アヒルたちを全て集め、トラックまで戻ると既に朱鳶さんたちがゲールとオツリに何か説明していた。
「3人とも!アヒルは全て集まったんですね」
「ああ、案外元気だったよこいつら――それで、結局どうだった?」
「はい、ナナシくんの仮説通りでした。この裏にはEMP発生装置――つまり、電磁パルスが原因になっていることがわかりました」
調べによれば、運転手のゲールのスマホが事件が起きた時に急に電源がオフになったこと、そして、オツリの体内電流にも急激な上昇がみられたようで、間違いないらしい。
「つまり、万事解決ってわけだね。あっちも和解したみたいだし」
「いえ、まだ一連の事件を起こした犯人を捕まえたわけではありません」
「あ、そっか」
だけど、EMP発生装置と言うのは特段大きいわけじゃない。確かに、街中でバズーカみたいなものを背負っていたらもろ犯人だとわかるが、誰もが持ってそうなマイバックの中にでも入れられていればわからないのではないか。
「安心してください。いま、局の方で六分街の監視記録を調査しています。犯人が見つかるのは時間の問題ですよ、犯人は今日だけで、EMP発生装置を何度も使用しています。複数の事件現場に共通して写り込んでいた人物を調べれば、かなり絞り込めますから」
「なるほど!流石治安官さん!」
ナナシは泥棒をした後、監視カメラの死角を縫いながら進んでいたのでお世話になることはなかったが(お世話になってたらもう捕まってる)こういう場では頼りになる。
その時だった。朱鳶さんの通信機へ連絡が入る。
『朱鳶治安官、ご依頼のあった監視記録の調査が完了しました。これまでに該当する不審人物は1名!現在、通りの出口付近で追跡中です。尋問を行いますか?』
簡単に尻尾はつかめたようだ、だが逆にそんなに簡単につかめてしまうのは違和感が残る。
(それとも単に、ただのごろつきなのかもなぁ)
このまま、治安官に任せておけば全て終わりかなと思ったその時だった。
『――ぐっ!申し訳ありません、逃げられました!現在、そちらの方へ向かっているものと思われます!』
「了解です、今向かいます」
確かに少し気配を探ってみれば、こちらの方角に全速力で走ってきている誰かの気配を感じる。
「ナナシ、行くよ!」
「え?い、いや治安官に任せるべきじゃない?」
「そいつのせいで、私達のご近所さんが迷惑をこうむってるんだよ!ナナシ全力で捕まえに行っちゃって!!」
「それに、そいつのせいでナナシが轢かれかけたんだ、簡単に許してやる道理はない――ぶっとばしてやる」
「な、なんか普段とキャラが違くない!?――了解」
何だかものすんごい嫌な予感がしたが、俺もお世話になっているご近所さんに迷惑をかけやがってる犯人を見逃せるほど優しくはない。
そして、結局気配を察知した俺は、朱鳶さんたちを追い越して犯人を追うことになった。
その後、十四分街共生ホロウ付近――
「待てや、コノヤロー!!」
いかにもと言う風体の赤いバンダナを巻いた男、肩に下げられたバックには確かに何か物々しい機械のようなものが見える。
「待てと言われて待つかコノヤロー!」
走りながら、そこらに積んであった段ボールを崩し、ぶん投げる。
しかし、ナナシは全くよけずまるでそよ風が当たったのかと錯覚するほど自然に減速せず、段々と距離を詰めていた。
そして、曲がり角を曲がってすぐの場面、男は鞄からEMP発生装置の電源を押す。
「これでも食らってろ!」
それによって、周辺に電磁パルスが展開され機器の誤作動が起こる。
それは、道に横づけされていた重機も例外に漏れず誤作動を起こし、道へ積んでいた鉄の棒を大量に落とす。
ここまで、やれば男も少しは逃げ切る時間を稼げたかと思い、後ろを振り返ったが眼前には既にナナシの飛び蹴りが迫っていた。
誤算は、ナナシが壁を走れるということだった。
ぶっちゃけ相手が悪すぎた、ナナシは発生装置の電源が押されたタイミングで壁に足を付け走っていた。
当然、そんなわけないだろうと思った相手が油断したタイミングで跳躍し跳び蹴りをかましたのだ。
「年貢の納め時だよ、犯人さん」
飛び蹴りの後、足払いでEMP発生装置をどこかにどかし、逃げられないように右腕を掴みいつでも折れるように準備しておく。
「ナナシくん!犯人は!」
「とっ捕まえた、EMP発生装置はあそこに落ちてる」
指さした先に落ちていたEMP発生装置を青衣さんが取り確認する。
「ふむ、確かに――だが、ぬしよ単独で犯人を捕まえに行くのは感心せぬな」
「あはは、いや~ちょっとGOサインが出ちゃって」
犯人の身柄を朱鳶さんに引き渡し、周囲を確認してみるとアキラとリンも追いついてきたようだ。
「先輩の言う通りです、もし犯人が銃でも持っていたらどうするつもりだったんですか!」
「は、はい――すみませんでした」
「わかってくれればいいんです。――けど、ナナシくんの動きは一般人のものじゃありませんね、何かやっていたんですか?」
思わず、背筋が伸びる。これは、明らかに疑われている――流石に、大根泥棒には結びつかないだろう、だがそんなこと関係なしにマズイ。
何か言い訳を絞り出そうとしたその時だった。アキラとリンが俺と朱鳶さんの間に立ちふさがる。
「じ、実はナナシって零号ホロウの調査員も兼任してるんだ!ほ、ほらナナシあれ出して!」
「あ、あぁ――うん、これを見て」
取り出したのはレイさんが発行してくれた零号ホロウの調査ライセンス。
「なるほど、それでナナシくんはあんな動きができたんですね。私の友人の動きととても似ていたので驚いたんです」
「あはは、そうなんですか。朱鳶さんって活発なご友人をお持ちなんですねー」
「どうした?ぬしの口調が明らかにおかしくなっているぞ、もしや何か疚しいことでもあるのか?」
「いや、別にそう言うわけじゃないんだけど――」
「まぁ良い――協力感謝する」
青衣さんの指摘に動揺を隠すことはできなかったが、ひとまず目の前にいる犯人に視線は移ったようだ。
「では、そこの市民。新エリー都の現行法規に基づき、危険な武器の不法所持、および故意に他人の身体や財産の安全を侵害しようとした罪で、貴方を逮捕します。あなたの名前は?」
「――カルロ・モロンだ」
観念し、うなだれた様子で朱鳶さんたちの質問に答え、追加で応援に来た治安官に男は連行されていった。
その日の夕方――
「今日のことは、本当に二人のおかげだ。なんて感謝したらいいのか」
今はしっかり閉まったトラックのコンテナを前にゲールは朱鳶さんたちに向けて感謝していた。
「気にしないでください、これが私達の仕事ですから。それに今回は、ナナシくんの力があったからこそスピード解決ができました。後で皆さんには、治安局より保障について連絡が行きますので」
バッチリと犯人は捕まり、保障もされ、オツリの無罪も証明出来て今日はハッピーエンドで終われるみたいだ。一つ、ケチをつけるなら明らかに俺が疑われていることだけだ。
「そういえば、結局どうして犯人はこんな事件を起こしたんだ?」
「それがまあ――なんともお粗末な動機で――」
話の顛末を聞くとこうだ――
EMP発生装置を使って、車を盗もうとしたら操作に不慣れで、そこら中に影響を及ぼしまくって結局この事件になってしまったようだ。
「EMP発生装置なんて、都市部では所持すら禁止されている代物のはずだ、犯人はどうやってそんなものを?」
アキラの疑問はもっともだ、所持すら禁止――つまり、よっぽどの仕入れるパイプがなければ見ることすらできないのだ。
「犯人は、とあるホロウ強盗団のメンバーです。供述によると、この組織はEMP発生装置を違法に製造し、車のセキュリティに特化した改造を施していたとのことでした」
「組織的なものだったのか――それじゃあキッチリその分も犯人には吐いてもらわないとね」
「うむ、安心せい、治安局は決して悪事を見逃したりはせん――たとえ、それが誰だろうとな」
何か、不思議と青衣さんの視線がこっちに向いているような気がするが、気にせず――視線も向けずポーカーフェイスで乗り切る。
「ただ、これ以上は調査の内容を公にできぬ。そこはわかってくれるであろう?」
「まあ、事件の状況はこんなところです。私達はこれから取り調べに参加するので、今日はもう戻ります」
二人がルミナ分署に帰ろうとしたその時だった。どかどかと急ぐ足音がこちらに近づいてくると思えば、視線を向けると再び走ってきたチョップ大将やティンさんの姿があった。
「治安官の嬢ちゃんがた、待ってくれ!」
「チョップ大将。事件について、他にも聞いておきたいことがありますか?」
だが、チョップ大将の用はそれではなく代わりに何やらチラシの束を渡す。
「治安官のお二方、今日はオツリの疑いを晴らして頂いたばかりか、犯人が今後もたらすであろう被害の芽を摘んでくださったこと、誠にありがとうございました。今朝の非礼についてもお詫びをさせてください。先ほど近所の皆さんと相談して、治安局が土曜日に開催するという講習は、参加することで一致しました」
そう、渡されたのはアンケートが書かれたチラシだったのだ。10割ブリンガーのせいで講習会を犬猿していた六分街の住人たちは頑張る治安官の姿を見て考えを改めたのだ。
「ああ、俺たち住民の防犯意識を高めるってんだろ。みんなで聞きに行くのも悪かねぇ」
「過分なお言葉です。市民の安全を守るのは私達の責務ですから。でも、皆さんが講習に参加してくれるのなら、それはとても助かります」
「治安官さん、俺にもアンケートをくれねぇか?俺もそいつに参加させてくれ!」
最初は参加人数が10人にも満たなさそうだった講習会。だが、二人の治安官の頑張りによってどうやら、いい方向に進みそうだ。
「これぞ、終わり良ければ総て良しだな!」
「ふふん、これすなわち――『無心で枝指す柳、図らずも木陰を成す』」
そして、しばらくして朱鳶さんたちはルミナ分署に帰っていった。オツリはエンゾウおじさんに任せて修理してもらった。
だが――
「朱鳶よ、気づいておったか?ナナシの動き」
「え、先輩どうしたんですか?」
帰り道、誰もいなくなったタイミングで急に青衣の口が開かれる。
「あの者の動きはただものではない――そして、我らがルミナ分署に派遣された際に聞いた噂を覚えておるか?」
「はい、確かに一般人ではありえない動きでした、ですがそれは零号ホロウの調査員だったということで結論が付きました。――それに、あの噂は信憑性が薄いと考えます」
ルミナ分署の噂――それは、3週間に一度ある八百屋に現れる怪異。
話によれば、治安官がその現場を見かけて捕まえようと向かったもののそのものの影すら見ることはかなわず、一瞬で消えたと言われている。
それに加えて監視カメラにも全く映らない特異性から――
「一説では、大根を食べれずに死んだ怨霊とも言われておったな」
「一体どんな怨霊ですか、ですが――」
もしも、ナナシのその俊敏性があれば一瞬で消えることもできるんじゃないかと思ってしまったのもまた事実――。
悲報:ナナシ、大根の怨霊だと思われていた。
何と、犯人がホロウに行く前に速攻でとっ捕まえてしまったナナシ。まあ、こいつが追っかけて逃げられる相手の方が少ないんだけどね!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
-
読みたーい!(特にヤンデレ)
-
読みたーい!(ラブラブ!)
-
読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
-
いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
-
作者さんの自由で!
-
こんなアンケートする前に書け