きっかけはアンド―と一緒にエーテリアスを排除する業務をしている日だった。クレタからもらった昼飯を掻き込む。掻き込みながら、午後はエーテリアスがあまり出ないといいなぁとか、クレタが渡してきた昼飯美味しいなぁ。なんて考えていた。
(―――ボッチ飯って寂しいなぁ)
というのも、エーテリアスが中途半端な時間帯に来て、休憩時間を潰して出撃していたのだ。
アンド―と食べようかと思ったが、どうやら用事があるらしくどこかへ行ってしまった。
今日は珍しくお一人様だ。なんだかんだ白祇重工のバイトに来てから、クレタ、グレース、アンド―と必ず誰かに誘われ食べていた。
心にぽっかり穴が空いたような感覚。リンとアキラに拾われる前はずっと一人だったから孤独が当たり前だと思っていたから気にもとめなかった。
「強くなったのか――それとも、弱くなったのか――」
不思議と嫌な気分はしない。一人の強さもあるし、みんなとの力もある。きっと強さの種類が変わったただそれだけ、単純なことなんだ。
「ちらっ」
他のバイト仲間に視線を向けるが、そそくさとその場を去っていく。
見事に他のバイトに避けられている。
(まぁ、仕方ないか。俺の周りにいるのって社長とか幹部だし、何なら片手で鉄骨持ってるところ見られてたからな~)
俺だったらしゃべりたくない。何の地雷を踏むかわからないし。
「おっ?ナナシじゃないか」
仕方ないと諦め再び飯を掻きこもうとした時、声をかけられる。顔を上げると、ベンさんがいつものパイルバンカーを肩に乗せて立っていた。
「あっ、ベンさん。休憩?」
「そんなところだ、不幸中の幸いだが社長とナナシが『敵』をとっちめてからしばらくエーテリアスの出現はかなり落ち着いてる」
だが、結局『敵』の皆様方から情報を得ることはできなかった。あの後、同様の嫌がらせは絶賛ついさっき現れ、そのせいで結局ボッチになってしまったのだ。
俺とアンド―が昼休憩を取っている間ベンさんとクレタがホロウ内を探索し、これ以上の『敵』共の活動を抑制してるが。予想以上に根が深い。
(フェアリーに頼んでも、リソースが足りないとかなんとか言って調べられなかったし。やっぱり人口無能だなアイツ)
「なら、よかった。でも、やっぱり根本を叩かない限り――」
「ああ、根絶は不可能だろうな。だがな、さっき捕まえた奴らから耳よりの情報を聞き出せたんだ」
「ッ!?本当に!なんだか、今回の奴らは口が固そうで難しいと思ってたんだけど」
そういえば、思い返してみるとやたら今日のごろつき共は装備が豪華だった。エーテル爆薬まで持ってやがった、それも大量に。何か、裏があると思っていたが―――。
もちろん、エーテル爆薬は使わせる前に奪い取り、今頃現場で活躍してくれているだろう。
「グレースが究極のくすぐり機を完成させたと言っていてな。それに座らせたらすぐ吐いた。」
「―――?究極のくすぐり機?」
ゾワッ
何だろう、名前を聞くと背筋がぴくぴくとしだした。なんだろう、座ったらもうただでは済まなさそうな装置だというのはよくわかった。
「それで、なんて言ってたの?」
「ああ、奴らは―――」
ベンさんから一通りの説明を受けた。
と言うことで、あるホロウにベンさんと共に来ていた。
「ベンさん、あそこに小屋が見える」
連続的な嫌がらせからもしやと思っていたが、今回ごろつきが喋ってくれたことでようやく場所を割り出せた。
「間違いない、あそこが奴らのセーフハウスだ。」
ごろつき共は全員がキャロットを持ち、その上今回なんてエーテル爆薬つきだ。そんないかにも目立ちそうな集団なのに、ホロウの出入り口を調べても出てこなかった。ならば考えられることは一つ。奴らはセーフハウスを持っている。
「モニュメントに潜んでいた怪物を倒した影響か、またホロウが収縮していたからな――そこを狙ったみたいだ」
以前までは細かい嫌がらせ、それも外部からできる程度のものだった。しかし、最近は直接的な嫌がらせが多すぎる。そこで機材を保管する場所があるかと思っていたが、いわゆる武器庫の場所を知っているごろつきはなかなかいなかったが―――。
「まさか、知ってるやつがでてくるとはな。」
「ああ、流石に難しいと思ったけど。結構、相手は間抜けみたいだな」
それか、よほど切羽詰まったなにかがあるのか。逆に誘い込まれたのか。いや、誰かが隠れているような気配は感じない。
(まずは、動くべきか)
「ベンさん。俺がまず小屋に近づいて忍び込んでみる。その後、安全そうだったらベンさんも呼ぶよ」
「わかったが、逃げたやつはどうするんだ?」
「大丈夫。――今、クレタに連絡してここから一番近いホロウの出入り口に待機してくれるみたい。それまで、待とう」
何かあればクレタから連絡するように言われていたので連絡するとすぐに返信が来た。そして、幸いにも”たまたま”クレタたちが近くまで来ているらしくすぐに包囲は完了したようだ。
「らしいけど――行こう、ベンさん」
「ああ、どうやら俺達は知らず知らずのうちに社長に心配かけてたらしいからな」
(位置は知らせていたけど、こんなにすぐ来てくれるなんて、やっぱり社員思いなんだな)
悪に容赦はないと遠距離から『正義の鉄拳』を文字通りお見舞いしてやってもいいが、まだ中にエーテル爆薬があればその衝撃で情報げ――。人命が心配なのでやめておくことにする。
足音を消し、小屋のすぐそこまで忍び寄る。
(――この、小屋結構丈夫に作られてるな、中の声が聞こえない)
だが、のぞき窓のようなものもない、息遣いも聞こえない。だが、少なくともこの小屋の大きさからみても、数人ほどが限度。十分現勢力で制圧可能だろう。
(よし、ベンさん来て――)
手で形を作り合図を出す。そろりそろりとベンさんがこちらに向かってくる。のぞき窓がないため、足音さえ出さなければ中にいる奴らに気づかれることはないだろう。
だが、ベンさんがこちらに来る途中ある推測が俺の中に浮かんできていた。
(――待て。おかしい、このセーフハウスは最近作られたもの。なのに、ここまで防音性能が高くて、セーフハウスとして成立するような建造物を俺達に気づかれず作れるのか?)
考えられる可能性とすれば一つのみ。
「これは、まずいかッ!『真・熱血パンチ!』」
拳を放つと“予想通り”壁にはすぐさま穴が開く。すると、その穴から見えた。
00:05と言う文字盤が、こちらを覗き込んでいた。
「ッ!ベンさん、そのまま低い体制で!」
意図を伝える暇はない。だからと言って、俺がベンさんをすぐどかせるかと思えば不可能。ベンさんを守るためには――。
00:03
すぐさま、ベンさんの前に立ちふさがり、構える。
(あっ――。特訓の癖で、左手を構えちゃった)
00:01
発動させようとした技は『ゴッドハンドW』しかし、どうにも放てる体制にはなっていない。
だが、もう考える暇もなかった。
「『マジン・ザ・ハンド!!』」
この時、俺は気づいていなかったが立ちふさがった勢いのまま必殺技を出したので、思いっきり腰を引き、自然とへその下に力が入り、踏みとどまれる体制になっていた。
00:00
仕込まれていたエーテル爆薬が爆裂する。一瞬火柱が上がり、その後衝撃があたりに広がった。
そして、煙立ち込める中。ごろつき共は楽し気に話していた。
「ははっ!やってやったぜ!バカ共が、アイツらが来ることなんておみとおしなんだよ!はっはっはー!!」
高笑いを決めこむ。おそらく、長なんだろう。後ろにいた数名も同時に笑い飛ばす。
「本当にバカですねお頭。彼奴ら、スパイが送り込まれてるとも知らずに!」
「まあ、元はと言えばあのアホが捕まったからこんな事をよぉ!しなくちゃいけなくなったんだけどな!!」
そう、本来ならちまちま嫌がらせしていくはずだったが、同時の幹部が唯一手柄を上げていないことを気にし。一人、数名の部下を連れて行ってしまったのだ。そこで、まんまと最近バイトに入ったって言う、奴に取っ捕まったのだ。
「全く、ラッキーだったぜまさか白祇重工の幹部クラスも消せるなんてなあ!」
「お頭!煙が晴れますぜい!」
爆発から数秒後、高鳴っていた胸の躍りは最高潮にまで達していた。
「そうだな!どうだ、お前ら!この後、白祇重工へカチコミかけ・・・て」
お頭と呼ばれたごろつきの顔が固まる。なぜならば、視線の先には“無傷”で立っているバイトと白祇重工の幹部が立っていたからだ。
「おい、聞いたか。ナナシ、アイツら俺達の事務所にカチコミに来るらしいぞ」
「そうみたいだな。こりゃあ、こいつらにはどうやら手厚い歓迎をしてやる必要があるみたいだ」
ボキッ、ボキッ。と拳を鳴らしながら。額には青筋を立て、今にもとびかかってきそうな形相の二人。
「――ッ!お前らぁ!まさか、気圧されなんてこたぁねぇよなぁ!相手はたったの二人だ、全員で地獄に送ってやるぞ!」
「だそうですが、ベンさん?彼奴ら俺達を地獄送りにするんだってさ」
「そうみたいだな。なら、そっくりそのまま返してやる」
敵の数は15人、どうやら最初から小屋には一人もいなかったらしい。戦力差は7.5倍。
(敵じゃない!)
と言うことで、瞬殺。見事に瞬殺、何なら語る事すらほぼない。ベンさんがなぜだか習得していた威嚇攻撃で数名ひるんだところを俺が意識を刈り取る。
唯一まともに戦ってきたボスもデュラハンやらと比べたら雑魚も雑魚。瞬殺だった。
その弱さに、後から来たクレタ達も。
『こいつら、こんなに弱えのによく白祇重工に喧嘩売ろうなんて思えたなこいつら』
とすっかり伸びた奴らを見下ろしながらつぶやいていた。
そしてここから、しばらくエーテリアスの出現はポツンと止んだ。たまに出てくる奴もいるがあくまでもごく少数。
と言うことで、回想終了。
「はぁ、しんどいなこれ」
「そうだろう?まぁ、ナナシが手伝ってくれるおかげで大分早く終わりそうだ」
「そうか、力になれているならよかった」
きっかけを回想しながら、俺は数字と格闘していた。
そう、ベンさんからの呼び出しと言うのは経理の仕事を手伝ってほしいということだった。ベンさんなりに言うなら俺は呑み込みが早いということですいすいできるようになったのだが――。
「グレースは一体何て書いてあるんだこれ!」
つい、頭を抱えながら叫んでしまった。
領収書を計算書にしやがるグレース。もう、てんやわんやだった。
こちらが領収書を集めているため、クレタが計算をミスしたり、アンド―が宝くじを張るなどの事件は起きないが相当大変だこれ。
「はは、大変だろう。まぁ、いつかナナシも慣れるさ」
「なれちゃうんだね――。仕事大変じゃない?」
特に個性が強い白祇重工の経理と言うのはつらくないだろうか。いや、本来なら領収書などに個性なんて出てこないはずなのだが。
「そうだな、大変だが。みんなの役に立ててるんだから、嬉しいことだ。まあ、グレースに至っては領収書を計算場所に使わないことに越したことはないんだが」
ああ、本当に心の底からそう思っている。そう感じ取った。
「――みんなのためにか。なんだか、わかる気がする。」
きっと俺が、ボッチ飯を寂しいと思うようになったのとおんなじ理由だ。
うまく言葉にできないけれど、とっても暖かいんだ。
「そうだ、どうして俺を経理担当に呼んだんだ?ぶっちゃけ俺である必要はなかっただろう?」
最初は俺も経理は未経験で不安なことが多くあった。でも、正直俺である理由がわからない。一緒に仕事をする仲ではあるが、本来は経理なんてやってはいけないのだ。だというのにベンさんは俺を選んだ。
「心配だったんだ。ナナシが、ここに来てからずっと夜に特訓してるだろう、あの光景がどうにも痛々しくてな。なんだか切羽詰まってるように見えたんだ」
「――切羽か。」
「きっと、ナナシは追い込まれれば追い込まれるほど力を出せるんだと俺は思う。けどな、追い込み続けたらいつかは折れてしまう。そんな姿見たくないんだ」
(もしかしたら――。ホルス社長も)
なるほど、俺がタイヤに吹っ飛ばされているのを見て誘ったわけか。
確かに端から見れば狂気的だ。クレタもそうだが、知らず知らずのうちに俺は周りに心配をかけていた。
「――。ありがとう、ベンさん。なんだか、少し肩の荷が下りた気がする。」
「ベンでいい。俺の話が少しでもナナシの助けになるのなら嬉しいことだ」
(みんなのために――。なんだかんだ一番白祇重工を見ているのはベンさん――。いやベンなんだな)
きっと、アンド―が途中いなかったのもベンが手を回していたのだろう。
「ありがとう」
小声でそうつぶやいた。今日は、ゆっくりしよう。きっとリンとアキラ、白祇重工の皆にも心配をかけてる。
外の光は傾き、それはその日の終わりを暗示していた。
(そういえば、明日グレースに呼ばれてたんだよなあ――。まさか究極のくすぐり機の実験台とか――。ないよね、と言うか呼び出しの理由聞いとけばよかった!!)
ちなみにその後。
特訓にベンが加わるようになった。どうにも経理の仕事をしていると体がなまってしまう。それを解消するために俺の特訓に付き合ってくれるらしい。
「行くぞ、ナナシ!」
「おう!『マジン・ザ・ハンド!』」
気がいつもより立ち昇ぼる。タイヤを一時受け止めるも、すぐはじかれてしまう。
(くっそ、今日でタイヤ4つ目か。一つ増えるだけでも体重移動に使う力の量が増加してきつくなっていく)
あの日、エーテル爆薬の爆風を受け止めた『マジン・ザ・ハンド』はほぼ完成形に近かった。だが、なかなか再現できていなかった。
「行くぞ!もう一本だ!」
「おう!『マジン・ザ・ハンド!!』」
ナナシがグレースをキャッチするために反射的に『ゴッドハンドW』を解いたところを俺は見ていた。
「ナナシ、俺はお前を一目見て、信じられる奴だと思った。迷わず誰かを助け行こうとする姿勢に。あの、『ゴッドハンドW』の時からな」
長い!!なぜだー!!
皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?
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読みたーい!(特にヤンデレ)
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読みたーい!(ラブラブ!)
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読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
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作者さんの自由で!
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こんなアンケートする前に書け