数日後、白祇重工からの連絡を受け、再び現場に向かうとすぐクレタが待っていた。
「プロキシ、ナナシ。わざわざ来てくれて礼を言う。・・・白祇重工は、本腰を入れてプロトタイプの捜索をすることに決めた」
「簡単な事じゃなかったよね、決心できたみたいでよかった!」
「ああ、プロトタイプには会社の重要技術が詰まってる。社長として、あれを放っておくような真似は出来ねえ」
ホルス社長が残したもの~とかではなく、単純に資産として考えているのは彼女らしい・・・のだろうが・・・なんとなく元気がないように感じられる。
だが、結局探すにせよ、専門はグレースさんだということでクレタは用事があるということで席を外した。
「あ・・・しゃ、社長、待ってくれ!」
けれど、ベンさんの反応から・・・。ある程度察せてしまう。
「クレタ、うつむいたまま行っちゃったね・・」
「ああ、その反面グレースさんの表情が変わらないのが不気味だ・・・喧嘩中かな。とりあえず、俺もリンもあまり刺激しないように心がけよう」
互いの顔を見てうなずく。わざわざダイナマイトに火をつける趣味はない。
「心配すんな、ベン、ナナシ、プロキシ。うちの社長は、一度決めたことを後から後悔するようなタマじゃねえ」
「その通り。おチビちゃんが決断してくれたなら、それだけで充分さ」
クレタは子供・・?とは思えないほど、精神面が成熟しているように見える。だからこそ、これだけ周りから信頼されているんだと思う。
(いや、だからこそ一人にすべきなのか)
彼女がゆっくり物事をかみ砕けるまで・・・俺たちは待たないといけない。けれど、そう時間はかからない。だけれど、まだ悩んでそうだったら相談に乗ろう。そう考え、グレースさんの話に耳をかたむける。
「まずは、この前脱走した知能重機の話から始めよっか・・・」
最初に、俺達が見つけて連れ戻した重機たちには何の異常もなかった。
つまり、勝手にどっか行ったり、中二病になったりするような原因は本体にはなかったのだ。
そこで、重機たちを変えた原因と言うのが、プロトタイプからの信号だったというわけなのだ。
プロトタイプとの通信によって三体の重機の知能レベル・・・つまり論理コアのレベルが底上げされたのだ。
「でも、3台のうち、プロトタイプから明確なメッセージを受けたのはパイルドライバーの『フライデー』だけだった。あの子がずっと言っていた『封印を固める』って言うのが、まさにそのことだよ」
「それは、フライデーの戯言じゃなかった・・・ってこと?」
「単なる中二病の妄想じゃなかったんだね」
だが、ある問題があった。フライデーは言語化が最後までうまくできなかったため細部までは理解できなかったらしく。
結局、プロトタイプが発信していたのは他の知能重機たちへの救難信号だったというわけだ。それをはじめに受信したのがパイルドライバーのフライデーだったというわけで。メッセージ量も一番多かったらしい。
(・・・送る相手を間違えたな)
百歩譲ってあの熱血に渡ればわかりにくかっただろうがアンド―が多分翻訳してくれた。だが、こっちの陣営には中二病はいない。よって解読不可と言うわけだ。
(うん、いない。中二病なんていない)
「つまり・・・これらを総合すると、プロトタイプの通信モジュールにはもう、自主的に他の設備と通信するだけの力がない可能性が大きいな」
「そう。おチビちゃんもきっとそれに気づいてる。だからこそ、早く決断しなかったことを後悔しているんだ」
で、どうやってプロトタイプの位置を特定するかと・・。
知能重機はメッセージを受信すると、通信モジュールが自動的に1バイトのリプライ信号を返すようになっている。要するに、メッセージが届いているか確認できるようになっているのだ。
「この機能なら消耗が少ないから、まだ生きてるかもしれない」
3台の重機たちにプロトタイプへ呼びかけそこから位置を特定しようというのだ。
『もしもし、リン、ナナシも白祇重工のみんなも、聞こえているかい?君たちは今、新エリー都と旧都の境界付近にあるホロウの中にいる。このエリアは、地下鉄改修プロジェクトの建設予定ルートの一部に当たる。だけど、立ち入りに関して、治安局からは何の許可も下りてないから・・・そこは気を付けてくれ』
アキラからの通信を聞く。まぁ、こんなところに治安局がいたらいたらで怖いが。
「なあベン・・・・またこの場所に、戻ってくハメになるとはな」
「アンド―達はここに来たことがあるのか?」
辺りを見渡してもどう見ても建設途中に放置された空間にしか見えないが。
「旧都陥落前は、開発途上の新エリアとしてそれになりに注目を浴びていたんだ。政府とTOP5は、ここの建設に大金をつぎ込んでいたし・・・うちの会社もこのあたりで、プロジェクトを手掛けていたことがあったな・・・」
懐かしいものを見る目でベンさんがあたりを見渡す。
しかし、ここも今や人っこ一人いないホロウの内部。ともかく探索を始めなければいけない。
アキラが作戦を説明してくれる。
『まず最初に、パイルドライバー、デモリッシャー、デュアルショベルの3台をホロウの特定ポイントに送り込む。それぞれが配置に着いたら、グレースさんが信号発信機を起動する。3台には、プロトタイプのリプライ信号を受信させて、中継器の役目を果たしてもらう』
しかし、問題は3台の中継する信号の強度はそれぞれ違う。
適した場所に置き続けなければ、プロトタイプの具体的な位置を割り出せないのだ。
エーテリアスどもからすれば恰好の的だろう。
『グレースとナナシのパイルドライバーの持ち場はこの近くにあるから、僕が連れて行こう。リンは他の人と一緒に、後の2台を指定地点に連れて行ってくれ』
『じゃあ、ナナシ。行ってくるね!』
イアスはアンド―達を連れ持ち場に向かった。
『さてと、じゃあ二人は僕が案内するから・・・』
ふぅ。と息を吐く。
「緊張しているのかい?ナナシ」
「グレースさんは緊張していないんですか?俺は結構緊張して・・・愚問でしたね」
後ろを振り向けばすぐわかる、グレースさんの表情がかなりこわばっている。
「そういえば、何でナナシは私についてきたんだ?わざわざ立候補してまで」
「守るためですよ。グレースさん、なんだか命かけそうな顔をしていたので」
そう答えると、グレースさんは口元を抑えもせず笑いだした。
「ははっ!そうか。そうか。それじゃあ、ナナシには働いてもらわないとね!」
それが、もう答え合わせのようなものだが。
「それじゃあ、グレースさんはクレタに使ういいわけでも考えておいてくださいね」
「そうさせてもらうよ。後・・・私のことはグレースでいい。これから、命を預けるんだ、他人行儀と言うのもおかしな話だろう?」
強く、頷いた。
そして、アンド―から全員持ち場に着いたと連絡が来る。
『グレースさん、聞こえる?今からプロトタイプに信号を送ろう、具体的な操作は頼んだよ』
「はいはい!それじゃあ子供たち、後は任せたよ。頑張って先輩に呼びかけるんだ!」
呼びかけと同時に、通信を始める。そして、すぐに3台全てからプロトタイプからのリプライ信号を受信したことを確認した。
だが、起動と同時に増える気配。
「ははっ!やったな!おい、どうしたグレース、ナナシ。そいつぁ何の音だ?」
異変に気付くアンド―。
「大したことじゃないよ。エーテリアスが増えただけさ、すぐに片付ける。発信器の高周波はプロトタイプだけじゃなく、エーテリアスにとっても刺激になるようだね」
淡々を言うグレース。
『いや待った、ナナシ、グレースさん---強いエーテル反応を示す個体が近づいてる!』
「大丈夫。何のために、俺がここに居るのさ」
「グレース、ナナシ!発信は一旦止めろ。これ以上エーテリアスを刺激するのはマズイ。時間が経ったら何が出て来るかわからねんだぞ!お前らはパイルドライバーと一緒にそこから離れるんだ!」
「おチビちゃん、それはダメだよ。さっきプロキシも言ってたじゃないか。信号の分析が終わるまで、通信は継続させなきゃダメだって」
だが、懸命にクレタはグレースを説得にかかる。
「あたしは発信を止めろと言ったんだ!今そっちに向かってる、続きはうちらがエーテリアスを倒してからだ!」
けれど、ここでやめれば今度こそプロトタイプの発見は絶望的、今この瞬間もプロトタイプの命は消えかけている。
「それに・・・大丈夫だよ。だって、守ってくれるんだろう?ナナシ」
背中から感じる期待の目を一心に受け。拳を握る。
「もちろん」
振り向かず、そう答えた。
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け