ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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明けましておめでとうございます!!今年もよろしくお願いします!!
ごめんなさ――――い!!年明ける前に出そうと思ってましたが作者がサボローと友達になったので遅れてしまいました。


ドキドキデート大作戦!!(後編・2)

 

腹ごなしの全力疾走は、吐き気をもようす結果につながったが、到着する頃にはある程度お腹の空きができ始めていた。

 

 

時刻を見ると14時ちょうど、目標の時間は14時30分と予定より早く来ていた。

俺はパーティーに飛び入り参加と言う形になっているため終了までに間に合えばいいのだがそれでも俺が予定よりも早く来たのは理由があった。

 

「よぉ、ナナシ――ありがとよ、正直難しいと思ってたぜ」

営業所につく前、俺は横道にそれ工事現場に入っていた。指定の場所に行くと、クレタが座って待ってくれていた。

 

「俺は仲間からのお願いを無下にしたりはしないよ」

「――仲間か、そうだよな。あたしはナナシの仲間だもんな!」

一瞬クレタの顔に、薄雲がかかったような影が差したと思えばすぐに晴れ、笑顔になる。

 

 

「それで、話って何かな?」

「そ、そいつはな――っと、な、ナナシって好きな奴はいんのか?」

目線の動きからクレタの動揺を読み取ったがつつくのも大人気ないとあえてスルーして間髪入れず返答する。

「ああ!!俺の仲間ならみーんな大好きだ!!」

大きく手を広げ、その大きさをアピールしながらクレタに説明する。

 

「そ、そう言う好きじゃねぇんだ――れ、恋愛的にす、好きって奴はいないのかよ」

「恋愛的?それって何が違うんだ?」

キョトンと効果音で聞こえそうなくらい純粋な瞳と声色でナナシはそう言い放った。

 

「そ、そりゃあ――き、キスできるとか、できねぇとかじゃねぇか?」

 

 

「行動で変わるのか?うーん――」

まるで考える人のように拳を顎に当て、数秒深く考えた後重く閉ざされた口を開いた。

 

「それだった俺はみんなのことが恋愛的に好きってことになるかな――相手はどうかわからないけど、例えばクレタとキスをするのだって別に嫌じゃないからな」

「あ、ああああたしとき、キスしても嫌じゃねぇのか!?――あ、待てよ」

クレタの顔がまるでトマトのように赤面する、だがそれはわずか一瞬――何かを悟ったように、彼女の目から光が消え、表情は音もなく翳りを見せた。

 

「――それってよ、姉貴とかベンとかでもいいのか?」

「うん、そうなるね。相手がしてほしいなら別に“いいよ”って言っちゃうかな」

「ッう、嘘だろ!?――ナナシの奴恋愛未経験どころじゃねぇぞ、記憶喪失ってここまでひでぇのか」

クレタには記憶喪失と言っているので無理もないが、すべての原因は彼のオリジナルであるアポロだ。だが、そんな考えに至るわけもなくクレタ視点から見れば記憶喪失で色々ぶっ飛んでしまった哀れな奴にしか見えないのだ。

 

(ど、どうする――せっかくナナシを呼び出せたって言うのによ、これじゃあ赤ん坊に告白するのと変わらねぇぞ)

数十秒の思案の末、静かに息を整えた後クレタは口を開いた。

 

「――ナナシあたしが、恋愛ってもんを教えてやるからよ、しっかり好きって奴を探せ!もちろん、恋愛的だからな――わかったな!」

クレタは詰め寄りながら言い放つ、この場で告白を行えばナナシは“いいよ”と無条件に答え、無償の愛を渡すだろう。

だが、相手の弱みに付け込みたくないというクレタの考えと平等に仲間を好きなナナシの愛はおそらく今の段階で告白しても独占することはできない。

 

「う、うん?わかったけど――クレタって恋愛経験ってあるの?」

映画の中だけでしか恋愛と言うものも知らないナナシだが、それ以上に目の前の二十歳もいかない少女が恋愛を知っているのかが疑問だった。

 

「ねぇよ!わりぃかよ!!」

「いえいえ、全く!!俺も、恋愛のれの字も知らないしお互い様だよね!」

声を上げ、耳まで真っ赤に染めながら詰めるクレタにナナシも後ずさりするが壁に激突する。

 

 

「――思い知らせてやるからな、あたしの魅力って奴を」

声にならない声を絞り出すように、クレタの唇が震えながら動いた。

「え?なんか言った?」

「言ってねぇよ!ほら、行くぞナナシ」

案の定、ナナシの耳に入ることはなくナナシはクレタに引っ張られパーティーに向かうのだった。

 

 

 

「お、兄弟!よく来たな!」

営業所の扉を開けると出待ちしていたのかと言わんばかりに扉の前でアンド―が待ち構えていた。

 

「ああ、今日は招待してくれてありがとう――って何すんだ?」

なぜかアンド―からヘッドロックを決められ引きずられる、別に痛いわけじゃないのだが嫌な予感がふつふつと湧き上がってきた。

 

 

「兄弟!!今日はパーティーだぜ、なら肉を食え!!」

「に、肉――だと」

フラッシュバックするのはステーキ屋で食べた巨大なステーキと鯖バーグ。そして、アンド―が握っていたのはこれまた巨大なローストチキン――ではなくいわゆるトマホークステーキと呼ばれる、要するに巨大な骨付き肉だった。

 

「ほらほら!社長も手伝って作ってくれたんだぜ!じゃんじゃんあるから食おうぜ!」

自身もトマホークを持ち齧り付く、そして俺の手にもトマホークが装備された。

 

(い、行けるか?昼飯後にこんな巨大なトマホークステーキなんというか、そもそも胃袋の残りの容量的にどうにもならないような――)

出来ない理由がふつふつと浮かび上がっていたその時だった、視線にちらりとクレタが写る。彼女視線は俺のトマホークに向いていて、今かと今かと食べるのを待っていた。

 

 

その時、珍しく勘の良さを発動したナナシはトマホークを見つめた次の瞬間――

「ううぉぉぉぉ!!」

勢いよく、トマホークにかぶりつく。ナナシは自分の為なら頑張れないが、クレタの為ならここで諦めるわけにはいかないと奮起したのだ。

 

「うまい!うまいよクレタ!!」

「ホントか!なら、よかったぜ」

嘘ではない、本当に味覚は美味しいと訴えている。しかしながら、それ以上に胃袋と脳みその満腹中枢が勘弁してくれと叫んでいるのだ。

だが、うまいと言ったとたんに花が咲いたように笑顔になったクレタの前で表情に出すわけにはいかずトマホークを握らぬ片腕は必死に足を握っていた。

 

 

「いい食べっぷりだなナナシ」

「ベンさん!!」

白祇重工は熊のシリオンが多く在籍しているが、その中でもいっそう覇気を放つベンさんが奥から――トマホークを持って現れた、それも山盛り。

 

「と、とまほーく?」

思わず唇が震えるのを感じる。最初はベンさんの顔に視線が向いていたから、このアンド―を何とかしてくれるかもしれない救世主を見る目でベンさんを見ていたが視線が下がった途端に生気が抜けていくのを感じる。

 

「おう、ナナシもほらじゃんじゃん食えいっぱい作ったからな」

ベンさんがこちらに渡すのはトマホーク一本ではなく皿――つまり山盛りのトマホークを食えということだ。

 

(ま、まずいこのままだと――善意に殺される!)

差し出された皿を前に、死を覚悟したナナシだったが彼女の登場で崖っぷちに立っているような恐怖が溶けていった。

「ちょっと待つんだ、ベン。ナナシが14時半に来たのはお昼を食べたからだろう?なら、そんなにたくさんのトマホークを渡されてもナナシが困ってしまうよ」

 

「あぁ、そうか――悪かったナナシ」

「いや、気にしないでトマホーク美味しかったし」

と見事に死地を抜けることはできたのだが――グレースがこちらにウインクをした後、口パクで何か言葉を伝える。

 

 

(外に来てね――ってことか)

当初はブッキングする予定だったのだ、今の俺ならいくらでも受けて立てる。

「悪い、ちょっと外で運動してお腹すかせてくる」

そう言い残し、俺はその場を離れた。

 

 

 

数分後――外で待っているとグレースもその場に現れた。

 

「やあ、ナナシ。ありがとう私のお願いを聞いてくれて」

「俺は仲間からのお願いを無下にしたりはしないよ」

ついさっき、クレタにも言ったセリフを同様にグレースにも言う、別に言う言葉を変える必要がないだけだがその瞬間、グレースの表情に影が差す。

 

「それ、さっきおチビちゃんにも言ってたよね?」

「えっ!?う、うん――だけど、別に特に理由は――ってあれ?どうして、俺とクレタが話してたことを知ってるんだ?」

「え、そっか――――実はさっき君たちが二人きりで話しているところを盗み見ちゃってね」

その瞬間、グレースの表情が意表を突かれたように反射的に肩がすくむ。

 

「そ、そうなんだ――察知ができてなかったのか」

もちろん、ナナシの気配察知がなまったとかそう言うわけじゃないのだが、単純にアキラとリンがナナシの装備のどこかに仕掛けている盗聴器の周波数をジャックしているためそこから話を聞いていたのだ。

 

 

そして、グレースはクレタとの会話を盗聴していたわけなので当然ナナシの恋愛観が赤子なみなのを知っている――だから、特に何かするつもりはない。

(私はどうやら君の愛を独り占めしたいタイプらしいんだ――だから、今じゃないかな)

 

 

 

「それで、抜け出したけど何か話でもあるの?」

「――いや、何もないよ。そうだ、おチビちゃんから恋愛を教えてもらうんだろう?それ、私からも恋愛を教えてあげようか?」

「ぐ、グレースから?」

思わず、訝し気な目でグレースを見る、なぜならクレタから聞いたがグレースは恋愛経験ゼロ、その上ぶっちゃけ機械への恋愛を教えられるんじゃないかと不安なのだ。

 

「――いや、何でもない。グレース、教えてくれると助かるよ」

恋愛と言う不安定なものを一人から教わるのはいかがなものかと思っていたため、すぐに考えを改め、グレースからも吸収することで己の恋愛観を鍛えようと考えたのだ。

 

「決まりだね、それじゃあパーティーに戻ろう、そこでも手取り足取り教えてあげるよ」

「お手柔らかに――」

 

グレースが俺の手を引っ張り会場へ戻る。

その後もドンちゃん騒ぎをしていたら時間はやってきた。

 

「ナナシ、そろそろ行かないとまずいんじゃないか?」

ベンさんに指摘され時計を確認する、時刻は18時半――ビリーと一緒に特番を見るのが19時。

 

「うぉぉ!?本当だ――ご、ごめん!これクリスマスプレゼント!説明は後日ちゃんとするから!」

「楽しんで来いよ!ナナシ、いやサンタ!」

クレタからの声援を背に俺は全速力でビデオ屋まで走っていった。

(――気づかれてたか)

 

ちなみに、工事現場からビデオ屋までは車で行く距離なので30分と言う残り時間は相当ヤバかったりする。

「―――」

風を切る音が耳元でうねりを上げる。足が地面がを蹴るたびに、空気が体にぶつかってくるのがわかるほどだ。

 

 

「くっ――でも、明らかに時間が足りない」

残り10分だが、残りは約5km。世界記録が大体12分なので到底間に合う距離ではない。

 

(せ、世界がなんだ!聖剣使いは人間やめてると言っても過言じゃないし!こんな程度、走り抜けて――)

ちらっと見えるのは治安官の車、そういえば市政選挙が近いから巡回してるだなと思いつつ、ここで熱血ジャンプを併用して走り抜けたらヤバいと使用を止める。

 

「――ここまでか」

「ナナシ!早く乗ってくれ~」

ビデオ屋の方から走る特徴的なデザインの車、そこに乗りこちらに手を振っているのは――

 

「ビリー!!」

間違いなく、邪兎屋従業員で二丁拳銃の使い手であるビリーだった、言う通りにすぐ車に乗り込みビデオ屋へ全速力で向かう。

 

「ありがとう、ビリー。でも、どうして?」

「おう、店長からナナシが中々帰ってこないってぼやいててよ。それで、俺が迎えに来たってわけだぜ!」

「助かった、本当にごめん――向こうでのパーティーに夢中で時計を見るのをすっかり忘れてた」

あの時の俺は完全に浮かれていたというのもあるが、なんというかクレタと話した後から明らかに思考が鈍った。

 

(恋愛的な好きか――俺にもアポロにも知らないことはあるんだな)

当然のことだが、親(オリジナル)以外からも得られる知識は重要だと再認識したナナシだった。

 

 

 

時刻は19時半、俺達は今か今かとスターライトナイトの特番を楽しんでいた。

最初は、監督が作品の概要を喋って未公開映像などの公開も行われた。

 

「な、ナナシ見ろよ!まさか、スターライトナイトが最初は10人で想定されてたなんてよ!!」

「流石に多すぎるよね、10人もスターライトナイトがいたら敵はまず分断を目指した方がいいな――そこから各個撃破、もしくは内部の不和を狙うのがいいだろうな、いや1対10ってのもおかしいな、そもそも人数を増やせば――」

「ナナシって、特撮を現実的に見るよな――俺、見たくないぜ!!人間関係で崩壊するスターライトナイトは――」

真剣な顔で番組を見るナナシ、表情をコロコロ変えながら興奮するビリー、とそれぞれの楽しみかたでスターライトナイトを鑑賞していた。

 

「そこだ!関節折れ!あぁ、抜け出しちゃった――っとそこだ!狙うはみぞおち!」

「ナナシ流石に特撮ドラマでそんなガチな戦闘はやれねぇと思うぜ、それより見たか!スターライトナイトの新しい変身!やっぱりロマンがあるよなぁ」

「機械人のビリーは変身とかできないの?この間部品の交換してたじゃん」

「それは、呼吸が出来ねぇ欠陥品つかまされた時の話だろ?――でも、いいよなぁ変身――俺もあんな風に出来ねぇかなぁ――」

(変身するたびに、ニコから『早くしなさいよ!』って言われそうだけどな)

 

特番は1時間ほどで終了し、最後には新商品の告知もされた。

 

 

「新しい変身装備――欲しいぜ、いやそれよりもこの前発売されたフィギュアを買うべきか――」

「――ないんだな、金」

ビリーの悲痛な表情から、彼の懐事情を察するどうやら満足に給料は出ていないらしい、特に発売日は来月末なので再来月まで待つ必要があるだろう。

 

「ということで、はい!プレゼント」

ビデオ屋の自分の部屋から持ってきたのは、八分スケール、大体25㎝くらいのスターライトナイトのフィギュアだった。

「な、ナナシ!!お前って奴は!!」

「この間、郊外いった時も世話になったしなこれくらいさせてくれ、来月は一緒に変身しようぜ!!」

その後は、スターライトナイトの特番の感想を言い合った後ビリーはフィギュアを抱えウキウキでビデオ屋を後にした。

 

 

そして入れ替わるように、ビデオ屋の扉が開かれ誰かが入ってくる。

 

「こ、こんばんは!な、ナナシ様!」

「やあ、カリン。こんばんは」

たどたどしく落ち着きのないいつもの口調で挨拶するヴィクトリア家政のメイドカリンだ。

 

「こ、この度は私の用事につ、付き合ってくださりありがとうございます!!」

元気いっぱい全力お辞儀に苦笑を漏らしながらも、カリンをソファに誘導する。

 

「それじゃあ、早速本題に入ろう!カリンは俺に渡したいものがあるんだよね」

「はい!!え、えっと―――その――しょ、少々お時間をください!!せ、セリフを思い出しますので――」

カリンの顔がトマトのように赤く染まったかと思えば、すぐに青くなりまた赤くなるのを繰り返して、その次はソファを立ち上がり部屋の隅でメモを取り出し何かを復唱しだした。

 

(待つか――)

数十秒後、何回かその場で深呼吸を繰り返し顔色も正常に戻してきたカリンが改めてソファに座りなおす。

 

「な、ナナシ様に今回はこちらをプレゼントしたくてま、参りました!!!!」

最後の参りましたに全力を出しながら、両手で何か券を渡してくる。

 

「これって――」

「はい、この前渡そうとした『特・専属メイド体験チケット』です!ナナシ様へのクリスマスプレゼントを考えていたのですが思いつかず、カリンの全てを差し出すしかないと思ったのですがリナさんに止められてしまいまして――こ、これを使えばカリンが時間一杯、メイドとしてサービスを提供します!!」

相当練習した成果なのか、落ち着いて喋れているカリンを見たおかげか全く説明が頭に入ってきておらず、とにかく使えばカリンに色々出来るしかナナシの頭には入っていなかった。

 

「そっか――この特って何?この間、そんなのなかった気がするんだけど」

「お、仰る通りで!ナナシ様だけの特別バージョンになっています。通常とは異なり一日中、カリンが何でも奉仕させていただきます!」

「な、何でも?」

「はい、何でもやります!」

ナナシの頭の中に閃光のようにほとばしるそのワード。

 

(これを使えば、カリンに何でもしてもらえるのか――クレタとグレースから恋愛について学ぶって話だったけどカリンからも聞いた方がいいかもな。それに、カリンは力持ちだし白祇重工の仕事を手伝ってもらうとか――それに、ビデオ屋の手伝いをしてもらってアキラの負担を軽くしてもらうのも――)

一瞬家事をやってもらおうかとも思ったナナシだが、想像してみると1コマ目ではカリンがやっていたのが、ニコマ目では俺も手伝っている図が想像できてしまった。

 

 

「よし、決めた!明日――はちょっと忙しいから来週の休みの日にこれを使ってもいいかい?」

「はい!カリンは精一杯、ご奉仕させていただきます!!――その、ちなみに要望などがあれば準備しますので伺ってもよろしいでしょうか」

「大丈夫、カリンはそのまま来てくれればいいから」

二ヤリと口元が動く、ナナシはわざわざカリンにお願いすることはなかった。なので、この券を使ってカリンのメイドになろうかなと考えていたのだ。

 

「あ、あの!カリンがセリフを覚えるのをお待ちくださってありがとうございました――やっぱり、満足にプレゼントも渡せないカリンは役立たずの駄メイドです――」

「カリン、ちょっと失礼」

「え、は、はい」

ソファに互いに座っているわけだが、当然密着しているわけではなく離れている。なので、ナナシは一気にその距離を詰めた。

 

 

「カリンは駄メイドじゃないよ、本当に駄目だったらそもそもビデオ屋に来れないよ。それに、カリンはちゃんとこの前の話を実践してくれたもんね」

「は、はい気づいていらしたんですか?」

「流石に自分で言ったからね、聞いている俺もカリンの“ごめんなさい”じゃなくて“ありがとう”が聞けて良かったよ」

俺は右手を彼女の頭の上にのせてカリンの髪のセットが崩れないくらいの力で撫で始める。

 

「カリンは頑張ってるよ、駄メイドなんかじゃないよ、カリンが努力してるのもわかってるちゃんと成功してるよ、カリンからのプレゼント本当に嬉しかった、それだけじゃないよカリンと一緒に過ごしているだけで楽しいよ、それに自分の失敗をしっかり受け止めて成長できるのもカリンのいい所だね、他人のことを慮れるのも素晴らしいよ、見習いたいな―――」

その後もカリンを褒め続けながらも、視線を外さず頭を撫で続ける。すると、二言目くらいからカリンの目がぐるぐる回り始め、顔が先ほどのように赤く染まる。

 

「――それでね、いつも頑張ってるカリンのことが大好きだよ」

最後の誉め言葉を終え、頭から手を離す。数秒後、カリンは正気を取り戻したようでふにゃふにゃした背筋がピンと伸びる。

 

「――その、カリンはいくらくらい支払えば」

「何で!?い、いつからカツアゲに!?」

その後は、財布を取り出しお金を払おうとするカリンを必死に止め落ち着かせた。

 

 

「――よし、じゃあ次はこっちの番だね!これ、プレゼント!」

「これ、ハンディクリーナーですか!?あ、ありがとうございます」

俺が渡したのは細かい所でも掃除できるハンディクリーナーだ。ライカンさんから、カリンの好きなことが掃除と聞いたので、そこから考えて彼女の戦闘の仕方から細かい所の掃除はあまり得意なのではないかと考えこれを選んだのだ。

 

「カリン、これを使ってこれからもナナシ様に奉仕させていただきます!!」

「ははっ、ヴィクトリア家政に頼み続けたらお金がすっからかんになっちゃうよ」

 

ヴィクトリア家政は富裕層向けのサービスを提供している。俺も普段から結構もらってるし、普段からお金をあまり使わず、家賃もビデオ屋住んでいるのでかからないし貯金もしているが、一回好奇心で確認してみたら――調子に乗ると生活が傾く料金だった。。

 

「いえ、カリンが個人的にご奉仕させていただきます!」

「いやいや、奉仕じゃなくて仲間としてどこかまた遊びに行こう!」

最後は約束を交わして、時刻は20時半となったので今日はお開きになった。

 

 

「カリン、流石に遅いから送っていくよ」

「はい、ありがとうございます!」

扉の前にいる06号に扉を開けてもらってビデオ屋部分に出る、そこから送ろうとしたその時視線の端に車が止まっている、そしてその隣でライカンさんがこちらにお辞儀していた。

 

「来てくれたみたいだね」

「え、あっ、ライカンさん!――ナナシ様、また来週お会いしましょう!」

そう言い、手を振りながらカリンはライカンの元へ駆け出していった。

 

 

 

「これで、ドキドキデート大作戦!!も終わりかぁ――」

しみじみと激動の3日間を思い出す。中々、一筋縄にはいかなかったがその分楽しかった。

 

 

「まさか、アンビーが―――いや、今となれば後の祭りかな」

ビデオ屋の外はまるで世界で俺一人になったように真っ暗な世界だった。

 

 

「行こうか」

再びビデオ屋の奥、二人が待つ場所に戻ろうと踵を返した。

 

 

そして、そっとノブに手を置く。

こうして、彼の12月25日は終わ―――――――

 

 




これで、番外編のドキドキデート大作戦!!は終わりです。
え?なんか最後おかしくないって?――気のせいだ!!年明けで疲れてるんですよ。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
  • 読みたーい!(ラブラブ!)
  • 読みたーい!(好感度測定器みたいなやつ)
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  • 作者さんの自由で!
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