ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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閑話の章
閑話・ナナシとニコ


 

 

早朝、けたたましいアラームの音で目を覚ます。

珍しく今日は何もない日だ、普段なら朝から白祇重工へアルバイトとして手伝いに行っているのだが、今日は休みとなっている。

だからといってアキラとリンとどこかに出かける用事が有るわけでもない。だというのにいつもの癖で早朝にアラームを付けてしまっていた。

 

「・・はぁ」

完全に目覚めてしまったものは仕方がない。と言うことで、起き上がり軽く伸びをした後、朝ごはんも食べずに外に散歩に出ることにした。

 

 

軽くランニングをしながらほとんど人通りのいない新エリー都を進む。

(そういえば、ここは孤児院の近くか・・・)

無意識に走っていたが近づいていたのだ。

 

 

早朝に来ているわけじゃないが、ちょうど夕日が落ち始めたタイミングでお菓子とか持っていくと笑顔の少年少女が迎えに来てくれるのだ。よく・・・

『ナナシの兄ちゃん!!遊んで!!遊んで!!』

って手を広げて来る少年少女に心が安らぐため、俺のストレスを解消するスポットにもなっている。

 

 

しかし、流石に早朝から運営しているわけもなく。誰もいないはず・・・。

「あれ、ニコ?」

何か段ボールを抱えている。金にがめつい邪兎屋の社長、ニコ・デマラが孤児院の前に立っていた。

「あら、ナナシじゃない?こんなところでなにしてんの?」

「それは、こっちのセリフだが・・・」

段ボールに視線が移る。あの段ボールは見たことがある、ここの孤児院の方が誰がおいているのかわからないけど、週に一度食料が入った段ボールを置いてきていると聞いた。

 

 

正直資金繰りも大変な孤児院経営にとってとても助かっているのだが、誰がやっているのかはわからずお礼も言えていなかったらしい。

「ニコが、その段ボールを持ってきていたのか?」

「・・・何、悪い?」

 

ジーっとにらみつけて来るニコ。

「いや、そう言うわけじゃないんだ。俺さ、ここによく来るんだ。そのたびにお菓子渡したり、遊んだりしてるんだが・・・。孤児院の方が誰かが毎週食料を置いてきてくれるって聞いて・・・まさか、ニコだとは」

「はぁ・・・そう、何?意外かしら?」

どうやら、不機嫌にさせてしまったらしい。

 

 

 

「意外と言うか驚いた。なんというか普段が・・・アレだから」

 

『おーほ、ほほっ!!成功したわ!!これで、がっぽり金を絞りとれるわよ!』

高笑いする、ニコが勝手に頭で再生される。

「金にがめつくて悪かったわね!!・・・でも、まさかこんなところで知り合いと会うなんてぇ・・・」

「別に・・そう言う・・・・否定できねえ・・。」

ニコをフォローする言葉を絞り出そうとしたが、特に思いつかず。頭を抱えてしまう。

 

 

「まあいいわ!ひとまず、こっちに来なさい!ここで、話してたら孤児院の子が起きちゃうわ!」

「え、ちょっ!?」

そう言って、俺の手を引いて孤児院から公園に移動し、ベンチに座らされる。

 

 

「ほら!今なら何でも聞いていいわよ!ナナシとはきっとまたどこかで仕事をするだろうし、もやもやしたままってのも嫌でしょ!」

ニコの言うことはもっともだが、ここまで気持ちよくごまかさず言えるのもニコの素晴らしい一面と言えるだろう。

 

「---じゃあお言葉に甘えて・・二つ聞こうかな。どうして、あの孤児院に寄付をしているの?」

 

「えっと・・・。そうね、話すわ。あたしは、もともと孤児院出身だったのよ・・・。」

昔、ニコは孤児院の友達をエーテルの浸食によって亡くしてしまった。

お金があれば、その子を助けられたかもしれないのに・・・。頑張っても、お金は集まらなかった。

 

 

 

「あたしは幸いにも昔から賢かった!」

それでも、どうにか太陽を見せてあげようと頭を働かせ、一つの考えに行きついた。

それは孤児院の子達全員がディニーを持ち太陽の光を反射させ友達のもとに届けさせるというものだった。

 

「丸い金属は鏡よりピカピカ。手に取ると安心する重さ。それで、友達の最後の願いをかなえることができた!」

その日、ニコはディニーに恋をした。

 

 

「だって、それなら希望だって買えるから・・。」

「・・・その希望を自分が手に入れたように、孤児院の子達にも希望を与えたかったってこと?」

「えぇ。大体はそんなところね」

(・・・社員の救出に金をかけるニコらしいと言っちゃぁニコらしいか・・・。少し勘違いをしていたみたいだ。)

 

 

ニコが寄付した理由は納得した。

「じゃあ、何で自分が寄付しているって言わないの?」

「うっ」

どうやら、ニコとって突かれたくないWEAK POINTをついてしまったらしい。

今はBreak状態と言ったところか。

 

 

「・・・言わなきゃダメ?」

自分の利点がよくわかっているようで胸を強調させながらあまあまな声で聴いてくるが、特に何も思わない。

 

 

「もやもやしたくないので聞きたい」

「・・・はぁ、言うわよ。----その・・あたしってあんまり世間様から見たらいい存在ってわけじゃないでしょ。だから・・・あんまり言いだしにくくて・・・」

「要するにビビっていると」

 

 

世間様から見れば、プロキシの上、元大根泥棒の俺の方がよっぽどお天道様に顔向けができない存在なのに、ニコが出れないというのはなんだか違和感がある。まぁ、ニコがそう言うのを気にする人間なら、それでいいのだが。

 

 

「ち、違うわよ!こっちは孤児院のことを・・・考えてるんだから!」

「・・はいはい、そう言うことにしておくよ。でも、孤児院の院長さん言ってたよ」

先週あった出来事を思い出す。

 

 

『毎週毎週助かってるんですよ。孤児院の運営なんて毎年毎年苦しくなる一方なのに、寄付をしてくださる方がいる。もちろん、ナナシさんにも助けられていますし、何よりその方々のおかげで、子供たちの笑顔が増えた。それは何よりもうれしいことなんです。できれば、お礼を一言言いたいんですが・・』

 

 

「って、感謝してたし、お礼も言いたいって言ってた。一回くらい顔を出したらどうなんだ?」

「え・・えぇ・・・出来たら顔を出そう・・・なんて・・・」

ここまで弱気なニコは初めて見る。俺はため息を吐いた後、今度は先ほどとは逆に俺がニコの腕をつかんで孤児院の方に進みだす。

 

「えっ!?ちょっ!何すんのよ、ナナシ!」

「そうやって、うじうじするくらいなら。一回行ってもやもやを解決したほうがいいだろ!」

そして、そのまま引っ張っていった。

 

 

 

時間は回り。すでに孤児院の院長さんは玄関前で箒を使って掃除をしていた。

「あら?ナナシさんじゃないですか。こんな朝早くに、子供たちはまだ寝ているので、何か用件があるなら私が伺いますが」

「院長さん。実は、彼女のことについて何ですけど・・・」

 

 

俺はニコのことについてあらかた要点をかいつまんで、院長さんに説明した。

「ちょ、ちょっと!」

「まぁ、あなたが毎週寄付してくださる方だったんですね。ありがとうございます」

院長さんが頭を下げると、どうしたらいいかわからず戸惑うニコ。

 

 

その後、少しニコと院長さんは話をした後こちらにニコが戻ってきた。

 

 

 

 

「お疲れ、どうだった」

「---どうもこうもないわよ!院長さんからはめちゃくちゃ感謝されるし、これじゃああんなに悩んでいたあたしが、バカみたいじゃない!!」

自分で自分をバカにし始めているニコ。

 

 

「まぁ、でも。これで、お互いにもやもやが晴れたな」

「っ---ふふっ。そうね・・・」

きっとニコも何か思うことがあったのかもしれない。孤児院の前で段ボールを持っていた彼女の表情からそれが読み取れたのだ。

 

 

「じゃあ、朝飯でも食べに行こうよ。ニコ、お金は俺が出すよ」

「え!!いいの!わかったわ!早速行くわよ、ナナシ!」

 

 

朝日が俺達を照らす。その日の太陽の光はいつもよりまぶしく見えた。

 

 

 

 

 

ちなみにその後・・・・。

 

「あれ?ナナシ、またスマホなってるよ?」

リンが、俺のスマホを拾って渡してくる。画面を開くとニコからのメッセージだった。

 

「あー。なるほどね・・・」

一緒に孤児院の手伝いに行こうという誘いだった。

あの日から、孤児院の手伝いだけでなく、アルバイトで活動している午前中が終わると、ニコによく誘われてどこかに行くことが増えた。

 

 

ニコはいろいろなことを知っていて、一緒に行く俺も飽きがなくてとても楽しい。

出かけるときは、かわるがわるご飯を奢るなどルールを決めたり、こないだなんて、ニコが弁当を作ってくれた。

『ほ、ほら!工事現場って大変なんでしょ!だから、これ持っていきなさいよ!』

色々不格好なものたちが多かったが、味はおいしく。食べている間ウキウキだった。

 

(だけれど・・・。どうして、グレースはニコから渡された弁当を見たら急に不機嫌になったんだ?)

その日、一緒に仕事をしていたグレースと話している途中に弁当を食べていたのだが、なんだか食べていたら急に不機嫌になったのが印象深い。

 

 

 

「ニコからの誘いみたいだったね・・・」

「そうなんだ・・・ナナシ。」

リンからジーっと睨まれている気がするが、今日はニコの約束には乗らない。

 

「今日は、アンビーと先に約束してるからいけないんだよね・・・」

 

 

そして、俺はニコに断りのメールを入れた。

 

『ごめん!今日は、アンビーと先に約束しててさ、孤児院の手伝いはまた今度行こう』

すぐ既読が付き、返信が来る。

 

 

『そうなの。わかったわ、また今度誘うわ』

『ありがとう』

返信した後、俺はビデオ屋を出た。

 

(それにしても、どうしてニコからこんなに誘われるんだろう?暇なのかな)

なら、白祇重工のアルバイトでも紹介しようかなと思いながら集合場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「---ナナシを次、誘う場所でも探しに行こうかしら・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに、ナナシはニコに奢られて浮いたと思ったお金でアンビーと遊んでいます。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

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