一方その頃。
「そうか・・・パールマンはただの操り人形。陰で糸を引いて爆破解体を企てたのは、あんただったんだ!」
ナナシも言っていたが確かにこんな小心者に価値が相手にとってあるかと言われれば思えない。それにそんな大それた計画をこいつが決定できるなんて今、考えてみれば不思議な話だった。
「どうして・・ヴィジョンにとってこのプロジェクトは、人の命より大事なものだったの?」
「大事かどうか?あなたみたいな小物に尋ねる資格はないわ」
サラ長官は答えず、麻酔銃を捨てる。その代わり取り出したのは小さなスイッチだった。
だけど、そのスイッチは猫又にとってはとても見覚えのあるものだった。
そうそのスイッチはあの時線路爆破に使われたものと同じだったからだ。
「それは・・まさか!!」
「ふふっ、小物のくせにわかるようね。これはもちろん爆薬の起動スイッチに決まってるじゃない」
そう言われれば信じざる、負えない。
「そんな、待っ----だめだ!!」
あれが押されれば、カンバス通りの住民も‥‥もしかしたらニコ達まで、ナナシまで!
「私からも・・・存在しない住民たちに、お悔やみ申し上げるわ---さようなら。すべては『私達』のヴィジョンの為」
目の前でそれは押されてしまった。
「サラ長官、爆破の完了を確認しました」
「ええ、ご苦労様。これで、後はお邪魔虫を消すだけね」
膝から崩れ落ちる猫又。
「守れ・・・なかった」
涙があふれ、そのまま目を閉じようとした時だった。
「誰が!お邪魔虫だ!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。体熱くなる、希望が現れたように。
「ま、待てよ・・・ホロウに繋がるトンネルから、誰かが出てきたぞ!」
「え?」
トンネルを見ると。
「うそ!」
そこには、避難民を連れたニコ達がトンネルを通って現れたのだ。
「ヴィジョンは命を軽んじたわ!ヴィジョンのを倒すのよ!」
「ヴィジョンの手は血まみれだ!その体の隅々まで、罪なき一般市民の血に濡れているんだ!」
ヴィジョンの批判をしながら現れた避難民たち。
「ナナシ!それに、みんな!」
「あら、爆破エリアから抜け出してくるなんて・・・なかなかやるじゃない」
消したいと思っていた住民たちが現れたというのに余裕綽々の女。
「でも、それで全てが公になるなんて思ってないわよね?ふふ、忘れないで・・・ここにはうちの人間しかいないの」
一斉に兵士たちがこちらに銃火器を向けて来る。
「口封じってわけね」
「そうよ、悪いわね。坊や大人は悪い生き物なの」
撃たれる、そう思った瞬間。けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「速報!速報です!あの『ヴィジョン』に重大な人命軽視が発覚しました!情報を受け、本局の記者は治安局の部隊の後に続いて、デッドエンドホロウ入口付近の爆破解体本部に駆けつけました」
すると、治安局が偽治安局を続々と捕まえていく。
空中からヘリが現れ、中から数名現れる。
「おっ!あれって白祇重工だろ、確かに、ライバル企業のスキャンダルとなれば飛んでくるだろうな・・・さすが、ニコ」
「ふふん!燃えに燃え上がってるわね!ヴィジョンが大人しく交渉に応じるわけないと思ってたのよねぇ・・・だから真っ先に白祇重工に連絡したのよ!」
そして、時間が経てば住民たちは治安局に保護されていった。
「いやー、流石本物の治安局・・・もう、鬼ごっこはやりたくないなぁ」
顔を隠しながら、猫又の方へ歩き出す。
(俺ってまだ指名手配なのかなぁ・・・もう鬼ごっこはこりごりだよ)
大根泥棒時代が思い起こされるが、治安局は本当に優秀なのだ。
猫又は気まずそうにすべてが終わったことをかみしめ、明後日の方向に歩き出すと、誰かにぶつかった。
「うわあ!あんたか!な、何してるの?」
「一人でこそこそしてたから。これから治安局が事情聴取をするって拡声器で言ってたでしょう?」
「それは・・解決したのはあんた達だし、あたしなんか、いなくてもたいして変わらないでしょ」
それをアンビーは否定する。
「あなたはヴィジョンを罪に問うための大事な証人よ。何より、邪兎屋にとって・・・」
「罠にかけようとした犯人、でしょ・・?」
住民を救うことに繋がったものの、猫又は仇討ちのためにわざとデッドエンドホロウまで邪兎屋
を連れてきていた。たとえ、円満に解決してもそれが変わることはない。
「・・・あなたはまだ、自分の分を払ってない」
静かにアンビーはそう告げる。意味が分からずキョトンとする猫又。
「食事代よ。前に言ったでしょう。今回の依頼が終わったらみんなでご飯に行くって。スターライトナイトのレストランが嫌だって言ったから、ビリーの奢りじゃないけど・・ニコは、折角だからいいもの食べたいって言ったの。だから、割り勘」
気が抜けそうになったがすぐに持ち直す。
「待って!『大事な顧客だから盛大に奢る』って言ってたのに、何であたしまで払わなきゃいけないの?」それに、あたしはそもそも一緒に行くなんて一言も・・・」
アンビーから出された手を見て言葉が止まる、後ろでビリーもニコもウェルカムと言う感じを出していた。
「そう。なら正式に聞くわ・・・猫又、私達とご飯に行く?」
「店長たち、プロキシ兄弟とナナシも・・あれ?ナナシはどこに行ったんだ?」
『ナナシなら治安局はまずいって今どこかに隠れてるみたい』
そういえば、前職大根泥棒だった。
「ふふっ。えぇ、サバを好きなだけ食べられるわよ!」
「あたし・・・」
色々あって、感情がぐちゃぐちゃになった。けれど、自分をまだ受け入れてくれる居場所がある。
「ほんとに好きなだけサバを食べていいなら・・・考えてやっても・・・いいぞ!」
涙は止まらなかったが、見たことがないくらい満面の笑みを浮かべてそう言った。
彼女は確かに一度、居場所から離れた。だけれど、一生孤独と言うわけじゃない。絶対、彼女を受け入れてくれる居場所がある。でも、結局は・・・。
「仲間がいれば、大丈夫だ。猫又」
猫又のその姿を見届けた後、治安局から逃げるために踵を返しその場を後にしようとする。
「ナナシ!」
だが、首に重たい衝撃が来る。
「猫又・・・・どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないぞ!みんなと割り勘でご飯行くんぞ!」
手をこちらに向ける。
向けられた手を見ながら。
そうか・・・俺にも、仲間ができたんだった。
「ああ、行くよ」
俺は猫又の手を取った。
次回で猫の落とし物は終わりです。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け