ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第23話・漢の戦い

 

 

翌日。今度はアンド―さんと共にデュアルショベルを探しに来ていた。

 

「プロキシ、ナナシ。信号の感じだと、今から探しに行くデュアルショベルはこの辺にいるみてえだ。ここは、工事エリアじゃねえから、オレらに『キャロット』はねえ。つうわけで、頼りにしてっからな!」

『任せて!依頼料に見合った仕事をして見せるから!』

 

もう、デュアルと言う時点で嫌な予感がするのだが。まぁ、とにかくと言うことでイアスを肩に置き向かう。

 

「それじゃあ、デュアルショベルのことを教えてもらえるか?」

「おう!デュアルショベルが行方不明になる前の話だが、現場に出た資材を運ぶために、毎日持ち場を往復させてた。見た目のわりに身軽で、仕事の早い奴なんだぜ。今日び・・・彼奴無しじゃ回らねえんだ」

「ずっと往復させてたのか?俺が昨日会ったデモリッシャーもそうだが、彼奴らには人間らしい感情が確かにあった。もしかして仕事に嫌気がさしたんじゃないのか?」

 

 

俺だったら、ずっと運ぶために往復なんてしていたら途中で発狂してしまいそうだ。

「確かに、ナナシの言うとうりかもしれんな。・・・あいつは日に日に頭が良くなっていた・・。デュアルショベルはついに、そんな仕事をつまらないと思ってしまったのかもな。」

それに反論したのはアンド―さんだった。

 

 

「『持ち場を往復するだけのつまらない仕事』・・だと?ナナシ、ベン、それは違えぞ!!うちのデュアルショベルは毎日立派に筋トレしてたんじゃねえか!ホンモノの漢はな、そう言う仕事を蔑ろにしねえんだ。なんたって、筋肉を作り上げるのは日々の鍛錬だからな!」

そう熱弁する、アンド―さん。漢がなんだかを真剣につきとおすタイプの人なんだろう。

 

 

『・・少しイタイけど、思わず拍手しちゃいそう・・』

 

(重機に筋トレって必要?ってツッコミはダメなんだろうな・・。それに毎日筋トレか・・・。もしかしてアンド―さんと同じタイプだったりして)

 

昨日のデモリッシャーがアンド―さんと同じ口調でしゃべるところを想像する。

『俺を戻したいなら、正々堂々戦え!!』

なんて、言い始めるかもしれない。

 

 

「アンド―はこういうやつなんだ。着工式のスピーチでも、毎回こうやって場を盛り上げてくれる。ほら行くぞ、まずはデュアルッショベルを見つけて、グレースにじっくり点検させるのが最優先だ」

 

昨日の戦闘を思い出しながら再び歩を進めた。

 

 

 

 

プロキシの案内の元、ホロウの奥へと向かう。すると、重機が稼働する音が聞こえてきた。

その音が聞こえる先に向かうと、そこには名前の通り。

『デュアルシャベル』が現れた。

 

 

『ハンッ。よーやく来よったな待ちくたびれたで』

両腕?いや、シャベルでまるで人が手を鳴らすしぐさをする。

 

「あ?なんかエラそうっすね・・・つうかなんだよそのボイスは?」

 

(あーもう、嫌な予感がする。ていうか、キャラが濃すぎる。)

 

 

「お前、論理コアが壊れてんじゃねえのか?帰って点検すんぞ」

クレタが手を差し伸べる。むしろ論理コアが壊れていないからこそなのではないか。

だが、デュアルシャベルが取った行動は予想外の物だった。

 

片方のアームで瓦礫をつかみ己の会社の社長であるクレタに投げつけてきたのだ。

「『真・熱血パンチ!』」

 

 

(あの野郎・・!!)

それを、前に出て破壊する。瓦礫が砕け砂が舞う。

『病院にガキ連れてくとんちゃうんやで!オレちゃんは堂々たる漢なんやッ!会社に戻る気はないでぇ!オレちゃんは堂々たる漢なんや!しょーもない雑務に収まる器ちゃうねんぞ!』

腰パーツで回転しながら砂をまき散らす。

 

 

俺の目にはあのデュアルショベルが重機版アンド―さんにしか見えなくなっていた。

「漢だぁ!漢はただをこねたりしねえ!」

 

 

そして、このめんどくさい重機を目の前にして、俺の何かが切れる音がした。

「待って、アンド―さん」

 

そう言い、俺はアンド―さんの前を手でふさぐ。

「どうしたんだ、ナナシ?何か、あるのか。いや、今回は漢同士の真剣しょう・・「違う」」

 

短く、アンド―さんの言葉を否定する。

 

拳を握る。

 

 

「デュアルショベルは俺がぶちのめす。一対一の勝負だ。そっちが漢って言うなら、逃げはしないよな?」

『ほーん?じぶん言うやんけ・・・。気に入ったで!ほな漢同士、真剣勝負といこか!』

もう、二回目だしなんとなくわかった。俺達の依頼を解決するためには自分から帰らさせる気にならないといけない。

 

 

目をつむる。俺は、後ろの仲間たちに向けて手出しは無用と伝える。アンド―さんは何か言ってくると思ったが「おう、行ってこい!兄弟!」と素直に送り出してくれた。

 

「お前を帰らせる方法は簡単に分かった。・・・正面からぶちのめす!!」

『できるもんならやってみぃ!!』

 

 

俺とデュアルショベルの戦いが始まった。

 

 

 

 

奴の主な攻撃手段は片方のショベルアームと、もう片方のマジックハンドのようなアームでの攻撃。

一番、くらってはいけないのは遠心力を利用し鞭のように繰り出す攻撃のみ。それ以外は『真・熱血パンチ』で軽くはじけてしまう。

 

 

思ったよりもずっと素早い。あの巨体でぶんぶん動き回られるだけでも障害となる。

その代わりと言っては何だが他の機体よりかなり軽量だった。

 

 

それが、数分戦った総評だった。

ならば、間合いを詰めて攻撃すれば簡単に倒せるだろう。鞭攻撃はある程度間合いが必要になるからだ。

(それじゃ違うんだよなぁ)

 

振り下ろされる、ショベルアーム。

『つぶれちまいな!じぶん!』

「『真・熱血パンチ!!』」

 

いくつか考えたが一つ最適解が浮かんだ。俺は後ろに跳ぶ。

「『真・熱血パンチ!』」

地面に放ち軽くクレーターを作る。

 

 

『なんやじぶん、逃げてばかりっつのは・・・漢じゃないでぇ!!』

まあ、こいつはどう考えても直線型。逃げればそちらに来る。

 

 

でも、問題がある。こいつは中と近は歩いてくるくせに遠距離だと飛んでくるのだ。そのすきを使う。

 

 

その例にもれずこちらに跳んでくるデュアルシャベル。それと同時に飛び上がる。

「空中戦と行こうぜ!『真・熱血パンチ!』」

 

 

その一撃で着地位置がずれる。そう、そこは俺がちょうど作った穴に脚部がはまる位置。

 

『な、何や。抜けへんぞ!?』

ここからが本番。素早く着地した後、正面に接近する。

 

「『ゴッドハンドW』」

こいつが、大事にしている物はその両腕?のアームだ。それを誇りだとも思っているんだろう。

だから、わざわざこんなシチュエーションを作ってまで正面で技を発動できる体制を作った。

 

 

ゴッドハンドはその二つのアームをつかむ。

『なんや!?なにをするなんや!?』

そう、それは普通の人間なら本来なら発生しない、考え。俺も、この工事現場が俺の土下座でクレーターができるほどもろくなかったらこんな作戦しない。

 

 

これは、そんな特異な条件がそろった時のみ起こる現象だ。

「うおぉぉぉぉぉッ!!」

両腕と踏み込んでいる足にすべての力を注ぎ込む。

 

 

条件とは。

一つ、相手の機体が軽量である事。

二つ、相手の足場を崩せること

三つ、相手が強い近距離技を持たないこと

これが全てそろった今!

 

 

力を込めると徐々に持ち上がるデュアルシャベル。

 

『う、うそ!?本当に人間やめちゃった!?』

向こうで戦いを見学しているイアスからリンの声が聞こえる。

白祇重工も反応は似たようなものだった。アンド―さんとグレースさんは俺が重機を止めているところを見ていた。

 

「やったれ!ナナシ!」

「頑張れ負けるな、ハンス!」

対象的な二人、だが白熱しているのは感じ取れる。

 

「お前を正面から、ひっくり返したれやぁぁぁぁぁ!!」

いわゆるジャーマンスープレックス。プロレス技だ。勢いのまま地面にデュアルシャベル・・・いや、ハンスを叩きつける。

 

 

叩きつけられたハンスは一言。

『ワイの負けや・・・』

そうつぶやいた。

 

「『しょーもない雑務』だと?仕事に大も小もない。全てが、大切なんだ。それがないと何もかもが成り立たない。自分の仕事の誇りを忘れ、女、子供に手を挙げた。そんなお前に漢を名乗る資格はない!」

 

 

 

『なんや・・・漢としても負けたんか。・・・だがなぁ。妙にすっきりしとるで・・・ワイは小さいことからコツコツまた鍛えなおすで!』

そう言い残し、敗北を認めるようにハンスはアームをだらっと脱力させた。

 

 

 

『えーっとなにこれ?』

なんだか、急に熱血キャラになった、ナナシ。

「それよりも、ナナシがハンスをひっくり返したことについては誰も突っ込まねえのか?」

『うーん。正直いつかやるかとは思ってたからなぁ・・・』

 

思い出される、片手で電車を運んでいたこと、もはや予想通りと言ったところか。と言うか、アンド―さんもその・・・漢の姿とやらを見てナナシのもとに大興奮で向かってしまったし・・・。

 

 

「ツッコミどころはあるが、まあよかったじゃないか!」

夕日をバックにシャベルアームと拳を合わせるナナシとアンド―、ハンスの姿を見てそう思ったのだ。

 

 

 

 

 

その日、帰り道。

 

「やるな!兄弟、まさかハンスをぶん投げちまうとはな!」

「あれはあくまで条件がそろったからだ。それに、彼奴は真剣勝負にこだわっているように見えた。なら、それに答えるのも悪くないと思ったんだ」

 

(不思議だな。あの時、ハンスを持ち上げるのはたいして問題ないと思った・・・何でだ?)

考えてもらちが明かないとまたビデオ屋に帰る。

 

 

「そういや、ナナシ!俺のことはアンド―って呼べよ。お前、ずっと俺のこと“さん”づけだったろ。いい加減、兄弟なんだからよ!」

バシッと激しい音が背中から鳴る。高笑いをしながら、"アンド―"は工事現場に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「・・・俺!は!決して!熱血じゃない!!」

 

その叫びは誰に届くこともなく夕日の陽炎の一部となったのだった。

 

 

 

 

 

 

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