ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

69 / 186
第32話・ヴィクトリア家政

 

 

数分後、イアスと共に俺達はバレエツインズのホロウが見えるところまで近づいていた。

 

「本当に、バレエツインズが飲み込まれてるんだな――」

対岸のホロウの規模は大きく、そしてその周りにあるビル群がいびつに見えるほど溶け込んでいた。

 

『ううん、そうでもないみたい。見て、あそこ』

イアスが指さした先を見ればバレエツインズの屋上の一部がホロウから飛び出していた。

「なるほど、あそこからレインは通信を送ってきたんだな。共生ホロウが縮んだとは聞いたけど見事に出ている」

『それじゃあ、目的地は見つかったね、ナナシ』

「ああ、それに増々誘拐の線が濃厚になってきたな。それくらいしか、あそこまで行く理由はないし」

(だからと言って、誰に連れ去られた、目的は?恨み?妬み?もしかすれば、痴情のもつれ。それだったらどれだけいいか。最近物騒だから、下手すればハッカーとしての能力を買われて連れ去られたとか――。)

 

 

考えてもらちが明かない。レインがニコに送った空メールの頻度からしてそろそろ限界が近いとみていい。迅速に行かなければ。

 

 

 

最悪の場合、レインが死んでいる可能性すらある。

 

 

 

「行こう、パエトーン。ほら、肩に乗って」

「うん!乗せてもらうね、ナナシ。そういえば、ニコ達は大丈夫かな。ここら辺から、飛行船が見えればいいんだけど――」

飛行船か――。確かパールマンも乗るんだったけ、もし逃がす勢力がいるとしたら絶好のチャンスだな。

だいたいこういうのって、移送のタイミングとかで狙われるのが常だ。

 

 

「何事も無いといいんだが」

そして、俺達はバレエツインズに突入した。

 

 

 

あるビルの屋上。

 

 

中性的な顔立ち。だが、とても整っている。神が利き手で書いたのかと思うほど、世間一般から見ればうらやましがられる尊顔を持っている彼?彼女?は、イアスとナナシを除いていた。

 

「へぇ、彼もここに来たんだね。――なるほど、今回は小手調べと言うところかな。――ははっ」

思わず笑みがこぼれる。

 

 

「この時代になって初めて『聖剣使い』同士の戦いが始まる――。さて、せいぜい僕を楽しませてくれよ」

 

 

風が吹き荒れる。吹いた後そこには誰もいなかった。

 

 

『着いたね』

早速、バレエツインズの内部に入るとイアスにそっくりな動かないボンプ2体が手をつなぎながらお出迎えしてくれた。

 

「なんだか、ホテルのロビーって感じだな。でも、暗いな。俺は夜目が効くから大丈夫だけど、そっちは大丈夫?」

『うん、視界良好だよ!』

色々あたりを見渡してみるが、ところどころ埃をかぶったところはあるが、本当にきれいな場所で、都市伝説のスポットと言われても全然不思議ではなかった。

 

「さてと、お化けはいるかな~」

『いるわけないでしょ、ナナシ。それに、もし出てきたらどうするつもりなの?』

やっぱり、リンはお化け信じな派のようだ。もし、お化けがいたら、過去のことを教えてもらえるかもしれないし、話せたらいい経験になると思ったんだが。

 

 

「ふっふっふっ~!今回はこんなの持ってきてるんだよ!」

そう言い、俺が出したのは二つの小瓶。

『そ、それってまさか!?』

「ふふっ、お化けと言ったら塩!それに、多分胡椒も聞く気がするから持ってきた!」

『それ盛り塩だから!直接かけて効くのは、ナメクジだけなんだからね』

 

どうやら、映画で塩をまいて撃退していたのはフィクションの出来事なようだ。まぁ、最悪拳が当たれば殴り飛ばせばいいだけだ。

『ナナシ、勝手に塩と胡椒を取らないでくれるかな。』

「は、はい!ごめんなさい」

イアスの向こう側から、アキラに説教をされてしまった。言葉の圧で、思わず震えてしまう。

 

 

ドタン

『きゃあっ!』

少し進んだその時だった。物音が聞こえ後ろを振り向くと先ほどまで二人で手をつないでいたボンプの片方が倒れていた。

 

 

(これが心霊現象!?)

 

「パエトーン。ちょっと顔を掴むのやめて、痛いから」

物音が立った瞬間驚いたイアスは俺の肩に乗っていたため見事顔面にそのぷにぷになボディを食い込ませ震えていた。

 

『――あっ、ごめん。先を急ごうか、ここに居ちゃまずいかも』

「確かに、妙にここは居心地が悪い」

 

(――人の気配はしない。だけど、直感が何かいると告げている。妙に視線も感じる気持ち悪い感覚だな)

足音もしないし、気配もしない。なら、誰もいないはずなのだが。直感と視線がいると告げている。俺は、自分が持っていた塩を見た。

 

 

先に進むと先ほどまでとは違い、ホールではなくかなり入り組んだ道を通ることになった。

 

「ここら辺、すごい入り組んでるな。霧も濃い、パエトーン絶対離れないでね」

『うん、本当なら周りの状況をいっぺんに探知したいんだけど、ホロウのデータが古いし、裂けめも多いから難しいし。――ってナナシ何やってるの?』

 

ちょうど、入り組んだ道から出たタイミング、目線の先にはホールがひろがっている。

(かなりの手練れだ、あんな入り組んだ道じゃ絶対に見つけられない)

 

 

俺はこのホールに続く道を閉め。そこに塩と胡椒をまいて、ついでにニコちゃんマークも書いておいた。

「いや、幽霊対策だよ」

『盛り塩ってことね。確かに、それなら幽霊に効果抜群かも!でも、ニコちゃんマークで意味があるのかなぁ』

 

すると、わかってはいたがぞろぞろとエーテリアスが現れる。

『まずは、エーテリアスを倒さないとね』

「あぁ、瞬殺する」

俺の周りを包囲したエーテリアスの数は10体、皆雑魚だ。

 

 

「ふぅ」

ちょうど正面にいたエーテリアスに向かって跳躍し、首をもぐ。

(こんな程度の奴らに、いちいち技を使ってられるか!)

引きちぎったやつの胴体を持ち、消滅する前に他の奴に投げつけ、視界をふさいだ後猛烈なドロップキックを食らわせ体制を崩させる。

 

「よっと!」

その隙に首をもぐ。後は、その繰り返し。ものの数秒でここのホールはエーテルの血の海に沈んだ。

 

 

 

そして、全てのエーテリアスを倒した後、盛り塩をチラ見する。

(動いていない、ニコちゃんマークもある)

 

 

「そこね」

塩と胡椒を混ぜたおかげで、ある程度匂いをたどれる。俺は、何者かがいる方へわざとらしく視線を飛ばした。

(でも、目の前に暗いけど3人かな、気配を隠す気がないからわかるだけで本気で隠れようとしなくてよかった。それに、今視線を送ったやつは俺が気づいているって気づいたはず。でもなぁ――)

 

 

ここまで、気配と位置を探るのが難しいということは相手は相当の手練れだ。それも集団の、戦いの心得があるタイプだ。

もし、俺が4対1で邪兎屋と戦うことになったら、10回やって9回負ける。

だが、白祇重工相手に4対1で戦っても俺が勝つ。

それは、相手が戦闘になれているかどうかということだ、邪兎屋は言わずもなが、しかし白祇重工は会社だ。戦士じゃない。

 

 

つまり、戦いの心得がある奴らが複数で挑んでくるとマズイ。つまり、今回の例で行くと10回やって9回負ける。と言うことだ。

(勝ち目はないな。でも、それならずっと監視させ続けたのも、バレたのに監視させ続けているのもおかしい、穏便に済ませられる手段があるならそれが一番か――)

 

 

 

『え?ナナシ』

「すまん、パエトーン色々考えたけど、これが一番成功率が高い」

もろもろ考えた結果俺が導き出した最適解は両手を上げる。つまり、降参だ。

(まぁ、俺ならこっから『マジン・ザ・ハンド』出せるし、もし交渉が決裂してもイアスは守れるか)

 

 

「降参だ!よければ出てきてくれないか!」

暗闇の中、一見誰もいない空間に話しかける。

 

コツ、コツ。何か、こちらに向かってくる足音、それは緊張の静寂からかはっきり聞こえた。

 

「お見事でした。さぞ容易い道中だったでしょうが――ここが終点です」

 

現れたのは狼のシリオンだった。

(狼か、ワンちゃん熊だったらすぐ逃げだせたんだがなぁ――。絶対足早いじゃん)

白髪の髪、そこから見える。赤い眼光を見ると思わず、吐いたつばを飲みこんでしまう。

 

「ここは私有地でして来客はお断りしています。30秒でご用件をどうぞ――。それ次第では――」

胸元から金の懐中時計を出し、おそらく30秒を数え始めた。

「まず、私有地と知らず勝手に入って申し訳なかった、謝罪する。俺たちはここに、友達を探しに来たんだ」

(第一関門、話を聞いてくれるクリア!)

 

「ご友人ですかでしたら――」

 

ああ!

 

何か、返答しようとしたのだろう。その時だった、女の子の声が聞こえると同時に俺達の元へチェーンソーの刃が降りてきたのだ。

すると、狼のシリオンは一回咳払いする。

「して、皆さま。ここは立ち入り禁止につき即刻――」

「なっ、それは困る!」

思わず、俺も言葉が出る。だが、それよりも暗闇の奥で起こっている惨事に、耳が傾き始めていた。

 

 

「言ったはずです。武器の手入れと床磨きは日々欠かさず――と」

「す、すみません。ライカンさん――」

ライカンと呼ばれた狼のシリオンに深々と礼をするどこか見覚えのある少女。

 

 

「ふわあ――ねむ――」

と言うか、よく見れば後ろのもう一人の気配の主はあくびをしながら階段に寄りかかっている。

「エレン勤務中ですよ。姿勢よく!」

「ちぇっ――はいはい」

めちゃくちゃ仕方ないという感じに姿勢を正すエレンと呼ばれた少女。

 

 

「って、カリンじゃないか!?」

ライカンと呼ばれた狼のシリオンに謝っていた少女、それはまさしく俺と猫又が二人で列車を止めようとした時に偶然あった少女だった。

(家事代行――ってそう言うことかよ!?)

よくみれば、他のメンバーらしき人達も執事服、メイド服になっている。

 

「え?あっ、ナナシ様!それに調査員様――!」

「カリン、面識が?」

「はい!そうなんです。ホロウで迷子になっていたカリンを助けてくれた方々なんです!」

(いいぞ、カリン!その調子で怪しいものじゃないって証明してくれ~!)

 

 

と言うか、もう俺達を監視してる奴後ろに回り込んでるし何で足音しないんだよ。

普通、近づけば近づくほど足音には気づきやすくなるものだというのに全く聞こえない。まるで、浮いているみたいだし、本当に幽霊が後ろにいるような感覚だ。

 

「なるほど――。リナ、もういいでしょう」

「はぁ~い」

耳元で、囁かれる。流石に、驚いたのでちょっと距離を開ける。イアスも驚いて、俺の顔をつかんでいる。

 

「耳元で囁くのはやめてくれません?」

「ふふ、とても早い段階で私のことをお気づきになられたみたいでしたから、少しいたずらをしたくなってしまいまして」

と言うか、リナと呼ばれた彼女の足元を見ると。

(う、浮いてる!?冗談じゃなくて浮いてる!?だから、見つけずらかったのか!)

 

 

『気づくのがはえぇよ!!』

『はえぇよ!はえぇよ!』

リナの周りを飛んでいた、ボンプ達。リナがライカンと呼ばれた狼のシリオンのもとに集まる。

 

「顔見知りなのでしたら手間が省けます」

こちらに、歩み寄ってくる4人。

 

 

 

「申し遅れました――私共は『ヴィクトリア家政』です」

これが、彼らとの初対面だった。

 




ちなみに一体一で競技のようにフラットな場所で戦うなら。ナナシが絶対、勝てるのは白祇重工の4人だけです。それ以外の場合、勝つのが難しくなります。特に、ビリーなどの遠距離タイプはかなり苦戦します。ライカンと戦うなら、かなり厳しいですが10回やって4回は勝てます。ちなみに、色々ものがある戦場の場合だと勝てる確率はグッと上がります。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
  • いや、読みたいのは本編だ!遅れてんぞ!
  • 作者さんの自由で!
  • こんなアンケートする前に書け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。