そういえばツール・ド・インフェルノの前に新エリー都に戻ったときにこのDVDをじっと見ていたなと言うことを思い出して買ってきたのだ。

 

(正直、いい思い出はないけどね――)

 

「お、オレ様がこんなの見ると思ってんのかよ!?」

「えぇ!?くっ、俺のミスか――わかったそれじゃあ別のプレゼントを用意してくるから少し待ってほしい」

「み、見ねぇとは言ってねぇだろ!!――ありがとよ」

顔を赤らめて、大事そうにDVDを抱えるシーザーを見て安心した俺は踵を返しアンビーのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

「終わったのね、ナナシ――それじゃあ行きましょう」

「――なるほどね、パイパーが連れて来たのか」

運転席部分からグッとサインを出すパイパーに頭が痛くなったがともかく乗り込み俺達は新エリー都へ戻ることになった。

 

(これで、ひとまず郊外の皆はクリアか――今日の予定は後、アンビーとエレンとリナさんか)

時刻は朝の6時30分。まだ、24日は始まったばかりだ。

 




長い!長すぎる!!シーザーだけで約9000文字ってやばいって!!しかも、シナリオも自分で考えなくちゃいけないし!はい、愚痴はこんなもんにして、遅れてすみませんでした。正直、ちょっとくらいクリスマス過ぎてもいいよねって思って書いてました。

きっと次の話の投稿も遅れます。遅れて見せるので、どうか暖かい目で見ていてください。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

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