その場から少し離れた場所――そこで事件は起きていた。
チョップ大将に連れられ現場に到着すると、積み荷の扉が大胆に開けられたトラックと共に焦る運転手を必死に宥めるティンさんがいた。
「近くに治安官がいると言ったのはお前らだ。そいつらに判断させよう――犯人も、何を盗もうとしたかも明らかなんだ、どんな言い逃れができるか見せてもらおうじゃねぇか!」
「運転手さん、その『明らか』という点については、異議を唱えざるをえません。それはムギラテの泡だけを見て、これはコーヒーではないと判断するようなものです」
だが、ムギラテのことを知っている人しか通用しない切り口で説得するティンさんがむしろ油を注いでいるようにも見えた。
「皆さん、落ち着いてください。私達は治安官です、ここで何があったんですか?」
「やっと来たか治安官さん、話はこうだ――」
朱鳶さんと青衣さんの後ろで聞き耳を立てている感じ、こういうことらしい。
まず、このトラックの運転手の名前はゲール。天馬エクスプレスの運転手らしい。
(また、天馬エクスプレスかよ)
度々、ホロウ内でやらかしインターノットで助けを求めて来る奴らの時点で少しばかり肩を落としていたが、続きを聞こう。
今日はもちろん、荷物をこの近辺に届けに来たのだが、次の届け先へ電話をしていた時――突然トラックの辺りから『ドン』と言う音が聞こえてきたと思えば。
先ほどまでコンテナに積んであったアヒルがあちこちに逃げ出していたのだ、一体何が起きたのかと辺りを見れば、慌てふためくボンプが一匹――
「ン、ンナ――ンナナンナ――(違います、僕じゃありません――オツリは何もしてません)」
お馴染みの雑貨屋『141』の店員ボンプ3人衆の一人オツリだった。
「治安官さんよ、今回の件ははっきりしてるぜ。俺がトラックの異変に気付いた時、周りにいたのはそいつだけだ。そいつが俺のコンテナを開けたに違いねぇ!」
確かに、ゲールの言っていることが本当ならオツリがコンテナの扉を開けてアヒルを盗もうとしたらバレた可能性が高い――しかし、それ以外にも興味深い話があった。
「運転手さん、あなたの証言は記録しました。そこのボンプくん、この件について、何か言いたいことはありますか?」
「ンナンナ、ナナン――(僕の名前は『オツリ』です。雑貨屋で働いています。たまたま車の近くを通りがかった時、頭が“ふらふら”して、立ち止まって休んでたら、突然大きな音がして、ドアが開いて、アヒルが飛び出してきたんです)」
「勝手にドアが開いたってのか!?お前がコンテナを開けた後、うっかりしてアヒルを逃したんだろ!」
(確かに、その可能性は高いんだけど――)
その場は、オツリを庇うティンさんと焦る運転手の言い合いでヒートアップしたため俺達は離れることにした。
「マスターがあんなに興奮しているのは見たことがないな――インスタントコーヒーのこと以外で」
「まさか、六分街でこんな事件が起きて、オツリが巻き込まれるなんて――」
もちろん、事件がこれまでなかったというわけではないが、ご近所であるオツリが事件巻き込まれたとなれば心配するというものだ。
「オツリは、僕たちが六分街に引っ越して来たばかりの頃から『141』で働いてたんだ。僕だって、あの子がそんなことをするはずがないと思うさ。とはいえ、運転手がトラックの異変に気付いた時、そばにいたのはオツリだけだった。こればかりは本当らしいからな――」
アキラの言葉が詰まる、異変を感じ視線を向けると、事件発生時にはたくさん群がっていたみんなが続々と解散していた。
「どうなったのか聞いてみよう」
事件現場に戻ると既に野次馬は残っておらず、朱鳶さんたちの方も調書は取り終わったようだ。
「3人とも来たんですね」
「さっき、大筋の経緯は後ろで聞いてたんだけれど――皆が解散したということは、事件は無事解決したのかい?」
だが、朱鳶さんの首は横に振られた。あくまで、いったん区切りをつけただけらしい。
「今、どんな状況か聞いてもいい?」
「ひとまず、トラックの周りを一通り見て回った。とはいえアヒルが逃げ回った跡の他に、不審なものは見つからんかったぞ。おまけにこの辺りは街頭カメラがないゆえ、現時点で調査できるのはボンプの視覚記録、そしてトラックの盗難システムのみ――」
しかし、どちらもこの場では手を出すことはできず八方塞がりと言うのが現状のようだ。
もちろん、フェアリーの手を借りれば視覚情報を見ることはできるが、その代わり俺達が牢屋行きになってしまう。
「とにかく、どちらの調査も最低で2,3日はかかります。その間はトラックの運転手も、オツリくんも日常生活に大きな影響を受けることになりますね――」
幸いにも運転手側の方も一応の譲歩はしてくれたが、依然としてオツリが疑われている現状が解決したわけではない。
「そうか――そうだ、ナナシ。そろそろ事件の真実がわかったんじゃないか?」
「え?急にどうしたの、アキラ?」
「いや、さっきからずっと何も言わず考え続けているみたいだからさ、もしかしたら何かわかったんじゃないかと思ってね」
「そうなんですか、でしたら教えていただけませんか?」
「しゅ、朱鳶さんまで――」
無茶ぶりにもほどがないかと思いながらも思考を更に加速させる。
「あくまで仮説の域を出ないけど――少し、この前ルミナススクエアで初めて会った時のことを思い出してみて?」
「それは、ぬしが車に轢かれそうになった時であるな」
「うん、そこで俺が感じたのはなぜここまでブレーキを踏まなかったんだろうってね」
あの時、まるで愉快犯のようなスピードで歩道を爆走していた車。
俺がリンを庇って目の前に出た時も一向に減速の“げ”の字も現れなかった。
もちろん、気が動転したの一言で決着がつく話ではある。しかし、どうにもそれだけには思えなかった。
「だから、少し調べたんだ。ブレーキが作動せずそのまま全速力で突っ込んでくるマシントラブルは存在するのかって――あったんだ、本当に稀な現象なんだけどね」
その例の一つとして目を付けたのは、電子部品の故障。
車にはABSやEBDのようにブレーキの補助、最適化を行う電子機構が存在する。これらが故障しなおかつ、アクセルが踏みっぱなしの場合。現代の車の多くは『電子スロットル制御』を採用しており、アクセルペダルなどの部品がワイヤーではなく電子制御でつながっている。
そして、実際に電子スロットルのソフトウェアの不具合による急加速の事例は存在する。
「だけど、そんな稀な現象よりも他にもっと可能性のある不具合は存在するんじゃないのかい?」
「もちろん、でもねアキラ。思い出してほしいことがもう一つあるんだ」
「あっ!私のスマホ!」
頷く、事故が起こるほんの数秒前リンのスマホは謎の不具合によって画面にノイズが走っていた。
当初は、ただの通信障害かと思われたがよく考えてみればおかしい。もしも、通信障害なら画面全体にノイズなんて走らず、よく見る丸が延々と回り続けるだけのはずなのだ。
「ですが、それが一体この事件と何の関係が?」
「直接的ってわけじゃないんだけど、あれを見て」
ナナシが指さした先にあるのは、アヒルが脱走したコンテナ。本来なら『電子ロック』で固く閉じらているはずの扉が今は普通に空いている。
「そっか、あれも電子部品だから。それに、オツリが言ってた頭が“ふらふら”して立ち止まって休んでいたって」
「なるほど、ぬしが言いたいのはこれらの事件の原因はEMP装置――電磁パルス発生装置なるものが原因だというわけであるな」
「うん、周辺の電子機器が故障してないかとか、オツリの体内電流の状況とかを見てみれば実際に起きたのかってこともわかるんじゃないのかな?」
だが、EMP装置と言うのは都市部では所有も禁止されているほどの危険な物、しかもそれほど大きいわけじゃない。だが、これが原因だとわかれば少なくともオツリの容疑は晴らすことができるだろう。
「わかりました、では私達はその方向で捜査をしてみます」
「それじゃあ、俺達は逃げたアヒルを探しに行ってくるよ。って、そういえば二人は局に戻らなくてもいいのか?」
チョップ大将が応援を呼ぶ前は、六分街から去って別の所にアンケートを配りに行くという話だった気がするのだが。
「はい、運転手側が和解を申し出てくれたとはいえ――アヒルが全て戻ってくるまでに、また衝突が起こらないとは限りません。それに、もしナナシくんの話が本当なら第3者の関与が疑われます。その場合、しばらくはここにいるべきだと判断しました。」
「そっか、朱鳶さんたちがいてくれると心強い。それじゃあ、俺達も、アヒルをゲットだぜ!してくるよ」
それを最後に、ひとまず解散となった。
場面は変わり我が家の駐車場の端でアヒルが立っていた。
「見て、車のライトがつけっぱなしになってる!」
「あぁ、この前消したはずなんだけど、これはいよいよナナシの仮説が真実性を帯びてきたな」
だが、二人の関心はアヒルからすぐライトに移ってしまった。
「と、とりあえずこのアヒルを何とかしない!?――ッ!」
アヒルが目線を外した瞬間、姿勢を低く相手の視界から消え懐に潜り込み捕獲した。
「いや~私やお兄ちゃんがやるよりも、ナナシがやると早いねぇ」
「全くだよ、アヒルが目線を外した瞬間に捕まえに行く芸当は僕たちにはできない」
「他人事みたい言って~、痛っ!つつくなよ!!」
だが、捕まえた後もアヒルの抵抗は終わらず俺をつつきまくるのであった。等々、紆余曲折ありながらもなんとか、全てのアヒルを集めることができた。
意外と、ナナシって博識なんですよねぇ
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け