ゼンレスゾーンゼロ ・ 聖剣   作:うどん米

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第33話・飛行船へ

 

 

(ヴィクトリア家政。カリンが、家事代行をしているなんて言っていたからどこでやっているんだろうと家事代行業者をフェアリーに調べてもらっている時に引っかかったうちの一つ。――要は、何でも屋。但し、ものすごい支持を誇る、プロ集団)

 

 

『『ヴィクトリア家政』知ってる?ナナシ』

「ああ、すごい簡単に言うと、お金持ち向けのアルティメット家政婦みたいな感じだ。」

『ごめん、全然わからない』

どうやら、俺のたとえ話は失敗したらしい。まぁ、フェアリーから多少聞きかじった程度の知識ではこれが限界と言うことだろう。

 

 

「ふふっ。“アルティメット家政婦”でございますか、あまり見当外れではございません。私たちは新エリー都における、少数の富める方々にお仕えしているんですもの。世間一般に知られていないのは道理ですわね。」

「――今、サクッとディスられた?」

『かもね、怒らないでね。ナナシ』

まあ、結構な給料もらってるとはいえ、彼らが相手する富裕層とは格が違うだろう。

 

 

「皆様、どうか従業員の失言をお許しください。ヴィクトリア家政の執行責任者、フォン・ライカンが変わってお詫び申し上げます。私共は本日、バレエツインズのオーナー様のご指示で設備のメンテナンスに参りました。」

「――なるほどね、あんたたちのご主人様がここのオーナーをやってるってわけか」

 

ここバレエツインズを建てたバレエ兄弟はとっくに破産している。それに、彼らがここに居るなおかつ私有地と言っている理由はそれくらいしか思いつかない。

 

「左様でございます。仰る通り、このバレエツインズが長きにわたり抵当に入れられていたものでしたが――近頃、当局がラマニアンホロウの活性低下に乗じて、共生ホロウの鎮圧を図っています。それが実った暁にはビルの勝ちが工場すると踏み、ご主人様は手付金を振り込まれました」

(投資か――。ホロウの内部にあるっていう物件を投資目的にポンと買える富裕層ってやばすぎるだろ――)

 

 

「だけど、そのおかげでこうしてもう一度カリンと会えてうれしいよ。出会いの縁と言うのは大切だからね」

「ナナシ様、調査員様――。またお二人にお会いできて、こちらこそカリンはとっても嬉しいです!ところで、皆様はどうしてこちらに?ここはご主人様の私有地ですから、協会のお仕事でいらしたわけでも、ない――ですよね――?」

「うっ」

痛いところを突かれてしまった。これだから、嘘と言うのはあまりついては行けないのだ。ついていいのは、ばれない嘘だけと相場が決まっている。

 

「カリンちゃんさ、そんなのわかりきってんじゃん。あ、それより――なんか暇つぶしになりそーなの、持ってない?スマホの充電切れちゃった」

「す、すみません、お役立ちになりそうなものは――じゃなくて!エレンさん、どういうことですか――?」

どうやら、カリン以外にはとっくに気づかれていたらしい。

多分、カリンから助けられたと報告された時点でもうすでに――。

 

「ふふ、つまり――『お客さま』方は、『調査員』ではない――ということですわ」

「――ふえぇっ!?み、皆さまは調査員様じゃなかったんですか――?」

 

(もし、ここから戦闘になったら。カリンを人質にするか――)

俺が一番大切にすべきなのはイアスつまり雇い主であるパエトーンを守ることだ。そのためだったら、縁の一つや二つ切る覚悟はできてる。

 

 

「そのように警戒なさらずとも、ヴィクトリア家政が責を負うのは雇い主様のことに関してのみです。ホロウでご活躍されている『非公式』の方々に、非礼をはたらくつもりは毛頭ございません。ましてや、あなた方はカリンのご恩人――胸の内を明かしてくださるのなら、この場を訪ねてくださった『お客様』として、私共も可能な限りご協力いたします」

 

どうやら、俺の考えが表情に少なからず出てしまったらしい。

俺はイアスに目配せをする。それはつまり正直に言おうという合図でもあった。

『そこまで言われちゃったら、白状するしかないね――実は私達、プロキシなんだ』

 

俺たちは、バレエツインズに来た目的を話した。もちろん、レインがハッカーであることは伏せたまま。

 

 

「なんと――かなりの手練れを連れているのでただものではないとお見受けしましたが、あなた様方が、かの伝説のプロキシ――『パエトーン』だったとは。ここへは、失踪されたご友人を探しにいらしたのですね」

「えっと――。ライカンさん、仕事の途中にそれっぽい子とかって見かけませんでしたか?」

「早速お役に立ちたいところなのですが――当局に配布された『キャロット』のデータが古く、私共もまだ棟内の状況を把握しきれておりません」

そりゃあそうだ。リンたちですら、ここの全貌は把握しきれていない。それに、もしレインらしき人物がうろついて居たりすれば彼らが保護しているだろう。

 

 

「ですので、提案がございます。プロキシ様、私共と行動を共にされてはいかがでしょう。探索であればナナシ様単独でも十分でございましょうが、あなた様は人探しを成されているなら人数が多い方がてっとり早いでしょう、たいして私共はホロウのデータが古いため難儀しております。ここは、互いに力を合わせましょう」

「俺はいいけど――どうする『パエトーン?』」

『私もできればそうしたいけど、いいの?私達みたいな部外者がご主人様のビルに入っちゃうことになるけど』

 

もし、俺一人で“バレエツインズ”を探索するだけなら問題はないだろう。しかし、なんだか妙な気配を感じる。おそらく、何か別の勢力がいると考えていいだろう。

そのため、戦力は少しでもほしい。

 

 

「勿論でございます。設備のメンテナンスを行う間、ご主人様よりすべての裁量をお預かりしておりますので。ましてや、伝説のプロキシ――『パエトーン』の名声は万人が知るところです。その上、優秀な戦闘員様ともご縁を紡げたとあれば、ご主人様もきっとお喜びになります」

(す、すごいな。プロはここまで行くと主人にとってどれが最適解なのかわかるようになるのか――)

何だろう、出来る人と言うオーラをライカンさんからひしひしと感じる。

 

 

『ともかく、二人とも。早く帰っておいで、準備が出来たら、すぐホロウに入ってレインを探そう』

「了解、じゃあイアスを連れ帰るね」

 

 

同時刻、ヤヌス区治安局屋上のヘリポート

 

「みんな早く行くわよ。こんな時に何かあってみなさいマスコミにある事ないこと書かれちゃうんだから!」

先ほど、邪兎屋全員の出席が必要とわかったのだが3人ともバレエツインズにはいかずその場にいたためすぐ集まることができた。

 

「おっと~出てきました!視聴者の皆様!本件の被告人――チャールズ・パールマン氏が当局の監視の下、ヘリポートに到着しました」

現れるパールマン。しかし、それは爆破事件の犯人と呼ばれているのにも関わらず、その表情からは妙な落ち着きすら感じられるほどだった。

 

 

「お前らが本当に驚くことになるのは、これからだ――」

誰にも聞こえない声でパールマンはそうつぶやきながら、裏切ったかつての部下のことを思い出す。

 

 

『お願いを聞いてあげるわ。具体的な指示は搭乗日、スーツケースに入れておくから。読むのは離陸した二時間後。指示通り動けば、うちの人間が新エリー都から逃がしてあげる』

幸いにもパールマンは“彼女”らの情報をつかんでいた。それを使い、逃げるチャンスをつかみ取ったのだ。

 

「おい。私が法廷で着るスーツだが――。スーツケースは届いてるか?」

そう言うと、治安局はスーツケースを見せる。

 

「だるまのオッサン、あんたはもうすぐ完全に終わるのよ。この期に及んで、どうしてまだ威張ってられるワケ?」

「終わる?くくく――若者よ。お前はまだこの都市の恐ろしさをまだ知らないようだな――」

そう言いのこし、パールマンはスーツケースを片手に飛行船に乗り込んでいった。

 

 

「何かたくらんでるわね――。行くわよ、みんな!」

「や、やっべぇ!?」

ニコが号令すると、ビリーが叫びだす。

 

「どうしたの、ビリー?」

「こないだ、呼吸モジュールを新調したとき、無酸素モードを追加して起動してみたんだが。呼気モードに戻らねぇんだ!!」

つまり、呼吸ができませんと言うことだった。

 

「だーから、得体の知れないB級品には手を出さないほうがいいって言ったんだぞ!」

「茶番はそこまでよ。そもそも、機械人に呼吸って要るワケ――?専用機の中は狭いんだし、どうせ二酸化炭素まみれになるわよ。」

的確なツッコミに納得するビリー。だが、なぜかアンビーが不安そうな顔でちょうどバレエツインズの方向を見ていた。

 

 

「?――どうしたのよ、アンビー。何か心配事でもあるの?」

「『パエトーン』から連絡があって今ヴィクトリア家政って言うところと一緒に行動してるらしい。ナナシから聞いたけど、かなり腕の立つ集団だって」

「聞いたけど、ナナシの知り合いがいるんでしょ?バレエツインズだって、ご主人様とやらの所有物って話だし――大丈夫よきっと」

それに、ナナシが集団で戦うことになっても勝てるかは怪しいけど負けるとは思えない。私達じゃあ、思いつかないような策できっと乗り越えるはず。

 

 

だが、アンビーの心配事はそこではなかった。

「そうじゃなくて――プロキシ先生とナナシが私達と一流チームの差を痛感しちゃったら、二度と依頼をしてくれなくなるかも」

「アンビーったら、なーに弱気な事言っちゃってるのかしら!あたしあたち邪兎屋だってね、超のつく一流なのよ!それに、あたしたちの絆がそう簡単に奪えるほどやわじゃないんだから!!」

そう言いながら、こっそりスマホでナナシへ。

『明日、借金返すわ』とメールをしたニコであった。

 

 

 

 

 




ちなみにライカンさんの話を聞いている間、ずっとリナの巨乳に目が奪われないように必死なナナシなのでした。

皆は閑話とか、IFの話とか読みたい?

  • 読みたーい!(特にヤンデレ)
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