フライデーを捕獲した後の帰り道。重苦しい雰囲気がたちこめ、一発芸では乗り越えられなさそうな壁すら感じた。
この雰囲気の中。急に『はい、おっぱぴー!』と言う、旧時代の芸をやらかした暁には俺はきっと、みんなから涼やかな目で見られることだろう。
『ねえ、ナナシ。さっき、フライデーが言ったホルス?って誰の事?』
そんな、空気の中。俺の肩に乗っていたイアス・・・。つまりは、リンは小声で話しかけてきた。
確かに空気的に白祇重工の面々に聞けることではないが・・・。仕方がないと小声で周りに聞こえないくらいの声量で話す。
「ホルスと言う人物は。ここ、白祇重工の先代社長。ホルス・ベロボーグで間違いないだろう。優秀な技術者でもあって・・・まあとにかくすごい人だった。」
『べろぼーぐ?・・・それって!?』
「あぁ、クレタの父親だな」
だが・・・。白祇重工に暗雲を立ち込めさせた事件が起きた。
「旧都陥落前日。ホルス・ベロボーグ社長が会社のお金を持ち逃げした事件と言うわけなんだ。白祇重工の経営悪化、並びに当時請け負っていた工事である。記念広場の完成が間に合わないことを恐れ、社長は経費を持ち逃げした・・・。と言うのが治安局の調査の結果ってわけね」
だからこそ、白祇重工に向かって違和感があった。建設業については素人だ。しかし、グレースさんやベンさん、アンド―達もおそらくホルス社長時代からの社員なんだろう。こんないい人たちのトップが金の持ち逃げ・・・。
きな臭い。特に、今でも失脚を狙って『敵』さんたちからたくさん攻撃を受けている白祇重工、ホルス社長時代にも・・・もし、同じことがあったとしたら・・・。
(最悪、治安局も・・・グルだったり・・・)
悪い想像は一度始まったら止まらないが・・・いつの時代にも足を引っ張るのが大好きな人はいるのだ。
そして、現場に戻るのであった。
夕暮れを見て、たそがれる。
現在、依頼完了と言うことでリンがこちらに俺とボンプを回収するためにむかってきている。
(車の免許取ろうかな・・・。)
でも、なんだか将来的に車より早く走れる気がするのでやめておこう。
「クレタ。リンが来たみたいだ」
「ん。あぁ、呼びに来てくれてありがとうな。ナナシ」
クレタを呼びに行った後、リンの元へ向かった。
「ちょっとしたハプニングもあったが、行方不明になった知能重機は3台とも見つかった。これで、白祇重工として依頼したことは完了だ。お前らのおかげで、うちらは土壇場を乗り切れた。『パエトーン』『ナナシ』力を貸してくれてありがとな」
「原因は結局何だったんだ?」
「それは今グレースが点検してる。彼奴ほどの腕があればすぐわかるさ・・・・」
なぜだか、クレタの視線がリンにくぎ付けになる。勘づかれた。反射的にそう感じた。横目でリンの表情を見る。
(・・・ひきつってるぅ!?)
どう考えても、何か隠し事がある奴しかしない顔だ・・。俺は我ながら強固なポーカーフェイスで何とかしているが。リンの方を見れば一発だ。
「はあ・・・もう、知ってるんだろ?ホルス・ベロボーグについて」
「お、おっと・・・!もうこんな時間か!社長、早いところ依頼料の入金手続きを済ませないと、明日までに振り込めないぞ・・・」
ベンさんがごまかしに入る。
「いいんだ。ベン。こいつらはもう知ってる。ナナシの方は相変わらずのすまし顔だが、パエトーンの方を見ればすぐわかる」
「・・・ごめんナナシ」
両手でごめんなさいポーズをするリン。それはもう認めているようなもんだと・・・内心思いながら、言い訳を考える。
「別に、怒ってるわけじゃねぇんだ。それに、少し仕事をしただけだが、わかる。特にナナシはかなり用心深い奴だ。たまに熱くなるけどな・・・。そんな奴が、あたしたちの会社を調べてねえはずがねえしな」
「・・・そうだな。確かに君たちのことは事前に調べていた。・・・当然、諸々の不祥事もね」
信じて救われるのは。神ではなく足元なのだ。それも、俺だけの足元ではない。
「そうか・・・。じゃあなんで今回の依頼を断らなかったんだ?怪しいとは思わなかったのか?」
その考えはもっともだ、過去の不祥事とは言え当時の社長が金を持ち逃げ、しかもその娘が次の社長。最初は、怪しさむんむんでアキラに言って断ろうと思っていた。
「確かにね・・・。だけどさ、過去の不祥事がどうであれ、大事なのは今だ。君たち白祇重工さんは過去の没落から飛躍的成長を遂げた。それは、素晴らしい会社である証拠だ。それに、ヴィジョンのこともあったからね、安全な白祇重工さんの依頼なら受けても問題ないと思ったんだ。そっち風に言うなら・・・『揺らがない信頼がある』って感じかな?」
それは、白祇重工に実際に来て見てさらに確信へと変わった。それと同時にある違和感も感じた。
「それらを加味して一つ、聞きたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「本当に、君の父親であるホルス・ベロボーグが会社のお金を盗んで消えたのか?」
その違和感を解消するときが来た。
「あぁ、間違いねえよ。彼奴の後先考えねえ行動のせいで、白祇重工はどん底に突き落とされた。残されたうちらはそのつらい時期を乗り越えて、ここまで這いあがってきたんだ」
「・・・そうなのか。ごめんなさい、思い出させてしまって」
クレタの話を聞いて、確実にホルス社長が金をもって失踪したのはわかった。
けれど・・・。一つ違和感があった・・・。本当に、グレースさん、ベンさん、アンド―・・・。クレタをまとめていた社長が・・・会社がピンチだからって逃げたりするのか。
むしろ立ち向かいそうなものだが。
「・・・そんなわけで、あたしはとっくにホルス・ベロボーグを親父だと思ってねえんだ。今の白祇重工だってあの無責任やろーとは何の関係もねぇ」
確かに、ホルス社長の失踪時期から逆算して、もろクレタの幼少期と合致するぐらいだろう。目算で・・。そんなときに父親の失踪なんて・・・つらいなんてものではない。
「待つんだ、クレタ!自分の父親に対して、そんな言い方はないよ!!」
クレタの言葉に待ったをかけたのはグレースさんだった。
「間違いなく、会社の口座からお金が無くなったのは事実だけど・・・それがホルスさんの仕業だと証明できる人はいないじゃないか!」
グレースさんの言い分もわかる。しかし、金が無くなった時期、失踪時期が一致しているのだ。おそらく、本当に持っていたのはホルス社長に間違いないだろう。
(それか・・・他の内部の人間か。)
そして、まずい。グレースさんの話がヒートアップしている。ホルスと言う言葉が相当タブーなクレタ・・・このままだと嫌な予感がする。
「ま、待って。ホルス社長についてはわかったからさ!そうだ!グレースさんはここに何をしに来たの?確か今、重機たちの点検をしていたんでしょ?」
ベンからのグッドサインを横目で見ながら、話を変えるためにグレースさんに話題を振る。
「・・あの子達が逃走した原因について、目星がついたから知らせに来たんだ」
「ほ、本当か。それはよかった」
そして、その原因と言うのがすべての始まりはホロウの深部から伝わってきた一つの信号だった。その信号の識別タイプはBLG prototype。
信じられないことだが、その信号は三つの重機たちの始祖である『プロトタイプ』から伝わってきたものだったのだ。
「当時、わが社の生産ラインは他に後れを取っていて、自分たちで開発できたのは核となるパーツだけだったんだ。後は全部、図面通りに製造するよう外注せざるを得なかった。だが惜しいかな・・・完成して、あとは支払いだけと言うところで、旧都陥落事件が起きてしまった」
ベンさんは、かつてのことを思い出しながら話した。
結局、外注先はホロウ災害に巻き込まれ消滅。プロトタイプも行方不明になった・・・だが・・・。
「プロトタイプは、消えてなんていなかった。然も、いまだに一部の機能は生きている」
その言葉からは情熱を感じる。
「おチビちゃん、これから君が嫌がるような話をするよ。あの人とはもう関わりたくないだろうけど、プロトタイプも立派な会社の資産だ。あそこに搭載されている論理コアにも多大な価値がある」
グレースさんの言い方はまるでクレタに探しに行く理由を与えているようだった。
この言い方であれば、重機たちを資産として見ると言っていたクレタはうなずくほかない。
「君はどうしたい?---プロトタイプを探す?それとも、そんなものは初めからなかったことにする?」
俺たちは、結局結論を出すことなく、後日にクレタの決断を待つことになったのだった。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け