こんなに長くなってごめんなさーい!!
「何あれ、ナナシもよくあんなセリフを恥ずかしからず言えるね」
去って行ったアンビーを見てすぐ後ろまで迫っていたエレンがそうつぶやく。
「恥ずかしい?俺は普通に思ったままを伝えてるだけだし――それに、何よりアンビーがあのDVDを渡したら喜んでくれて嬉しいよ」
「ふーん、多分あの子が喜んだのはDVDだけじゃない気がするけど――それより、さっきの女のことは忘れてご飯行こ」
「いや、アンビーのことは忘れたくないよ――大切な友達だからさ」
そう言うと、エレンは目を細めコツコツとこちらに歩みを寄せて来る。
「ど、どうしたのエレン?」
「屈んで」
短く、端的につぶやく
「か、屈む?この間それをやってガブリと行かれたばかりなんだけど!?」
「いいから、屈んで」
頑なに、俺に屈んでと要求するエレン。しかし、俺はその要求を呑むつもりはなかった、なぜならこの間パンケーキ屋に行って別れ際に、急に屈んでと要求され屈んだら首元に見事にガブリと行かれたのだ。
その上、サメのシリオンだからか歯形がくっきりついて血も出て来るし、リンにももう片方に首元を噛みつかれるなどの二次災害も出て大変だったのだ。
「だったら、あたしのここを噛んで」
「一体全体どうしてそうなるの!?」
屈まない俺に痺れを切らしたのか、エレンが自身の襟元を引っ張り首元を露出する。
(な、なぜ!?なんで傷つけたり傷つけようとするわけ!?)
とにかく、頭の中は混乱していたそして、俺の導き出した結論は――
「やめよう――うん、俺はどうしてエレンがそうしたいのかはわからない。けれど、互いに傷つけあうのはよくないのはわかる――ね?」
説得することだった。だって、痛いの嫌だし――この後もリナさんの所に行かなくてはいけないのだ、ここでダメージを受けるわけにはいかない。
「ふーん――ッ」
「いたぁ!?」
首を狙えないからか近場に会ったからなのかはわからないが、左手の薬指にかぶりつく。
首を動かしながら数秒噛んで満足したのかエレンは口を離しよだれを拭き、何事もなかったようにこちらを向く。
「待って、待って――流石に何事もなかった顔じゃすまないよ!?痛いし」
左手の薬指には首を動かしてわざわざ作られたのか一周回った綺麗な歯形が形成されていた。
「よし」
「よし!?」
その歯形を見て何か満足したのか、小さくガッツポーズをするエレン、それに対してナナシは困惑の声を上げるだけだった。
そのまま、ナナシは引きずられるようにご飯を食べに向かうのだった。
洋食屋に到着して早速席にとされ座る。
「――どうしよっかな~」
メニュー表とにらめっこしながら、何を頼むか考える。
普段なら外食を避けている俺だが、アキラから『後で何を食べたか教えてくれたらいいよ』と言われたので実はワクワクしていたりする。
(でも、ここで何を食べたかでアキラにも負担がかかるしなぁ)
外食後、大体その翌日に対抗するかのように食べた料理が出て来るのだ。
「どうしたの?ナナシものすごく悩んでるみたいだけど」
「うーん?ああ、久しぶりで何を頼もうか悩んでてさ」
この時、エレンを一回見たのが良かったのか、すぐにメニュー表に再び視線を写した後あるメニューに目線が止まる。
「よし、決めた!エレンは?」
「あたしも決めた、さっさと注文しちゃお」
ボタンを押し店員さんを呼んでそれぞれ注文する。
その後、他愛もない話を数分していると料理が運ばれて来た、俺が注文したのはオムライスだ、普段はメイドとして活動しているエレンを見て――メイドと言えばオムライスだな!と言う安直な考えで選んでいた。
(確か、半熟って言ってたしこういうのってまず中央を割るんだよね――そこからケチャップソースをかけるんだよね――よし)
スプーンの先端をオムライスの端の部分にそっと入れそのままスライドさせる。
「おっ、うまくいった!!――それじゃあ、ケチャップを」
「待ってナナシ、それはあたしにやらせてよ」
「うん?――まあ、確かに本職と言えば本職だね」
メイドさんはケチャップの動かし方がとにかくうまい、今回は器に入っているタイプと言えどうまくやってくれるだろうと思ったナナシはエレンに器を渡す。
「ほら、萌え萌えキュン――美味しくなるおまじない」
ケチャップでハート形をオムライスの上に描いた後、手でハートを作りメイドさん特有の呪文を唱えてくれる。
「ありがとう!エレン――てっきり、棒読みかと思ったのに結構気合入れてメイドさんをやってるんだね!」
「――違うから、その――ナナシだけ」
「そうなんだ、こういうメイドさんからのサービスって初めてだから何だか緊張したよ、そういえばカリンから『専属メイド体験チケット』ってのをもらったんだよね、やってもらえるか頼んでみようかな――」
脳裏に写るのは『萌え萌えキュンです!な、ナナシ様へのお、おまじないです!!』とたどたどしながらもおまじないするカリンの姿だった。
しかし妄想を膨らませる俺を見て、エレンの目が再び細くなり手首をつかむ。
「カリンちゃんには頼まないで、あたしがしてあげるから――たまにだけど」
「うん?別にいいけど、エレンもそんなに無理しなくていいのに―――」
「無理してないから、あたしがやりたいだけ」
そう言いながら、自身も頼んだオムライスを一口食べる。その姿を見て、俺も一口――なんというか、おまじないのおかげかオムライスが普段より美味しく感じた。
時刻は13時を少し過ぎたくらい、俺はエレンに連れられてショッピングに来ていた。
「ナナシって今着てる服ってどうやって選んだの?」
「着てる服か、アキラのお古をずっと着てるかな――そもそも、あんまり服を買いに来る機会がなくてね。この服は、リンとアキラに見繕ってもらったんだ」
ホームレスだったときは、服より明日の食料のことを考えていたしパエトーンに拾われた後は俺の身長が176㎝とほぼアキラと同じということもあってずっとお古にお世話になっていた。
「そうなんだ、じゃああたしがナナシをコーディネートしてもいい?」
「それは、いいけど――セールだからって何でもかんでも選ばないでね」
財布の中身がそろそろ心配になってくるが、これでも一応ちゃんと貰っているし仕事がない日は白祇重工で働いているのでお金は持っているのだ。
「大丈夫、あたしが払うから」
「えぇ!?い、いや買うのは俺の服だよ?エレンはまだ学生なんだから自分にお金は使わないと」
「だめ、それだと――とにかく、あたしが払うから」
「いやいや――」
その後、数分間にも及ぶエレンとの言い争いの末、上半身はエレン、下半身は俺が支払うことになった。しかしながら、気づいたら全身コーディネートへ変わっていたことにナナシが気が付くことはなかった。
(正直普段から学生服を着てるエレンが、服選び得意なのかな?なんて思ってたけど、杞憂みたいだね)
「ナナシって細身の割に筋肉質だから、もっとフィット感があった方がいいか――脚の方はなるべくラインを綺麗に見せるように――」
ぶつぶつと慣れた手つきで、服を選びあれよあれよとコーディネートが進んでいく。
「よし、これでいいかな」
「いいのかな?」
鏡を見る限り一般常識的にヘンテコではないのだが、ファッションに疎く普段から服装を指定されている俺にはそんな疑問符でしか返せなかった。
アクセサリーなどは付けず、フィットのある無地のTシャツにライトブルーのシャツを羽織り、下はスリムフィットのデニムパンツ――と全体的にカジュアルな仕上がりになっている。
鏡の前でくるくると一周してみた時だった、俺のスマホが鳴りだす――画面を確認すると『アキラ』と書かれていた。
「アキラからみたい――どうしたんだろ?」
「プロキシからか、なら出ていいよ」
この時、ナナシは知る由もなかったのだがエレンは今日のナナシの予定をプロキシから流してもらっていたのだ。
「もしもし、アキラどうしたの?そっちで何かあった?」
『やあ、ナナシ。特にこっちでは何も起きてないけど、今服を選んでいるんだろう?何枚か写真を撮って送ってきてくれないかい?』
何で知ってるんだ?と言う疑問が浮かんだが、盗聴器越しに聞いていたのかと納得し了承する。
パシャッ
写真を撮り、アキラに送信する。
『どう?似合ってる?』
送るとすぐに既読が付き返信が来る。
『とても似合ってるよナナシ、出来ればピースサインとか動きを付けてくれると嬉しいかな』
グーサインのスタンプと共に送られて来たメールを確認して、特に意図はわからないがとりあえずピースサインや拳を握ってガッツポーズしてみたり一通り写真を送ってみた。
『ありがとう、ナナシ。それじゃあ、今日の作戦も頑張ってくれ』
それを最後にメールは終わった。
「ナナシ、その写真あたしにも頂戴」
「えぇ?エレンまで――まあ、別に減るものじゃないからいいけどさ」
エレンにも写真を要求され送信する。
(アキラはどうして動きを?と言うか、服選びで何でわざわざ電話してきたんだろ――と言うか、タイミングが良すぎるような。ていうか、俺よりエレンの自撮りの方が何倍も需要があると思うんだけど)
もしかして、今日の一部始終をずっと聞いてるのかと思ったが流石にそこまで二人も暇じゃないだろうと結論付け、レジへ向かった。
そして、エレンの要望で今着ている服は着替えて買った服を着る。
(なんだか、服に着られているような――馬子にも衣裳って感じかな、うん)
その後は、エレンのショッピングに付き合いながら隣で荷物持ちとして活躍した。
そして、ご飯を食べて、ショッピングも終えたら気づけば時刻は17時にかかっていた。
お店を抜けて数歩歩いた先でそっと先行していたエレンが立ち止まる。
「ナナシは、この後行くんでしょ?」
「ああ、人命がかかってる、具体的に言うとライカンさんとカリンと俺の――必ず行ってリナさんが一人で料理を作るのを止めなくちゃいけないんだ」
この後は、リナさんが車で迎えに来てそのまま隠れ家に行ってクリスマスケーキを作るという話になっていた。
当然、リナさん一人で料理を行えば生ごみもびっくりな呪物が誕生することだろう。
「リナなら仕方ないか、流石にあたしもカリンちゃんが苦しむところは見たくないし――頑張って」
「ああ、何とか呪物がこの世に生を受けることだけは阻止して見せる」
ホームレス時代は生ごみも食べていた時期はあった、しかしリナさんが作ったものは軽くしのいで見せた。
この世の絶望が助走をつけて脛を蹴ってくるかのような苦しみが全身を襲い、1回、2回と咀嚼していくたびに心臓が圧迫されるような感覚を覚えたのは記憶に新しい。
「そうだ、これクリスマスプレゼント!!」
今回は鞄からではなく財布から取り出す。
「これ、カード?」
「うん、この前一緒にパンケーキ屋に行った時エレンがとっても美味しそうに食べてたのを覚えててさ、無理を言って作ってもらったんだ」
俺がエレンに渡したのは1万円分のパンケーキ券なのだが、昔エリー都時代に似たようなことをしていたらしくそれを聞きつけお願いした。
これを使えば、もちろん1万円分のパンケーキも食べられるのだが10回行けば次回のトッピング無料や20回行けばパンケーキの値段を20%OFFなど行けば良く程お得になるという券だ。
(ま、まあそこそこ値が張ったから――うん、ちょっと躊躇したんだけどね)
今回の渡すプレゼントで一番高価なのだ、うん中々キツイ。
「ありがと」
「喜んでもらえたみたいでよかった!!一応言っておくけど、友達に貸し出したりはできないし、友達の分を払うってのもできないから注意してね」
あくまでエレン専用のカードなのだ。普段から、雑食でたくさんエネルギーを蓄えるエレンにたくさん食べてほしくて用意したのだから彼女が使ってくれなければ意味がない。
「了解、ならナナシと行くから――どこかで予定開けといて」
「ッ!もちろん!待ってるから」
それを最後に、リナさんとの待ち合わせ場所に向かおうとした時だった。
(後ろから――気配が近づいてくる!?)
振り向くと目の前には、とびかかるエレン。
「え?」
もちろん、吹っ飛ばすなり『ゴッドハンド』で迎撃はできたが当然そんなことはできず、彼女の歯が俺の首筋に刺さる。
「いたぁっ!?」
「やっと油断した」
エレンはずっと狙っていたのだ、獲物が背を向けるその瞬間をその一瞬を狙い獲物に己の存在を刻み付ける。
彼女のサメらしく鋭いギザ歯はあの時と同じようにナナシの皮膚を貫き血が漏れる。
「――じゃあね」
満足したのか、歯を抜いた後そそくさと足早にその場を去るエレン。
「え、エレンが何事もなく帰っていった!?――普通に痛い」
対して状況が飲み込めないナナシはその場でエレンが去った方を呆然と見ていた。
え?中編が3つも続いてるって?仕方ない、文量のせいです。こっちの方が読みやすいかなーって、後エレンの話は丁寧に書きたかったというのもあったりします。すみませんでしたーー!!!
実はナナシの身長は176㎝とシーザーと同じかつ、セスくんや悠真とあまり変わらないという――。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け