「ふぅ、お疲れ様。リン、後は猫又とナナシが帰ってくるのを待とう」
アキラはねぎらいの言葉をリンにかける。
「そうだ、爆破の件はどうなったの?」
「いい知らせが来ている。さっきニュースで言ってたんだけど、ヴィジョンは爆破解体を、「技術的な要因」で明日の夜まで遅らせるそうだ。」
「技術的な要因・・・ね」
明らかに、そうではなかった。治安局の兵士の格好をしてどう考えても治安局じゃないんだから。
考えていると、猫又から連絡がかかってきた。と言うかもうすぐ着くらしい。
「ただいま!はあ、はあ・・ごめん、予想以上に時間がかかっちゃった。あたしが持ってたキャロットだと、遠い方の出口しかわからなくって・・・」
だが、ナナシがいなかった。
「ねえ、猫又。ナナシは?」
「ッ!?・・ナナシは。・・・」
道中、何があったのか猫又は教えてくれた。もちろん、丸々信じるわけにはいかない。当然、ナナシがそのことに至ったから口封じの為とも考えられる。だが、猫又のその表情にそのような疑いは露と消えた。
「それにしても『デッドエンドブッチャー』か。早く助けに行かないと」
「うん、いくらエーテル環境で長く生存できる体質だとしてもナナシの場合カロリーが不足したら動けなくなっちゃうし・・・。長時間の戦闘はできない」
下手をすればナナシは・・・もう・・。なんて考えが頭をよぎる、思わず身震いし自分の体を抱き寄せる。
「大丈夫かい?リン」
「どうして、そんなにお兄ちゃんは落ち着ているの!?‥ッ!」
声色の変わらない兄に詰め寄ると。気づいた、体が震えている。
「お兄ちゃん・・・ごめん」
「いや、僕こそ・・・少し冷静に話しすぎた。だけど、ナナシのことだ。きっとすぐ逃げだして今ものんびり休憩中だろう・・・。」
兄も当然心配なのだ。もしもを想像し思わず身震いするほどには。
「は、早くナナシを助けに行かないと!」
「・・それよりもだ、ナナシを助けに行くのは僕たちもそうするつもりだ、だけどその前に知っていることを全て話してくれないかな?じゃないと君を信用できない」
少しくらいはごねると思ったが猫又は素直にうなずいた。ナナシを置いてきたことがよほど聞いているのだろうか。
「実は、あたしと邪兎屋はとんでもない面倒ごとに巻き込まれた!でも、それは人助けの為なんだ!」
「人助け?それってつまり、邪兎屋以外の人も巻き込まれてるってこと?」
『肯定。マスターナナシが数日前から私を使いデッドエンドホロウ近辺を調べていました。そこからの情報によれば住民の避難が終わっていない可能性があります』
ここで、つじつまがぴんと合う音がリンとアキラの頭によぎった。最近早朝にナナシがフェアリーを使ってホロウに行っていることは知っていた。しかし、デッドエンドホロウとまでは教えてくれなかった。
「だから、ナナシは・・・。どうやら、帰ってきたら叱る内容が増えたみたいだね」
「うん!ナナシにはホウレンソウを叩き込んであげなきゃ!」
まるで、おもちゃをもらったようにはしゃぐ二人を見てなぜだか背筋に伝わるものを感じながら話を戻す。
「それよりも、さっきのボンプの視覚映像の続きを見て!あの一部始終を見れば、あんたたちもきっとわかってくれる!」
そして、猫又は再びニコのボンプの映像を再生させた。
デッドエンドホロウを闊歩する邪兎屋たちがいた。やはり、行ってしまったらしい。
『ぷはぁ、ここのエーテル濃度にも段々慣れてきたぜ。入ったばっかの時はあんな居心地が悪かったのにな。』
『ちょっと、厄介なエーテリアスに会わなかったらって油断しないで。ここには『デッドエンドブッチャー』がいるんだから。極力音を出すなって、あたし口を酸っぱくして行ったわよね!なる早で赤牙組の拠点に行って、依頼を達成しなきゃいけないのよ!』
慎重に活動していた。邪兎屋+猫又はついにデッドエンドブッチャーが活動している場所にまで足を踏み入れていた。
当然、そんなところは避けていかないといけない。しかし・・・。
『猫又、『キャロット』で赤牙組の拠点に通じる別ルート探せる?』
『できるにはできるけど・・・このまま進むのが最短ルートだぞ』
と猫又の反応は芳しくない。
だが、ここで猫又が子供が見えたと言い出した。
『はあ、何言ってんの?ここはデッドエンドホロウの中なのよ』
『子どもがホロウに迷い込むケースは確かにある・・・でもあなたが刺した方は、私達が本来進もうとしていたルートよ。『偶然』、その子がそっち行ったの?』
あまりにも都合が良すぎないか。と言うアンビーだった。しかし、猫又の主張は変わらず、それがメンバーに違和感を抱かせる結果になった。
だが、邪兎屋は血も涙もない連中ではない。
『ふうん・・あなたって、意外といい人なのね。』
『・・・えっ?』
『ふう、ちっとばかりビビったぜ!『子どもなんて放っておいて、形見探しが優先にゃ』、とか言わないかひやひやしたが・・・子猫ちゃんは優しいな!』
相変わらずニコは金にがめついが、それでも邪兎屋は信用できる連中なのだ。
その姿に、あっけにとられたのか猫又は目を大きく見開いている。
そして、邪兎屋の面々は猫又に先導され『デッドエンドブッチャー』はびこるホロウ内を進んでいった。
道中、邪兎屋と猫又による競争が始まったりもしたが、『デッドエンドブッチャー』に会うこともなく奥へ進んでいった。そして、ついに深部まで到着した。
ちなみに、ナナシは深部まで探索していないどころかホロウにあまり踏み込まず、周りの探索を重視していたので、邪兎屋に会うことはできなかった。
「お、おい!子供だ。」
そう、本当に子どもがいたのだ。リンもアキラも正直猫又の嘘だろうと考えていたのだが、そこに確かにいた。
だが、邪兎屋たちを見るとすぐ走ってどこかに逃げてしまった。
『えっ?嘘、どうなってるの・・?まさか・・・デッドエンドホロウにほんとに子どもがいるなんて・・』
しかし、子供が逃げようとさすがに邪兎屋の面々に勝つことはできない。道中のエーテリアスも華麗にビリーが倒していく。
『さーて、もう大丈夫だぜ。一人ボッチでホロウを彷徨うなんて、怖かったよな?お兄さんが来たからにはもう安し・・・』
この先に言葉が続くことなく、子供の華麗なアッパーがビリーの頬に直撃した。
『何言ってるのよ?まったく』
『え?何って、俺達は君を助けに・・』
当然、急に殴られたビリーは訳も分からぬまま呆然としている。
『私を助ける?逆でしょ、こっちが助けてあげたの!』
話を聞くに邪兎屋の面々は『デッドエンドブッチャー』の縄張りを堂々と闊歩していたらしい。
『もう!余計なことしてくれたわね。今頃、新エリー都に繋がるホロウの出口が見つかったかもなのに!』
少女は地団太を踏みながら悔しがった。
その頃、猫又は壁から聞こえて来る音に耳を傾けていた。
『何か、音がするぞ?』
何かが向かってくるような音・・・。その正体はすぐにわかった。
『んにゃあ!』
猫又が耳を付けていた。壁が粉塵と共に砕け散り・・・。目線を向けた先には。
『エ、エーテリアス・・・?』
現れた巨大なエーテリアス。その正体は嫌でも感づいてしまった。
『あれがデッドエンドブッチャー!?そそそ、想像以上にでかいんだけど?』
電車二つ分ほどの身長、巨大な体躯。その剛腕はまさにゴリラ。このホロウの主デッドエンドブッチャーが現れたのだ。
『彼奴が追ってきた、もうおしまいだ・・・』
その姿に絶望し、少女が数歩下がるすると、偶然そこがホロウの出口になっていたようで少女がそこから落っこちていった。
そして、そのまま邪兎屋も落ちていて行くのであった。
そこでその先で見たのは・・・。
『ここは、カンバス通り?この人たちは・・・待って、ここって爆破エリアでしょ!避難は終わってるはずなのに、なんでこんなに人がいるの?』
なんと、ざっと数えただけでも百人・・・。ヴィジョンは何日も前に住民を全員避難させたと報道していた。
しかし、ここに住民は残っている。そして、異様な低予算。関与しないはずの治安官の干渉。そこから邪兎屋がある考えに行きつくのは簡単だった。
『なるほどな・・地下鉄の改修は、新エリー都で最も注目が集まってるプロジェクトの一つだ。技術、人材、資金・・・どれもハードルが高い上、住民の移転問題も解決しなきゃならねぇ・・・だが、端から住民事爆破して『解決』するつもりだったら・・・それが、ヴィジョン流の『低コスト』ってわけだ』
『なっ・・・あんたらの話だと、ここの住民は・・あたしらはヴィジョンに見捨てらたことなのかい?』
話を聞いてくれたご老人は絶句・・・と言う感じだった。
ついには人の道をも踏み外したヴィジョンに憤りを覚える猫又。
『探し物のためにデッドエンドホロウに入るのも、そのついでに迷子を助けるのも百歩譲っていいわ・・でも、お金持ちの悪徳企業とコトを構えるですって?なんでも屋風情が敵う相手じゃないわ・・・。二人はどう思う?』
流石に、事の重大さから慎重に二人に意見を求める。
『俺は親分に従うぜ。アンビーは・・』
『自分でも意外だけど・・・この件に関しては、猫又と意見が一致しているわ。私は残る。ニコの心配はできるけど、ごめんなさい。これは・・・私にとっての『チャンス』だから、私自身の考えで行動させて。二度と同じ過ちは繰り返さないって決めたの』
アンビーの言葉に静かにニコは答える。
『そう・・・あんな大企業と魔攻勝負しようってのね・・・アンビー、あんたって子は・・・ほんとに・・』
この先に続くのは『バカな子』とかだろう、だがニコはそうではない。
金に対してはアレだが。このこと、猫又が言ったように仁義やらをし、大切にする彼女なら。
『最・高なんだから!いい?相手はあのヴィジョン・コーポレーションなのよ!つまり、TOP5財政ユニオンに次ぐ大企業を相手取れるビッグチャンス!この不祥事を暴けたら、連中から一体どれだけとれるか想像して!!』
などと、熱弁をした後・・・金の卵・・・いや、住民に対して訴訟の代理人になるために委任状を書かせに向かわせたのだ。
・・・やっぱりニコは金だな。
そして、猫又にボンプを持たせこのビデオ屋まで向かわせたというのが事の顛末だった。
「・・・と言うことなんだ!お願い、『パエトーン』!あたしと一緒にみんなを助けに行って!」
二人は少し考えた後真剣な顔で猫又に向き直った。
「猫又、あんたの言うことは信じるよ。それにナナシは絶対に救い出しに行く。だけど、プロキシのエキスパートとして、私達はその件に首を突っ込むリスクを警告する義務があるの」
当然、助ければヴィジョンとの正面衝突は避けられない。
だが、猫又の目には覚悟が宿っていた。
「今更あたしを試さなくていい。出発したとき、心に決めたんだ・・・なんとしても、みんなを爆破エリアから救い出す!ナナシも助ける!ナナシに助けられてより固まった。今のあたしにはそれしか考えられない!」
「ふぅ・・・わかったよ。だけど、ナナシの救出にもしっかり手を貸してもらうからね」
強く、猫又はうなずいた。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け